天才少女・水花の極寒デュエル！⑥　作：はにわ

　
「ーー水花のターンだよ。
カード、ドロー」

水花の２ターン目。
さっきは力強くカードをドローして見せていたが、今回は粛々とした運びである。

「・・・スタンバイフェイズ。
除外されていた『ゼロ・プリズナー』が帰還するよ」

「おう、来てみな！」

ドローして１枚の手札とした水花はそれをさっと見た後で、そう宣言する。
透矢がそれに応えると、水花は除外ゾーンから『ゼロ・プリズナー』のカードを取り出し、再びモンスターゾーンにセットする。

「還ってきて・・・ゼロ・プリズナー！」

『四龍』モンスターの一角、ゼロ・プリズナーが水花の呼び掛けに応じてフィールドに舞い戻る、氷柱に全身を覆われた巨体。
同時に水花の周りに張られていた、ゼロ・プリズナーが除外されている際に発動するバリアも消え去る。

「へへ・・・さて、どうする？
水花！
ゼロ・プリズナーの除去能力は、メルセディアには通じないぜ！」

透矢が自信満々に語って見せる。
除去能力はＴ・Ｆモンスターの共有耐性効果で防げる。
またメルセディアの守備力とゼロ・プリズナーの攻撃力は互角。
簡単には突破できないはず、との読みだ。

「・・・大丈夫、だよ？
だって、『想定の範囲内』だから」

「そ、想定・・・範囲、内？」

「うん。
ーーリバース罠カード、オープン！
『ドロー・リバイブ』！」

『想定範囲内』。
そう、透矢が前のターンにＴ・Ｆモンスターを出してくるのは想定されていたこと。
そして対策は既に用意されている。

水花がそれを示すべく、２枚目のリバース・カードを発動させた。

「このカードの効果で、あなたは墓地からレベル４以上のモンスターを特殊召喚しなければいけないの」

「えっ、俺がか？」

「うん。
それで、特殊召喚されたモンスターのレベル４ごとに、水花はカードを１枚、ドローするの」

『ドロー・リバイブ』の効果は、対象のモンスターが相手の墓地に存在するなら、その効果は強制。
透矢の墓地には３体の『守護の鎧』がいる。
その内の１体を特殊召喚しなければならない。

透矢は仕方なく墓地に一番上におかれていた守護の鎧をモンスターゾーンに置き、彼のフィールドに一体の守護の鎧が守備表示で姿を見せた。
そしてそれを見届けた水花がカードを１枚ドローする。

更に墓地の守護の鎧の枚数が減ったことでメルセディアの守備力がダウン。
宙に浮く３枚の盾の内、左の盾が消失し、守備力は３３００となった。

「なるほど、これが狙いか・・・」

「ううん、それだけじゃないよ」

「えっ？」

「あなたの場にＴ・Ｆモンスター以外のモンスターを『出させる』のが真の狙い、なの」

「あ・・・っ」

メルセディアの守備力が下がった事ばかりに目が行き、ようやく気付かされる。
『ドロー・リバイブ』によって蘇生された守護の鎧。
このモンスターをゼロ・プリズナーの標的にしようというのだ。

「手札から、魔法カード、『サルベージ』使うね」

「あれは・・・確か、墓地から攻撃力１５００以下の水属性モンスターを２枚、手札に加えるカード、だな」

「・・・（こくり）」

水花の魔法カード『サルベージ』により、墓地にいる２枚の『凍土の妖精』を手札に加える。
これで水花の手札は３枚、内２枚は『凍土の妖精』という編成だ。

「手札から、もう１枚の魔法カードを発動するよ。
『強欲なウツボ』！」

「手札・・・増強か！」

「うん。
手札の水属性モンスター２枚をデッキに戻して、３枚引くね」

更に水花の水属性デッキを活かしたカード運用が続く。
今、手札に加えたばかりの凍土の妖精２枚をデッキに戻し、新たに３枚をドロー。
これで新しい手札を３枚手にいれた水花。
それを見て、またその内の１枚に指をかける。

「手札から魔法カード、『上級召喚法術式』を発動！」

「あ、あのカードは！？」

「手札のレベルが５か６のモンスターを相手に公開して発動するの。
デッキからその同名のモンスター１枚を墓地に送って、
このターン、公開したモンスターはリリース無しで通常召喚出来るの」

効果を説明しながら、合間に公開されたカードはレベル５の『凍土の狼（ブリザード・ファング）』。
そしてデッキから同じカードを抜いて、透矢に見せたあとでそれを墓地へ送る。

「これでレベル５の凍土の狼はリリース無しで召喚出来るよ」

「上級モンスターをリリース無しで召喚・・・か」

「凍土の狼、召喚！」

『上級召喚法術式』のサポートを得て、本来モンスターをリリースしなければ召喚出来ない上級モンスターを、ノーコストで召喚する水花。

そうして現れた『凍土の狼』。
白い体毛で覆われた体皮の上に、更に逆立つ髪のような薄水色の細かい氷をまとっている。
発達した四脚でしっかり地面を踏み抜き、鋭い牙を蓄えて睨み据えるような瞳が、獰猛な性格と狼のたくましさを如実に現している。

レベルは５で攻撃力は１８００と、上級モンスターにしては低いがーー。

「凍土の狼はね、墓地の同名モンスター１枚につき、攻撃力が５００上がるの」

「てことは・・・今、１枚墓地に送ってるから、２３００？」

「・・・（こくり）」

凍土の狼の効果の１つにより、その攻撃力は２３００となり、これで上級モンスターのラインとしては立派な数値となる。
上級召喚法術式のコストと噛み合ったモンスター選択と言える。

「そして！
ゼロ・プリズナーの効果を発動！
『エターナル・プリズン』！」

「来たな！」

「相手モンスター１体をデッキに戻し、代わりに攻撃力０のトークンを特殊召喚するの！
標的は・・・守護の鎧、だよ」

そして遂にゼロ・プリズナーが動く。
ドロー・リバイブによって蘇生させた守護の鎧を標的に、ゼロ・プリズナーがまた翼を羽ばたかせて、身に纏う氷柱を浴びせる。
守護の鎧はまた凍り付けの彫刻と化し、攻撃力０、攻撃表示のトークンとなる。

万が一、ゼロ・プリズナーの効果が効かないモンスターを出された場合の戦略。
少女のやることながら、非常に抜け目ない。

「バトル、行くよ？」

「お、おう・・・っ！」

「ゼロ・プリズナーで、トークンを攻撃！
『ブレイク・スカルチャー』！」

ゼロ・プリズナーの二度目の攻撃が透矢を襲う。
敢えてもう１度言うまでもないが、この攻撃が通れば水花の勝ちだ。

水花の緩みなき戦術に、透矢の底力が試される。