熱血女！炎魅子の爆炎デッキ！⑤　作：はにわ

　
ーー透矢のターン、そのメインフェイズ。
自分・相手のフィールドの状況と、４枚の手札を照らし合わせて、このターンどうするかを考える。

まず炎魅子のフィールドには攻撃力が１９００となった『バーニング・ワイバーン』が１体。

（今、ドローしてきた『影縫いの微刃』・・・。
『白銀の盾』をリリースして召喚すれば、攻撃力はこちらが上だけどーー）

影縫いの微刃の攻撃力は２３００。
バーニング・ワイバーンのそれを上回るが、問題は炎魅子のリバース・カード。
これをどう読むか。

（召喚に反応する落とし穴系か・・・それとも攻撃に反応する系統か？）

自分フィールド上に１体しかいないモンスターをリリースして、アドバンス召喚する行為は勇気がいる。
もし落とし穴系統の罠に掛かれば、大損害を被る。
その後のフォローがあれば別だが、今の透矢の手札にはない。

また本来、影縫いの微刃は条件が折り合えばリリース無しで召喚できる能力を持つ。

以上の理由から召喚を躊躇わせた。

「それなら・・・やっぱりーー」

やはり目に付くのは『そのカード』。
実は影縫いの微刃を引いたのは『そのカード』のコストを見据えての事である。
『そのカード』とはすなわち『夢』の中で『お姉さん』から預かったカードの１枚ーー。


（ーーふ～ん、随分時間を使うじゃないか。
地影や水花ん時は、もっと決断よくやってたような気がするけどねぇ・・・）

手札を見つめたまま、再び動きを止めた透矢。
炎魅子がその心中を探る。

（慎重なのか・・・。
手札が悪いのか・・・。
それとも・・・昨日の件が尾を引いてたり、とかか？）

炎魅子は特に三つ目を気にしている。
昨日の一件は炎魅子の『思惑通り』に事は運んだのだが、
もしそれが逆効果になったのでは元も子もない、と。

（頼むよ・・・遊戦名？
あたしぐらい、踏み台にするぐらいでなきゃ、せっかくのあたしのお膳立ても無駄になっちまうんだからさ・・・）

何故か炎魅子は内心、苦笑いしていた。
彼女は狙い。
それは未だ見えてはこない。


（昨日の『お姉さん』が結局、『夢』だったのか、現実だったのか・・・それはよく分からねぇけどーー）

透矢が『そのカード』を指で持つ。

（今、現実に『カード』が俺の手にある。
それならーー）

カードを握った指から不思議と温かみすら感じる透矢。
昨日の事は謎が多過ぎて、透矢には考えても分からない事だらけだが、
はっきりしていることは、『カード』は間違いなく存在しているということ。

（『お姉さん』・・・使わせて貰うぜ！）

透矢は『そのカード』を勢いよく、魔法・罠カードゾーンに差し込んだ。

「ーー手札から魔法カード、『トライ・エモーション』を発動！」

（ようやく、動いたね！）

手札から発動されたのは魔法カード。
待っていた、とばかりに炎魅子がデュエル・ディスクを構え直す。

「手札から『三騎士』モンスターを墓地に捨てて、フィールド上の『三騎士』モンスター１体を選択して発動！
その同名モンスターをデッキ・手札・墓地から全て特殊召喚する！」

「ひゅう！
ってことは『三騎士』が一気に揃い踏みするって事かい！」

「そうです、先輩！
でも・・・その代わりにこのターン、Ｔ・Ｆ召喚以外の召喚は出来なくなるんです」

（ふむ・・・確かにリスクに合った強力なカードじゃないか。
しかも初めて見るカードだね）

炎魅子は始めてみるカード・『トライ・エモーション』の効果に素直に感嘆する。
彼女も四天王に数えられる選ばれた生徒。
当然のごとく、透矢が今までに使ってきたカードは１枚１枚全て記憶している。

「俺は影縫いの微刃を墓地に送り、フィールドの白銀の盾を選択！
デッキから白銀の盾を２枚、特殊召喚します！」

コストである影縫いの微刃を墓地へ送ると、対象となった白銀の盾のタトゥーであるローマ数字『Ⅰ』という文字が、光輝くそれとなってフィールドに現れる。
するとそこから２つのほうき星のような光が透矢のフィールドに降臨すると、そこに２体の戦士が姿を現した。

２体とも同じ白銀の盾。
だが微妙に背丈や髪の長さ、顔付きに違いがある。

効果を終えた『トライ・エモーション』はフィールドから消え去る。

「ーーそして、俺は３体の白銀の盾で、Ｔ・Ｆ召喚します！」

「さっそく来たねーー！」

炎魅子のリバース・カードは無反応。
実はここが最大の隙でもあったのだが、幸運にもそれを突かれることはなかった。

同名の『三騎士』が場に揃った事で、透矢はすぐにＴ・Ｆ召喚に移る。
炎魅子は早速のＴ・Ｆモンスターの登場に、心を踊らせた。

「トライ・フォース・ユニオン！
『フォーメーション・アイン』」

３体の白銀の盾が天空へと昇る白き光の柱に包まれる。

「先陣を切る道を切り開く白銀の戦士！
それは新たな戦士を、そして仲間を導くための活路！
今こそ、新たな光の道を生み出せ！」

光の柱がお互いに近寄るように動き、それが１つとなってより巨大な光へと姿を変える。

「Ｔ・Ｆ召喚！
『白銀の戦乙女 アリアス』！」

そうして光の柱は砕けて散り、そこから白銀の盾の本来の姿が現れた。

今まで何度となく召喚されながら、Ｔ・Ｆ召喚されることはなかった白銀の盾。

その真の力が発揮されるーー。