DRAW:１９０ 悪魔が産まれた日　作：人喰い

(190)




〜YAGAMI本社ビル45階・神託の間〜



【Side 火群】




八神【LP 700】
(モンスター)
『アポクリフォート・キラー』[ATK 3000]
(魔法)
『クリフォート・ツール』[♦︎ 9]
『クリフォート・アセンブラ』[♦︎ 1]
『機殻の要塞』(フィールド)
(罠)
『機殻の再星』(永続)
伏せ:0
手札:1
EXデッキ:エイリアスx1 シェルx1 ディスクx1 アクセスx1 ツールx1 アーカイブx2 ゲノムx1 アセンブラx1



マイン【LP 3300】
場:なし
伏せ:0
手札:5
墓地:ネヘモスx2 アシュメダイx1 煉獄の死徒x1



◉TURN:０５◉



火群「ーーーーーあの要塞が……第１０のクリファ……っ…！！」


…初めて見るはずなのに、前にどこかで見たことがあるようなーーーーー




〜〜〜〜〜



『ーーーここは休息の地…。神へ仇なす者を土へと還せーーーーー』



〜〜〜〜〜



火群「……ッッ…！」


思い…出した…！
この機兵は……終焉の焔“伍召焔”の一人ーーーー『ジャラン=カルディーネ』が使っていた融合モンスター、『エルシャドール・シェキナーガ』にあまりにもよく似ているーーーー


《アポクリフォート・キラー/Apoqliphort Towers》 †
効果モンスター
星１０/地属性/機械族/攻3000/守2600
このカードは特殊召喚できず、自分フィールドの
「クリフォート」モンスター３体をリリースした場合のみ通常召喚できる。
(1)：通常召喚したこのカードは魔法・罠カードの効果を受けず、
このカードのレベルよりも元々のレベルまたはランクが低いモンスターが発動した効果も受けない。
(2)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は５００ダウンする。
(3)：１ターンに１度、自分メインフェイズに発動できる。
相手は自身の手札・フィールドのモンスター１体を墓地へ送らなければならない。



八神「…ワタシはカードを１枚伏せ、ターンを終了するーーーーそしてこのエンドフェイズ時、Pゾーンの『クリフォート・アセンブラ』の効果発動…！！
このターン、アドバンス召喚の為にリリースした『クリフォート』の数………計４枚のカードをドローする……ッ！！」[手札 4]

火群「……！」

リソースがまるで尽きない……ッ…まさに一進一退の攻防だーーーー


マイン「……同時に『シャドウ・ディストピア』の効果も発動…ッ！！
このターン生贄となったモンスターの数まで…ッ、ターンプレイヤーの場に『シャドウ・トークン』を守備表示で特殊召喚する！！」

社長の場が、生贄となったモンスター達の怨念のようなもので埋め尽くされる。


『シャドウ・トークン』[DEF 1000]☆3
『シャドウ・トークン』[DEF 1000]☆3
『シャドウ・トークン』[DEF 1000]☆3
『シャドウ・トークン』[DEF 1000]☆3



◉TURN:０６◉



マインのターン。
社長の従える機兵のプレッシャーがこちらにも伝わってくる。



八神「ーーーー通常召喚したこのカードはレベル９以下のモンスターが発動した効果を受けず、相手の魔法・罠の効果を受けない。つまり、属性も地属性のままだ」


火群「……！ って事は、シャドウ・ディストピアを通してのリリースも受け付けない…って事か…っ！！」


八神「……もっとも、仮に属性が闇に変化したとしても、シャドウ・ディストピアの効果が適用されないこのカードをコストとしてリリースする事は出来ないがねーーーー」


対するマインは動じず、カードを引く。

マイン[手札 6]

マイン「…そうだな。
そしてそのカードを操る貴様自身が一番わかっているだろうが、そいつを突破する為にはあのカードを使う他ないーーーーー」


八神「ーーーーー第１０の……クリファ…ッ…」


直後、地響きと共に地中から火柱が上がり、火柱を背にしたマインの黒き長髪が陽炎と混ざり揺れる。

火群「……ッ…！」

同時に墓地、そして手札から合計３体の悪魔が生贄となり、虹色に輝く発光体が現れるーーーーー


『インフェルノイド・アシュメダイ』墓地→除外
『インフェルノイド・ネヘモス』墓地→除外
『インフェルノイド・ヴァエル』手札→除外



マイン「ーーーーー今ここに顕現せよ…ッ…！！ 第１０のクリファ[キムラヌート]ーーーーー物質主義なる悪魔……ッッ『インフェルノイド・ネヘモス』ッッ！！！」



マインの足元から紅蓮の焔が渦を巻き、熱風が辺りを包むーーーーー

炎の中より現れた悪魔は、眼前の機兵に埋め込まれた虹色の“核石”が放つ光に呼応し、咆哮した。



ネヘモス『グギガァァァアァァァアァァァァッッ！！！！』[ATK 3000]



《インフェルノイド・ネヘモス/Infernoid Onuncu》 †
特殊召喚・効果モンスター
星１０/炎属性/悪魔族/攻3000/守3000
このカードは通常召喚できない。
自分フィールドの全ての効果モンスターのレベル・ランクの合計が８以下の時、
自分の手札・墓地から「インフェルノイド」モンスター３体を
除外した場合のみ手札・墓地から特殊召喚できる。
(1)：このカードが特殊召喚に成功した時に発動できる。
このカード以外のフィールドのモンスターを全て破壊する。
(2)：１ターンに１度、魔法・罠カードの効果が発動した時、
自分フィールドのモンスター１体をリリースして発動できる。
その発動を無効にし除外する。




しかし直後。



八神「ーーーーー伏せカードオープン」


ネヘモスの胴体を神の雷が貫いた。


マイン「……ッッ…！！」



開かれたカードは、カウンター罠ーーーーー『神の宣告』ーーーーー




八神「ーーーーーライフを半分支払い……ッ…ネヘモスの特殊召喚を無効にし…、破壊する…ッッ！！」


八神【LP 700→350】


神の裁きが下され、悪魔は再び地中へと身を沈めてゆくーーーー


ネヘモス『……ガァァアアァアアッッ！！！』


ところが悪魔は、完全に沈む前に鋭利な牙を地にめり込ませる。

まだ、諦めていないーーーーー？


マイン「…ふざ…ッけるなよ……ッ…！
俺も……ネヘモスも……ッ……何度だって地の底から這い上がり…ッ…貴様ら人間共に復讐する…ッッ！！
ーーーー必ずだッッ！！」


マインは叫び、１体のモンスターを召喚する。


マイン「ーーーー『悪魔嬢リリス』を召喚！！」[ATK 1000]



《悪魔嬢
あくまじょう
リリス/Lilith, Lady of Lament》 †
効果モンスター
星３/闇属性/悪魔族/攻2000/守 0
このカード名の(2)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：召喚したこのカードの元々の攻撃力は１０００になる。
(2)：自分フィールドの闇属性モンスター１体をリリースして発動できる。
デッキから通常罠カード３枚を相手に見せ、
相手はその中からランダムに１枚選ぶ。
そのカード１枚を自分フィールドにセットし、残りのカードはデッキに戻す。
この効果は相手ターンでも発動できる。


召喚された赤髪の悪魔は、怒りに満ちた表情で社長を睨みつける。


八神「……ッッ…！！」


召喚に反応して『機殻の再生』の効果が発動し、リリスの効果が無効となり、自身の効果で下がっていた攻撃力も元に戻る。


『悪魔嬢リリス』[ATK 1000→2000]


八神「…………」

しかしそれよりも社長の様子がおかしい。
リリスが召喚された時から、かなり落ち着きを欠いたように見えた。

それも束の間、社長はゆっくりと口を開き、目の前の悪魔の名をーーーーー

否。

ーーーー１人の女性の名を、呼んだ。



社長「……リ…リスーーーーー」
















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:１９０ーーー
《悪魔が産まれた日》















〜〜〜〜〜





赤髪の女性「ーーーーーコウ。研究は順調？」

長い赤髪を揺らしながら、長身の男性に近づく黒い肌の女性。

八神「…ああ、君のおかげで順調に進んでいるよ。リリス」

リリスと呼ばれた赤髪の女性は悪戯な笑みで返す。

リリス「…ククク……それは良かったわ」

八神「……君が“悪魔の血液”を提供してくれたお陰で、新たな発見も沢山あった」

リリス「…魔界を追放された私をここに匿ってくれているんだから、そのくらい協力するのは当然よ」

八神「……フッ……君は本当に悪魔なのかどうかを疑うな」


リリス「…ククク…！
天使との間に子を作り、魔界を追放された私よ。
…そんな疑問、今更ね」


悪魔は笑う。二人にとってはなんでもない様な日常の会話。

一人の研究者は悪魔と出会ったことで“悪魔”という存在に興味を持ち、研究を進めた。
一体の悪魔は恩を返す為、その研究に身を貸している。

一日の間で２人が会えるのは、特別研究室での研究中、約一時間。
“悪魔”という危険な存在を扱っている都合上、情報漏洩防止の為、この研究室は一日一時間しか使えない規約が課せられていたのだ。


リリス「ーーーーコウ」

悪魔に似つかわしくない、澄んだ声。

リリス「…コウはなんで、悪魔を研究しようなんて命知らずな事、思ったの？」

その問いに対し八神は数秒黙り込んだ後、ゆっくりと口を開く。

八神「……実際に人々に害を及ぼしたわけじゃないのに、人々から避けられ穢れのように扱われる……そんな君たちの事を、ワタシはもっと知りたいと思ったんだ」

リリス「……！」


八神「ーーーーそしてリリス。
君のような“良い”悪魔もいるって事を、人々に知らせてやる。
…それは、ワタシにしかできない事だ」

リリス「………私自身、悪魔の中で変わった部類だと思うが、……君は人間の中でもかなり変わった部類らしいなーーーーー」


八神「……フッ……ならば変わり者同士、約束をしようじゃないか」

リリス「…約束…？」

八神「ーーーーワタシは君を必ず守り通す。
だから君は、人々を護るんだ。その悪魔の力を、決して人を傷つける為に使用しないと、約束してくれ」


リリス「……クク…ッ！ 何よ今更…。
ーーーいいよ。コウ。
あんたは私を護る。
私は人を護るためにこの力を使う。
くはは…っ！
『約束』だよーーーーー」


悪魔は優しく、どこか挑発的に笑う。







そしてそれが、彼女の魅せた最期の笑顔となった。






＊＊＊






翌日、八神はいつもと同じように特別研究室に足を踏み入れた。

瞬間、異変を感じる。



八神（……腐臭………ッ……！？）


慌ててドアを開けるーーーーー


すると一面には、血。血。血。血。


血。




八神「……は？」




そして血痕の中心に、リリスの亡骸があった。


八神「………は？」


真っ白になる頭を、一瞬にして目の前の血が赤く染める。また白く、赤く、その繰り返し。

八神はぐちゃぐちゃな思考回路の示すまま、ゆっくりと足を前に進める。

“リリスだったもの”がある方へ。


八神「…………ッ……」


“それ”は一糸纏わぬ姿で、不健康に見える黒き肌が全て顕になっていた。
紛れも無い。彼女はリリスだ。

否、“リリスだった”。

身体中痛々しい痣だらけで、手首には縛られた痕もある。
更には腹部の損傷が酷く、死因は恐らく腹部からの出血多量。
そしてそれだけでは無い。
血のイメージで赤く染まった頭の中が、再び真っ白に染まる。

八神「……ゥ……ッ……」

それ程までに、彼女の全身は白い液体によって酷く汚れていたからだ。

赤き髪も、黒き肌も、全部白濁に塗れ、陰部からは大量の液体が溢れ出ている。


ーーーーー集団による性的暴行。


悪魔はこの世界において貴重な存在だ。
その子孫を作れたとなれば、研究もさぞ捗るだろう。


八神「……同業者に、我々の事を嗅ぎ回っていたヤツ等がいたのか」

彼らがこの研究所を突き止め、リリスを犯し、子を孕ませようとした。と、八神は疑った。それしか考えが至らなかった。

八神「…そしてお前は…自ら死を選んだ…ッ……」

しかしそれだと新たな疑問も残る。


なぜリリスは、抵抗しなかったのか。


悪魔の力を使えば、人間如きいくら束になろうが、敵うはずがないーーーー



八神「…約……束ーーーーー」


そこで思い出す、まだ記憶に新しい彼女との約束。


自分が彼女を護り、彼女は人々を護る。
人を傷つけるために、悪魔の力は使わない。

そう、約束した。


八神「……君はそれを…………守ろうとしたのか……っ……？」


八神「…醜き人間共に犯されながらも…ッ…ッ………ワタシとの……ッ……約束をーーーーー」


彼女は悪魔という生まれ持った宿命に、最後まで抗った。
そしてこれ以上争いの種を産まぬよう、自ら命を絶つことで、終止符を打った。

安寧を手に入れるには、それ相応の“代償”が必要だった訳だ。


八神「ーーーーだが…、君の意思は……ッ…ここで潰えさせたりなどしない………ッッ……！！」


八神は“リリスだったもの”の腹部から流れ続ける手ですくい、一口、啜った。


八神「……ゥ”…ッ……ッッ！！ ァ”…ァ”……ッ…！！」


悪魔との“血の契約”。

それは、悪魔の血を飲み、両腕を“贄”と捧げる事で、悪魔の子を作る事ができる“禁断の呪術”の一つだった。


八神「……ァ”ァ”ァ”ァ”ッッ！！！」

両腕は千切れ、感じたことの無い痛みにのたうちまわる。


しかし“贄”を捧げたことで、“契約”は結ばれた。



八神「……リリスーーーーー“約束”は………必ずーーーーーー」





この日、“リリスの意思”はーーーーー“マイン Mine”へと受け継がれた。












To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１９１ Diabolos






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙