運命のデュエル！Ｄ・Ｋの正体！⑭　作：はにわ

　
「ーーそれで、刹那が会長になって、炎魅子先輩、地影、水花をメンバーに今の生徒会が出来上がってさ、あたしにも声が掛かったの」

「・・・会長さんにデュエル・キラーになってくれ、って言われたのか？」

「ううん、それはもっと後の話。
最初は普通の風紀委員として学園の風紀を見守る仕事だった。
今の正体を隠して監視とかそういうのも無しに、何て言うか・・・普通のさ？」

ーー真希のターン。
ドローカードを横目にしながら更に語る。
風紀委員に誘われたという真希だが、１度はそれを断ったのだという。
その理由はーー。

「千鶴ちゃんとの時間も大事にしたかったから。
ほら、やっぱり千鶴ちゃんはあたしの妹みたいなものだから、さ」

少し照れたように笑う真希だが、千鶴も、そして透矢さえもその何気ない一言が胸に沁みる。
透矢にとってもそうであるように、真希にとっても千鶴はやはり大事な存在なのだ。

「デュエルを進めるよ。
リバース・カードを発動！
ーー罠カード、『ドゥームズ・デイ』！」

ーー不意にデュエルへと引き戻される透矢。
どうしても反応が一瞬遅れてしまう。

「自分フィールド上のこのカード以外の、１枚以上存在する魔法・罠カードを全て破壊して発動！
デッキから魔法カードを１枚選択して手札に加えるの」

発動したそのカードは、前のターンに『スケープ・ゴート』と共に伏せられたカード。
本来、リューゼリッドを迎撃するはずだったリバースカード、『破邪の旋風』を破壊して、カード効果を発動。
真希は再びデッキの中からカードを選ぶ。

「ーー転機になったのはね・・・一年の三学期の末。
透矢、あんたがこっちに戻ってくるかも、っていう手紙をくれた時よ」

「俺の手紙が・・・？」

「それで前からさ、千鶴ちゃんがあたしと同じアカデミアに入りたい、って言ってくれてね。
一緒に勉強もしてたの！
ーーと、あったあった。
このカードを手札に加えるよ？」

話がようやく核心の部分に入った頃、真希は加えるべきカードを探し当てて、手札へと加えた。

「あたし・・・嬉しかったんだよ！
また３人一緒に、同じ学校で勉強出来るかも、って知った時はーー」

満面の笑顔の中で一瞬、瞼から零れかけたものを慌てて拭う真希。

「でも・・・ダメだったの。
千鶴ちゃんは・・・」

そこまで言いかけて言葉に詰まり、頭を落とした真希。
ーー夜空の下、吹き始めた冷たい風。
薄着の真希の身体が小さく震える。
その頬に光るものを伝らせながらーー。

「ーーやっぱり・・・っ、やっぱり、私、試験に落ちてーー」

千鶴が抱えていた『まさか』の思い。
それが肯定されて、千鶴も涙を溢れださせた。

「おかしい、って、思って、たの！
デュエル、試験・・・あんなに、ぼろぼろだっ、たのに・・・。
何で、何で受かったんだろ、ってーー」

「ち、千鶴・・・」

千鶴が泣きじゃくりながら語る。
透矢もどう言葉をかけてやればいいのか分からない。

ーー今、透矢たちが通うアカデミアもそうだが、入学するには筆記試験と、教諭とのデュエル試験をパスする必要がある。
だが話から察すれば、千鶴は試験の合格ラインを通過出来なかったのだろう。

「でもあたしは知ってる！
千鶴ちゃんは弱くなんかないっ！
筆記試験は完璧だったし、
デュエル試験だって・・・千鶴ちゃんがいつも通り力を発揮できてればーー」

真希がまるで何かに訴えかけるように叫ぶ。
その叫びを全身で受けて透矢はその時のことを情景に思い描いた。

千鶴の実力は透矢自身も知っている。
慣れた関係の自分たちとデュエルする時には、申し分ない本来の力を出せているのだ。

しかし、彼女の気弱で人見知りする性格が災いしたのだろう。
恐らく入学試験のデュエル、目上のそれも教諭を相手に、一発勝負ということで、千鶴の緊張は最高潮に達しただろう。
ーー結果、彼女は己の実力を見せる事が出来ず、満足な配点を得られなかったのだ。

だがそういった雰囲気の中で普段の実力を出せるかも大事な要素だから、結果落とされたのも仕方ない部分でもある。

「でも、でも、あたしは諦めきれなかった！
どうしても千鶴ちゃんをアカデミアに入学させてあげたかった！
だから、だからあたしはーー」

そこから先はまさに『闇』とも言える部分である。
千鶴の不合格をいち早く知った真希は、一抹の希望を込めて刹那に頼み込んだ。
生徒会長の権力・口利きで以って『何とかしてほしい』とーー。

刹那は親しんだ真希のたっての願いを聞き入れた。
だがその代わりとしてーー。

「風紀委員になった・・・ってのか！？」

「勘違いしないで、透矢！
これはあたしが言い出した事なの！
刹那は何にも悪くないの！」

「真希ーー」

「刹那には・・・刹那には本当に感謝してる！
あたしの無理なお願いを聞いてくれてーー。
だからあたしも刹那の力になりたいと思ったのよ！」

真希が今まで己の胸の内のみに抱えていた事を告白し続ける。
真希の気持ちは切実であるが、現実的にその行いは裏取引そのもの。
だが透矢は真希を責める事は出来ない。
何故ならば透矢自身、３人で同じアカデミアに通える今の生活が大切だからだ。
そして裏取引であれ何であれ、そうなるように力を尽くしてくれたのは真希なのである。

「それでお前がデュエル・キラーにーー」

「ううん、それは違う。
確かにちょうどその頃に、デュエル・キラーの案は生徒会に出てはいたけど、先輩や地影が反対しててさ。
あたしもそんなの必要ない、って思った。
ーー最初はね」

「最初は・・・？」

ーー再び中断したデュエル。
真希の真実の告白は続く。
真希が生徒会に入り、そしてデュエル・キラーとなった経緯。
それがこれから語られるのだーー。