天才少女・水花の極寒デュエル！⑬　作：はにわ

　
「水花のターン、ドロー、するよ」

観客を何度も騒がせ、静まらせるを繰り返してきたこのデュエル。
水花の異変により一時は続行不能かとも思われたが、透矢と刹那の介抱によってデュエルは再開された。

ーーが、水花のドローにやや力が足りない印象を受ける透矢。
表情を見ても、少し辛そうでもある。
元々、無理を押し通すような進行で続けられているデュエルだ。
水花の体力が最後まで持つのか。

「手札から速攻魔法、『サイクロン』発動！」

水花の手札は３枚。
新しく引いてきたカードをそのまま発動させる。
『サイクロン』。
フィールド上に存在する魔法・罠カードを１枚破壊するカードだ。

「標的は・・・俺の『三剣の誓い』か！」

影縫いの微刃に装備されている『三剣の誓い』。
攻撃力を大きく高めているカードであるため、これを破壊するつもりなのだ、と誰もが思う。

「ーー違うよ。
破壊するのは水花の『絶対零度の凍壁』だよ！」

「えっ？！」

水花の宣言に、透矢は耳を疑う。
何と、水花を戦闘から護ってくれていた『絶対零度の凍壁』を破壊するというのだ。
もちろん空耳ではなく、発動したサイクロンによって、絶対零度の凍壁は破壊されてしまった。
これで水花のフィールドにはカードは１枚も存在しない。

「絶対零度の凍壁の二つ目の効果、だよ！
このカードが破壊されたとき、自分はデッキから水属性モンスターを墓地に送るの」

絶対零度の凍壁の二つ目の効果。
そこに水花の狙いがあった。

水花は墓地へ送る水属性モンスターをデッキから選ぶ。
その最中、透矢は何となく分かった気がした。
すなわち墓地へ送られるモンスターが。

「墓地へ送るのは、『ゼロ・プリズナー』！だよ」

ーーやはり。
透矢の読みは的中していた。
だが墓地へ送ってどうするつもりなのか、そこまでは分からない。

その答えは水花の手札にあった。

「魔法カード、『デイ・オブ・ザ・フィアー』を発動！
墓地のレベルが１０以上のモンスター一体を選択！
同じ属性のモンスターを墓地から３体除外して、選択したモンスターの召喚条件を無視して特殊召喚するよ！」

「まさかっ？！」

透矢に戦慄が走る。

水花が１ターン前にドローした、『ゼロ・プリズナー』が倒された場合の保険。
それが今、陽の目を見たのだ。

墓地にはゼロ・プリズナーと、凍土の狼が３枚。
水花は３枚の凍土の狼を除外し、ゼロ・プリズナーを手に取る。

「蘇って・・・凍獄龍ゼロ・プリズナー！」

ーー再来する『恐怖』。

完全に封じ込められたはずの『四龍』モンスターが再びその姿を現す。
身体を氷柱で包んだ巨大な龍。
水花の龍、ゼロ・プリズナーが再びその姿を現したのだ。

「すげー、すげーぜっ！
水花！」

透矢は溢れ出す興奮を隠せず、大声を張り上げて水花を賞賛する。
観客席も大歓喜。
復活したばかりの水花がいきなりこんな事をやってのけたのだから、それに対する反響は凄まじい。

「『デイ・オブ・ザ・フィアー』によって特殊召喚されたモンスターの効果は無効になるの」

「てことは、凍り付けの力は使えないんだな？」

「うん・・・。
でも、手札から装備魔法『Ｄ・Ｄ・フォース』発動だよ！
ゼロ・プリズナーに装備！」

「装備強化か！」

ゼロ・プリズナーの能力は使えない。
それを補うために、最後の手札を使ってゼロ・プリズナーを強化する。

ーー『Ｄ・Ｄ・フォース』。

ゼロ・プリズナーの周りを白い光が覆う。

「Ｄ・Ｄ・フォースの効果で、ゼロ・プリズナーの攻撃力は、水花が除外しているモンスターの数１枚につき、４００ポイントアップするよ」

「１枚につき４００・・・てことは」

「除外しているモンスターは３枚。
合計１２００アップだよ！」

ゼロ・プリズナーのただでさえ凶悪な攻撃力が、更に限界を超えるべく強化される。
その数値、実に５２００ーー。
神を超えたその攻撃力。
それを受け止められるモンスターは皆無に近い。

「バトルフェイズ、行くよ！」

ゼロ・プリズナーの効果は無効になっている。
つまり罠カードが効かない効果も無効にされているが、透矢の場に伏せカードはない。
ならば迷わず攻撃に行く。

透矢の場にいる影縫いの微刃の攻撃力は３１００。
そして透矢のライフは１７００。
つまりゼロ・プリズナーの攻撃が通れば水花の勝ちだ。

「今度は・・・通すよ」

ゼロ・プリズナーの攻撃はこれで三回目。
前の二回はいずれも防がれている。
三回目の正直、ではないが、これを通して勝って見せる。
水花のデュエリストとしての意地である。
透矢は珍しく何も応えず、黙ってその攻撃を待つ。

あるいは覚悟を決めたか。

「ゼロ・プリズナーで、影縫いの微刃に攻撃だよ！
『サウザンド・ディザスター』！」

水花の攻撃宣言。
ゼロ・プリズナーの全身から氷柱が飛び出すように、影縫いの微刃へと降りかかる。

水花の怒濤の反撃で一気の決着か。
決着の時は近い。