運命のデュエル！Ｄ・Ｋの正体！⑨　作：はにわ

　
ドローフェイズにカードをドローして手札が４枚となった透矢。
前のデュエル・キラーのターンを辛くも凌ぎ、
また決められると思っていたデュエル・キラーに肩透かしを喰らわせたことで、流れが変わった可能性もある。
その流れの変遷をうまく自分のものに出来るかーーそういう意味では重要なターンである。

（デッキは・・・応えてくれてる。
さっきは失敗したけどーー）

引いてきたカードを見て、透矢は思う。
デッキは思い通りのカードを、『ドローさせてくれている』。
自分の信じるカードが詰め込まれたデッキが鼓舞してくれているのだ。

このデュエルに勝て、とーー。

（ーー行け、透矢。
デッキが導くままに、真っ直ぐにな）

「ああ！」

最後にラグナシアの言葉。
その声援を受け取り、透矢は手札のカードを握った。

「手札から魔法カード発動！
『トライ・チェンジ』！」

まず発動された魔法カード、『トライ・チェンジ』。
すると突然フィールドにいた『轟炎の剣』がデッキへと戻る。

「トライ・チェンジは、自分フィールド上に存在する三騎士モンスターをデッキに戻し、その後、レベル４以下の違う名前の三騎士モンスターをデッキから特殊召喚する！」

「なるほど・・・文字どおりチェンジ、というわけか」

「俺はデッキから『三騎士 蒼き槍迅』を特殊召喚！」

新たに特殊召喚されたのはミサギ同様に、槍を己の武器とする青い髪の女戦士。
レベル４の三騎士の中では最高の攻撃力、１９００を誇る。

「そして、俺は更に魔法カードを発動！
『女帝の鎮魂歌（レクイエム）』！」

「また『女帝』カードか！」

３枚目となる『女帝』カード。
発動条件は厳しいが、効果はいずれも強力。
デュエル・キラーは嫌でも警戒せざるをえない。

「手札またはフィールドに『女帝の聖杖』が存在する時に発動出来る！
墓地に存在するＴ・Ｆモンスターの種類まで、自分フィールド上に存在する三騎士モンスターの同名カードをデッキ・手札・墓地から特殊召喚できる！」

「な・・・ということは」

「俺の墓地にはＴ・Ｆモンスターが『アリアス』と『ヴァルバレア』の二種類！
つまり俺はフィールドの蒼き槍迅の同名モンスターを２体まで特殊召喚できる！」

「お前、まさかーーこの上、またＴ・Ｆ召喚をーー？」

透矢は頷きながら笑う。
『女帝の鎮魂歌』の効果が発動し、デッキから新たに２体の蒼き槍迅が特殊召喚された。
これにより、同じ名前の三騎士が再びフィールドに揃い踏みしたのである。

と、なればやることはひとつだ。

「ーー『トライ・フォーメーション』！
『フォーメーション・フィーア』！」

デュエル・キラーに介入する術はなく、なし崩し的に透矢の行動は進んでいく。
青き光の柱と化した三体の魂が１つの柱に融合し、その中から３体目となるＴ・Ｆモンスターが姿を現したのだ。

「『Ｔ・Ｆ召喚』！
『蒼迅麗華 リューゼリッド』！」

流れ、不規則に姿を変える水を身にまといし女戦士・リューゼリッド。
手に持つ槍を振りかざすと、ミサギにも勝るとも劣らぬ風圧と共に、大小の水滴が舞った。

「ま、毎ターン、Ｔ・Ｆ召喚してくるなんて・・・なんて奴だ」

さすがのデュエル・キラーも、ひどく驚いた様子で、動揺が声にも顕れていた。
本来なら１デュエルに１回出来ればいい、という程に難易度が高いＴ・Ｆ召喚。
しかし透矢は今日、既に３回目のＴ・Ｆ召喚となっている。

（こ、これが・・・透矢のデッキの真の力だというのーー？）

もしこの戦術が透矢のデッキの常套手段となれば脅威。
何しろＴ・Ｆモンスターは１度出てしまえば、その場持ちの良さから撃破するのは困難なのだから。

「ーーリューゼリッドの効果！
相手フィールド上に存在する攻撃力が一番高いモンスターの、半分の数値分、攻撃力をアップ！」

「つまり、ミサギの攻撃力２５００の半分か？」

「ああ、１２５０ポイントアップだ！」

リューゼリッドの永続効果。
その能力により、攻撃力は１９００から３１５０にアップ。
ミサギをあっさり超えたのだった。

（す、すごい・・・また何もないところから攻撃力３０００オーバーのモンスターが出てくるなんてーー）

千鶴は声を失っていた。

未だ限界の見えない透矢のデッキ。
その行き着く先が、千鶴には想像も出来なかった。

（リューゼリッドは、確か相手モンスターを守備表示にして、自らは貫通効果を得る効果だった）

だがデュエル・キラーは冷静にリューゼリッドの能力を思い出す。
凌斗との二戦目において、フィニッシャーになったカードでもある。

（でも、場の２枚のリバース・カードの内、１枚はカウンター罠、『破邪の旋風』・・・。
フィールド上で発動した相手モンスターの効果を無効にして、その攻撃力分のダメージを与えるカードーー）

デュエル・キラーも決して対策を怠ってはいない。
透矢がリューゼリッドの効果の発動を宣言した瞬間、このカウンター罠カードが炸裂し、透矢は今度こそ敗北する。

（少しでもダメージを与えようとするならーー使うはず。
例え使わずにそのまま攻撃してきたとしても、もう１枚のリバース・カードでーー）

デュエル・キラーのリバース・カード２枚。
これで透矢の行動はがんじ絡めになっているはずだった。

だが透矢は更にデュエル・キラーの想像を上回る一手を見せるーー。