運命のデュエル！Ｄ・Ｋの正体！　作：はにわ

　
『ーーデュエル！』

ーー夜の公園。
透矢とデュエル・キラー、一対一のデュエルが始まった。
住宅街から少し距離が離れているため、多少声や音が鳴っても邪魔は入らないだろうが、常識外れな行いに違いはない。
とはいえ透矢も己のプライドに賭けて、退くわけにはいかない。

「ーー俺の先攻だ！行くぜ！」

前回とは変わり、今度は透矢が先攻。
５枚の手札を見て、透矢は即座にその５枚を繋ぐ道を見いだす。

ーー当然である。
この戦いの前に、このデッキが生むあらゆるコンボは事前に繰り返し繰り返し演習している。

このコンボはその内の１つでしかない。

「魔法カード、『増援』発動！
その効果でデッキから『白銀の盾』を手札に加える！」

『増援』。
戦士族必須のサーチカードであり、デッキからレベル４以下の戦士族モンスターを手札に加える。
それにより、デッキから『白銀の盾』を手札に加えた。

「更に手札から『同胞の援軍』発動！
このターン、効果で加えたモンスターカードと、同名のモンスターをデッキから手札に加える！
俺は更に白銀の盾をサーチ！」

「白銀の盾を２枚サーチ・・・？」

『同胞の援軍』によって、２枚目白銀の盾をサーチした透矢。
デュエル・キラーはその意図を測りかねている。
白銀の盾は手札に揃えても、まとめて出せるような効果はないはず。
何のために手札に揃えているのか、と。

「これで手札に３枚の同名『三騎士』モンスターが揃ったぜ！」

透矢は突如、手札の３枚を公開する。
それはいずれも白銀の盾。

「１枚は最初から抱えていて、それを２枚のカードで揃えたのか。
だが、それがどうした？」

「へへ・・・ま、見てろって！
俺は手札から魔法カード発動！
『女帝の勅命』！」

「女帝の勅命ーー？」

「手札から『三騎士』モンスター１種類を選択して、そのモンスターを３枚墓地に送る！
デッキから『三騎士』モンスター一種類を選択して、その同名モンスターを可能な限り手札に加える！」

「な・・・っ」

力強く正面を指差す『女帝の聖杖』が描かれたカード。
するとそこから半透明の『女帝』が姿を現した。

「ーー頼むぜ、ラグナシア！」

『ーー心得た、透矢』

「俺は手札の『白銀の盾』３枚を墓地に送り！
デッキから『影縫いの微刃』を３枚手札に加える！」

『ーー我が命ずる。
揃えし戦友の魂をあるべき地に眠らせ、
新たな同胞の魂をここに束ねる！
わが呼び掛けに応じよーー！』

女帝が杖を掲げると、手札の『白銀の盾』が１枚ずつ白い魂となって、墓地へと葬られていく。
だがその都度、代わりにデッキから影縫いの微刃が１枚ずつ、合計３枚が加わるのだった。

「手札の『三騎士』モンスター３枚を・・・一瞬にして別の種類の『三騎士』に入れ替えただと？」

折角揃えた『白銀の盾』を全て墓地に送り、代わりに加えた『影縫いの微刃』３枚を見て、デュエル・キラーも少し驚いたようだ。

役目を終えた女帝は一時、女帝の勅命のカードと共に姿を消す。
透矢はその様を視線で見送っていた。

「なるほど、確かに対した『デッキ圧縮』だ。
だがわざわざ重い上級モンスターを揃えるとはな」

透矢は既にデッキから５枚のカードをサーチし、デッキの枚数を減らした。
デッキを圧縮するのも大事な戦術・技術であり、これをメインとするデッキもある。

だが影縫いの微刃はレベルが５。
相手の場にモンスターがいればリリース無しで召喚できるが、相手の場にモンスターはいない。
どうするつもりか。

「へへ・・・俺の真の狙いはこれだ！
手札から速攻魔法カード発動！
『トライ・フォーメーション』！」

「ま、まさか？！」

「墓地に一種類の『三騎士』モンスターが３枚揃っている時発動出来る！
その『三騎士』を素材とするＴ・Ｆモンスターを特殊召喚する！」

今までのはこれを使うための事前準備。
透矢は最初の手札５枚を繋げて、そして目的を果たした。
すなわち、強力なＴ・Ｆモンスターの召喚である。

『トライ・フォーメーション』の発動によって、墓地から白い光が三本、突き出すように天へと昇る。

墓地に眠るは『白銀の盾』の魂。
それを１つに束ね、真の姿を見せようとしている。

「先陣を切り開く白銀の戦士！
それは新たな戦士を、そして仲間の導くための活路！
新たな光の道を切り開け！」

三本の光の柱が１つに重なり、一本の大きな光の柱を形成する。
透矢の呼び掛けによって、今再び一人の戦士が復活を遂げたのだ。

「ーーＴ・Ｆ召喚！
『白銀の戦乙女 アリアス』！」

光が弾け、そこに姿を現した銀髪の女戦士。
炎魅子とのデュエルにおいても活躍し、記憶に新しいアリアス。
強固な防御能力と、仲間を導く力で戦線を有利に維持してくれる頼もしい戦士だ。

「ーーふふ、なるほど。
１ターン目から厄介なモンスターを呼んでくれるな」

デュエル・キラーが肩を奮わせて、笑い声をこぼす。

（さすがに転んでただでは起き上がらないってね。
透矢・・・久しぶりに『全力で』戦えそうよ！）

デュエル・キラーは仮面の奥で歓喜に震えていた。

ーーやはりこの男しかいない。

自分に『全力』を出させてくれるのはーー。

今、二人きりのこの時間に、
二人きりのデュエル。

お互いの思いをぶつけ合えるこの一瞬に、『彼』はこの上ない喜びを感じているのだった。