熱血女！炎魅子の爆炎デッキ！⑧　作：はにわ

　
モンスターカードゾーンにセットされた『四龍』、『煉華龍 クリムレイズ・シード』。

途端に赤く熱を持った大地が震えだし、その地が裂け、そこから溶岩が噴出する。
そして炎魅子の正面の大地が丸く盛り上がると、閉じていた扉を吹き飛ばすように、地が張り裂けた。

張り裂けた穴から現れる無数の細い『触手』。
それに囲まれながら姿を現した黒々とした鋼鉄の塊のような本体。
脈動する膨れ上がった腹部。
そこから続くあばらが浮き出た胸からは、細長い腕が左右３対ずつ、そして太い首と繋がった顔の部分。
ワニのような顔の上には、後ろに向かって尖った笠のような装甲がついており、左右両側の隙間から赤い瞳を覗かせている。

なんとも形容しがたいおどろおどろしい姿。
口から流れ出る高熱を持った体液が大地を焼き、黒煙を上げている。

「ーーこれが先輩の・・・『龍』ですか！」

龍が現れたせいで、炎魅子の姿が透矢の方から見辛いが、炎魅子は頷いた。
ーー『煉華龍 クリムレイズ・シード』。
透矢にとって三枚目となる四龍。
度肝を抜くようなその姿に、観客も声を失う者も少なくない。

レベルは１０。攻撃力は圧倒的足る３５００を有する。

「さすが『四龍』・・・。
どいつもこいつも半端なモンスターじゃねぇぜ！」

地影の『エニグマン』、水花の『ゼロ・プリズナー』と見てきた透矢だが、やはりモンスターが発する雰囲気が他のカードとは明らかに違う。
その『能力』をすり抜け、いかに倒す方法を見出だすか、それを見る前から透矢の気持ちは昂る。

「クリムレイズ・シードの効果が発動するよ！」

「早速、ですね！」

「特殊召喚成功時に相手フィールド上のモンスターを全て破壊する！」

「全て・・・破壊っ！？」

クリムレイズ・シードの能力は既に発動していた。
先程クリムレイズの召喚のために特殊召喚された２体の白銀の盾と影縫いの微刃、その真下から触手が地を割って伸び、その３人の胸を突き刺しながらを空中へとかち上げたのだ。

「ああっ？！」

透矢が声を上げる。
成す術、いや反応すら出来なかった３人の戦士はあっけなく破壊され、代わりにその触手の先端部分から『炎の華』が咲き乱れた。

「な、何だ、これは！」

「クリムレイズ・シードの効果さ。
相手モンスターを破壊し、破壊した数だけ『煉華（れんか）』の花を咲かせる」

茎となる、透矢の背丈の倍近い触手。
その先端から咲いた花びらを象った炎。
これはどうやらトークン扱いであるらしく、レベル１、守備力５００のステータス、それが３体分表示される。

「その『煉華トークン』をコントロールするプレイヤーは、互いのスタンバイフェイズ毎に５００のダメージを受ける」

「えっ！？
それが３体ってことはーー」

「１５００のダメージ、ってことになるね」

『クリムレイズ・シード』が咲かせた炎の花。
それが毎ターン、透矢にダメージを与えるという。
３体で１５００。
仮にこのまま透矢のターン、炎魅子のターンと往復するだけで３０００ものダメージとなる。

「な、えぐい効果だろ？
自分で復活させといて、すぐにそのモンスターをダメージを生む炎の花に変えちまうんだからね」

炎魅子が肩を竦める。
クリムレイズ・シードの凶悪な能力、それは持ち主の炎魅子ですらえげつなさを感じさせているようだ。

「でも・・・やっぱり、そいつは無事か」

ふと炎魅子が向けた視線の先には、唯一破壊を免れたアリアス。

「アリアスは、１ターンに３回まで戦闘と効果で破壊されない！」

「大したもんだ。
Ｔ・Ｆモンスターの共有耐性に加えて自前で破壊耐性とはね。
頼もしい盾だよ」

炎魅子がアリアスを賞賛し、透矢は素直に嬉しそうに笑う。

（３回まで、か。
ってことは龍と巫女の２体で攻撃しても、なお倒せないってわけか）

炎魅子が次の行動を考える。

（アリアスは早めに消したいところだけど・・・今のところ、それは厳しい、か）

ふと手札を見るが、アリアスを倒せそうなカードはない。

（なら、当初の予定通りに行くだけ、か！）

思考を始めてから決断まで数秒。
炎魅子が動く。

「クリムレイズ・シードの２つ目の効果を発動！」

「な、なんですか！？」

炎魅子が宣言すると、せっかく咲かせた炎の花が一輪、突然地に潜りこんでしまった。

「煉華トークンをリリースすることで、このターン、クリムレイズ・シードは相手に直接攻撃できる！」

「だ、ダイレクトアタック？！」

透矢がたじろぐ。

どこまでも己一体で全てを完結させるクリムレイズ・シードの能力。
モンスターを特殊召喚させて、それを炎の花に変え、
更にそれすら自らの能力の発動トリガーにしてしまう。

（遊戦名に伏せカードはない。
この攻撃が通れば終わり・・・だね）

攻撃力３５００の直接攻撃が決まれば、程なく透矢のライフは尽きる。
クリムレイト、煉華トークンなどが自動的に僅かなライフを焼き尽くすだろう。

「行くよ、遊戦名！
バトルフェイズだ！」

「ぐっ！」

（遊戦名・・・あんたの真価、あたしが見極めてやるよ）

炎魅子のバトルフェイズーー。
透矢は如何にしてこれを乗り越えるのか。
第一の正念場を迎えた。