運命のデュエル！Ｄ・Ｋの正体！⑥　作：はにわ

　
ーー透矢の場に降臨したヴァルバレア。
一撃で相手のモンスターをなぎ倒し、プレイヤーにも甚大なダメージを与えることの出来る彼女の力。
彼女の攻撃でデュエルを決めるのが言わば勝ちパターンであり、また爽快感が強い。

「ーーヴァルバレアのモンスター効果！
ヴァルバレアの元々の攻撃力より高い相手モンスター１体につき、攻撃力が７００ポイントアップする！」

ヴァルバレアの永続効果。
デュエル・キラーの場には攻撃力２９００の『ミサギ』がいる。
それにより、まずヴァルバレアの攻撃力は１７００から２４００まで上昇する。

「そして『トライ・リバイブ』の効果発動！
この効果で特殊召喚されたモンスターが、Ｔ・Ｆモンスターの素材となった場合、デッキからカードを１枚ドローする！」

（ーーこの間とはまるで違うデッキの回りようね。
炎魅子先輩の時と比べても、格段にスムーズな立ち回りだし）

『トライ・リバイブ』でカードをドローした透矢を見据えながら、デュエル・キラーは心の中で素直に感心していた。
炎魅子と戦いからわずか二日。
透矢は確実に自らのデッキを高め、そして自在に操る力を得つつある。

「ーー行くぜ！ヴァルバレアの効果を発動！
墓地の『轟炎の剣』をデッキに戻すことで、エンドフェイズまで攻撃力を１０００ポイントアップ！
更に戦闘で相手モンスターを破壊した場合、その攻撃力分のダメージを与える！」

ヴァルバレアの力を最大限に発揮する透矢。
これにより、ヴァルバレアの攻撃力は３４００。
ミサギの攻撃力を上回り、更に攻撃が通れば絶大な追加ダメージを与えられる。

（さすがお兄ちゃんっ。
何もないところから、一気に攻撃力３４００のモンスターを出した。
ーーでも・・・）

千鶴も声には出さねど、透矢の戦術に賛美の意を送っていた。

だがふとデュエル・キラーの方を見た時、不安を拭い去る事は出来ない。
それは攻撃力３４００のモンスターを出されながら、動じていないデュエル・キラーの様子を見ての事ではない。

このままでは透矢はバトルフェイズを行う。
つまり透矢とデュエル・キラーは互いに傷つけ合うということなのだーー。

（よし、さて問題はこの後だな・・・）

千鶴の見えざる不安を知りもしない透矢は次の一手で迷っていた。

（『女帝』を出せば、攻撃が通ればこのターンで決められる。
でもーー）

『女帝』はレベル７。
通常生け贄が２体必要だが、『ある方法』を使えばそれを踏み倒すことが出来る。
だが当然と言うべきか、それにはリスクも伴うのだ。

（う～ん・・・）

攻撃が通れば決められる。

甘い誘惑である。

だがデュエル・キラーの変わらぬ佇まいを見たとき、どうしてもあのたった一枚のリバース・カードが厄介な存在に見えてならない。

ーー熟考。
と言っても１分を過ぎるか、そうでないかのわずかな時間。
透矢は勝ちを逸る気持ちを押さえつけた。

「ーーバトルフェイズだ！」

「ーーいよいよか！」

気迫高々に、そう宣言する透矢にデュエル・キラーも構える。

「ヴァルバレアでミサギを攻撃！
『プロミネンス・ジ・エンドォっ』！」

赤い鎧を纏った軍神が、湾曲した炎の大剣を振りかぶる。
そして唸る火山の如く、声を轟かせながらその剣は大地に降り下ろされた。

地を割り、吹き出す炎の剣閃。
空へと突き抜けるそれは、例え大空を舞う鳥であろうと逃しはしない。
もちろんミサギも例外にあらず。

ヴァルバレアの剣閃がミサギの眼前に迫った。

（あーーっ！）

千鶴はその様を見て、両手で顔を伏せた。
咄嗟の行動であるが、その真意は不明である。

「ーー甘いぞ、透矢！
ーー速攻魔法、発動！
『疾風・鋭爪撃』！」

「く、速攻魔法か！」

やはりデュエル・キラーは対策を用意していた。
『疾風・鋭爪撃』なるカード、１ターン前に、『ソニック・チャージャー』の効果で加えたカードである。

「自分の墓地から鳥獣族モンスター１体を選択してゲームから除外！
そのモンスターの攻撃力を、エンドフェイズまで自分フィールド上の鳥獣族モンスターに加える！」

「な・・・っ？！」

「俺は墓地から『隼の乙女（レディ・オブ・ファング）』を除外！
その攻撃力１４００をミサギにプラスする！」

疾風・鋭爪撃の効果により、ミサギの攻撃力は一気に上昇。
合計４３００に至り、逆にヴァルバレアを大きく上回った。

「ーー迎撃せよ、ミサギ！
『ブラッディー・ディスマーダー』！」

パワーを上げたミサギ。
迫り来る炎の剣閃を、得物である槍で力任せに切り払うと、その攻撃をあっさりと無力化させた。
同時に発生した風の渦が、残った炎を吹き散らし、
ヴァルバレアへの『道』を作る。
そうして上空から滑降したミサギが、ヴァルバレアの身体を槍で刺し貫いたのだーー。

「ーーヴァルバレアぁっ！」

悔恨、無念の気持ちを表情に見せながら、ヴァルバレアの魂は散った。
同時に透矢にも襲いかかる戦闘ダメージ。
その数値９００ポイント。

「ーーお兄ちゃん！」

「く・・・済まない、ヴァルバレアーー」

透矢のライフが２２００まで減り、千鶴が叫ぶ。
だが透矢は自分の痛みよりも、死なせてしまったヴァルバレアに対する深謝で胸を痛めていた。

「ふふ、気合いがいいのは結構だが、良すぎるのも毒だな」

「くぅ・・・っ！」

「確かにＴ・Ｆモンスターの強力な効果耐性は脅威だ。
だが最大の弱点は強すぎる力に対抗できない、ということだな」

デュエル・キラーの言葉に唇を噛む透矢。
まさにその通りであるが、あのヴァルバレアの攻撃を防げる者はそうはいないだろう。

この事態を予測して用意しておいた今の対抗策といい、デュエル・キラーはやはりただの『殺し屋』ではない。

「お、俺は手札から『影縫いの微刃』を通常召喚！」

「俺の場にのみモンスターがいる場合は、リリース無しで召喚できる、か」

透矢は場を建て直すべく、手札から影縫いの微刃を召喚させた。
レベル５だが、デュエル・キラーの言うように、リリース軽減効果を持つため、生け贄は必要ない。

黒装束の女が、短剣を手にミサギと向き合う。

「俺はこのまま・・・ターン、エンドだ」

そしてそのままターンを終了。
ミサギの攻撃力は２９００へ戻る。

大きな痛手を負った透矢。
ヴァルバレアを倒され、ライフも削られてしまった。
この不利を打開できるのか。
それとも再び、デュエル・キラーに屈するのか。

デュエル・キラーのターンが始まるーー。