36　信じた夢を目指して　作：Ales

1st.Turn
　TP：Ka.Ta.

Ka.Ta./NSaver　LP：8000　D：35　H：5　G：0　F：none
Mira/SeaMirror　LP：8000　D：35　H：5　G：0　F：none


　「僕のターン、まずは《史跡の交易船》を発動。手札の《史士戦士　ランツクネヒト》を除外して１枚ドロー、ドローしたカードは《史士戦士　ケシク》！よって追加で２枚ドロー。」
　「うわ、出やがった夢の爆アドカード。」
　「ははっ、今日は運がいいな。」

　彼は以前、自身のデッキにはこの効果で追加ドロー可能なカードが大半を占めていると言っていた。つまりこの「運がいいな」という発言は冗談だろう。

　「さて、運がいいついでにどんどん展開しよう。自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、《史士戦士　レギオン》は手札から特殊召喚できる。更に速攻魔法《史跡の呪具》を発動、墓地または除外された「史士」モンスター１体を特殊召喚する。選択するのは勿論ランツクネヒトだ。」


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《史跡の呪具（ヒストリカル・カース）/Historical Grimoire》
速攻魔法
「史士の呪具」は１ターンに１度しか発動できない。
（１）：墓地に存在する、または除外された「史士」モンスター１体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃宣言できず、このターンのエンドフェイズに破壊される。
（２）：このカードの（１）の効果で特殊召喚されたモンスターは、フィールドを離れる場合に除外される。
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　「チューナー……来る！？」
　「お望み通り、お見せしよう！新世界の覇者、ここに降臨！掴みし栄光は世界に輝く！シンクロ召喚、《史士騎兵　コンキスタドール》！更にこの時、自身の効果で特殊召喚したレギオンの効果によりデッキから「史士」モンスター１体を手札に加える事ができる。僕が選択するのは《史士弓騎　ケシク》だ。そしてそのまま召喚、効果を使用する。」

　マスケットで武装した銃兵と、長弓を持った騎兵は地平の彼方へと走り去った。そしてやがて、後を引き継ぐかのように一頭の馬が駆けてくる。

　「《史士騎兵　コンキスタドール》と《史士弓騎　ケシク》を除外して効果発動！東方の大王は今、世界の大王になる！勢いのままに地の果てまで制圧せよ！融合召喚、《史士勇将　チンギス》！」

　高らかな宣言と共に現れた馬には、精悍な顔つきの男性が騎乗していた。手にした鉾を一閃して馬を更に走らせると、やがて所有者の前に馬を止めた。


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《史士勇将（エンシェントブレイブ）　チンギス/Brave Genghis, the Ancient Warrior》
融合・効果モンスター
星９/闇属性/戦士族/攻３１００/守１０００
「史士弓騎　ケシク」＋「史士」Ｓモンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。また、「史士勇将　チンギス」は自分フィールド上に１体しか存在できない。
（１）：このカードの融合召喚に成功した時、このカード以外のフィールド上のカードを全て破壊する。その後、この効果で破壊した魔法・罠カードの数×４００ポイントダメージを与える。
（２）：このカードがカードの効果の対象になった場合に発動できる。その効果を無効にし、その後このカード以外のフィールド上のカードを全て破壊する。その後、自分は破壊した数×２００ポイントダメージを受ける。「史士勇将　チンギス」のこの効果は１ターンに１度しか使用できない。
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　「攻撃力3100……地味に嫌らしいステータスですね。それを先行初手で……」

　苦々しげに呟くSeaMirrorに対し、Ka.Ta.は不敵な笑みを浮かべた。

　「おっと、まだ僕のメインフェイズは終了していないぞ？」
　「え？」

　俯瞰していたNSaverが、その真意に気付いた。

　「あー、そういえばあいつの効果って……」





　「いやどうも、本当にすみません……」

　１時間弱の時間を経て新大阪駅へたどり着いた琉枝は、目的の書類を目的の社員に渡すという任務を無事遂行したところであった。改札から出す訳にも行かないので、受け渡しは柵越しである。

　「いえ、たまには気持ちよくドライブしたかったので丁度いい機会になりました。」

　一応相手は先輩なので、適当な事を言って顔を立てておく。どうせ会社にいてもすることがなかったので、などとは口が裂けても言えない。

　「ドライブ……ですか。そういえば宮戸さん、車通勤でしたね。何に乗ってらっしゃるんですか？」

　新幹線の時間までまだあるのか、書類をしっかりと鞄に入れた先輩社員が尋ねてきた。

　「多分社長のより目立ってる、あの赤いのですよ。」

　あの赤いのとは、白やグレーなどの落ち着いた色の多い駐車場において、一際異彩を放つR○-8に他ならない。社長の車は外車なのだが、色合いは落ち着いているため微妙に埋もれがちである。

　「え？あのエイト、宮戸さんだったんですか！？何というか……いい趣味ですね。」
　「そうですか？正直背伸びした感はあるんですよ。免許取った記念に衝動で買ってしまったんですけどね……」
　「いや、いい趣味ですよ。衝動云々は別にして、このご時世、ロータリーに乗っているというだけで羨ましい限りです。」

　そう言われても、この車にしたのは父の影響が大きい。生前父が乗っていたのが一代前のナンバリング車だったので、それに同乗していた事もあってエンジン音がロータリーの方が落ち着くのだ。

　「おっと、そろそろ行きますね。資料、本当にありがとうございました。」
　「いえ、お気を付けて。」

　軽く片手をあげて去っていく先輩の背中を見送りながら、琉枝は指でキーチェーンを弄んでいた。

　（そう良いものでもないと思うんだけどなぁ……）

　買い換える時は外車にしてやろうと思っていた琉枝だが、そう言われるとなるほど悪い車ではないのかもしれない。

　（買い換える時にはロータリーの生産再開していたら……検討しましょうか。）

　駅近くに停めた赤いおにぎりに向かいつつ、琉枝は相変わらずキーチェーンを弄んでいた。





　「そう、《史士騎兵　コンキスタドール》の効果を発動！このカードがフィールドを離れた場合、除外されたモンスター２体を特殊召喚できる！僕が選択するのはコンキスタドールとランツクネヒトだ！」
　「その効果、自身も選択できるんですか……とんでもない除外メタですね。」

　口調こそ穏やかであるが、SeaMirrorは初めてこのカードの効果を見たNSaverと概ね同じ感想を抱いた。

　「何、気にする事はない。レベル６の《史士騎兵　コンキスタドール》にレベル２の《史士戦士　ランツクネヒト》をチューニング！蒸気の奔流、ここに集いて世界を変える！新世界に轟け！シンクロ召喚、《スチーム・ストリーム・ドラゴン》！」

　熱風と共に現れた蒸気が、竜の形を成して所有者の前に留まる。

　「お、今日はいきなり出してきたか。」

　NSaverが軽い口調で言った。前回彼と対戦した時は切り札として温存されていたが、今回は出し惜しみせずに初手から出している。

　「《ウォークラフト・ドラゴン》の効果を考えると、僕に選択できる戦術は多くないのでね……カードを２枚セットしてターンエンドだ。」



2nd.Turn
　TP：SeaMirror

SeaMirror/Mira　LP：8000　D：35　H：5　G：0　F：none
Ka.Ta./NSaver　LP：8000　D：32　H：2　G：5
　F：《史士勇将　チンギス》《スチーム・ストリーム・ドラゴン》
　　《セットカード》×２



「僕のターン、ドロー。」

　（現状、攻撃力で上回る事ができるのは《ボルトストーム・ドラゴン》だけ。条件さえ満たせば何とかなりそうなのですが、生憎ループコンボも今は準備が揃っていません……しかし、両方ともとんでもない効果持ちですね。）

　片や効果の対象になった場合、フィールドのカードを容赦なく吹き飛ばすチンギス、片や自身を破壊したカードがフィールドに残っていれば牙を剥くスチーム・ストリーム。端から見ればとんでもない窮地だが、彼のデッキはそれすらも乗り切るポテンシャルを持つ。

　「まずは手札の《大戦遺物　ソートン》の効果を使用します。手札のこのカードを捨て、デッキから「内部装着」カード１枚を手札に加えます。僕がサーチするのは《内部装着　ボネール》です。」
　「ああ、通そう。」

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《内部装着　ボネール/Boostparts Bonaire》
装備魔法
「大戦遺物」モンスターにのみ装備可能。
（１）：このカードの発動処理として、デッキから「内部装着」カード１枚を墓地に送る。
（２）：このカードを装備したモンスターのレベルは１つ上がり、戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、デッキから「大戦遺物」モンスター１体を特殊召喚できる。
（３）：このカードがカードの効果で墓地に送られる、またはフィールドのこのカードが墓地に送られた場合に発動する。デッキ・墓地の「内部装着　ボネール」以外の「内部装着」装備魔法１枚を自分フィールド上の正しい対象に装備する。
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　「では次に《大戦遺物　グリフィン》の効果を発動、手札のこのカードを捨てて、墓地の「大戦遺物」１体を特殊召喚します。この効果で先ほど捨てたグリフィンを特殊召喚。更に、「大戦遺物」モンスターがフィールドに存在する場合、《大戦遺物　ゾスマ》は手札から特殊召喚できます。そしてグリフィンとゾスマを手札に戻して、《大戦遺物　トゥーバン》を特殊召喚します。トゥーバンの効果、このカードの特殊召喚に成功した時、フィールドのカードを全て手札に戻します！」
　「対象を取らないバウンス……！？ならばリバースカードオープン、速攻魔法《史跡の財宝》を発動！手札から「史士」モンスター１体を特殊召喚し、自分フィールド上のモンスター１体をターン終了時まで除外する。《史士戦士　ファランクス》を特殊召喚し、《スチーム・ストリーム・ドラゴン》を除外！」


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《史跡の財宝（ヒストリカル・ワンダー）/Historical Wonder》
速攻魔法
（１）：自分フィールド上のモンスター１体を選択して発動する。手札から「史士」モンスター１体を特殊召喚し、選択したモンスターをターン終了時まで除外する。
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　「《スチーム・ストリーム・ドラゴン》は逃しましたが、残りのカードは全てバウンスします！そしてまだ、僕は召喚権を使っていません。先ほど戻したゾスマを召喚し、グリフィンの効果を発動。手札からグリフィンを捨ててもう一度グリフィンを特殊召喚します！更にボネールをグリフィンに装備、ボネールの効果発動処理として《内部装着　シダー》を墓地に送ります。効果によって墓地に送られたシダーの効果、デッキから《内部装着　サイプレス》をグリフィンに装備します！」
　「随分回ってはいるが……チューナーと非チューナーを揃えた、という事は……」
　「お察しの通りです！レベル４となった《大戦遺物　グリフィン》に、レベル４の《大戦遺物　ゾスマ》をチューニング……風巻きて嵐となる！轟く雷鳴、全てを貫け！シンクロ召喚、《ボルトストーム・ドラゴン》！」
　「ん……？あれ？」

　かくてあっさりとエースモンスターを召喚したSeaMirrorに対し、出番待ちをしていたNSaverは違和感を覚えた。遊貴の話だと、彼はこの竜を出すと豹変するとの事だったが、今は態度が変わった様子を見せない。

　「バトルフェイズ、いきます！《ボルトストーム・ドラゴン》でダイレクトアタック！『インディグネイト・ジャッジメント』！」


《ボルトストーム・ドラゴン》　ATK：2800
　Ka.Ta./NSaver　LP：8000　→　5200


　「くっ……先制は許したが、まだまだこれから！」
　「そう……ですね。メイン２には何もありません。僕はこのままターンエンドします。」




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《？次回予告？》


ロロナ　「もう、終わりにしましょう……」

？？？　「ええ、終わらせましょう？さあ、手を取って下さい。」



次回、「Dance In The Dark」
序曲の幕開け。