DRAW:３６ 枯れない決闘者　作：人喰い

日付は遡り、4/28(水)
火群がスッキー先生とデュエルをした日だ。




先生「ーーーまたタバコか」


男子生徒「…別に、吸って無いッスよ」

先生「…この間、厳重注意を受けたばっかりだよなぁ」

男子生徒「………」


先生「…『新田 和也(にった かずや)』。お前は1週間の間、停学処分とする」


和也（………チッ）





ーーー新田のヤツ、またタバコかよ……。

ーーー新田くん、タバコはやめた方がいいよ…？

ーーー新田！！ またタバコかッ！

ーーータバコはやめなさい！






和也（…どいつも、こいつも……！）












遊戯王 Ph.X DRAW:３６
『枯れない決闘者』












明日人「…火群…？」


火群「…！ あー悪い悪い、ついぼーっとしちゃって。じゃあデュエルはこの辺にして、先生にプリント貰ってくるわ！」



明日人「……お、おう。（ここ最近のあいつ……やっぱりおかしいぞ…？）」




明日人「まぁいいかーーーさて、俺はどうすっかなー」



まだ時間も余裕だし、散歩でもするか。






ー花壇ー


男子生徒「…チッッ！ クソが！」

ガッ

花壇のレンガを踵の部分で蹴りつける和也。
多少脆くなってたのか、積まれたレンガの半分くらいが、衝撃によってガラガラと音を立てて崩れてしまう。

和也「………」

そして和也は無意識に、先生に没収されたものとは別に、隠し持っていたタバコの箱から1本のタバコを取り出し、慣れた動作で火を付ける。


シュボッ


和也「………はぁーっ…」


和也はタバコの吸い殻を、特に意識せず花壇の中に放り込んだ。





？？「おいっ！」





突如、和也の背後から先ほどの様子を見ていた者からの怒声が響いた。


和也「…チッ……また先公かよ、ダリィな……」


和也は、至極めんどくさそうに声のした方を振り返る。



和也「…あ？ 誰だアンタ」





明日人「…俺は『倉川 明日人(くらかわ あすと)…！ 二年生だから、君と同じ学年ですよ」


和也「………で、なんだよ。アンタも俺に、タバコはやめろとか言う気か？」

いい加減うんざりなんだよ。と、和也はため息交じりに言う。



明日人「…そんなんどうだっていいんだよ！タバコなんて勝手に吸ってろ！ 俺が怒ってんのは、花壇を蹴っ飛ばした事と、吸い殻をそのなかに捨てた事に対してだ！」



和也「……あ、そう。じゃあ吸い殻は勝手にゴミ箱に捨てて、レンガは頑張って直せよ」


明日人「…なっ、んだとぉ…！？ なんでだよ！！ フッザッけんなッ！」


明日人（……あ、やっべー。柄にもなく熱くなっちまった…）



和也「…生意気だな。俺は今、機嫌が悪いんだ…」


明日人「………！（…変に刺激しちまったか…！）」



和也「……お前、明日人って言ったな。ーーー覚悟はできてるだろうな……？」


和也はそう言うと、おもむろにポケットの中から“何か”を取り出した。



明日人（やられる……！！）



和也が取り出したのは、一組のデッキだった。


明日人「……へ？」


明日人は思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。


和也「…お前、デュエルはできるんだろうな…？」



明日人「ーーー俺はデュエルはしたこと無いぜ。でも、クラスの奴らがいっつもやってるからルールくらいは分かる。あと、デッキも一応持ってる」


明日人はなんとなく、社交辞令のように和也に言葉をかけ、ブレザーの内ポケットからデッキを取り出す。


和也「…なんだよ、初心者ちゃんかよ」


明日人「悪かったな。初心者ちゃんで。でも俺は、お前に負けるつもりはないぜ？」


すると和也は明日人の一言が癇に障ったのか、眉間にしわを寄せる。


和也「…へぇ、言ってくれるじゃん」


明日人「…じゃあそこの台を使わせて貰うか」


明日人は気にせず、デュエルに使えそうな台を探し、デュエルのスタンバイをする。



和也「…チッ…！ 後で吠えずらかくなよ…！」


和也（…俺の『除去ハイビート』でボッコボコにしてやんぜ）




「「デュエル！！」」




和也【LP 4000】

明日人【LP4000】



＊本SSは、『遊戯王OCG マスタールール２』にて行われます。あらかじめご了承ください。




◉TURN:１◉

和也「俺の先攻！ ドロー！！」【手札 6枚】


和也「俺は『ジェネティック・ワーウルフ』を攻撃表示で召喚！」


『ジェネティック・ワーウルフ』[攻 2000]
・通常モンスター


和也「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ」


和也「さぁ、かかってこいよ」


明日人「……本当にいいのか？」




和也【LP4000】
場:『ジェネティック・ワーウルフ』[攻2000]
伏せ:2枚/手札:3枚



◉TURN:２◉



明日人「…俺のターン！ ドロー！」【手札 6枚】


明日人（…おっ、いい手札じゃん）


明日人「俺は、『ローンファイア・ブロッサム』を召喚！」


『ローンファイア・ブロッサム』[攻 500]



和也「…厄介なモンスターだな！ そのモンスターの召喚時、伏せカードオープン！『サンダー・ブレイク』！ 俺は手札を1枚捨て、ローンファイア・ブロッサムを破壊する！」



明日人「…だったらこれだ！ 魔法発動！『二重召喚』！！」


和也「二重召喚……！ あれは、発動したターン、もう一度通常召喚ができるようになるカード…！」


明日人「俺はもう一体のローンファイア・ブロッサムを召喚！」


和也「！ か…っ『神の警告』を発動！」


和也【LP4000→2000】


和也（2000もライフを削っちまったのは痛いが、相手は今度こそ召喚権も失い、手札も3枚失った。もうあいつには伏せカードを伏せてターンエンドするくらいしか無いだろう）


明日人「………」


和也（そしたら、俺の手札にある『大嵐』で伏せカードを取っ払って、二体目のジェネティック・ワーウルフを召喚し、二体でダイレクトアタックすればライフは丁度０！ 俺の勝ちだ！！）



明日人「…よし」




和也「……ん？ （今こいつ、『よし』とか言ったか？）」


明日人「これで伏せカードは無くなったな」


和也「……？」



明日人「魔法発動、『死者蘇生』」



和也「」



明日人「墓地のローンファイア・ブロッサムを特殊召喚。 効果により自身をリリース、デッキの『ギガプラント』を特殊召喚。さらに手札から装備魔法『スーペルヴィス』をギガプラントに装備。これによりギガプラントはデュアル状態となる。そしてギガプラントの効果発動、墓地のローンファイア・ブロッサムを特殊召喚。ローンファイア・ブロッサムの効果発動、自身をリリース、デッキの二体目のギガプラントを特殊召喚バトルフェイズだ」


和也「…ちょ…！ ちょぉい！…ちょっと待て！ ぜってーお前初心者じゃねーだろ！そんな淡々と進めんな……！」



明日人「待たない(はぁと)」



明日人「２体のギガプラントで攻撃ィィ！！」



和也「……くっっっそおおおぉおおおっっっ！！」【LP 2000→０】




winner☆倉川 明日人☆




明日人「植物を穢すやつに俺は負けない、枯れない、絶対にな」


明日人はデッキを片付けると、その場に突っ伏した和也にそう言い放ち、その場から離れようとする。



和也「……つまんねぇ事聞くけどよ」


すると、和也が顔を僅かに起こし、明日人に声をかける。


和也「……何でそんなに大切にするんだ？ 植物っつーか、自然を」


それはほんの些細な、和也からの率直な質問だった。



明日人「………」


その質問を受けた明日人の脳裏に、いつかの記憶が蘇る。



ーーー-ーーー-ーーー-ーーー-ーーー-ーーー


明日人「…うわぁああん…！！」


父「……どうした？ 明日人」


母「…なんでも、この間お父さんに貰った観葉植物を枯らせてしまったみたいで…」


明日人「…ごめん…俺が、ちゃんと世話しなかったせいで…」


父「そうだったのか……明日人。植物は残念だったが、これをやるから泣き止みなさい」


明日人「……？ カード…？」


父「それはデュエルモンスターズというゲームで使うカードなんだけど、その中でも世にも珍しい、縁の黒いカードだ。仕事仲間に譲って貰ったんだが、知り合いの研究者に調べて貰ったところ、未来のものじゃないかって話もでてるくらい、珍しいカードなんだぞ」


明日人「そんなに……いいやつなの…？」


父「ああ。お守り代わりに持っててくれ」


明日人「…ありがとう！ 光ってて綺麗だな…！………！？」


父「……！」


母「………！」


明日人がカードを受け取ると、カードが淡い緑色に発光し始め、植木鉢の中で無様に萎れていた観葉植物が、緑色の光を帯びながらスクスクと起き上がる。

その出来事に呆然する家族一同だった。




明日人（…俺は、もっと強くならなきゃな。今度は誰にも助けて貰わず、自分だけの力で、護るんだ）


小さき少年、倉川 明日人が、そう誓った瞬間であった。



ーーー-ーーー-ーーー-ーーー-ーーー-ーーー


明日人「………」


しばし返答に困った挙句、


明日人「まあ、特に理由なんてねーよ」



明日人はそう答えた。





和也「……チッ、そうかよ。だが明日人、そんなお前にとっちゃあ朗報か悲報かはわかんねぇが……」



和也「ーーー明日の午前10時ごろ、町の植物園で『終焉の焔』って連中が何かやらかすみたいだぜ。ーーーなんでも、火を使ってな」



………えっ？


………町の植物園って言ったら、俺の父親が働いてる黒髭植物園じゃあ…。


明日人「……その話は本当なのか…！？」


和也「『終焉の焔』を抜けて来たって言う先輩から聞いた話だから、間違いはないと思うぜ」



聞き終わる頃には、明日人はもう走り出していた。



和也「…まさか本気で止めに行くつもりか…？ つっても明日の朝だぞ…」






＊


ーーーどうする？ 先生や警察に相談するか？ いや、愚問ってやつだ。



ガララッ


明日人「…先生、本日は腹痛の為、早退させていただきます」


先生「えっ？ あっ、ちょ…！」



明日人「…さようならー！」



今日は授業受けてる場合じゃないな。


行こう。
まずは、植物園だ。




ーーー-ーーー-ーーー-ーーーTo Be Continued…




《次回予告》



どんな事があっても、決して枯れない、強い意志。



次回、遊戯王 Ph.X
DRAW:３７ ファイア・ブロッサム