始まる生徒会大戦②　作：はにわ

　
「せ、生徒会、大戦、って？」

「うっふふふ・・・楽しいイベントよ。
このアカデミアの名物の１つ、とも言えるわね」

刹那がひとり愉しそうに笑い、わけも分からない透矢は戸惑っているのか、周りの真希たちの顔を見回すようにする。

「ちょ、ちょっと止めてよ、刹那！
あ、あたしはそんなの認めないわよ！」

真希が刹那に詰め寄る。
今までどこか刹那に遠慮していた真希だが、ここでは急に怒りをあらわに躊躇なく迫っている。

「ーー真希、これはあなたが決める事ではないわ。
透矢くんの意志の問題なの」

「でも、刹那・・・！」

「話の腰を折らないで、真希。
今、私は透矢くんと話してるの」

友達である真希に迫られながらも、表情ひとつ変えない刹那。
しかし一度鋭い視線を向けられるや、真希はそれで身を引いてしまう。
すると真希は透矢の方を向いた。

「ねぇ、透矢ぁ、もう止めてよ！
あんたが生徒会大戦をやるってことはつまりーー」

「え？」

「いや、あの・・・」

「真希？」

真希は言いかけて口を閉ざしてしまう。
明らかに様子のおかしい幼馴染みを見て、透矢が怪訝そうにその顔を見据えた。

「ふふ、透矢くん。
『生徒会大戦』というのはね、早い話が生徒会長を決めるデュエル大会のことよ」

「会長を決める・・・デュエル、大会？」

「まぁ、大会と言える程、大袈裟なものじゃないけど、ね」

刹那にそう説明されても一向にぴんと来ないらしい透矢。

「つまり、さ。
遊戦名が刹那とデュエルして、勝ちゃ、それで生徒会長になれちまうのさ」

「うえ？！
デュエルして・・・勝てば生徒会長？」

「簡単だろ？
単純明快、ってやつさ」

炎魅子が笑いながら話すが、透矢はその驚きのシステムにただ驚くだけだ。
生徒会長とはそれに立候補する者、あるいは推薦された者が、選挙などの方法を用いて決めるものだ、と普通は考える。
それと照らし合わせれば、確かに何と単純かつ簡単な方法だろうか。

「ただし、この生徒会大戦に挑戦できるのはブルーの生徒限定、それも学科・実技、共に優秀な成績を修めている人だけ、ですが？刹那さん」

「それは建前よ、地影。
要は私、そして生徒会のメンバーである貴方たちが透矢くんが挑戦者に足るに相応しいと認めればいいのだから」

刹那に言われ、口を紡ぐ地影。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。
俺は生徒会長になんか、なる気ないよ！
そんな生徒の代表なんて柄じゃないし」

「柄なんて関係ないわ。
要はデュエルが強いか、そうでないか、だもの。
実際にあなたが私に勝てば、みんなが認めてくれるでしょう」

「いや、でもさぁーー」

「それに、流石くんを助ける方法はこれしかないのよ？」

「・・・っ！」

「流石くんの退学処分を取り消すには、透矢くんが生徒会長になり、それを取り消す、と言えばそれで終わりよ」

「他に・・・方法はーー」

「校長に直談判でもする？
でも一生徒でしかない君の意見と、会長の私の意見と、どちらを尊重するかは目に見えてるわね」

そこまで言われて、さすがの透矢も不愉快をあらわにする。
しかし、確かにそうだ。
転入してきたばかりの自分が、いきなり校長に直談判し、退学処分を取り消せと怒鳴りこんだところで、それは徒労に終わるだろう。

刹那は透矢の表情を見て、一息はいた。

「・・・ごめんなさい、意地悪な言い方をしたわね。
でも、私が退学処分を取り消さないと決めている以上、方法はそれしかないわ」

「・・・会長さん」

「どうする、透矢くん？
後は君の意志次第、なんだけど」

選択を迫る刹那。
すると再び真希が透矢に駆け寄った。

「やめた方がいいよ、透矢。
刹那の実力は半端じゃないの。
それに・・・」

「真希？」

「あたしは・・・あんたとーー」

何かを言いかけて言い出せない真希。
もしかしてこの生徒会大戦に敗れるようなことがあれば、自分も流石のように何らかのペナルティを負わされるのだろうか？
だがこのままでは流石はーー。

「透矢くん・・・どうする？
それとも考える時間がほしい？
１日、２日くらいなら待ってもいいけど？」

刹那がそう持ちかけてくる。
真希がこんなにしてまで止めてくるのには何かある。
この場は冷静に引き下がって、頭を冷やし、ゆっくり結論を出した方がいいのかもしれない。

だがーー。

「ーー分かったよ、会長さん！
俺は、生徒会大戦に挑戦する！」

「ーー透矢！」

透矢は意外にも早く決断した。
真希が透矢の腕を掴むが、もう吐いた言葉は戻せない。
刹那がまた不敵に微笑んだ。

「・・・いいわ、透矢くん。
さすがは私を奮わせてくれた男、
いや、デュエリスト！」

透矢の生徒会大戦の挑戦が決まった。
そこに待ち受ける悲しい戦い、そして真実。
透矢はこの時、それに気づいてあげる事は出来なかった。