始まる生徒会大戦③　作：はにわ

　
「ーー何でよ！透矢！
なんであんな奴のためにあんたがそんなことすんのよ！」

「真希、さっきからどうしたんだよ？
何を怒ってんだよ」

「さっき地影だって言ってたでしょ！？
流石は素行が悪いことで有名だって。
千鶴ちゃんだっていじめられたのよ！」

「知ってるよ、転入初日に、俺も見てるからな」

「だったらどうして！！」

凄まじい剣幕の真希。
透矢はそんな真希の態度の理由は分からないが、 自分まで頭に血が昇らないよう懸命に制御する。

「だってよ・・・流石だって、俺たちと同じでデュエルが好きだから・・・強くなりたいからアカデミアに通ってんだろ？
それが退学、なんて可哀想じゃねぇか」

「でもさ、自業自得じゃない！
今回だってあいつが首を賭けて、刹那に根回しさせたってーー」

「真希、分かんないのかよ？
あいつは首を賭けるくらい、デュエリストとしてのプライドを大事にしたかった、ってことじゃねぇか！」

「プライドって・・・んなの知らないわよ！」

「このままあいつが退学なんてなったら・・・それがきっかけで、もしデュエルモンスターズをやめるなんてなったらーー悲しいじゃねぇか」

「馬鹿・・・バカバカバカっ！！
どうして解ってくれないのよ！？」

「真希・・・！」

真希は取り乱すように走り去り、生徒会室を飛び出していった。
透矢は真希のあまりの剣幕に、放心していて、すぐに後を追うことは出来なかったのである。
だが、このままにはしておけない、と思い直し、とにかく今からでも追おうと決心する。

「か、会長さん、悪いけど、俺・・・」

「ええ、分かったわ。
生徒会大戦について詳しい事は地影にでも聞いてちょうだい。
私に直接聞いてもいいし」

「わ、分かったよ。
それじゃ」

透矢も足早に刹那との話を済ませて直ぐ様、真希の後を追う。
すると炎魅子が刹那の横に立った。

「・・・ちょいと、刹那。
さすがにやり方がえぐいんじゃないかい」

「あら、どうして」

「・・・真希がかわいそうじゃないか」

「そう思うなら・・・炎魅子。
あなたが透矢くんを負かせばいい話じゃないかしら」

「・・・もちろん、やるからには手は抜かないよ」

炎魅子が珍しく厳しい表情で刹那を見据えている。
そこにある『事情』を知るからこそ、今の刹那の行動に納得がいかないようだ。

「ーー１番手は私です、炎魅子さん」

「地影・・・」

「私が生徒会大戦の作法を説明しながら、最初に遊戦名くんとデュエルしましょう」

端末をいじっていた地影だが、それを制服のポケットにしまいこむと、刹那の目の前まで迫る。

「ですが・・・もし、遊戦名くんが私たち四天王とのデュエルで敗北したらどうするつもりですか？」

「そうさ。
真希の気持ちを考えると・・・あたしもマジで潰しにいくつもりだよ」

「構わないわ。
その時は流石くんの首と引き換えに、透矢くんに生徒会に入ってもらうだけよ」

『ーー！』

何気なく語られたその一言が、炎魅子と地影を戦慄させる。

「まぁ、私も久しぶりにデュエルしてみたいけど・・・仕方ないわね。
本番は『その後』だし、ね」

「刹那・・・あんた、あたしですらたまに怖いと思うときがあるよ」

「刹那さん・・・千歳さんを傷つけてまで、やることですか？」

「くすくす・・・、私はね、欲しいものは絶対に手にいれる人間なの」

悪びれずに笑う刹那に、炎魅子は諦めたように肩をすくめ、地影はずっと刹那を睨んでいた。