熱血女！炎魅子の爆炎デッキ！⑦　作：はにわ

「先輩の『四龍』がーー手札に・・・？」

「『煉華龍（れんかりゅう） クリムレイズ・シード』。
有り難く加えさせてもらうよ」

炎魅子の罠カード『逆巻く煉獄』によって、炎魅子の手札に加えられたカード。
それは恐らく彼女が持つ最強のカード、『四龍』モンスター。

「あたしも常に先の攻め手を考えて動いてる。
遊戦名、あたしとあんたは似た者同士ってことさ」

「『バーニング・ワイバーン』は囮だったーー？」

「バーニング・ワイバーンはバーニング・カウンターの数だけ攻撃力を上げるからね。
出しとけば早めに処理に来ると、ふんでたよ」

ーー確かに。
透矢はバーニング・ワイバーンと『煉獄の地 クリムレイト』の存在から、どちらかを早めに処理しなくては、と考えていた。

しかしそれは炎魅子の思惑通りだったのだ。

「あと破壊されたバーニング・ワイバーンの効果が発動してるよ」

「え・・・あっ！？」

ふとアリアスを見ると、その傍にはバーニング・カウンターを示す火の玉が。
いつのまにーー？

「バーニング・ワイバーンがフィールドから墓地へ送られた時、乗っていたバーニング・カウンターを他のモンスターに移せるのさ」

「なるほど、バーニング・ワイバーンに乗っていたカウンターがアリアスに・・・」

「そういうこと」

様子見という感じの炎魅子の動きは一連の計算された流れ。
いや、炎魅子からすれば、こんなものはまさに『様子見』程度のものでしかないのかもしれない。

「ターン・エンド。
アリアスの攻撃力が元に戻ります」

透矢はそのままターンを終了。
『トライ・フォース・サポート』の効果が切れて、アリアスの攻撃力が１４００に戻る。

「んじゃ、あたしのターン、と」

炎魅子の２ターン目。
カードをドローして手札は５枚。

「スタンバイフェイズ！
『クリムレイト』の効果でフィールド上のモンスター全てに、バーニング・カウンターを１つ置く！」

「今、フィールドにいるモンスターはアリアスだけっすね」

互いのスタンバイフェイズに発動するクリムレイトの１つ目の効果。
それによりアリアスに２つ目のバーニング・カウンターが置かれ、彼女の周りにも２つ目の火の玉が姿を現した。

「で、あたしのメインフェイズだよ！
あたしは『煉獄の巫女（バーニング・プリーステス）』を召喚！」

メインフェイズ、炎魅子は手札からモンスターを召喚する。
てっきり『四龍』モンスターが来るものと思い、透矢の心臓が高鳴るが、別のモンスターで思わず安堵する。

現れたのは黒いワンピースに、赤いダウンコートのような服を着た、灰色の短髪の少女。
手には先に赤い宝石をはめ込んだ、身の丈と同じ長さの杖を持っている。

レベルは４、攻撃力は１５００だ。

「煉獄の巫女の効果を発動！
１ターンに１度、フィールド上に存在するバーニング・カウンターを、全てこのモンスターに移す！」

「なっ？！」

「そして、移したカウンター１個につき、相手に１００ポイントのダメージを与えるよ」

煉獄の巫女が天に向けて杖をかざすと、アリアスの周りにあった火の玉がひとりでに動き、杖の赤い宝玉の元に集まる。

それを見た巫女は、そのまま前に降り下ろすように杖の先を透矢へと向けると、杖の先から赤い光線が放たれ、透矢の胸を貫いた。

「ーーぐっ？！」

煉獄の巫女による効果ダメージ。
透矢のライフは３８００となる。
たかが２００だが、もしフィールドにバーニング・カウンターが増えれば、クリムレイトと並んで大ダメージになる。

「く・・・型にはめられる前に何とかしないとーー」

「言っとくけど、バーニング・カウンターが乗った煉獄の巫女は戦闘じゃ破壊されないよ？」

「げっ、マジっすか！？」

「あははっ、なかなかやるだろ？」

炎魅子が得意気に笑う。

透矢は今更ながらに気付く。
バーニング・カウンターはダメージ・ソースのみならず、その要素を有利に活かすのが炎魅子のデッキだと。
このままではターンを重ねる毎に、透矢は苦しくなっていくだろう。

「さーて・・・んじゃ、そろそろ見せてやるとするかねぇ？
あたしの『龍』を、さ」

「ーー！
出て、来るんですか？！」

「当たり前さ。
何のために前のターンに加えたと思ってるんだい」

炎魅子は手札の『龍』を透矢に見せるように公開した。
おどろおどろしい絵柄が垣間その姿を見せる。

「クリムレイズ・シードの効果を発動！
遊戦名、あんたは墓地から３体のモンスターを特殊召喚しな」

「えっ？！
お、俺が、ですか？
しかも３体も？！」

「それがクリムレイズ・シードの特殊召喚方法なのさ。
あんたは墓地から３体のモンスターを特殊召喚し、あたしはこのカードを特殊召喚する」

何とも不可思議な召喚方法。
確かにこのゲームには融合や儀式、透矢のＴ・Ｆ召喚などを始め、
様々な特殊な召喚方法があるが、この方法は特に珍しい。

何しろ相手に３体ものモンスターを復活させるのだ。
蘇生カードを３枚、無条件で使わせるようなものであり、
それを条件に召喚される『龍』とは果たして如何な存在なのか。

「ーーあっ！」

３体のモンスターを復活、と聞いて透矢は気付いた。
今、自分の墓地にいるのは『白銀の盾』が２体、『影縫いの微刃』が１体の合計３体のみ。
この３体全てを復活させると、墓地から『白銀の盾』は消え、アリアスが維持出来なくなる。

「ーーすいません！
その効果にチェーンします！
『トライ・フォース・サポート』！」

「おう」

「自分フィールド上に存在するＴ・Ｆモンスターを選択！
そのモンスターの素材となるモンスターを１枚、デッキから墓地へ送ります！」

反射的に動いた透矢。
トライ・フォース・サポートの２つ目の効果を使用し、さっきデッキに帰った白銀の盾を再び墓地へ送った。

「そして、俺は白銀の盾を２体、影縫いの微刃を特殊召喚します！」

「ふふん、アリアスを維持したか。
ま、そうするところだろうねぇ」

トライ・フォース・サポートのお陰で、白銀の盾を１体は墓地に残せた。
故にアリアスの存在は維持される。

透矢の墓地から白銀の盾が２体、影縫いの微刃がそれぞれ姿を現した。

「よぉし、んじゃあたしも出すよ？」

「はいっ！
はやく、先輩！」

「あっはは、遊戦名は相変わらずだねぇ」

目を輝かせる透矢。
恐ろしい能力を持つのは察しているだろうに、早くその姿を見たいと炎魅子を急かす。

「ただねぇ・・・こんな凶悪なカード使って勝っても嬉しくなんてないけどね」

「先輩・・・」

「ま、でも手は抜かないよ。
遊戦名！
あたしの本気を凌いでみせな！」

「望むところですよ！」

テンションを高める二人。
この両雄はやはり似たところがあるようだ。
ただ観客もそれにつられるように、歓声を高めている。
その度にデュエルする二人の邪魔にならないように、と先生たちが諫めてはいるが。

「んじゃ改めて！
出でよ、『煉華龍 クリムレイズ・シード』！」

そして『四龍』３体目の封印が解かれる。
その驚天動地の能力が、透矢を追い詰めるーー。