２ｎｄデュエル流石再び！次元竜の侵攻！⑧　作：はにわ

　
「ーー頼むぜ、俺の戦士たち！
召喚、『三騎士（トライ・ブレイダー） 蒼き槍迅（あおきそうじん）』！」

ーー透矢が新たな戦士を呼び出す。

身長より頭１つ分長い丈の槍を片手で携えた、海のように透き通るような青い髪に、羽飾りの付いたカチューシャが特徴的な女戦士。
皮のベストを鎧代わりにした彼女も、『轟炎の剣』と同じように全体的に薄着である。
だが『轟炎の剣』にあった重厚なイメージとは違い、こちらは身軽さを主としたような佇まいだ。
表情もどこか達観しているような印象である。

よくみると首筋に『Ⅳ』というタトゥー。
白銀の盾、轟炎の剣にもあったが、一体何を意味するかは分からない。

『三騎士 蒼き槍迅』ーー。
レベルは４で、攻撃力は１９００を誇る。
この攻撃力は下級モンスターとしては最高クラスである。

（『蒼き槍迅』は召喚時に、二つの効果から１つ選択して発動できるんだけどな・・・今は、どっちの条件も満たしてないから無理だ）

蒼き槍迅は初手の手札にいた。
居ながら出さなかったのは、その効果を発動出来る状態になかったことと、実現出来なかったコンボを狙ったためだ。

今もやはり条件は整っておらず、その効果は発動しないが、もはやそんなことは言っていられない。

「更に装備魔法、『三剣の誓い』を発動！
蒼き槍迅に装備！
攻撃力が４００ポイントアップだ！」

続けて発動された装備魔法。
下向きの五角形のエンブレムに、三つの剣が切っ先を合わせたような絵柄。
それが蒼き槍迅の左の肩当てに付けられる。
するとそのエンブレムの持つ効力なのか、蒼き槍迅の攻撃力が２３００に上昇。
それを見た凌斗も微妙に表情が動く。

「そして『三剣の誓い』の効果を発動！
１ターンに１度、装備モンスターと同名のモンスターカードを、デッキか手札から墓地に捨てることで、次の俺のスタンバイフェイズまで更に４００アップだ！」

「な・・・合計、８００アップだと？」

「ああ。
でも『次元の裂け目』の効果で、墓地へ捨てるはずのモンスターは、除外、だな」

透矢がデッキから装備モンスター、即ち別の『蒼き槍迅』を手にすると、それを除外ゾーンへ送る。
するとフィールドの蒼き槍迅に、半透明の微妙に顔の違う蒼き槍迅が重なる。
魂が受け継がれた、とでも言ったところだろうか、その効力により蒼き槍迅の攻撃力は２７００にまでなった。

「ちっ・・・だが、除外されたモンスターが増えたことで、俺の次元竜もパワーアップする！」

そう。
蒼き槍迅を除外したため、次元竜のパワーも増す。
サルヴァは１７００に、レギアは１９００となる。
だがまだ装備魔法で強化した蒼き槍迅の方が大きく上回っている。

「バトルフェイズだ！」

透矢は高らかに宣言する。
問題はどちらに攻撃するか。

（レギアは確か除外されると、俺がデッキからモンスターを除外・・・か）

除外モンスターが増えれば増えるほどパワーアップする次元竜に、いたずらに除外枚数を増やしてはいけない。

「蒼き槍迅でサルヴァを攻撃！
『疾槍術（しっそうじゅつ）・四の型、爪龍燕（そうりゅうえん）』！」

そこでサルヴァに対して攻撃命令が下された。
蒼き槍迅が槍を何度か片手で回転させていたかと思うと、不意に両手で構えたかと思えば、それが一気に前に向かって振り下ろされる。
すると突風のような風が吹き荒れて、凌斗が一瞬目を閉じた。
次に目を開いたとき、一足飛びで瞬時に踏み込んだ蒼き槍迅の槍が、サルヴァを貫いていた。

サルヴァはうめくような声を上げながら消滅し、同時に凌斗にもダメージを与える。
攻撃力の差はちょうど１０００。
凌斗のライフは２８００となる。

「ちっ・・・小賢しい！」

敵を倒した蒼き槍迅は透矢のフィールドへと帰る。
正に疾風怒濤の一撃。
表情１つ変えずやってのけたその女戦士の実力は、ただものではない。

「ーーだが、次元の裂け目により戦闘で破壊されたサルヴァは除外される！
そしてサルヴァの特殊能力が発動！」

「何だ？！」

「サルヴァが除外された時、デッキから『次元竜』モンスターを１枚手札に加えられる！
俺はその効果で『次元竜神 エンパイア』を手札に加える！」

「次元・・・竜、神？」

サルヴァが倒され、除外されたことに自身の能力が発動。
デッキから直接、次元竜を手札に加える効果だ。
それにより選ばれた『次元竜神 エンパイア』。
それを手札にした凌斗が不敵に笑いをこぼす。

（くくく・・・遂に来た、最強の次元竜が！
この圧倒的パワーで、奴を消し去ってくれる！）

その笑いを見た透矢に一抹の不安が過る。
あるいは軽率な行動だったのかーー。

「更に次元竜が除外されたことで、『次元昇竜』、『次元への誘い』が連動して発動！
俺はデッキから『次元竜 イグナフ』を特殊召喚し、お前はデッキからモンスターを１枚除外だ！」

次元竜の除外によって、次元昇竜から繋ぐ次元への誘いまでの連動効果。
凌斗の場には絶えず次元竜が居座り、透矢は更にモンスターを除外。
新たに姿を現したのは『次元竜 イグナフ』。
小さい身体に羽根が生えた姿だが、黒いシルエットに赤い瞳、というだけでやはりその姿は不気味である。

除外カードが増えたことで次元竜のパワーはまた上昇。
レギアは遂に二千オーバーの２１００、元々は５００のイグナフは１４００となる。

「ーーカードを１枚、セットしてターンエンドだ」

透矢はリバースカードをセットしてターンを渡す。
この凌斗のターンでフィールドに何か、劇的な変化が起きる。
きっとさっき加えた『エンパイア』なるモンスター。
あれを中心とした変化がーー。
透矢は攻撃力２７００の蒼き槍迅を従えながらも、手に汗を滲ませていた。

「俺のターン、ドロー！」

凌斗のターン、ドローにより手札は５枚。
すぐさま凌斗は１枚のカードに手を伸ばした。

「ーー見るがいい！
最強の次元竜の姿をな！」

（来るか・・・！）

「俺はレギアと、イグナフをゲームから除外し、『次元竜神 エンパイア』を特殊召喚！」

レギアとイグナフが次元の裂け目に吸い込まれる。
そして虚ろな空間から差した目映い光ーー。
その眩しさに思わず腕で目を庇う透矢。

今まで黒いシルエットだった次元竜と百八十度転換し、今度は黄光の光で象られた巨大な竜。
姿形はサルヴァによく似ているが、巨大な翼が何対にも、長い肢体から生えている。
そして開かれた黒い瞳が、透矢を見下ろす。

最強の次元竜、エンパイア。
このデュエル、透矢にとって最大の試練の時を迎えた。