２ｎｄデュエル流石再び！次元竜の侵攻！②　作：はにわ

　
ーー実技試験。
アカデミアの体育館兼、特別デュエル場。
二階層ある広い敷地をふんだんに使い、二階層合わせて一度に六十セットのデュエルが行える。

今日はブルー・イエロー・レッドの合同。
そんな中、真希がブルー生徒同士でデュエルをする。

「ーーあたしのターン、ドロー！」

真希がカードをドローする。
状況は真希の残りライフは１３００。フィールドにカードは１枚もない。
一方、相手の場には攻撃力２８００の「可変機獣 ガンナードラゴン」、攻撃力３０００の「神獣王 バルバロス」が並び、
魔法・罠ゾーンにはモンスター効果を封じる「スキルドレイン」、そしてリバースカードが２枚。
ライフも３０００、と真希がかなり不利な戦いを強いられている。

しかしながら、彼女の手札には実は隠し玉が既に来ていた。
しかし「スキルドレイン」と２枚のリバースカードがその使用を躊躇わせていたのである。
その中で引いた今のカードはーー。

「ーー来た、これを待ってたのよ！
あたしは手札から魔法カード発動！
『ハーピィの羽根箒』！」

真希は不利な状況を耐えていた。
その我慢が報われたのである。
「ハーピィの羽根箒」は相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊するカードである。
カードから吹き荒れた一陣の風が、一瞬にして相手の魔法・罠カードをなぎ払った。

「く・・・、だが俺の場にはガンナードラゴンとバルバロスが残っている！」

魔法・罠カードを破壊されながらも、相手の生徒もまだ戦意を下げるようなことはしない。
だが伏せられていたカードが無くなったことで、真希はようやく切り札を気兼ねすることなく使用できる。

「あはは、遠慮なく行くわよ！
あたしは手札からモンスターを特殊召喚！
『裁きの龍（ジャッジメント・ドラグーン）』！」

「ぎゃああああ！
既に持ってたのかよー！」

真希の空になっていた場に突如現れた龍。
天からフィールドに注ぐ光に照らされた、一対の大翼を背中に生やした巨大な四足の龍。
鋭い大鷲のような爪、白い羽根に覆われた身体を見ると、巨大な鳥のようにも見える。
だが前面に長い口顎から生やした白髭、角のようにそびえるたてがみ、そして後ろ足から伸びる尾はまさに伝説の龍の姿そのもの。
また赤い瞳が遥か上から下界を見下ろすかのような振る舞いは、王者の風格にまみれている。

これには相手の生徒も悲鳴を上げた。
何しろこのカードはデュエル・モンスターズに於ける有名なエンド・カードである。

「裁きの龍の効果を発動！
ライフを１０００払って、フィールド上のこのカード以外のカードを全て破壊する！」

真希のライフが１３００が３００へと下がるや、裁きの龍が天に向かって高くいななくと、天から降り注いだ光がフィールドを埋め尽くすように降り注ぎ、
相手のモンスター２体を一瞬にして消し去った。
この自分以外の全てを焼き払うこの効果こそが、このカードが恐れられるもっと足る理由。
もはや彼の進攻を妨げるものは何もない。

「バトルフェイズ！
裁きの龍でダイレクトアタックよ！」

「ひぇえええーっ！」

裁きの龍の口から放たれた白き息。
それは下界の者にはあらゆるも焼き尽くす白き光線。
裁きの龍の攻撃力は３０００。
相手のライフは一瞬にして、０となった。

「やったー！
かなり事故ってたけど、結果オーライ、かな」

真希がふぅ、と息をつく。
早くに切り札を引きながらもそれ以外の手札の状態が悪く、一時は押しきられそうな雰囲気だったが、
最後は強力なカードを一気に連発して勝利をもぎ取った。
切り札モンスターを出せる状態でありながら出さずに辛抱した我慢強さと、最後に待っていたカードを引き当てたドロー運。
この二つが勝因だろう。

ーー時同じくして、千鶴もデュエル
に励んでいた。
こちらも既に終盤。
残り少なくなったライフをどちらが先に削り取るかという勝負。
だが千鶴の相手は１ランク上のラー・イエロー。
それを考えれば善戦していると言える。

「わ、私のた、ターン、ど、ドロー・・・」

ターンが進み、ライフが少なくなる ごとに緊張感が増す。
気の弱い千鶴の発声は一際弱くなっていた。
千鶴のライフは残り僅か３００。
そんな中、引いてきたカードは彼女の切り札カードであるが、使うためにはライフが足りない。

「て、手札からそ、速攻魔法カード、発動しますっ。
『非常食』！」

そこで千鶴はその足りないライフを補う作戦に出た。
それが「非常食」。
これは自分の魔法・罠カードゾーンにあるカードを犠牲に、一枚につきライフを１０００回復するカードだ。
千鶴はそれにより１枚のカードを墓地に送り、ライフを回復。
１３００となった。

「ま、魔法カードの発動により、フィールド魔法『魔法都市 エンディミオン』に魔力カウンターを乗せます。
これでま、魔力カウンターは合計六つです」

千鶴が既に発動していたフィールド魔法『魔法都市 エンディミオン』。
その効果により、六つめのカウンターが乗せられる。
彼女らが懸命に貯めたカウンター。
これも彼女の狙うコンボの伏線だ。

「よ、よおし・・・わ、私は更にライフコスト１０００と、魔力カウンターを六つ取り除いて、て、手札から魔法カード、『大魔道への道』をは、発動します！」

魔法カード『大魔道への道』はコストにライフが１０００必要。
そのための非常食というわけである。
そしてもう１つ、六つの魔力カウンター。
これはフィールド魔法『魔法都市 エンディミオン』に乗せられていたカウンターを利用する。

「り、『小さな魔法使い（リトル・マジシャン） チコル』をリリースして、
デッキから『伝説の魔道士 チコル 』を特殊召喚！」

千鶴の場にいたあか抜けない子供の魔法使いが、「大魔道への道」によって進化する。
「伝説の魔道士 チコル」。
さっきの子供の魔法使いが大人になった姿のようだ。
魔力を帯びた文字が刻まれたローブに、短いスカートを履いたその魔法使いが握るのは大樹の根のような柄を持つ杖。
その杖の先は太陽を象ったような、珍しい形状をしている。

「『伝説の魔道士 チコル』の効果をは、発動します！
『大魔道への道』によって取り除いた魔力カウンターの数だけ、相手の場のカードを、は、破壊します！」

「ーーな、何だと！」

伝説の魔道士が杖の先を相手のフィールドに向けると、そこから赤い光弾が一つ放たれる。
するとそれは相手のフィールドの上空で留まったかと思えば、それが突然爆発して弾け、相手のカードを全て破壊し尽くした。

「で、伝説の魔道士 チコルの攻撃力は、だ、大魔道への道で取り除いた魔力カウンター１個につき５００ポイントアップ！
だ、だから、えーと、さ、３０００です！」

伝説の魔道士 チコルの攻撃力は元々は０。
だがその効果によって攻撃力は一気に３０００へ跳ね上がった。

「ば、バトル、ふぇ、フェイズです！
ち、チコルで・・・だ、だいれくと、あたーっく！」

勢いよく叫ぶことが苦手か、吃りながらの冴えない攻撃宣言。
しかしチコルはしっかりとそれに反応し、場が空で残り僅かしかなかった相手のライフをしっかり削りきった。

「か、勝った・・・わ、私、勝ったの・・・？」

少し前までは同じクラスのレッドに一勝すら出来なかった千鶴。
しかし今日、まさかのラー・イエロー相手の番狂わせ。
千鶴は最初放心していて、夢でも見ているのか、と頬をつねるが痛みはある。

その痛みにより徐々に疑心を晴らした千鶴は、つねった頬を赤くしながら、笑顔を満面に溢れさせるのだった。