DRAW:１５１ 真夜中の決闘　作：人喰い

(151)




〜積木町・ネットカフェ〜


和泉（……ん…。ここはーーー）

和泉（そうだ…。私、明石さんとネットカフェに来てて、寝ちゃってたんだ……）

眼鏡をしていないので視界がぼやけているが、爽香が居ることを確認する。
しかし様子がおかしい。


爽香「……ん……っ……ぅ…ん…っ…っ…！」

和泉「………っ…？」

目を細めてよく見てみると、何やら爽香は左手で自身の胸を揉みながら、右手で足の付け根をーーー


和泉「！！！？？」

和泉（…なになになになになによあれぇ！？ いやっ、わかるけどっ！）

爽香「…ぁ……っん…っ…！ ぃ………っ…、……っく……っ…ん…っ…！」


和泉「……///」


和泉（……わたしは何も、見ていない…）


寝たふりで誤魔化そうと思ったその時。
パソコンのグループチャットに一通のメッセージが届いた。
時刻は深夜0時5分頃。


和泉「…！」

爽香「……！」


爽香「…明日人くんからだわ…っ！ えっと…なになに…」




『敵』



送られてきたメッセージは、その一文字だけだった。

















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:１５１ーーー
《真夜中の決闘》















ーーーおよそ30分前。

〜黒髭中学校付近〜




和也「ーーーったく、剛田！ おめぇ夏休みの宿題学校に置きっぱとか考えらんねーぜ…」

剛田「…うっうるせぇよ！」

和也「ってかさ、なんで今日の夜なんかに取りに行くことにしたんだよ」

剛田「……宿題無ぇのがカーチャンにバレちまってよ……今すぐ学校に取りにいって来いって言われたんだ…」

和也「…ぷっっはははっ！ 情けねー！」

剛田「あーっうるせぇうるせぇ！！ さっさと行くぞ！」

和也「…なんで俺まで……。
…ま、夜の学校なんて面白そうだからいいんだけどな…！」


ｻﾞｯｻﾞｯｻﾞｯｻﾞｯ


剛田「…よし、ここを曲がれば学校………って……！！ なんだありゃ！？」

和也「…！！
学校付近に警察……！？
……お前、なんかやらかしたか…？」

剛田「…なんもしてねーよ！ お前こそまた問題起こしたんじゃねぇか！？」

和也「…んなわけ！
………だとすると…、事件かもな」

剛田「…事件だと……！？」





……

………



〜黒髭中学校・1F教室〜

【SIDE 明日人】



好「ーーーいいか古宮。女子を料理で落とすのは簡単じゃない。
…味はもちろん、見た目の華やかさ、芳醇な香り、そういった要素も当然取り入れなければならないヨ」

栗須「……なるほど…」

明日人「………」

好「…だが、人にも当然好みはある。まずは相手の事をよく知り、尊重し、体調面にも気を使った料理を出してあげるのがいい」

栗須「勉強になりまァす！ スッキーせんせー！」

明日人「……」

栗須「…ちなみに、味、見た目、香り、栄養面、って言ってきましたけど…、先生が料理で一番重要視してるのってどれなんすか？」


好「……そのどれでもないーーー“愛”だヨ」


栗須「！！」

明日人「………」

好「…本当に相手の事を愛して作ったのなら、どんな料理でも美味しく感じてしまうものなのサ。
そこはまさにプロにも届き得ない領域ーーーそれが、愛」

栗須「…先生にも…、そういった“経験”があると……？」ｺﾞｸﾘ…

好「………」


好「…終焉の焔の連中は、いつになったら来るんだろうねぇ……」

栗須「…強引に話を逸らした！？」

明日人「…ってかこんな時なんでもうちょっと緊張感持ってくださいよ…」


栗須「…つってもよ、外にはデュエルポリスも駆けつけてくれたし、先生も一緒だし、ぶっちゃけあっさりと追い返せそうな気がしねーか？」

好「…いや、確かに倉川の言う通り油断もできない。
奴らがどれくらいの兵力で攻めて来るかも、まだわからないからね」

栗須「…確かに…っ」

好「…けど、こんな状況でも気張らず、フラットな気持ちでいることも大事だよ。
あんた達はいつも通り笑い、いつも通りに戦えばいいのサーーー」


明日人・栗須「「……ハイっ！」」






そして日付けの変わる瞬間ーーー





ﾄﾞｺﾞｫｫｫｵｵｫｫｵｫｯｯ‼︎



明日人「……！？」

栗須「！！？」

好「……ッ…！」


爆音と共に校舎内が激しく揺れる。


明日人「…外のポリスからはまだなんの連絡も無いのに…！」

栗須「遠距離からの攻撃か！？」


好「……ッ…！！ 違う……この音…ッ…！ 校舎内で何かが爆発したのカ…！！」

明日人「…！！」

揺れはまだ収まらない。
それどころか、爆発音と強い衝撃が断続的に続く。

栗須「…っくそ…！ どうなってんだよぉ！？」

好「……落ち着け…！ アタシは上まで行ってこの爆発の原因を確かめて来る…！ アンタ達は校舎の外に出て外から状況を探るんだ！」

栗須「…えぇ！？ 先生一人じゃ危険っスよ！」

明日人「…いや、ここは先生の言う通りにしよう…！ 俺たちが一緒に行っても、返って足手まといになるだけかもしれない…」

栗須「……ぐっ…」

好「…すまないな。二人とも。
…外は任せたヨ…っ！」


明日人「…任せてください…っ！」

栗須「幹部だろうがなんだろうが、ぶっ飛ばしてやるぜ…っ！！」



ﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯ


明日人「………」

問題は…、ここに狙いをつけた人物…。
校舎内に爆弾が仕掛けられていたとして、一体いつ仕掛けたんだ…？ そしてなんのために…？


栗須「……おいクラース！！」

理科室の前を通りかかったところで栗須に呼び止められる。

明日人「…！！ どうした…！？
…ぅお…っ！」

考え事をしていたせいで気付くのが遅れてしまったが、前方の道の棚が倒れている所為で進めなくなっていた。

明日人「…おいおい…。これじゃ外に出れないじゃねーか…」

栗須「…しょうがねぇ、理科室に入って、理科室の窓から外に出ようぜ！」

明日人「…ああ、そうするか」



ｶﾞﾗﾗｯ


〜黒髭中学校・理科室〜



栗須「…真夜中の理科室って、なんか不気味だぜ…。
あの人体模型とか……、う、動いたりしねぇよな…？」

明日人「…なんだお前、ビビってんのか？」

栗須「んんなななわけねぇだろ！！ さっさと窓開けて出るぞ！！」


栗須は猛ダッシュで月の光の差す方に駆けて行き、窓に手をかける。

が、開かない。

栗須「…？」

ｶﾞｯｶﾞｯ

開かない。

栗須「…あれ…？ 鍵も外したのに、なんで開かねーんだ…？」

ｶﾞｯｶﾞｯｶﾞｯ


開かない。


明日人「…ったく何やってんだよ。
理科室から出れないんなら、さっきまでいた教室に戻ってそこの窓から出ようぜ」

そう言って俺は振り返り扉に手をかけた。


ｶﾞｯ



開かない。




明日人「は？」



無論、鍵などはかけていない。


栗須「……あ、ああ…あ…！ くら、クラ…アス…！！ うし、う、うしろ…！！」


背後で聞こえた栗須の声を聞いて妙な感じがして振り返る。
振り返ってしまったのだ。


振り返っても栗須の姿は見えない。
何かが俺の目の前に立ちふさがっていた。

暗闇でよく見えない。

慌てて携帯のライトをつける。

そして、恐怖した。

目の前に立ち塞がる、その“存在”に。

高さ2メートル程の巨体。骨や内臓の露出した半身。



ーーー人体模型だ。







人体模型「ケケ、ケケケけケケケけケケケけケケケッッっッッ！！！」




俺は手元の携帯で急いでグループチャットにメッセージを送り、静かに深呼吸をした。




人体模型「ケケッッ！ ケケケけケ！！ ケケケッケケけケケーーーッッ！！！」






……

………




〜黒髭中学校・校門付近〜



和也「…やっぱ学校の周りは警察が囲んでて入れねぇか…」

剛田「…結局校門まで戻って来ちまったな」



ﾄﾞｺﾞｫｫｫｵｫｵｫｵｫｫｯｯ‼︎



剛田「…！？ なんだぁ…！？ 今の音…！！」

和也「校舎の方から聞こえたぞ…！！」



ﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯ



ポリス「………」


剛田「…んだこりゃ…！？ 警察の連中みんなぶっ倒れてんぞ…！！」

和也「……真面目にやべぇんじゃねーか…？ これ…っ…！」

剛田「…おっ、おい新田…！校門入った先にだれかいんぞ…！！」

和也「…！！！」



二人の視線の先には、二人がよく知る一人の男の姿。黒いローブを羽織っているものの、見間違えるはずはない。
カッチリと七対三で分けられた緑髪に、銀縁の眼鏡。
この黒髭中学校の数学教師ーーー


剛田「…嘘……だろ……！？」




真和「ーーーおや、ダメじゃないか、こんな時間に外を出歩いては」



和也「ーーー！！ 宮本……先生……！？」


真和「……教え子達にはキッチリと指導し直さないといけないな…」


剛田「…待てよ…！！ なんで先生がこんな事を…！！！」

真和「…君達には１００％関係の無い事だ」

和也「…そのローブ…。アンタも、『終焉の焔』だったんだな……ッ…」

真和「……」

剛田「…はぁ…！？ 終焉の焔ってなんなんだよ！？」

和也「…決闘で何もかも解決して、全てを奪っていく最低な奴等だ…！ 元・『終焉の焔』の先輩から聞いたんだ…！」

剛田「……なにぃ…！？」

真和「…我々を知っているならば、生かして返すわけにはいかない」

剛田「…あ…！？ おい…！！」

問答無用で決闘盤を構える真和。

和也「やるしかねーみたいだな…！」

和也も負けじと決闘盤を装着する。

真和「……一人ずつでは面倒だ。二人まとめてかかって来なさい」

剛田「…チィィ…！！ やってやろうじゃんかよ…！！ 宮本ォ…！！覚悟しやがれぇ！！」



剛田【LP 8000】手札 5
和也【LP 8000】手札 5
ーーーVSーーー
真和【LP 8000】手札 5




「「「ーーー決闘！！！」」」












To Be Continued…






《次回予告》




「次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１５２ 文具のサイボーグ






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙