２ｎｄデュエル流石再び！次元竜の侵攻！⑤　作：はにわ

　
「ーー俺のターン、ドロー！」

巡ってきた透矢のターン。
新たにカードをドローして、６枚の手札。
その中で、まず目を引いた２枚。
『同胞の援軍』・『トリニティ』の２枚である。

（よし、次のターンにヴァルバレアの召喚が狙える・・・！）

透矢が頷く。

その２枚は透矢が強力なＴＦモンスターの特殊召喚を狙う上で、貴重なコンボ・パーツである。

「俺はモンスターを攻撃表示で召喚！
来い、『三騎士（トライ・ブレイダー） 白銀の盾』！」

掛け声と共にモンスターゾーンにセットされたカード。
そこから、前回の凌斗との戦いで活躍した白銀の女戦士が姿を現す。

「モンスター効果発動！
白銀の盾が召喚に成功したことで、俺は『三騎士 轟炎の剣』をデッキのトップに置かせてもらうぜ！」

そして『三騎士 轟炎の剣』。
前回、『轟炎の剣』・『同胞の援軍』・『トリニティ』の３枚によって、ＴＦモンスター・ヴァルバレアを呼び出し、それが勝因となっている。
彼の最も得意とするコンボである。

「ふん・・・ワンパターンな奴め」

「へへ、そうかもな」

前回と同じ始動に、凌斗が嘲るように小さく笑う。
透矢は特に気にした様子はない。
たとえワンパターンであろうとも、それが強力なアドバンテージを生むものならば、問題はない、という考えだ。

（さて、と・・・トリニティを伏せるのは後でいいとして、問題はその前にバトルを仕掛けるか、どうするか・・・）

透矢は少し考える。
白銀の盾の攻撃力は１４００。
凌斗のモンスターの攻撃力１２００を上回っているから、攻撃が通れば倒せる。

問題は２枚のリバース・カード。
これをどう読むか。

「ーーへっ、悩んだって伏せたカードが見えるわけでもねぇ！
ここは気合重視、バトル行くぜ！」

透矢の決断は早い。
彼は基本、こういう場面では前進を選択するタイプだ。
その思いきりの良さは時によって明暗が分かれる。

かくして攻撃命令を受けた白銀の盾が凌斗のモンスターに襲いかかる。
身を低く構え、上半身を前に出すように突撃、構えた剣を横凪ぎに払うつもりだ。

「（くく・・・やはり攻撃してきたな）
ーーこの瞬間、２枚の罠カードをオープン！」

「げぇっ、やっぱり罠カードかよ！
しかも２枚！？」

凌斗は読んでいた。
すなわち透矢は必ず攻撃してくると。
狙い通り、２枚のリバースカードが発動された。

それに透矢は間の抜けた顔で驚くーーが、白銀の盾の剣は止まらず、そのまま凌斗の黒いモンスターを横薙ぎに真っ二つに斬り払った。
黒いモンスターは断末魔の叫びを上げて消え去り、白銀の盾はすぐさま透矢のフィールドへ舞い戻る。

このバトルにより、凌斗のライフから、両雄の攻撃力の差２００が引かれて、３８００となった。

「あれ・・・攻撃が通っちまったぞ？
罠カードを発動したんじゃないのか？」

透矢は意外な結果に、更に驚かされる。

「はははは！
何を早とちりしている。
俺は何もお前の攻撃を迎撃しようなんて考えちゃいない！
むしろお前の攻撃を待っていたのだ！」

「攻撃を、待っていた・・・？」

「『次元竜 レギア』の効果！
このカードが戦闘で破壊された時、このカードをゲームから除外する！」

「ゲームから除外？どういうことだ？！」

「そしてお前もデッキから、モンスターカードを１枚除外しなくてはならない！」

「うぇっ、俺もかよ！？」

『次元竜 レギア』。
その効果はまず自身を除外し、その後、相手にもデッキからモンスターを除外することを強いる効果だった。

まず凌斗がデュエル・ディスクの墓地と除外ゾーンを切り替え、そこにレギアを送る。

「うぅー、除外かよー」

透矢が露骨に嫌そうな顔をしながら、デッキから適当に選んだモンスター１体を同じく除外ゾーンへ送った。

「分かってると思うが、デッキはシャッフルしろよ」

「分かってるよ・・・って、あ・・・」

凌斗に言われて透矢は気付く。
今、モンスターをデッキから除外する際にデッキの中身を見た以上、シャッフルしなければならない。

「白銀の盾の効果が無駄になっちまった・・・」

カードの束をデッキゾーンに置き、シャッフルさせる。
せっかく次にドローするはずだった『轟炎の剣』もこれで再びデッキの山に紛れてしまったのだ。

「くくく・・・、そしてこの瞬間、発動した罠カード１枚目、永続罠『次元昇竜』の効果が適用される！」

「な、なんだ？」

「俺の『次元竜』モンスターが除外された時、デッキから新たにレベル４以下の『次元竜』モンスターを１体特殊召喚する！」

罠は罠でも、条件を満たす限り何度でも発動する永続罠。
１枚で何回でも効力を得る可能性があるのが魅力だ。

「『次元昇竜』の効果で、俺はデッキから『次元竜 サルヴァ』を特殊召喚！」

そうして凌斗のフィールドに現れた『次元竜 サルヴァ』。
蛇のように細長い肢体がとぐろを巻くようにした、やはり黒いシルエットのモンスター。
レベルは３で攻撃力は１０００・・・と思いきや、それが１２００に上昇した。

「攻撃力が上がった・・・」

「俺の次元竜はな、俺とお前が除外しているモンスターの数１枚につき攻撃力が１００上がるんだよ」

己の効果で際限なく攻撃力をあげていく次元竜。
今は２００程度だが、これが積み重なると大変なことになる。

「まだだ！もう一枚の永続罠、『次元への誘い』が効果を発動！
『次元竜』モンスターが特殊召喚に成功した時、相手はデッキからモンスターカードを１枚、除外する！」

「げぇえ？！またかよ？」

「さっさとしろ！」

「じょ、除外はつらいぜ・・・」

再びデッキからモンスターを１枚を選んで除外した透矢。
これにより『次元竜 サルヴァ』の攻撃力は更に１３００へと上昇した。

「カードを１枚、セットしてターン、エンド・・・」

最初の気合とは打って変わり、やや気力を下げたエンド宣言。
透矢は感じていた。
あの２枚の永続罠カード、そして次元竜の能力の危険さに。
なにより自分が苦手とする『除外』という戦術に。

（こりゃ・・・辛い戦いになりそうだぜ）

デュエルはまだ始まったばかり。
だが、透矢は不吉な予感を感じずにはいられなかった。