EX 06：凛として咲く花の如く　作：Ales

遊戯王映画公開記念SSパーティ協賛企画・「雪と光竜と夢幻世界」編そのろく

’’The end of Prelude’’

Crossover：なし



　「にゃう……」

　相変わらず奇妙な声と共に起床。右手に張り付いていた美夏を引きはがすついでに軽く蹴飛ばす。起きる気配はない。よし、復讐完了。実に晴れやかな気分である。

　「あぅ……」

　琉枝特製のパジャマ？は着心地がよく、熟睡するには充分だった。というかいつ寝た？鏡を見て、晴れやかな気分が一瞬でブルーになった。

　「ん……」

　パーティーとはいえ、何を着ていったらいいのか判らない。そういう時に便利なのが制服だ。大体外れがない上に、真面目なキャラで通す事が出来る。アカデミアの制服、実際可愛い。
　いつもの癖でポットに水を入れてようやく気付く。あの最凶魔神宮戸琉枝先生はぼっちプレイなうだ。コーヒーを淹れる必要はない。
　改めて鏡と正対し、服装の乱れがないか確認。

　「ん、よし……」

　テーブルの上のデッキと、鞄の中のデュエルディスク。そしてこの制服。不思議と気分が高揚してくる。さようなら、一瞬でテンションを下げやがった琉枝特製パジャマ（？）。


　「おっはよ……あんたってイメージ通り、朝早いね。」

　遅れる事十数分、美夏が目を覚ました。その間手持ち無沙汰だった遊貴は、呑気に緑茶を啜っている。

　「おはようございます。朝7時17分。本日の天気は快晴、日没まで切れ間なくお日様が見られそうです。それでは皆様、今日も一日お仕事に学校、がんばって参りまひょ……むぅ。」
　「何故にニュースキャスター風？」
　「早口言葉の練習……」
　「生麦生米生卵。はい。」
　「ちくパちくパにちくパちくパちくパよちくパ……」
　「やめてゲシュタルト崩壊する。」

　万事こんな調子である。



　「結局ナナリアさんたちとは会わなかったね。」

　朝食もチェックアウトも済ませ、今は旅館の外。さようなら、ビタースイーツな思い出を残した風情ある建物。こんにちは、目的のある旅と放浪の日々。

　「そうだなー。またパカパカパッ○ョンで対戦したかったのになぁ。」
　「またいつか……出来るといいね。」
　「そん時はまた、あれ着てくれる？」
　「そのとき私が中二病患者になってたら躊躇いなく着てあげる……」

　そうなっていない事を切に願う。願いながら、駅に向かって歩き出す。最寄り駅から会場まで一駅。

　「でさ、結局何で男の子は木刀を買いたがるんだっけ？」

　またもやお土産屋（推定築ウン十年）の前で、美夏が訊ねた。

　「男の子じゃないと分からないんじゃないかな……」
　「あーそっかー。やっぱ昨日の夜襲っときゃよかったのかな。」

　美夏の発言に背筋が凍った。

　「え……？」
　「昨日あんた、寝てる時のエロさがやばかったからさ、あたしもう目から鼻血が出そうで。あそこで襲ってたらちょっとは男の気持ちが分かったのかな、って。」
　「……今度来る時は別の部屋ね。」
　「いいけど夜這いはするぞ。」

　鍵を閉めても突破されそうで怖い。


　駅前の観光広場。

　「宮戸准尉、出撃のお言葉を！」

　田舎らしく電車の少ない路線、待ち時間に美夏がこんなことを言い出した。

　「いつから准尉になった……」

　中学生で准尉とはぐんたいのほうそくがみだれる。

　「まあまあ、細かい事は気にせず……」
　「んー……じゃあ、ジョージ・ワシントンの演説を引用して……」
　「おお？」

　空気をいっぱいに吸い込み、可能な限り大声を出す。といっても、普通の人の普通の声量ぐらいだが。

　-The fate of unborn millions will now depend, under God, on the courage and conduct of this army. We have, therefore, to resolve to conquer or die.

　「どやぁ……」
　「えっと……日本語でおｋ。」
　「まだ見ぬ数百万の運命は、何よりもこの軍隊の勇気と行動にかかっている。それ故、我々は固く決意する。勝利を、さもなくば死を。1776年8月、ロングアイランドの戦いの前の演説。」
　「今更あんたの知識量にツッコミはしないけどさ……あたしら戦争に行くんだっけ？」
　「ちなみにこの戦いでワシントン率いる大陸軍は大敗した……」
　「ダメじゃねーか！」

　旅に必要なのはツッコミ役。これ試験に出る。



　電車で一駅。時間にして7分前後。田舎に駅は（ほとんど）にい。

　「っと、ここか。」
　「うん、そうみたい。」

　やたらと広いホテルを、改めてふたり並んで見上げる。

　「……勝算は？」
　「相手次第……かな。どのデッキにも勝てる、何て思ってはいない。美夏は？」
　「ないね。全くもってこれぽっちもない。でも、だからこそかな。全力を出せそう。」

　お互いに顔を見合わせて笑い合った。

　「それじゃ……」
　「ああ！」

　いざ出陣。勢いのままに合並んで、ふたり同時にホテル内へと足を進めた。


’’遊戯王映画公開記念SSパーティ協賛企画・「雪と光竜と夢幻世界」編’’・完！

（・3・）Ales先生の次回作にご期待下さい。



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《あとがき》
無事ふたりをホテルまで送り届けたところで終了です。このあとはドクダミ2号さんの’’遊戯王映画公開記念パーティ’’へと続くはずです。
この企画では、とりあえず全力でネタを盛り込む事を目標に進めてまいりました。個人的には8割方は想像通りにネタを盛り込みました（ひ○ビタ成分が多い？ﾊﾊｯ、気のせいだよ）。伝わらなかった方はごめんなさい。ググれば多分わかります。
なお、各話のタイトル（と最終話分除く次回予告偽タイトル）は全て音ゲーに収録されている楽曲名だったりします。どれも良い曲なので、是非聴いてみて下さい（ダイマ）。最終話ぐらいきっちり締めたかった気もするのですが、何かもうずっとネタで書いてきたのでいいか、と思いこんな結果になりました。
本編はこちらのノリを引きずらないよう努めて参りますので、良かったら覗いて下さい。作者のモチベーションアップになります。

最後になりましたが、この企画に快くキャラクターをお貸し下さった作者様方に、改めてお礼申し上げます。本当に、ありがとうございました。