熱血女！炎魅子の爆炎デッキ！⑨　作：はにわ

　
「ーー行くよ、遊戦名！
『クリムレイズ・シード』のダイレクトアタック！」

「ーーくっ！」

クリムレイズ・シードに攻撃命令が下される。
攻撃力３５００の直接攻撃。

クリムレイズ・シードを取り囲む無数の触手が周りの大地に突き刺さり、何らかの力を送り込むようにそれが脈動を始める。
すると周りの地が次々に裂け、赤いマグマが噴き出し、強烈な地震にも似た揺れが透矢を揺らす。

そして赤く染まりゆく触手。
何らかの力を得ているのだろうか、開かれた口から赤い光が漏れ始め、すぐにそれは凄まじいエネルギーの光となる。

「喰らいな、遊戦名！
『レイジング・ラヴァ・ストリーーッム』！！」

収束された赤いエネルギー。
それは超高温の赤い光線となり、全てを溶かし呑み込む。
迫り来る光を前に透矢は手札のある１枚を掴んだ。

「ーー手札から、『影縫いの微刃』の効果を発動！」

「ーーなっ？！」

「自分の墓地に他の影縫いの微刃が存在する時、手札のこのカードを墓地に送って発動！
攻撃モンスターの攻撃力を２３００ポイントダウンさせる！」

透矢は手段を用意していた。
それは前回の水花との戦いで勝利の立役者となった、影縫いの微刃の手札誘発効果。

「『影蜘蛛之巣結界之陣（スパイダー・ウェブ）』！」

手札から影縫いの微刃が墓地へ送られるや、クリムレイズ・シードの真下の影から黒い『糸』が幾重にも張り巡らされて、標的の身体を抑え込んでしまう。
攻撃の途中だったクリムレイズ・シードはそれを中断し、もがき苦しむように咆哮を上げる。

効果はあった。
攻撃力が３５００から１２００までダウンする。

「くっ、でも攻撃は止まらないよ！」

攻撃力を大幅にダウンはさせたものの、クリムレイズ・シードの攻撃を全て止めたわけではない。
既に放たれた光線が透矢の身体を焼く。

「ぐ、く・・・」

しかし３５００のダメージを喰らうはずだった事を考えれば、約３分の１程度の１２００で済ませたのは大きい。
透矢のライフはこれで２６００。
余力は充分に残した。

（大した奴だよ・・・遊戦名）

炎魅子は対戦相手の健闘を心で讃えていた。
今の透矢の行動は、『最初のターンからこの時』を見越した防衛策であると見抜いたからだ。

（熱くなるじゃないか・・・『本気』で応えてやりたくなるよーー）

炎魅子は気持ちが熱くなるのを感じていた。
それも今まで戦ってきたどのデュエリストとのデュエルよりもーー。

炎魅子は既に手札に抱えている『あるカード』を指にかけた。

ーー『ジ・エンド・オブ・デイ』のカードをーー。

（ふふん・・・、ダメだダメだ、あたし！
このデュエルはあたしだけのものじゃないんだからねーー）

炎魅子は指にかけたそのカードを指で弾くと、必死に自らの熱い思いを抑え込んだ。
目を閉じて１つ深呼吸をし、冷静さを取り戻す。

「・・・『煉獄の巫女』でアリアスを攻撃しとくよ」

冷めた口調で攻撃を宣言する炎魅子。
すると煉獄の巫女がアリアスに赤い宝玉が付いた杖の先を向ける。
そして宝玉から放たれた赤く細い光線がアリアスに向けて放たれた。

しかしその攻撃を盾で難なく凌いだアリアス。
１ターンに３回まで戦闘・効果で破壊されないアリアスは、そう簡単には倒れない。

だがダメージ計算は行われ、煉獄の巫女の攻撃力１５００とアリアスの攻撃力１４００、その差の１００ダメージが透矢のライフから削られる。
これでライフは２５００だ。

「ーーメイン２。
カードを１枚セットして、ターンエンド」

（凌いだ・・・か）

炎魅子は３枚の手札からカードを１枚フィールドにセットすると、ターン終了を宣言。
透矢はまず死線を１つ潜り抜けた、と安堵の息。

「おっと、フィールド魔法・『クリムレイト』の効果だ。
フィールド上のバーニング・カウンター１個につき１００ポイントダメージをお互いに受けるよ」

「バーニング・カウンターは、煉獄の巫女に乗っている２個・・・？」

「そ。
つまり２００ダメだね」

フィールド魔法・クリムレイトのエンドフェイズの効果が発動。
煉獄の巫女の周りに浮かぶ二つの火の玉が不気味な光を発すると、透矢のライフがそれによって２３００まで削られた。
ダメージは双方に及ぶはずであり、炎魅子のライフも減るはずだが、彼女のライフは無傷ーー。

「あ、あれ、先輩はダメージ受けないんですか？」

「悪いね、遊戦名。
炎属性・ドラゴン族モンスターをコントロールするプレイヤーは、このダメージを無効に出来るのさ」

「うわっ、ってことは最初からダメージを受けるのは俺だけ・・・？
そりゃないっすよ、先輩！」

「あははっ！
まっ、フィールド魔法ってのは基本、発動したプレイヤーに有利に運ぶのが常、ってもんさ」

「うう・・・それは確かに」

「さぁ、あたしのターンは終わりだ！
あたしの龍を倒して見せな、遊戦名！」

「は、はい！」

ダメージが嵩みはしたものの、透矢は結局ライフを半分以上維持している。
良い形でこの自分のターンを迎える事が出来たはずだ。

だが炎魅子の龍・クリムレイズ・シードは未だその能力の全てを出し切ってはいない。
彼の力を越えた先にある勝利、透矢はそれを掴めるのかーー。