真希のお見舞い　作：はにわ

　
ーー地影と別れた透矢は、千鶴と共に真希の家を訪れていた。
千鶴が案内してくれた真希お勧めのスイーツショップ、そこのケーキを土産に。

真希は部屋で横になっていたようだが、ベッドに腰を起こして幼馴染みを迎えた。
まだ本調子ではないようだが、普通に話す分には問題ない。
透矢は昨日の事があったから若干緊張したようだが、真希はいつも通り迎えてくれたようだ。

しばらくは今日あった事を透矢と千鶴が話していたようだが、やはり話題は生徒会大戦に移った。

透矢が生徒会大戦に参加するのは流石を助けるためであり、
その流石に苛められた経験のある千鶴に透矢は気を遣いながら話していたが、
千鶴はお兄ちゃんが決めた事ならーーと、快く理解を示してくれたようだ。

ーーそうして、窓から見える外の光景が暗くなる頃、
千鶴はいつしか壁によりかかって寝息を立てていた。
そんな千鶴を見てわざわざ起き上がって薄手のシーツを掛けて上げる真希。
そういう気遣いは本当の姉のようである。

「ーーおっ、朝霧からだ」

「地影？」

「デッキのカードリスト・・・か」

「それって地影のデッキ、ってこと？」

透矢の携帯端末に地影からメールが届く。
その内容は何と地影のデッキの詳細なカードリスト。
別に送られたメッセージによると、自分は透矢のデュエルを何度か見て、ある程度透矢のカード構成を知っていて、
自分だけ相手のデッキの構成を知っているのは不公平だから、という地影の配慮である。

「あはは、真面目な地影らしいね」

「そうだな。
しかもすげー細かいし。
これメールで送るの大変だったろうな」

「ちゃんと研究しないとね。
明日の放課後でしょ？」

「うん・・・まぁ、な」

「何よ、浮かない顔して」

透矢は真希に、地影に言われた事を話した。
もし晴れて生徒会長になったら、流石を助けた後でどうするのか。

「別に良いんじゃない？
生徒会長、って要はあのアカデミア最強の証みたいなものよ？
カッコいいじゃない」

「いや、そりゃそうなんだけど、でもさーー」

「らしくないよ、透矢！
刹那も生徒会四天王も、迷ったまんま勝てるような面子じゃないんだからね？」

「らしく・・・ないか？」

「いつものあんたみたいに、先ずは目の前のデュエルに集中しなさいよ！
刹那や四天王とデュエルしてみたかったんでしょ？」

「そりゃそうだけど、さ」

「生徒会長になったら、なんて事はまず『なってから』考えりゃいいのよ。
てか案外、明日、地影にボロ負けして終わったりしてね」

「ははは、かもな」

「勘弁してよね。
調子ぶっこいて生徒会大戦に挑んだら、ぼこぼこにされました、じゃあんたの友達として、あたしまで恥ずかしくてアカデミアに通えなくなるわよ」

真希に茶化されて透矢と二人で大笑いする。
すると千鶴が笑い声に反応して声が漏れ、二人は慌てて口を塞ぐ。
だが千鶴は起きることなく、変わらず気持ち良さそうに寝ているのだった。

「そうだな！
なったらなっちまった、で出来ることを精一杯やってみるさ」

「うん、それでいいと思う。
なんだったらあたしもサポートしてあげるからさ」

地影の言葉で少し迷っていた透矢だったが、真希と話してだいぶ不安は晴れたようだ。
気心知れた幼馴染みの言葉はそれだけで励みになる。

「ーー応援してるよ、透矢！
あんたらしく、楽しみながらデュエルしなよね」

「ああ、ありがとな、真希！
お前にそう言われんのが一番嬉しいぜ」

透矢は完全に吹っ切れたように明日への決心を固めた。
同時に真希の笑顔が見れた事が透矢を安心させたようである。
もし真希とぎこちない雰囲気のままでは、明日のデュエルに支障を来していたかもしれない。

ーーだが吹っ切れたのは透矢だけではない。

真希も、であるーー。