DRAW:１３４ 告白　作：人喰い

(134)







………



雫「………」


結維「………しーずくっ」

雫「はわわっ！？ 急に背後に現れないでくださいよぉ！ 結維さん！」

結維「………前髪上げて。雫」

雫「……そ、それは拒否します」

結維「……いいから」

雫「…い、いやですいやですっ…！」

結維「……しょうがないわね…」

結維は息をつき、左手で雫の頭を優しく撫でる。

雫「……っ…！ 結維……さん…？」

そして右手を雫の肩に回し、抱き寄せた。

雫「……結維さん……っ！？ どうして……っ」

結維「…うるっさい。和泉ならきっとこうする。そう思っただけよ…」

雫「……っ…！」

結維「……私は不器用だから、“左側の優しさ”をまだうまく使えない…。
……だから大した言葉をかけてあげることもできないわ」

雫「……」

結維「………けど、受け止める事ぐらいはできるから。
ーーー今は、好きなだけ泣きなさい」

雫「………結維…さん……っ。
……うぅ……ひぐ……っ…！」


雫「……ぅぁああぁぁあっっん！！」















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーDRAW:１３４ーー
ーーー《告白》ーーー
















【Side 火群】


ｻﾞｯｻﾞｯｻﾞｯｻﾞｯ!



火群「ーーー和泉っっ！！」



和泉「ーーー火群くんっっ！！」



二人は同時に名前を呼び合う。


火群「………っ」

和泉「………」

しばし無言で見つめ合ったあと、和泉から口を開く。

和泉「………っ…火群くんの方から、どうぞ…？」

火群「……いや、和泉から……いいよ」

和泉「……もぅ、わかってないなぁ…。こういう時は、普通男からでしょ！」

火群「…あ…っ！ ごめん…！」


ーーーずっと、助けられてきた。

火群「ーーーあのさ、和泉……さん」

和泉「…なぁに？ 火群くん」

ーーー俺にできない事を簡単に成し遂げる、憧れの存在だった。

火群「…あ、えと…っ！ ちゃんと言っておくべきだな、って思って…！！」

ーーー時にはそんな和泉を妬ましく思ったこともあるけど、それでもずっとずっと、追い続けてきたんだ。

和泉「……うん」

ーーー俺があんな事件を起こしてしまった後でも、再び巡り会えて、また友達になれたんだ。

火群「………和泉…！ 俺……っ…！」

ーーーそっから色んなことを乗り越えて気づいた、俺の想い。


火群「……和泉の事が………っっ！！」


ーーー想いを想いのままで終わらせたら、男じゃねぇだろ。

和泉「ーーーっ…！」

ーーーちゃんと相手に伝えなきゃ……何の意味もねぇだろっっ！！









火群「ーーー好き……です」










＊＊＊



【Side 和泉】



ーーーはじめに疑問に思ったのは、小学五年生時代のある日。
授業中にやけに後ろの方から視線を感じたのです。
振り返ると火群くんは慌てて顔を伏せます。
授業が終わり、
「授業中どうしたの？」
と尋ねると、火群くんはわたわたと慌てた様子で、逃げてしまいました。
人と話すのは、苦手みたい。

けどそんな火群くんにも友達が全くいないって事はなかった。隣のクラスの倉川くんとよく一緒に帰っているのを見かける。それを見て私はなんだか少し安心。なんて思っちゃうのは、お節介すぎかな…？

しかし授業中や休み時間は基本的には1人でノートに一生懸命なにかを描いています。休み時間はともかく、授業中は関心しません。なので授業が終わったあと、聞いてみました。
「何描いてるの？」
聞くと、火群くんは慌ててノートを閉じ、
「な、なんでもないです」
と、首を横に振りまくります。
その様子がなんだか少し可愛くて。
それから私は、変な噂が立たない程度に、ちょくちょく火群くんに構うようになりました。
思えばこの頃から、火群くんは私の中でどこか特別に気になる存在だったのかも。
そして火群くんからの視線がより強く感じるようになったのも、この頃からだ。

ーーーズルいな。私って。

火群くんの気持ちに気づいていながら、今までの関係が崩れてしまうのが怖くて、ずっと気づかないふりをして逃げてたんだーーー。






和泉「ーーー…ありがと。火群くん」


ずっと待ってた言葉だったはずなのにーーー。

火群「……っ…和泉……？」

いざ聞いた途端、涙がこぼれおちる。

和泉「…あれ……？ 私……なんで…泣いて……っ…？」

火群「…えと…っその…ごめん、和泉…っ！」

和泉「………ふふ…っ。火群くんまでパニックにならないでよ…っ」

火群くんは、相変わらずだ。
こういうところ、前から変わってないなぁ。

火群「…ぅぅ…っ…！」

和泉「……返事、だけどね……。私、正直なところ、火群くんへの感情が、どういうものなのかまだよくわからないんだ…」

火群「…！ それって……どういう……」

和泉「……私…、“愛”とか、“温もり”をほとんど受けずに育ってきたから……自分の“感情”にまだ自信が持てない…」

火群「……っ…！！」

和泉「だから、卑怯かもしれないけど……『わからない』が私の答え」

火群「……そっ…か…」

和泉「ーーーという事で。コホンっ。
ここからは、その……私の提案」

火群「…？」

和泉「…一度しか言わないので、よーく聞いてね。いい？」

火群「はっ…はいっ！」



和泉「…すぐにじゃなくていい、ゆっくりと、時間をかけてでいいからーーー」




和泉「ーーー“人を好きになる”ってどういう事か……私に教えて欲しいな。火群くん…っ」









少年少女は想いを分かち合い、新たなスタートラインに立った。

そして決戦の日が、想像よりもっと近くに迫ってきている事をーーーこの時の彼らはまだ知らない。
知る由は、ないのだ。








To Be Continued…






《次回予告》



雫「うわぁあああんっ！」

結維「…泣いていいとは言ったけど…、いつになったら泣き止むのよ…」

雫「…ずびーっっ！」

結維「…鼻水で服べっとべとだし……」

雫「……むにゃ……結維さんの胸の中…安心します……っ」

結維（…寝ぼけてるの…？）

結維「……ま、まぁ、今日くらい何しても特別に許してあげるけど」

雫「…むにゃ……でも私より……ちいs」

ｽﾊﾟｧﾝｯｯ‼︎



結維「次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１３５《“影”の襲撃》」



雫「ひどいです結維さんっ！ 何しても許してあげるって言ったのにっ！」

結維「あれは嘘よ」




＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙