DRAW:１９１ -Diabolos-　作：人喰い

(191)





〜YAGAMI本社ビル45階・神託の間〜



【Side 火群】




八神【LP 350】
(モンスター)
『アポクリフォート・キラー』[ATK 3000]
『シャドウトークン』[DEF 500]x4
(魔法)
『クリフォート・ツール』[♦︎ 9]
『クリフォート・アセンブラ』[♦︎ 1]
『機殻の要塞』(フィールド)
(罠)
『機殻の再星』(永続)
伏せ:0
手札:4
EXデッキ:エイリアスx1 シェルx1 ディスクx1 アクセスx1 ツールx1 アーカイブx2 ゲノムx1 アセンブラx1


マイン【LP 3300】
(モンスター)
『悪魔嬢リリス』[ATK 2000]
(魔法)
『暗黒世界ーシャドウ・ディストピアー』(フィールド)
伏せ:0
手札:4
墓地:ネヘモスx1 煉獄の死徒x1




『悪魔嬢リリス』[ATK 2000]


苦しげにマインが召喚した赤き髪の悪魔は、社長をキッと睨みつける。


八神「……リリス………最後の最後に…お前がワタシに牙を剥くのかーーーーー」


八神（………この光景は“視えて無かった”。
いや、ワタシの中に染み渡った“悪魔の血”が、この未来を見せまいと働きかけていたーーーーー）


社長が一瞬動揺した隙を逃さず、マインは獣のような哮りを上げ畳みかける。



マイン「…オオォォォォォァァァァァッッ！！！」


勢いよく振り払われた右手から３枚のカードが投げ捨てられ、空間に開いた亀裂に吸い込まれていくーーーーー


『インフェルノイド・デカトロン』手札→除外
『インフェルノイド・ベルフェゴル』手札→除外
『インフェルノイド・アドラメレク』手札→除外


八神「……ッ…！」

火群「……ッ…！ まだこれだけのインフェルノイドを持っていたのか……ッ…！！」




マイン「ーーーーー墓地より蘇り、我以外の全てを焼き尽くす煉獄の焔…………ッ…！！！
今こそ終焉の刻だ…ッ…！！！」


悪魔の血肉が地に沈みかけたネヘモスへと吸収され、煉獄の悪魔は再びフィールドへと舞い戻った。


マイン「……再び顕現せよッ！！
第１０のクリファ[キムラヌート]ーーーーー物質主義なる悪魔……ッ…！！
『インフェルノイド・ネヘモス』ッッ！！！」




大地を大きく割り、蘇った悪魔は虹色の焔を纏い咆哮するーーーーー



ネヘモス『グギガアアアァァアアァァァアアアァァッッ！！！』[ATK 3000]



《インフェルノイド・ネヘモス/Infernoid Onuncu》 †
特殊召喚・効果モンスター
星１０/炎属性/悪魔族/攻3000/守3000
このカードは通常召喚できない。
自分フィールドの全ての効果モンスターのレベル・ランクの合計が８以下の時、
自分の手札・墓地から「インフェルノイド」モンスター３体を
除外した場合のみ手札・墓地から特殊召喚できる。
(1)：このカードが特殊召喚に成功した時に発動できる。
このカード以外のフィールドのモンスターを全て破壊する。
(2)：１ターンに１度、魔法・罠カードの効果が発動した時、
自分フィールドのモンスター１体をリリースして発動できる。
その発動を無効にし除外する。


八神「ーーーー『アポクリフォート・キラー』の永続効果により……、特殊召喚されたモンスターの攻守は500ダウンする……ッ…！」


『インフェルノイド・ネヘモス』[ATK 3000→2500]


マイン「……クク…ッ…悪足掻きを……！
だが、貴様の場に伏せカードはもう無い……ッ…！！
この一撃で朽ち果てろ……ッッ…！！
ーーーーーリリスの残り香と共になァ…ッッ！！！」


辺りに無数の火柱が上がり、ネヘモスは翼を大きく広げたーーーーーー



マイン「ーーーーー〝プルガトリオ・ディ・フィアンマ〟ッッ！！！」



しかしその炎の勢いを止めようと、１体の小さなモンスターがネヘモスの前に立ち塞がるーーーーー


八神「ーーーーッ…ワタシは手札から……ッ『エフェクト・ヴェーラー』を墓地へ送り効果を発動……ッ！！」


《エフェクト・ヴェーラー/Effect Veiler》 †
チューナー・効果モンスター
星１/光属性/魔法使い族/攻 0/守 0
(1)：相手メインフェイズにこのカードを手札から墓地へ送り、
相手フィールドの効果モンスター１体を対象として発動できる。
その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。


八神「……ネヘモスの効果をエンドフェイズまで無効にするーーーーー」


火群「……！ エフェクト・ヴェーラーまで持っていたのか……！」


だが、おかしい。

マイン「……ククク……ッ…」

対象となったネヘモスが、炎に包まれ消えていくのだーーーーー

その横でリリスは悪戯に笑う。


マイン「ーーーー『悪魔嬢リリス』の効果」



《悪魔嬢
あくまじょう
リリス/Lilith, Lady of Lament》 †
効果モンスター
星３/闇属性/悪魔族/攻2000/守 0
このカード名の(2)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：召喚したこのカードの元々の攻撃力は１０００になる。
(2)：自分フィールドの闇属性モンスター１体をリリースして発動できる。
デッキから通常罠カード３枚を相手に見せ、
相手はその中からランダムに１枚選ぶ。
そのカード１枚を自分フィールドにセットし、残りのカードはデッキに戻す。
この効果は相手ターンでも発動できる。



八神「……ッッ…！！」


マイン「ーーーーーリリスの効果は『機殻の再星』で無効となっているが……コストを支払う事はできる……ッ…！！
……ネヘモスよ…贄となれーーーーー」


ネヘモスが地に沈んだ事でエフェクト・ヴェーラーの対象が不在となった。
そしてーーーーー


マイン「ーーーーー例えその身朽ち果てようとも……ッ…、“焔”は、“意思”は、残り続ける……ッッ！！」


八神「…！！
（……“残り続ける意思”…か……）」


リリス『………』


瞬間、リリスの表情が少し歪んだ様に見えたが、すぐに荒ぶる炎に囲われその姿は見えなくなってしまう。


火群「……っ…」

まるで、助けを求める様な……そんな眼ーーーーー



直後にネヘモスの焔はフィールド全てを包み込む。


八神「……ッッ…！！」


フィールドのモンスターは煉獄に焼かれ、辺りに爆煙が吹き荒れる。

アポクリフォート・キラーという強固な要塞を打ち崩されはしたもののマインの墓地リソースは底を尽き、手札も残り１枚ーーーーー



八神「ーーーーーマイン……お前は強い。
…だが、強いだけでは何も変えられない」


マイン「……ならリリスは………俺の母親は…、何かを変えられたのかーーーー？」


八神「…それはわからない」

マイン「……ッ」

八神「ーーーーしかし彼女は、最期の瞬間まで己の宿命に抗い、生命の限りを尽くした……」


マイン「ーーーーそれがどうした…。
リリスは弱かったから死んだ……それだけのこと…ッ……」


八神「……マインーーーーお前に彼女の血が流れているのなら、いずれ必ず分かるはずだ…。
“人”と共存し生きる事の、意味がーーーーー」



マイン「ーーーーー要らん世話だ」



ーーーーー刹那。


八神「……ッッ…！！！」


本当に一瞬の出来事だった。

マインが右手を前に突き出した、その瞬間。



八神「……ッ……が……っ…ッ……！！」【LP 350→0】



社長の背後から現れた巨大な腕が、社長の腹を貫いた。


八神「………が……ッ…ふ…っ…ァ…ッ……！」


社長の腹を貫いた腕はゆっくりと引き抜かれ、影に隠れていた龍に似た姿の悪魔が姿を現した。


シルバ「……ッッ！！」

メアリー「…八神社長っっ！！！」


火群「……ッ……！
なんなんだ……ッ…あの悪魔は……ッ…！！？」






マイン「ーーーーー否」



◉Winner◉
-マイン-



決闘が終了し立体映像が消えゆく中で、マインは言う。




マイン「ーーーーー魔王だ」















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:１９１ーーー
《-Diabolos-》















マイン「悪魔では無いーーーーー魔王だ」



その一声の直後、社長の身体はその場に倒れ伏し、“魔王”と呼ばれた存在は大きく翼を広げた。


マイン「ーーーーー其の名は、
『闇黒の魔王 ディアボロス』ーーーーー
俺の場の闇属性モンスターが生贄となった場合に、手札・墓地より現れるーーーーー」



魔王『グォォッァァァアァァァァッッ！！！』[ATK 3000]


《闇黒
あんこく
の魔王
まおう
ディアボロス/Darkest Diabolos, Lord of the Lair》 †
効果モンスター
星８/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2000
このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードが手札・墓地に存在し、自分フィールドの闇属性モンスターがリリースされた場合に発動できる。
このカードを特殊召喚する。
(2)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
相手はこのカードをリリースできず、効果の対象にもできない。
(3)：自分フィールドの闇属性モンスター１体をリリースして発動できる。
相手は手札を１枚選んでデッキの一番上または一番下に戻す。



魔王の咆哮が鳴り響く中、マインは倒れる社長の元へと足を進める。



マイン「ーーーーー慈しみ。愛。共生………俺には理解できない。
リリスがどうだったかは知らんが…、どうやら俺の中の“悪魔の血”は……正しい感情を拒否するらしいーーーーー」


八神「……ッ………」


マイン「………これも貴様の行った呪術の代償…………どの道俺はもう後戻りなどできない。
貴様の屍すらも踏み躙り、進む所まで進ませて貰うぞーーーーー」


マインはそう言って社長の傍に屈むと、社長の背から手を突っ込み、勢いよく何かを引っこ抜いた。


マイン「……これが“邪悪の樹”を起動させる鍵か……」


引き抜かれた“それ”はクリフォートに埋め込まれた“核石”の様な形状で、僅かに虹色の光を放っていた。


火群「……ッ…！！ 邪悪の樹を……起動させる……っ…！？」


つまり、マインはこのまま精霊界に行くつもりだっていうのか……！？



マイン「……開け、“邪悪の樹よーーーーーー」


マインが“鍵”を邪悪の樹に埋め込むと、邪悪の樹が扉の様に開いてゆくーーーーー


火群「……おいッッ！！！ 逃げんのかよッ！！
不死鳥のカードは要らねぇっていうのか！？」

マインは俺の叫びに振り返り、冷たい視線を向ける。

マイン「……貴様らの囚われているその防壁は俺でも破壊することはできない。
どうやらこの男は…、死んでも貴様らを守り続けるつもりらしい」

火群「……ッ…！」

マイン「……その防壁が崩れ散るのを待ってる程暇でも無い……。
………市瀬火群…不死鳥は貴様に預けておくーーーーー
…父上の視ていた未来によれば、俺と貴様は必ずーーーーー近い内に再び死合う事となるらしいからな……ッ……」


火群「ーーーーーっ」


メアリー「…！」

シルバ「……ッ………」



マイン「……ククク…………ッ……！」


マインは最後に喉を鳴らし、邪悪の樹の奥に渦巻く混沌の闇へと姿を消したーーーーー







＊＊＊




マインが去った直後、俺たちを囲っていた防壁が崩れ落ち、俺たちはすぐに八神社長の元へと駆け寄った。


火群「……社長…！！！ 八神社長っ！！」

メアリー「…すぐに救急車を呼ぶワ…！！」


シルバ「……待て。
…………もう、手遅れだ」


八神「……ッ……っ……」



胴体に直径３０センチ程の大穴が空いており、出血が酷い。


八神「……ハァ……ッ……ハァ……っ……いいか……よく聞け…」

そんな中、社長は必死に何かを伝えようと口を開く。

八神「………ハァ……ッッ……“邪悪の樹”のメインシステムには……ハァ……ッ……細工をしていてな………っ…。
……ワタシ以外の者がこの“門”を使用した時…、この“門”の機能は完全に停止する………っ…」


火群「…！ つまり……今マインはあの樹の中に閉じ込められてるって事か……っ！！」

八神「……その通りだ…。
ハァ………ッ……しかし、明後日の午前６時までしか停止させておく事はできない………ッ……。
その時刻を過ぎればマインは邪悪の樹から更なる力を手にし、精霊界と人間界……双方へ向けて、最終戦争を仕掛けるだろうーーーーー」

メアリー「……そんな…！！」

シルバ「……我々はそれまでに、終焉の焔に対抗する為の作戦を練ればいいという訳ですか？」

八神「……ああ……。全ての指揮はお前に任せる………頼んだぞ………シルバ…ッ………」


シルバさんは社長の手を固く握り、呼びかけに応じた。

シルバ「………ハイ。
貴方は“未来視”という大きすぎる力によりのしかかる重圧、責任、孤独の中で、最期までその使命を全うしました。
……せめて、安らかにーーーーー」


社長はどんな未来が視えていたのか、具体的に教えてはくれなかった。
それはきっと、周りの人間がその未来を知った事で、未来が変わってしまう事を恐れての事だったんだ。

俺はそんな簡単な事に、この瞬間まで気づけないでいた事を悔やんだ。

火群「……っ…」

常に未来の大筋に影響を与えないレベルで、周りの手助けをするなんて、苦悩の連続だっただろう。


八神「………市瀬…火群」


そこで、八神社長は俺の名を呼ぶ。


八神「……必ず……マインの心を救ってくれ……ッ……」


そしてーーーーー


八神「………お前たちなら……ッ……絶対にできる……ッ……」


掠れた声で言うーーーーー









八神「ーーーーー……『ホムラ』と『ホノカ』。
二人なら、絶対にーーーーー」








それが、『八神 コウ』の最期の言葉となった。










To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１９２ 今できること






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙