DRAW:０３ 記憶の果てで　作：人喰い

ー黒髭中学・校門前ー

？？？「ここか……黒髭中学……」

中学生位の少年は、白髪を風になびかせ呟く。

？？？「本当にここに居るのか………？」

？？？「───市瀬……火群」


雷鳴が、響くーーー。




＊

ー黒髭中学・２－１ー

火群「魔法発動ーーー『炎王の急襲』！！！」

『炎王の急襲』
通常魔法
相手フィールド上にモンスターが存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。
デッキから炎属性の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター１体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、
エンドフェイズ時に破壊される。
「炎王の急襲」は１ターンに１枚しか発動できない。

剛田「何ぃ！？(……こいつ、本当に初心者なのか？)」

クラスメイト「ざわ…ざわ…」

火群「この効果により、デッキより現れろ！！
───勝利へ導く紅蓮の翼！！『炎王神獣 ガルドニクス』！！」

『炎王神獣 ガルドニクス』
効果モンスター
☆８/炎属性/鳥獣族/攻2700/守1700
このカードがカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、
次のスタンバイフェイズ時にこのカードを墓地から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚に成功した時、
このカード以外のフィールド上のモンスターを全て破壊する。
また、このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
デッキから「炎王神獣 ガルドニクス」以外の
「炎王」と名のついたモンスター１体を特殊召喚できる。

火群(今度こそ、俺の言うことを聞いてくれ！ 不死鳥のカード！)

ガルドニクスを召喚した瞬間、俺の頭の中が真っ赤な炎に包まれ、あの時の───二年前の記憶が蘇る。


火群(和泉───)


〜回想〜

和泉「え〜っと、このカードが今使えるやつで〜このカードは伏せないと使えないのか〜……うぅ〜わかんないよ〜」

火群(小6)「……デュエルは細かいルールが難しいからね」

和泉「もぉーっ、別に私バカじゃないもん！」

火群「うっ……ま、まあ、とにかくやってみようよ。デュエル」

和泉「…うんっ」


〜

☆４ターン目☆
火群 LP:2800
和泉 LP:3700

和泉「『フェアリー・アーチャー』の攻撃〜！」

火群「くっ……」

火群 LP:1400

和泉「やったぁ〜通った〜！
カードを一枚伏せて、ターン終了〜」

☆５ターン目☆
和泉 LP:3700
場:『フェアリー・アーチャー』攻 1400
伏せ:2枚/手札:2枚

火群 LP:1400
場:なし
伏せ:1枚/手札:4枚

火群「よし、僕のターン！」


？？？(───少年よ)

火群(───！？)

？？？(───時は熟した……汝の中の、私を解放する)



火群「ん………？ 和泉？ 今、何か言った……？」

和泉「？ 何も言ってないよ？。それより早くカード引いてよ〜」

火群「え……(じゃあ気のせいなのか……？)。 ……ドロー！」


───その時俺が引いたカードは、『炎王の急襲』。このカードで俺は『炎王神獣 ガルドニクス』を呼び出し、和泉のフェアリー・アーチャー攻撃した。
攻撃……してしまったんだ。
俺が攻撃を宣言した瞬間、『炎王神獣 ガルドニクス』のカードから炎が飛び出し、その炎で和泉の右腕を包んだ。
そこから先の事は、よく覚えていない。気がつけば俺は───病院に居た。


そして俺はあの日から───デュエルを拒むようになった。
もう誰も、傷つけたくなかったから───



〜回想終了〜


火群(でも俺は、今ここでデュエルをしている。二年間、頑なにデュエルを拒み続けてきた俺が……だ)

火群（ーーーけど、誰も傷つけたくないって想いは、あの時から変わっちゃいねぇ…ッッ！！！）


剛田「おい火群！ 手が止まってんぞ！ もうターンエンドか！？」

火群「……俺は、『炎王獣 バロン』を、攻撃表示で召喚！」

『炎王獣 バロン』
効果モンスター
星４/炎属性/獣戦士族/攻1800/守 200
自分フィールド上に表側表示で存在する
「炎王」と名のついたモンスターがカードの効果によって破壊された場合、
このカードを手札から特殊召喚できる。
また、このカードがカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、
次のスタンバイフェイズ時に発動する。
デッキから「炎王獣 バロン」以外の「炎王」と名のついたカード１枚を手札に加える。

火群「バトルだ！ バロンでジャイアントオークに攻撃！〝炎塵双乱舞〟！」

剛田「くっ……」

観客「ざわ…ざわ…」

火群「更に、ガルドニクスでプレイヤーにダイレクトアタック！
〝バーニング・イレイザー〟！！」

ゴオォッ！！

俺が攻撃を宣言すると、ガルドニクスのカードから炎が飛び出し、剛田へと向かう。
幸い、周りの奴らに炎は見えていないらしく、みんなはまるで無反応だ。

火群「くっ……(剛田は確かにムカつくヤツだが、デュエルで人が傷ついていい訳がない！ 絶対に、止めて見せる！)」

俺は心の中で、力の限り、叫ぶ。

火群（俺はもうこの力で誰かが傷つくのは嫌なんだ！ だからやめてくれッガルドニクス！
……主である俺の言うことを聞きやがれぇーーー！！）


？？？（───言うようになったな。ホムラ）


刹那。
炎が、消えた。

火群（この声は……！ やっぱり、お前だったのか───ガルドニクス。）

ガルドニクス（……ああ）

火群（…言うことを聞いてくれて、ありがとうな）

ガルドニクス（……ふん。私がもう少し、お前の視界で、お前の世界でものを見たくなっただけだ……）

火群（……そっか…）

ガルドニクス（……ふん）

まぁなんにせよ、犠牲者は０で済んだんだ。良かった……。


剛田「……ぐぅ！」

剛田 LP:4000→1300

火群「俺のターンのエンドフェイズ……炎王の急襲の効果により、ガルドニクスは破壊される。ターンエンドだ」

剛田「くっ！（俺様の最強デッキが……押されてる……！？）俺様のターン！ ドロー！」

市瀬 火群 LP:3400
場:バロン 攻:1800
伏せ:なし/手札:2枚

剛田 武 LP:1300
場:なし
伏せ:なし/手札:5枚

剛田「………」

明日人「……剛田、急に黙り込んで……どうしたんだ？」


剛田「…お前よォ。初心者のクセに、何でそんなに真っ直ぐデュエルと向き合えるんだよ」

火群「……デュエルが…、デュエルが、好きだから」

剛田「……ッ…。そういうとこが、気に入らねェんだよ…」

　吐き捨てるように言うと、

バサッ！

火群「！？」

明日人「！？」

観客「ざわ…ざわ…」

どういうことか、剛田は手札にあった二枚のカードを墓地に捨てた。
その二枚のカードは、『サンダーボルト』と『天使の施し』。両方共、禁止カードだ。
一体、何のつもりだ……？

剛田「…こんな、禁止カードに頼って勝ったって、面白くねぇよな……」

火群「剛田………」

剛田「ハッ！！勘違いすんなよ！！テメェなんざ禁止カードを使うまでもねぇってことだ！！
この3枚の手札で……俺様の実力で……火群！ お前を叩き潰してやる！！」

火群「へへっ……」

　口は悪いが、剛田もデュエルが好きなんだ。
面白え！ 面白え！ 面白えよ！ やっぱりデュエルはこうでなくっちゃな！

火群「だったら俺は！ お前の全力を全力で受け切った上で、このデュエルに勝つ！！」




To Be Continued…