熱血女！炎魅子の爆炎デッキ！③　作：はにわ

　
「んじゃ、あたしのターンと行くか！
ドローっ！」

炎魅子の後攻１ターン目。
カードをドローし、手札は６枚。
敵を焼き付くす、炎のデッキが透矢に牙を剥こうとしていた。

「あたしは手札からモンスター、召喚！
『バーニング・ワイバーン』！」

攻撃表示で置かれたモンスターカード・『バーニング・ワイバーン』。
炎魅子の場に黒々とした鱗を身に纏った、首の長い有翼竜が姿を現す。

レベルは４、攻撃力は１７００である。

「更に手札からフィールド魔法・『煉獄（れんごく）の地 クリムレイト』を発動！」

次に発動されたのはフィールド魔法。
デュエル・ディスクのカード・ゾーンの先の部分が変形して、新たなカード・ゾーンを作る。
そこにそのカードを置くと、収納するかのように変形した部分が元に戻り、同時に透矢たちのいるフィールドに変化がもたらされる。

「こ、これは・・・！？」

フィールド魔法は、透矢・炎魅子の両方に影響をもたらすカード。
周りの風景がみるみる変貌を遂げていき、やがて世界は赤々とした炎に包まれた。

透矢と炎魅子、二人の間を分かつように流れる赤黒い溶岩。
二人が立つ大地も赤々と染まり、空は暗く光を閉ざしている。
熱によるものか、空気はゆらゆらと揺らめいているように見え、小さな火花が宙を舞っている。

「これがあたしのフィールド！
『クリムレイト』さ！」

ーー『煉獄の地 クリムレイト』。
先に語った通り、フィールド魔法の大半は双方のプレイヤーに影響を与えるカード。
果たしてこのフィールドは二人にどのような力をもたらすのか。

「更にあたしはカードを１枚セットして、ターンを終了するよ」

カードを１枚セットしてターンエンド。
バトルフェイズを行わないのは、『白銀の盾』に戦闘耐性が付いていてかつ、守備表示のため、
攻撃する意味がないと判断したようだ。
炎魅子も無難なターン運び。

「あのフィールド魔法は一体、どんな効果なんだ・・・？」

透矢が思わず呟く。

発動されたフィールド魔法・クリムレイト。

メジャーなフィールド魔法の効果と言えば、特定の属性や種族のモンスターの攻撃力を上げる、などが挙げられるが、
炎魅子のモンスターがパワーアップした様子はない。
一体、どんな効果が秘められているというのか。

「ーーなんだい、地影からあたしのデッキのリストを渡されたんじゃないのかい？」

「あ、ざっとは見たんですけど、カードの１枚１枚を把握したわけじゃないっす」

「おいおい、それじゃ地影の苦労が報われないじゃないか」

呆れる炎魅子。
地影とのデュエルの時も、こんな話があった。

「はは、やっぱり先に知っちゃうとつまらないかな、って」

「ふふん、遊戦名らしいね。
ーーいいよ、その都度説明してやっから、デュエルを続けな」

「お願いします、先輩！
じゃ、俺のターン、ドローします！」

透矢の２ターン目、ドロー・カード
。
必然的にそのカードは、前のターンに『白銀の盾』の効果でデッキ・トップに置かれた『影縫いの微刃』。
そのカードを手札に加えて、これからメインフェイズへ移行しようとした、その時。

「このスタンバイ・フェイズ！
『クリムレイト』の効果が発動するよ！」

「えっ！？」

「クリムレイトは、互いのスタンバイフェイズ毎に、フィールド上に表側で存在してるモンスター全てに、『バーニング・カウンター』を１つ置くんだよ」

「『バーニング・カウンター』？」

互いのスタンバイフェイズで効果が発動するというクリムレイト。
その効果により、白銀の盾、バーニング・ワイバーンの両モンスターの側に、火の玉のようなものが１つずつ浮かび上がる。

「バーニング・ワイバーンは、フィールド上のバーニング・カウンター１つにつき、攻撃力が１００ポイントアップするよ！」

「そういう・・・ことか！」

クリムレイトの効果に連動して、バーニング・ワイバーンの効果も明らかとなった。
フィールド上に存在するバーニング・カウンターの数は２個。
よって２００ポイントアップとなり、バーニング・ワイバーンの攻撃力は１９００となった。

「更にクリムレイトはね、あたしのエンドフェイズ毎に、フィールドに存在するバーニング・カウンター１個につき、１００ポイントダメージをお互いのライフに与えるのさ！」

「１個につき１００ダメージ・・・ってことは、ターンを重ねればどんどんダメージが増えていく・・・？」

「あとモンスターが増えれば、その分、カウンターの増加量も上がる。
ま、精々気を付けるんだね」

カウンターが乗るのは互いのスタンバイフェイズ。
つまり現状ですら毎ターン２個ずつカウンターは増えていき、それに合わせて炎魅子のエンドフェイズに発動するダメージも増加。
放っておけば雪だるま式にカウンターは増え、最終的にはとんでもないダメージ量にもなりうる。

「でもそれは先輩だって同じはず！
上手いこと立ち回らないと、な」

エンドフェイズに受けるダメージは双方。
つまり痛いのは炎魅子も同じはずなのだ。

とはいえ、バーニング・カウンターが増えていっては取り返しのつかない事態になりえる。

透矢はそこに意識しつつ、ターンを進めよう、と考えるのだった。