熱血女！炎魅子の爆炎デッキ！⑬　作：はにわ

ーー場に降臨した『女帝の聖杖』。
その隠された能力が、いよいよヴェールを脱ぐ。

「ーー俺は手札から魔法カード、『増援』を発動します！」

透矢のターンのメインフェイズ。
長い間を置いてようやく動き出した。
まずはレベル４以下の戦士をデッキからサーチする魔法カード、『増援』。
このターンにドローしたカードである。

「俺はデッキから『三騎士 轟炎の剣』を手札に加えます」

「オッケー。
（これで１ターン前のアリアスの効果と合わせて轟炎の剣が手札に２枚・・・か。
いや、まさかーー）」

増援の効果で『２枚目』の轟炎の剣を手にした透矢。
しかし炎魅子は先の『影縫いの微刃』の時を思いだし、嫌な予感が走る。

「ーー手札の轟炎の剣、効果発動！
手札に轟炎の剣が３枚揃っている時、その内の１枚を墓地へ送って、残りの２枚を特殊召喚する！」

「ーーやっぱり！
最初から１枚はもっていたね！」

透矢の手札３枚。
それは全て揃えられた『轟炎の剣』。
この戦士の能力を使い、透矢の場に２体の赤き女戦士が姿を現した。

「いいねぇ・・・その戦士、あたしと雰囲気があってそうだな、って思ってたよ」

轟炎の剣を見ながら炎魅子が笑う。
しかし轟炎の剣は睨み返し、手に持つ大剣を向けるだけであり、
馴れ合う気など一欠片もない、という意志表示だ。

（狙いはあの流石を倒した『ヴァルバレア』・・・か。
でも３体目をどうやって呼ぶ？）

轟炎の剣の真の姿、『ヴァルバレア』。
その強さは炎魅子も見知っており、それを特殊召喚する狙いであるというのは分かるが、透矢の手札はゼロ。

墓地にいる３体目を如何に呼び出すのか。

「ーーここで、『女帝の聖杖』の１つ目の効果を発動！
場の『三騎士』を選択し、そのモンスターの同名モンスターをデッキ・手札・墓地から特殊召喚します！」

「なるほど・・・ね。
便利な効果だ」

「俺は当然、轟炎の剣を選択！」

女帝の聖杖の１つ目の効果が発動される。
透矢は後ろから覗く女帝の横顔を見た。

「１つ、頼むぜ」

『言われずとも、既にこのデュエルに於ける我の役目は心得ている』

「はは、頼もしいねぇ！」

透矢と女帝がまた短く言葉を交わした。
すると女帝はその杖を天に掲げる。

『３つの魂に別れし勇猛なる戦士の一欠片よ。
女帝の名に於いて我がそなたを呼び覚ます。
今、再びこの地へ集え！』

杖が天に向かって光を発した。
その光はクリムレイトによって閉ざしていた暗き雲を突き破り、その先に広がる白き天へと突き進む。

そしてその光が還るように、昇る時より数段早い早さで、光は透矢のフィールドを撃ち抜いた。

そこに現れたのは轟炎の剣。
３つに別れた魂が、女帝の力によってこの地に集ったのだ。

３体それぞれレベルは４、攻撃力は１７００である。

『さぁ、透矢。
後はお前がヴァルバレアを呼び覚ますのだ』

「分かってるぜ！
行くぜ、『トライ・フォース・ユニオン』！
『フォーメーション・ドライ』！」

女帝に促されて透矢が力強くそう宣言。
３体の轟炎の剣がそれぞれ赤い光の柱に包まれた。

「赤き炎！
それは消えることなき勇気の心！
その心を無双の剣として呼び覚ませ！」

赤い光が互いに寄り合い、１つに収束する。
３つの魂が１つになろうとしているのだ。

「Ｔ・Ｆ召喚！
『轟剣の女傑 ヴァルバレア』！」

赤い光の柱を内から自ら切り裂き、雄々しき女戦士が姿を現す。

赤い軽装の甲冑に、火の揺らめきのように湾曲した大剣。
また全身を取り巻く帯状の炎は彼女の闘気を表し、三騎士の中でも一際強い気迫に満ちた眼差しが見るものを震わす。

パラメーターに変わりはないが、その攻撃力能力は最上級モンスターを軽く凌ぐ。

「出たね、ヴァルバレア！
１度戦ってみたいと思ってたよ！」

「へへ、そうっすか？」

「ーー確か、そいつより攻撃力の高いモンスターがあたしの場にいると、攻撃力が上がるんだったね？」

「はい！
一体につき、７００アップです！」

「でも、あたしの場にはそんなモンスターはいない。
その効果は発動しないよ？」

ヴァルバレアの強みの１つ、自分よりも攻撃力の高いモンスターが相手の場にいると、その数に乗じて攻撃力を上げる効果である。
しかし炎魅子の場にいるモンスター２体はいずれもヴァルバレアより攻撃力が低いのだ。

「それなら二つ目の効果を使いますよ！」

「ん～、問題はそっちなんだよねぇ」

「墓地の『轟炎の剣』をデッキに戻すことで攻撃力を１０００ポイントアップ！」

「で、戦闘で相手モンスターを破壊したら、その攻撃力分のダメージ、か？」

「そうです！」

ヴァルバレアのもう一つの能力を透矢は発動させる。
轟炎の剣を墓地からデッキに戻し、それによってヴァルバレアの攻撃力は２７００となった。
更に炎魅子の言う追加効果まで身につけたのだ。

「更に『トライ・フォース・サポート』の効果で、ヴァルバレアの攻撃力を８００上げます！」

「ははん、おっかないねぇ・・・」

そして永続罠、トライ・フォース・サポートの効果も受けて攻撃力は３５００に達する。
『クリムレイズ・シード』の本来の攻撃力と並び、観客席から声が上がる。

「バトル、フェイズ、です！」

「おう、来な、遊戦名！」

準備は終えた。
待望のバトルフェイズ。
攻撃力３５００のモンスターを従えてのバトルだというのに、炎魅子の表情には余裕がありそうだ。

（あのリバース・カードーー）

炎魅子の場に伏せられたリバース・カード。
あれが炎魅子の余裕の正体か。

（除去系はＴ・Ｆモンスターには通じない・・・。
ということは攻撃無効か、それとも攻撃力アップか・・・？）

透矢は考える。
もしこの攻撃を通せなければもはや手段はない。

ーーしかし。

『ーー迷うな』

「あっ・・・」

『どちらにしてもここで、攻撃しなければ勝ちはない。
ならば迷う必要はないだろう』

「・・・そうだよな」

『彼方に見える、その一点だけを見据えろ、透矢。
そこに勝利へと繋がる道がある』

女帝の激励が透矢の躊躇いを吹っ切る。
透矢は頷いてそれに応えると、右手を前に突きだした。

「ーーヴァルバレアでクリムレイズ・シードを攻撃！
『プロミネンス・ジ・エンド』！」

透矢の声に従って、ヴァルバレアが吠える。
凄まじい気迫と共に、手に持つ大剣を大地に突き刺すと、
そこから蛇のうねりのように地が裂け、赤い火柱が突き上がった。

裂ける地はクリムレイズ・シードへと向かう。
この攻撃、通せるのかーー。