DRAW:１５０ Sisters　作：人喰い

(150)





ーーー…っ…！


ーーー……ラ…っ！




ーーーホムラっ！



……？ 誰かが……俺を呼んでる…？
……確か前にも…、似た事がーーー



少女「ーーーホムラっっ！！」


視界が鮮明になる。目の前には、黒髪ポニーテールの幼い少女。
しかめっ面で腰に手を当てて俺を睨んでいる。

少女「…やっと気がついたみたいね」

火群「…そうだ…。君とは、ちゃんと話がしたいと思ってたんだ」

ふと思い出されるのは、血溜まりに浮かぶ少女の姿。それを思い出し、表情が歪む。
待て、あれは夢のはずだ。幻想に過ぎない。

少女「…話って…？」

火群「…君は……誰だ…？」


少女「…誰って……ずっと一緒に居たのに、私のこと忘れちゃったの…？」

ずっと……一緒に居た…？
…俺は何か、大切なことを忘れているっていうのか…？

少女「…そっか……、まだ知らされていなかったのね…」

火群「…っ…？」

少女「…けどね、確かに私はずっとあなたの中にいて、あなたもまた、私の中にずっといたーーー」

火群「……待ってくれ…ッ…！ 俺には…、君が何を言っているのか…ッ…！

少女「ーーー大丈夫。いずれ全てを知る時が来るわ」

少女はそう言って、俺の肩を抱き寄せる。

火群「……っ…！？」

小さくて、柔らかくてーーーとても冷たい手。
その手の中に包まれていると、なんだか切なくて、息もできないくらい、胸が苦しくて仕方がない。
ーーーそして不思議と、懐かしい気持ちになるんだ。
まるでそれは、幼い頃から感じていたようなーーー家族の温もり。


少女「だから今は……せめて…、今だけはーーー」


その暖かさの中に身を預け、気づくと俺の頬には涙がつたい、一滴、雫となって零れ落ちた。















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーDRAW:１５０ーー
《Sisters》















〜積木病院・病室〜



火群「ーーーっっ！！！」


目を覚ますと、そこは病院のベッドの上。
病室内の電気は消されており、外から光も差していないようだったので、夜中に目が覚めてしまったのだろう。

火群「……あの子は……一体…」

夢に出てきた少女を思い出し、何気なく顔に手を触れる。

火群「！ 冷た……っ…！？」

俺の両目からは、涙が流れていた。

火群「…なんで俺…っ…泣いて……？」

涙を服の袖で拭ったところで、ベッド脇の丸椅子に腰掛けて眠るニクスの存在に気づく。

火群「……ニクス…」

毛布もかけずに眠っていたので、このままでは風邪を引くと思い、身体を起こしたその時。

火群「……？」

ようやくそこで、異変に気付く。


火群「……身体の痛みが……無くなってる…っ…！！」

眠りにつく前までは、腕もなかなか上がらないレベルだったのに問題なく動くし、身体も起こせる。

火群「……これで俺も戦いに…！」

と思ったところで、ふと思い留まる。

火群「…けど…、また和泉たちに心配かけちまう事になるよな…」

終焉の焔を迎え撃つチャンスはここしかない。
けど、ちょっと動けるようになったからって、まだ完全に完治したっていう保証がないのも事実だ。

火群「…今は無理せず、医者のOKが出るまで安静にしてるのが吉……かな」


……そういえば、和泉と明石さんの姿が見当たらないけど、どこに行ったんだろうーーー





＊＊＊



爽香「ーーー流石に夜中まで病室でパソコンの明かりつけてるわけにはいかないからネカフェまで来ちゃったけど……」

和泉「…これがネットカフェ…っ！ 始めて来ました…！
あっ…！ 昨日発売の漫画の新刊がもう入ってる…っっ！！」

爽香「こらこら、寝てる人もいるから店内では静かにねー」

和泉「…はーい……」



ｶﾞﾁｬ…

爽香「……さて、と。もう11時かー…。和泉ちゃん、少し寝てなよ。さっきまでパソコンにつきっきりだったし」

和泉「…は、はい…。そうさせてもらいます…。２時間ほどで交代しましょう」

爽香「おっけー♪ お休みね」



……

和泉「……すぅ……すぅ…」


爽香「……。まさかこんな大きな戦いになるなんてね…、未だに頭が混乱してるわ…」

爽香「私なんてつい先日までただの大会のお姉さんだったのに……って、そんなこと言ってても仕方ないか…。
決闘は出来なくてもーー私だって戦うって決めたんだから」



………


爽香「…ってか、なんかさっきから隣の部屋が騒がしいような………注意してこようかs」



女性の声『……ん……はぁ……っっ…！ だめぇ…っっ！』



爽香「………」


爽香「………」

爽香（……なんか私まで…、変な気分に……）

爽香「……」ﾁﾗｯ


和泉「……くかー…」


爽香「……和泉ちゃん寝てるし…、少しだけ……少しだけなら……」





＊＊＊


時を同じくしてーーー

〜決闘機兵製造工場〜

雫・鈴華・メアリーのチーム



鈴華「……う〜ん……むにゃむにゃ…」

雫「…すぅ……すぅ……お姉ちゃ……」


メアリー「…『お姉ちゃん』…か…」

メアリー（確か雫ちゃんのお姉さんは終焉の焔の襲撃で亡くなっているのよね…）

雫「…むにゃ……ミズ…キ…おねぇちゃん……大好き…」


メアリー「……。よしよし…」

メアリーは雫の頭を優しく撫でる。

メアリー「……お姉ちゃんの為にも、全力出さないとネ…！」

メアリー「……この工場の決闘機兵は地下に厳重に保管した。それに工場の周囲はデュエルポリスが囲んでるーーー」




メアリー「ーーー来なさい…！ 絶対に守り抜くわっ！！」











To Be Continued…






《次回予告》




「次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１５１ 真夜中の決闘






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙