番外編2-26　Waltzic...p4　作：Ales

　（難しい問題じゃない……要は、‘‘サーチはされるけどガイアペライオは止める’’か、‘‘ガイアペライオの召喚は許すけどサーチはさせない’’のどっちか……出されたからといって負ける訳じゃないけどジリ貧になるのは目に見えてる……かといってエクシーズモンスターの方も何が出てくるかわからない……あれ、じゃあ何で前のターンでカンナホークを除外したんだろ……ミス、かな？）

　「霊獣」効果モンスターは１ターンに１度しか特殊召喚できない。召喚権はセフィラムピリカで使用しているため、何らかの方法で召喚権を追加しない限り再度フィールドに現れることはない。【霊獣】にとっては貴重なアドバンテージ源であるだけに、この墓地送りは不可解である。とはいえ現状の悩みは墓地のカンナホークではなく、フィールドの方のカンナホークと手札からの特殊召喚である。

　「両方、通します。」

　十数秒、明後日の方を向いて考えを巡らしていた遊貴は、視線をそのままに声だけを届けた。

　「では《セフィラの神託》の効果で《ＷＷ－グラス・ベル》を特殊召喚、グラス・ベルの効果を発動。デッキから《ＷＷ－スノウ・ベル》を手札に加えます。スノウ・ベルは自分フィールド上に２体以上モンスターが存在し、風属性モンスターのみの場合に手札から特殊召喚できます！」
　「カンナホークは風属性……それに、スノウ・ベルは風属性シンクロモンスターの素材になった場合に破壊耐性を付与できる……」
　「あら、そう焦らないで。まずは《聖霊獣騎　カンナホーク》の効果、除外された「霊獣」カード２枚を墓地に戻すことで、デッキから「霊獣」カード１枚をサーチできます。《霊獣使いの長老》と《精霊獣　ペトルフィン》を選択。更にこの効果にチェーンしてカンナホークのもう一つの効果を発動、このカードをエクストラデッキに戻して、除外された《精霊獣使い　ウィンダ》と《精霊獣　ペトルフィン》を特殊召喚！」


Chain2：《聖霊獣騎　カンナホーク》（特殊召喚）
Chain1：《聖霊獣騎　カンナホーク》（サーチ）


　「どうぞ……」
　「ではウィンダとペトルフィンを特殊召喚、更にデッキから《精霊獣　カンナホーク》を手札に加えます。レベル４の《精霊獣使い　ウィンダ》と《ＷＷ－グラス・ベル》をオーバーレイ、２体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚、ランク４！《鳥銃士カステル》！」
　「それは……ソルデの効果発動、カステルを破壊します。」


　「ではエクシーズ召喚に成功したので《セフィラの神託》の効果を使用、デッキから1枚ドローして、その後手札を１枚捨てます。ペトルフィンの効果、手札の《霊獣使い　ウィン》を除外して《エヴォルカイザー・ソルデ》を手札に戻します。」

　ソルデといえど万能な耐性を持っている訳ではない。先に挙げたエクシーズ素材のない状態は勿論、破壊以外の除去には対応していないのである。残り１つまで追い詰めておきながら結局バウンスなら前ターンに出来たとも思うのだが、とにかくしぶとくランク６を出すのが【陽炎獣】の持ち味なので、大火傷にならない程度に相手に効果の発動を躊躇させるのも手ではある。

　「レベル４の《精霊獣　ペトルフィン》と、レベル１の《ＷＷ－スノウ・ベル》をチューニング。シンクロ召喚、レベル５！《ＨＳＲチャンバライダー》！」
　「これは……ちょっと、まずいかも……」
　「エクシーズモンスターの召喚に成功したので《セフィラの神託》の効果を発動、デッキの《精霊獣使い　ウィンダ》をデッキの一番上に置きます。ではバトルフェイズ、よろしいかしら？」
　「どうぞ……」

　意せずして、遊貴の口から苦々しげな言葉が漏れた。チャンバライダーは２回攻撃が可能であり、攻撃するたびに攻撃力を上げる効果を持つ。上昇量は微々たるものだが、ライフポイントの過半を削られるのはかなりの痛手である。また相手から攻撃を受けた際にも上昇するので、《エヴォルカイザー・ソルデ》では相打ちでの除去となってしまう。効果で除去しようにも、《ＷＷ－スノウ・ベル》を素材としてシンクロ召喚された風属性モンスターは効果で破壊されない。

　「《ＨＳＲチャンバライダー》でダイレクトアタック！この時、チャンバライダーの効果発動！ダメージステップ開始時、このカードの攻撃力を200上げます！」


《ＨＳＲチャンバライダー》　ATK：2000　→　2200


《ＨＳＲチャンバライダー》　ATK：2200
遊貴　LP：8000　→　5800


　「もう一度チャンバライダーでダイレクトアタック！再び効果で攻撃力が上昇します！」


《ＨＳＲチャンバライダー》　ATK：2200　→　2400


《ＨＳＲチャンバライダー》　ATK：2400
遊貴　LP：5800　→　3400


　「…………」
　「おい、これ大丈夫なん？」
　「…………」
　「おーい？」

　ライフポイントの過半を失った遊貴であるが、さて彼女は突如として黙り込んだ。声をかけた美夏も、これは返答がないと判断して声かけをやめた。

　「私はこれでターンエンド……あら？」



　その時緋色が見たものは、秋の終わりを告げる紅葉のように赤い、遊貴の眼であった。




5th.Turn
　TP：遊貴
遊貴　LP：3400　D：30　H：0　G：11　Ex：13　V：0
　F：《陽炎柱》《セットカード》

緋色　LP：8000　D：27　H：2　G：9　Ex：13　V：2
　F：《ＨＳＲチャンバライダー》
　　《セフィラの神託》


　「私のターン、ドロー……」
　「あー……」
　「あら？」

　美夏と緋色がほぼ同時に声を上げた。それほどに、遊貴の声が硬く聞こえたのである。

　「メインフェイズ……《死者蘇生》を発動、墓地の《陽炎獣　スピンクス》を特殊召喚。効果を発動します。」
　「……そうそう、当てられるものなのかしら？」

　２度目の効果使用であり、【陽炎獣】というデッキの都合上どうしても確率は決して高くないスピンクスの効果である。が、遊貴は迷いなく宣言した。

　「モンスターカード……デッキトップは《陽炎獣　ヒュドラー》。墓地から《陽炎獣　ペリュトン》を特殊召喚します。レベル６の《陽炎獣　ヒュドラー》と《陽炎獣　ペリュトン》をオーバーレイ、２体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築……エクシーズ召喚。《セイクリッド・トレミスＭ７》。」
　「トレミス……なるほど、それもあなたの実力かしら……」

　運も実力のうちなら、限られたエクストラデッキの中から最適解を導き出せるのも実力といえる。

　「トレミスの効果、オーバーレイユニットを一つ取り除いて、フィールドまたは墓地のモンスター１体を手札に戻します。《ＨＳＲチャンバライダー》を選択。」
　「ええ、通します。」
　「バトルフェイズ、《セイクリッド・トレミスＭ７》でダイレクトアタック。」


《セイクリッド・トレミスＭ７》　ATK：2700
　緋色　LP：8000　→　5300


　「私はこれでターンエンド。」

　遊貴は静かにそう告げると、そのまま目を閉じた。


6th.Turn
　TP：緋色
緋色　LP：5300　D：27　H：2　G：9　Ex：14　V：2
　F：《セフィラの神託》

遊貴　LP：3400　D：28　H：0　G：11　Ex：12　V：0
　F：《セイクリッド・トレミスＭ７（ORU：1）》
　　《陽炎柱》《セットカード》


　「私のターン、ドロー！」

　この状況、緋色にとって決して不利ではない。いや、むしろ有利といえるだろう。要は次のターンにトレミスを残さなければ、どうとでもなる。

　「メインフェイズ、《霊獣使いの長老》を召喚します。長老の召喚に成功したターン、「霊獣」モンスターに限りもう一度召喚できます。《精霊獣使い　ウィンダ》を召喚、効果を発動します。墓地から《精霊獣　カンナホーク》を特殊召喚！カンナホークの効果、デッキから《霊獣使い　レラ》を除外します。《精霊獣使い　ウィンダ》と《精霊獣　カンナホーク》を除外、《聖霊獣騎　カンナホーク》を特殊召喚！融合モンスターの特殊召喚に成功したので《セフィラの神託》の効果発動、手札の《精霊獣　アペライオ》を特殊召喚、効果を使用します。墓地のウィンダを除外して、このターン終了時まで「霊獣」モンスターの攻撃力・守備力を500アップします。」


《聖霊獣騎　カンナホーク》　ATK：1400/DEF：1600　→　1900/2100
《精霊獣　アペライオ》　ATK：1800/DEF：200　→　2300/700


　「…………」
　「《聖霊獣騎　カンナホーク》の効果、除外された《霊獣使いの長老》と《精霊獣使い　ウィンダ》を選択、墓地に戻してデッキから「霊獣」カード1枚をサーチします。これにチェーンしてもう一つの効果発動、《精霊獣使い　ウィンダ》と《英霊獣使い－セフィラムピリカ》を特殊召喚します。チェーン解決、ウィンダとセフィラムピリカを特殊召喚、長老を墓地に戻してデッキから《霊獣の誓還》を手札に加えます。そしてそのまま発動、手札の《精霊獣　ラムペンタ》を除外して、墓地の《精霊獣　ペトルフィン》を特殊召喚します。《英霊獣使い－セフィラムピリカ》と《精霊獣　ペトルフィン》を除外して《聖霊獣騎　カンナホーク》を特殊召喚、もう一度カンナホークの効果を使用します。セフィラムピリカとラムペンタを墓地に戻して、デッキから《霊獣の騎襲》を手札に加えます。」
　「長かったけど、条件は達成された……」

　そう、今緋色のフィールドには《精霊獣使い　ウィンダ》、《精霊獣　アペライオ》、《聖霊獣騎　カンナホーク》の3体が存在する。【霊獣】における切り札にして、全テーマ中でも有数の制圧力を誇るカード。


　「ええ、ようやくよ。見せてくれるのよね？」



　このカードを、どうやって攻略するのか－



　「《聖霊獣騎　カンナホーク》と《精霊獣使い　ウィンダ》、そして《精霊獣　アペライオ》を除外！‘‘聖獣よ、呼び声に応え現れよ！霊験生来！’’《聖霊獣騎　ガイアペライオ》！！」





---《あとがき》---

次で終われるように頑張ります（しまむら語）