DRAW:１２９ 姉と妹　作：人喰い

(129)


〜積木町・海岸〜

【火群side】


雫「ーーー火群さん。私には、お姉ちゃんがいたって話、しましたよね…」

火群「……うん、前に少しだけ」

けど、柏木さんの家族と故郷の村は、終焉の焔の襲撃で……っ…。

雫「…お姉ちゃん、とっても優しくて、それでいて大人たちに負けないくらい気が強くて…」

火群（お姉ちゃん……か…）

雫「私に決闘を教えてくれたのもお姉ちゃんなんですよ…っ！ お姉ちゃん、とっても強くて、村で一番の実力でした」

火群「…そう…なんだ」

雫「とっても自慢のお姉ちゃんだったんです。
ですが……」

雫「……私、終焉の焔の襲撃があったあの日。……怖くなって逃げてしまって…お姉ちゃんたちを見殺しにしてしまった…」

火群「……」

雫「……もちろん、一番悪いのは終焉の焔です。
……けど、最後に聞いたお姉ちゃんの『助けて』って言葉が、ずっと胸に刺さってて…」

火群「…柏木…さん」

雫「……だから私、決めたんです。
“誰かを助けられる人”になりたい、って…っ！」

火群「……！ そっか…、立派な目標じゃん…！」

雫「…えへへ、ありがとうございます。
……でも、一歩踏み出すのってやっぱり怖くて……。
私、やっぱりダメだなぁって、時々思っちゃいます」

火群「……それは、違うと思う」

雫「火群さん……？」

火群「…柏木さんは、勇気を出して俺に心の内を打ち明けてくれた。それって簡単なことじゃない。……だから、もっと自信を持って！」

雫「……ありがとう、ございます。火群さん…♪
火群さんにそう言ってもらえると、少し、自信が持てます…っ」

火群「……」

それに比べて、俺はいつまで同じ事を繰り返してんだ。
いつも悩んで、迷って、躊躇って。
不安定な道を歩き続けて……。
本当に俺は、前に進めているのか？


雫「……。火群さん」

火群「……？」

雫「…何か、悩んでますか…？」

火群「…え……いや…、その…」

雫「ふふ…っ♪ そういう時は、することは１つ、ですよ♪ 火群さんっ」

火群「ーーー？」








＊＊＊


【和泉side】


和泉「ーーー逃げ出してしまった」

火群くんと雫ちゃんが一緒にいるのを見て、なんだか怖くなった。
なぜ怖い？
ーーー火群くんを取られちゃうから？
いやいや、そもそも私のじゃないし。
ーーー火群くんが遠くに行ってしまう気がするから？
それも何かが違う。
ーーー火群くんが私を忘れてしまう気がしたから？
いよいよ疑問も意味がわからない。忘れたところで別にーーー
ーーーそれなら火群くんが………。

自問自答の繰り返しの中でふと気づく。

あれ、私。
火群くんの事ばっかり。

どうしてーーー





結維「ーーーどうしてもこうしてもないでしょ、ばか」

和泉「！？」

突如、私の目の前に結維ちゃんが立ち塞がる。
私は慌てて立ち止まろうとして足に力を込めるが間に合わず、倒れこむように結維ちゃんの胸に顔を埋める形となった。

和泉「わぷ…っ！」

顔を上げようとする私をぎゅっと抱きしめ、結維ちゃんは続ける。


結維「ーーーそれが好きって事なんじゃないの？」


和泉「………っ…！」

ーーー好き。
そうなの？私。

火群くんの事ーーー好きだったの？

和泉「……好きってどういうこと…？ わかんないよ……結維ちゃん…」

結維「……わっ、私だって…、詳しいわけじゃないわよ…。けど、誰かの事で頭がいっぱいになるってことは、“好き”ってことなんだと…私は思うわ」

和泉「…まだ、よくわかんない…。
…けど……、結維ちゃんにも、辛い思いさせちゃってたって事は…、わかる。ごめん…結維ちゃん…」

私達姉妹は元々は１人の人間で。
それ故に２人は感覚をある程度共有できる。
否、共有しなければならない。
だから私が苦しい時、結維ちゃんも同様に苦しくなってしまうんだ…。

結維「…辛いなら言ってくれればいいのに。
一人で抱え込もうとするのはあんたの悪い癖よ。
…そういうところは…、火群に似てるのかもね」

辛いのを必死で隠しているつもりでも、ずっと結維ちゃんにはバレていたんだ。
恐らく私の事を側でずっと見ている千愛ちゃんにも気づかれているだろう。


和泉「…あのね、結維ちゃんーーー」

そこで私は、胸が痛くなった時の事を結維ちゃんに話した。
雫ちゃんの告白を聞いてしまった時から、火群くんと会話する度に気分が落ち着かない事。
本当にちょっとした事だけど、ただ聞いてもらいたくて、話した。

結維「ーーーなるほど、ね」

話すと不思議と楽になって、身体が軽くなったような気がした。
けど肝心の胸のモヤモヤだけは、まだ消えないままだ。

結維「ーーーそれならいい方法があるわ」

そんな私の心中を悟ってか、結維ちゃんは口元を軽く吊り上げる。そして言った。



結維「ーーー私と決闘よ。和泉」
















◉遊戯王 Ph.X◉
ーDRAW:１２９ー
《姉と妹》















【火群side】


雫「ーーー私と決闘しましょう♪ 火群さん」

火群「…俺が…柏木さんと…？」

雫「はいっ♪ 思いっきり気持ちをぶつけ合えば、悩みだって吹き飛びますよっ」

火群「……っ…！」

雫「…それに、新しい“道”が開けるかもですよ？」

火群「…新しい…道…っ！」


ニクス『…火群。せっかくのお誘いだぞ。断る気か？』


火群「ーーーな訳！
やろう、柏木さん…っ！！」

雫「はい♪」


この決闘でーーー新たな“道”が開けるなら…！！


「「決闘！！」」








【和泉side】


和泉「ーーー結維ちゃんと……決闘…っ？」

結維「……ええ。
…だって、そういうモヤモヤした気分は決闘で晴らすのが一番じゃない？」

和泉「……！
…わかった。受けて立つよ、結維ちゃん…っ！」

この決闘でーーー新しい“答え”が見つかるなら…っ！！


和泉【LP 8000】

結維【LP 8000】


「「決闘！！」」



◉TURN０１◉


和泉「ーーー私の先攻！」【手札 5】

結維「…どっからでもかかってきなさい！ 和泉！」

和泉「…うんっ！ 行くよ！ 結維ちゃん！」

…やるからには負けられないよね…っ！

和泉「ーーー私は、手札から永続魔法『神の居城ーヴァルハラ』発動！」

《神
かみ
の居城
きょじょう
－ヴァルハラ/Valhalla, Hall of the Fallen》 †
永続魔法
(1)：１ターンに１度、自分メインフェイズにこの効果を発動できる。
手札から天使族モンスター１体を特殊召喚する。
この効果は自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動と処理ができる。


結維「…来るわね…！」

和泉「ヴァルハラの効果で、私は手札から天使族モンスターを特殊召喚できる！
来て！『光神 テテュス』っ！！」[ATK 2400]


《光神
こうしん
テテュス/Tethys, Goddess of Light》 †
効果モンスター
星５/光属性/天使族/攻2400/守1800
(1)：自分がカードをドローした時、そのカードが天使族モンスターだった場合、そのカードを相手に見せて発動できる。
このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、自分はデッキから１枚ドローする。


和泉「更に私は手札から、フィールド魔法『チキンレース』を発動っ！」


《チキンレース/Chicken Game》 †
フィールド魔法
(1)：このカードがフィールドゾーンに存在する限り、
相手よりＬＰが少ないプレイヤーが受ける全てのダメージは０になる。
(2)：お互いのプレイヤーは１ターンに１度、
自分メインフェイズに１０００ＬＰを払って以下の効果から１つを選択して発動できる。
この効果の発動に対して、お互いは魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。
●デッキから１枚ドローする。
●このカードを破壊する。
●相手は１０００ＬＰ回復する。


和泉「チキンレースの効果で、1000ライフを支払いデッキから１枚ドロー！」【LP 8000→7000】【手札 3】

結維「…！」

和泉「…やたっ！ 私のドローしたカードは天使族モンスター『フェアリー・アーチャー』！ よって光神テテュスの効果でもう一枚ドロー！」【手札 4】

和泉「…そして！『フェアリー・アーチャー』を召喚っ！」[ATK 1400]


《フェアリー・アーチャー/Fairy Archer》 †
効果モンスター
星３/光属性/天使族/攻1400/守 600
自分のメインフェイズ時に発動できる。
自分フィールド上の光属性モンスターの数×４００ポイントダメージを相手ライフに与える。
「フェアリー・アーチャー」の効果は１ターンに１度しか使用できず、
この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。


和泉「フェアリー・アーチャーの効果を発動！
私の場の光属性モンスターの数x400ポイントのダメージを受けてもらうよ…っ！結維ちゃんっ！」

結維「…和泉の場には二体の光属性モンスター…！ よって800のダメージね…！
…くっ…！」【LP 8000→7200】

和泉「…私はこれでターンエンドっ！」【手札 3】


◉TURN０２◉


結維「…1ターン目からやってくれるじゃない…！ 私のターン！ ドロー！」【手札 6】

結維「私は、『創造の代行者ヴィーナス』を召喚！」[ATK 1600]


《創造
そうぞう
の代行者
だいこうしゃ
ヴィーナス/The Agent of Creation - Venus》 †
効果モンスター
星３/光属性/天使族/攻1600/守 0
(1)：５００ＬＰを払って発動できる。
手札・デッキから「神聖なる球体」１体を特殊召喚する。


結維「…ヴィーナスの効果発動！ 私は1500のライフと引き換えに、デッキから『神聖なる球体』を3体特殊召喚！」【LP 7200→5700】[DEF 500]

和泉「……！」

結維ちゃんのいつもの動きだ…！
ここからのエクシーズ召喚で攻めに来るはず…！

結維「ーー2体の神聖なる球体でオーバーレイ！エクシーズ召喚！！
来なさい…！『神騎セイントレア』！！」[ATK 2000]


《神騎
しんき
セイントレア/Sky Cavalry Centaurea》 †
エクシーズ・効果モンスター
ランク２/光属性/獣戦士族/攻2000/守 0
レベル２モンスター×２
(1)：Ｘ素材を持っているこのカードは戦闘では破壊されない。
(2)：このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時に
このカードのＸ素材を１つ取り除いて発動できる。
その相手モンスターを持ち主の手札に戻す。


結維「…引きたい気持ちもあるけれど、次のターンドローさせるのは忍びないわね…っ。チキンレースの効果を使用させて貰うわ…！」

結維「ライフを1000払い、チキンレースを破壊！」【LP 5700→4700】

和泉「…っ！」

破壊されちゃったけど、これも想定内…っ！
ライフを払わせて早い段階で半分近くものライフを削ることができた…！

結維「…バトル！ セイントレアで、光神テテュスを攻撃！
〝天空螺旋槍〟！！」


『神騎セイントレア』
[ATK 2000]
ーーーVSーーー
[ATK 2400]
『光神テテュス』


和泉「…！？ テテュスの方が攻撃力は上なのに……っ！
…ってことは、何か効果が…！」

結維「…エクシーズ素材を持ったセイントレアは、戦闘では破壊されない…！」

和泉「…けど、戦闘ダメージは受けて貰うよ…っ！ 結維ちゃんっ！」

攻撃を仕掛けてきたセイントレアはテテュスの放った光によって退かれる。

結維「……くっ…！」【LP 4700→4300】

結維「…この瞬間、セイントレアの効果発動！」

和泉「…っ…！」

結維「セイントレアと戦闘を行った相手モンスターを、手札に戻すっ！」

引き際にセイントレアが振り払った銀槍が竜巻を起こし、それを受けテテュスが手札に戻ってしまう。

和泉「…テテュスが、手札に…っ！！」【手札 4】


結維「勝負はここから…っ！ 手加減なんてしないわよ、和泉っ！」

和泉「ーーーうん…っ！ 私も負けないよ…っ、結維ちゃんっ！」










To Be Continued…






《次回予告》


好「ーーーえ、またアタシでいいのかい？」

火群「スッキー先生。今回もよろしくお願いします」

好「しょうがないねぇ。
…次回は、訓練の中で進化を遂げたそれぞれのデッキに目が離せないネ」

火群「珍しくちゃんと次回予告っぽいのやってる！？
…あ、そういえば先生。今回はニクスも来る予定だったんスけど、見てませんかね？」

好「いや、見てないねぇ。今日もせっかく料理を持ってきたってのに」

火群「えっ！！本当ですか！！」

好「裏から持って来るから、タイトルコールして待ってな、市瀬」



火群「次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１３０《楽な気持ちで》！」



好「ーーー待たせたね。
棒棒不死鳥に、不死鳥の唐揚げ、北京不死鳥、それから油淋不死鳥に……」


火群「ニクスぅぅぅーーー！！？」









ｶﾞﾊﾞｯ


火群「ーーー夢か…」






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙