19　奏で続ける旋律　作：Ales

---《前回のあらすじ》---

《大戦遺物　ウィンザー》と《内部装着　サイプレス》、そして《大戦遺物　トゥーバン》によるコンボを辛くも凌いだ遊貴。しかし彼女の前に、今度は能動的に発動可能な驚異、《ボルトストーム・ドラゴン》が立ちはだかる。破壊をトリガーに攻撃力が倍になって復活する竜に対し、遊貴が得た秘策’’All in one’’とは……？




---《本編》---

　「All in oneか、ふふふ……メインフェイズ、いいかな？」
　「やっとかイ。構わないヨ。すぐに焼き尽くすからネ……」

　厄介な効果耐性と戦闘破壊後に高攻撃力を伴って現れる《ボルトストーム・ドラゴン》だが、遊貴の考え通り、隙はある。

　「まずは《幻界突入》の効果を発動。手札の《メタフィジカ・ジェネシス･ドラゴン－ブルー・ボディ》を墓地に送り、デッキから《メタフィジカ・ドラゴン－シニス》を手札に加える。後は…《メタフィジカ・ドラゴン－グラシエス》を攻撃表示に変更。
　墓地のイエロー・ボディ、ブルー・ボディ、ブラック・ボディ、フィールドのホワイト・ボディの４体を除外して、エクストラデッキのモンスター効果発動。」
　「エ……？」

　墓地から輝いた４色の光が、ひとつに重なり合って形取る。

　「原初の四神、ひとつになりて世界を照らす。闇を消し去れ！《メタフィジカ・ジェネシス・ドラゴン－クアンタム・クアッド》！」
　「まだ切り札を……隠し持っていたのカ！？」


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《メタフィジカ・ジェネシス･ドラゴン－クアンタム・クアッド/Metaphysica Genesis Dragon Quantum Quad》
融合・効果モンスター
星１０/光属性/幻竜族/攻４０００/守４０００
カード名の異なる｢メタフィジカ・ジェネシス･ドラゴン」モンスター４体
自分フィールド・墓地の上記のモンスターを除外した場合のみ、このカードを特殊召喚できる（融合魔法カードは必要としない）。この方法以外で特殊召喚したこのカードの効果は無効になり、攻撃力・守備力は半分になる。
（１）：カードの効果が発動した時に、墓地の「メタフィジカ」モンスター１体を除外して発動できる。その発動と効果を無効にする。この効果は１ターンに２度まで使用できる。
（２）：このカードが戦闘を行う場合、墓地の「メタフィジカ」１体を除外して発動する。相手はダメージステップ終了時までカードの効果を発動できない。この効果は相手ターンでも使用出来る。
（３）：このカードが墓地に送られた場合に発動できる。「メタフィジカ・ジェネシス･ドラゴン」モンスター以外の除外された「メタフィジカ」モンスターを可能な限り特殊召喚する（同名モンスターは１体まで）。
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　「バトルフェイズ……《メタフィジカ・ジェネシス・ドラゴン－クアンタム・クアッド》で《ボルトストーム・ドラゴン》を攻撃……『クリエイト・ザ・ニューワールド』！」

《メタフィジカ・ジェネシス・ドラゴン－クアンタム・クアッド》ATK：4000　　ATK：2800《ボルトストーム・ドラゴン》

SeaMirror　LP：3800　→　2600


　「ぐッ……だガ、ボルトストームは蘇る……え？」

　彼の目から狂気が消えていた。

　「あれ、言ってなかった？攻撃宣言と同時に《メタフィジカ・ドラゴン－ウンブラ》を除外して、効果発動したんだけど……バトルステップ終了時まで、ボルトストームの効果は無効。という訳だから、《メタフィジカ・ドラゴン－グラシエス》でダイレクトアタック。」

《メタフィジカ・ドラゴン－グラシエス》ATK：1900

SeaMirror　LP：2600　→　700


　「ははは……負けちゃったか。」

　そうやって笑う『SeaMirror』は、《ボルトストーム・ドラゴン》召喚前と変わらない、穏やかな少年だった。

　「ん……《ステラパルヴィス・ドラゴン》でダイレクトアタック。『メタフィジカル・スターレイ』！」


　《ステラパルヴィス・ドラゴン》ATK：2500

SeaMirror　LP：700　→　0


Win：『Snowispell』





　「ふぅ……ありがとうございました。」

　勝利後一息ついて、『Snow』は頭を下げた。

　「うん……ありがとう。でも、ごめんね。僕、結構酷い事言っちゃったね。」
　「ん……まあ、他にももっと酷い人はいるし……」

　負け惜しみ程度なら何でもないが、悪態を付く人はいくらでもいる。外見上は小さくて可愛いお嬢様な遊貴だが、直接向けられる悪意に対しては耐性が高い。

　「でも、悪い事は悪い、でしょ？」
　「そうだね……でも、気にしてない……」
　「何でだろうね。ボルトストームを出そうと思ったら、いつの間にかああなっちゃってさ。でも、このデッキになってから負けたのは今日が初めてだなー。」

　空に向かって伸びをした『SeaMirror』が、穏やかに呟いた。

　「このデッキに……なった……？」

　僅かな言葉の語弊だろうか。外国人が接続詞を間違える事は多々あるが、彼は今の今まで流暢な日本語で話していたし、容姿も日本人っぽいので気になった。

　「あはは……気にしないで。それよりさ、ひとつお願い、いいかな？」

　何でもない、といった風に笑った彼が、調子を変えて一言呟いた。

　「何……？」
　「その…………またデュエル、してもらえるかな？」

　その一言を言うのに、随分気負いがあったように思える。

　「また会ったら……その時に。」
　「そっか……そうだね。」

　お互いに笑い合う。そしてどちらともなく、決めていた訳でもないのに別々の方に足を進めた。





　「うん。そうなんだ。」

　夕方。『SeaMirror』は目の前の女性に今日の出来事を話していた。

　「へえ。どんな子だったの？」
　「『Snow』って言っていたかな……幻竜族のモンスター使ってて、とっても強かったよ。」

　女性が気怠そうに髪をかき上げて聞き返した。

　「『Snow』って……あの？」
　「あの……って、どの？」

　『SeaMirror』もまた、聞き返す。

　「いや、知らないんならいいよ。それよりそろそろ時間だし、落ちないと。」
　「あ、もうそんな時間なんだ……はあ。」

　夕日に溶けるように、ふたりはログアウトした。



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《？次回予告？》

遊貴　「いや、それは無理……」
美夏　「そっか。そうだよな。」

琉枝　「違うわよ、ロロナ。」
ロロナ　「えぇ……」


次回、「Little little ’’Selene’’」
そういう日常。