運命のデュエル！Ｄ・Ｋの正体！⑬　作：はにわ

　
ーー未だ何も語られないまま再開される事となったデュエル・キラーとの、いや生徒会四天王・千歳真希とのデュエル。
透矢の本音としてはまず話を聞きたいところだが、デュエルをしながら語るという真希の言葉に、何らかの意志を感じて、続行することとなった。

「ーー俺のターンの途中、だったよな」

状況を整理すると、透矢の残りのライフは２８５０、真希は２１００。
透矢の手札は１枚で、それが『影縫いの微刃』であるのは真希も情報として得ている。
更に彼のフィールドにはほぼ完全な除去耐性を持つ攻撃力４４００のリューゼリッドがいる。
対して真希のフィールドには伏せカードが１枚のみで手札もゼロ。
一見するとあらゆる面で透矢が有利に見える。

「俺は・・・このままターンエンドだ」

とはいえ既にリューゼリッドは攻撃を終えており、他にプレイするカードもないとなればターンエンドするのみ。
透矢は程なくそう告げた。

「ーーお兄ちゃん・・・お姉ちゃん・・・」

再開されたデュエル。
千鶴は膝を付いたまま、悲壮な表情でただそれを眺めていた。
１度はデュエルを中断させた彼女だが、今再びそれをすることはしない。
それは透矢と同様に、デュエルをしながら語るという真希の意志を汲み取ったからに外ならない。

「・・・あたしのターン、ドロー」

真希のターン、最初のドロー。
手札が１枚となる。

「さて・・・どこから話したらいいのかなーー」

ドローしたカードを一瞥し、そのカードを口元に当てながら呟く真希。

「真希っ！
ひょっとして・・・会長さんの差し金なのか？」

堪えきれない、というように透矢が聞く。
さっき千鶴が口走った『自分のせいで真希が生徒会に入った』という言葉。
言い方を変えれば、『千鶴のために、真希はやむなく生徒会に入った』ということである。
つまりそこには会長・刹那が真希に対して何らかの働きかけがあったのでは、という透矢の考えである。

「う・・・ん、そうだね。
先ずはあたしと刹那の事から話そうかな。
ーーあ、その前にこのスタンバイフェイズ、『疾風の担い手 サラサ』の効果が発動するよ」

「あ、ああ・・・」

「アドバンス召喚したサラサが墓地に送られた時、次の自分のスタンバイフェイズに速攻魔法カードを２枚、デッキから手札に加えるの。
つまり、今ね」

サラサの効果に伴い、デッキから加えるべき速攻魔法カードを探す真希。
そうしながらも真希はいよいよ語り始めた。

真希が刹那と出会ったのは中等部一年の夏。
デュエルの実力で飛び抜けていた二人は自然と近付き合い、良きライバル、良き友人となったのだと言う。
だがこの段階では真希が刹那より一歩秀でていた。
千鶴が言った、真希がナンバーワン・デュエリストと呼ばれていた時期である。

「でも刹那はあたしなんかすぐに追い越していった。
刹那は天才・・・ううん、そんな言葉じゃ言い表せない程の才能を持ってたのよ。
ーーこの２枚を手札に加えるね」

そこまで話したところで、選んだ２枚の速攻魔法を透矢に見せる。
しかし透矢は話に意識が集中していて、確認したとは言っても、せいぜいそれが速攻魔法である、というぐらいだ。

「地影と、炎魅子先輩と知り合ったのもその頃でね。
水花も加えて、あたしたち五人はお互いを高め合えるいい関係だった。
ーーカードを２枚セットして、ターンエンド」

真希は３枚になった手札から２枚を選んで魔法・罠カードゾーンにセットすると、ターンを終了する。

「ーー俺のターン、カード、ドロー！」

透矢のターン。
カードを引くが、頭は集中出来ていない。

「で、それからあたしたちは今のアカデミア高等部に進学して、すぐに刹那が会長になったわ。
この頃の刹那は既に敵無しでねーーって、あ、透矢？
何かアクションする？」

更に語っていた真希だが、ふと透矢にそれを確かめる。
このターン、カードの発動や、バトルなど何かしないか、ということだ。

「お、俺はこのままバトルフェイズ！
『リューゼリッド』で真希にダイレクトアタック！」

早く終わらせて、話に集中したいという気持ちもあったのだろう。
透矢は迷わず攻撃を選択した。
未だ『女帝』の加護に与るリューゼリッドの攻撃力は４４００。
これが通ればデュエルは終わる。

「ーー速攻魔法発動！
『スケープ・ゴート』！」

「・・・『スケープ・ゴート』！」

「羊トークンを４体特殊召喚するわ！」

真希の場に現れたのは４体の可愛くデフォルメされた愛くるしい羊たち。
いずも攻守０だが、守備表示で特殊召喚されるため、いざという時の壁モンスターには打ってつけだ。

「ーー羊トークンに攻撃！」

取りあえず一匹でも潰そう、とそのままリューゼリッドでバトルを行う透矢。
４体の内の一匹を、リューゼリッドの槍が貫き、破壊した。
だが当然真希へのダメージは０である。

「カードを１枚セットして、ターンエンドだ」

リューゼリッドの背後の魔法・罠カードゾーンにカードがセットされて透矢はターンを終える。

「あたしのターン、だね」

再び巡る真希のターン。
激しかった前半戦に比べ、一転真希が語りながらの、静かな様相となった後半戦。

だが集中出来ていない透矢に比べ、真希は語りながらも意識はデュエルにも向かっていた。
そして静かに狙っていたのである。

ーー真希が持つ『龍』の召喚をーー。