DRAW:１２８砕ける“へーじょーしん”　作：人喰い

(128)





〜積木町・海岸〜



栗須「ーーーいっけぇぇえ！！『始祖神鳥シムルグ』の攻撃ッ！！
〝ゴッド・バード・サイクロン〟！！」


アーミーくん「…ぐぁぁぁあぁあっっ！！」【LP 2600→0】


◉Winner◉
-古宮栗須-


栗須「よっしゃァァ！！ 見ぃたかァ俺の勝ちだぜ！！」



和泉「ーーー行ってっ！！ 千愛ちゃんっ！！」

千愛『…今度はなんかパワフルね…。和泉ちゃん…』

和泉「ーーー『ダーク・フェアリー・チア・ガール』の効果発動…！！ 戦闘でモンスターを破壊した時、私の手札の数x400のダメージを相手に与える…っ！！
ﾀﾞ-ｸﾊﾞﾝﾋﾞ・ｼﾞｬﾝﾊﾟ-
〝黒光弾小鹿跳〟！！」

和泉【手札 16】


アーミーくん「ぐわぁぁあああっっ！！」【LP 5600→0】


◉Winner◉
-桜庭 和泉-


和泉「…ぜぇ…っはぁ……っ…！
なんとか……勝てた…っ！」


栗須「…お疲れっス、桜庭さん」

和泉「…あ、うん。おつかれさまー」

栗須（なんか若干雰囲気が怖いんだが……）



〜〜〜


「ーーーだって火群のこと、好きなんスよね？」


〜〜〜

和泉（いやいやまさか。そんなわけないって）

和泉（だって火群くんは……強がってる癖に弱っちくって、泣き虫で、すこーしえっちで…。
私が声をかけなきゃ、一歩進むこともできなかった……弟みたいな存在だし……）


火群「ーーー和泉さん！ お疲れ！ ナイスファイト！」

和泉「…ありがと」ﾌﾟｲｯ

和泉（なのに目を合わせるのすら気まずいのはなんでぇーー！？）


火群「……ぇぇ…？ 俺、何かしたか……？」















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:１２８ーーー
《砕ける“へーじょーしん”》














シルバ「ーーー無事全員アーミーくんレベル50以上に勝利したようだな。
昼休憩後、基礎体力訓練を挟み、次は自分にとって苦手なデッキとの模擬戦を行ってもらう。そのつもりでいてくれ」

メアリー「今日のご飯は男子ぃ！ヨロシクね！」

栗須「アイアイサ！！」

戒「…今日はふざけた食材を持ってくるなよ」

明日人「戒がそれを言うのかよ…」

火群「…けど、また全員で白濁まみれになるのは御免だからな！ 掃除大変だったんだぞ……あれ…」

雫「…！？（白濁まみれ…！？）」

鈴華「ーーー詳しく、聞かせてもらえないかしら」

結維「…合宿だからってハメ外しすぎなのよ……あなたたちは…」

明日人「…うわぁぁなんかまた変な誤解生んじまったよ！ 桜庭姉さん、助けてくだせぇ！」

和泉「…あっははは……」






＊＊＊



一同は食事を済ませ、午後の訓練のため海岸に集まっていた。
のだが、訓練開始時刻の５分前になっても和泉の姿だけない。


メアリー「あれれ、眼鏡ちゃん来ないね」

鈴華「…私たちが宿舎を出る時、『少し体調が悪いからもう少し休んでから行く』と言ってましたが…」

メアリー「ちょっと心配だね。
…はい不死鳥くん！ ダッシュ！」

火群「えっ？」

メアリー「ダッシュ！！」

火群「はいぃっ！」

ﾀﾞｯ!





………


〜宿舎前〜


火群「……そういえばここのところ、和泉の様子が少しおかしかったな…。
日に日に俺への当たりも強くなってる気がするし……」

ニクス『…それはお前が馬鹿なだけじゃないか…？』

火群「…なんだよそれーっ」

ニクス『お前はもう少し、乙女心というものをだな…、っと火群っ！ 前見ろ前！」

火群「……えっっ…！？」

火群が駆け足で曲がり角を曲がろうとしたその時、

和泉「ーーーっ！？」

ﾄﾞﾝｯ!

反対側から駆け足で向かって来た和泉とぶつかってしまった。

ﾄﾞｻｯ!

和泉「……ったたた〜〜…っ…！」

衝突の際に和泉は尻もちをついてしまい、火群はなぜか、うつ伏せに倒れ和泉のふくらはぎに頭を挟まれていた。

和泉「ぎゃあああぁぁなんでそうなるのぉぉぉ！？」

火群「ごめんんん！！」

火群（……ん…？）

和泉「……短パンだったからまだ良かったけど……って、いつまでそうしてるのぉ！！」

和泉は逃げるように立ち上がる。

火群「……和泉、どっか怪我してるんじゃないか…？ もしかして今ぶつかった時に…っ。だとしたら本当にごめん！」

和泉「…？」

和泉は自分の身体に軽く触れ、異常がないかを確認する。

和泉「…いや、特に外傷は無いけど……どうして？」

火群「……本当か…？
でもさっき、和泉の超至近距離で、微かにだけど血の匂いがしてさーーー」

和泉「…」

火群「…？」



和泉「うるっさいわバカぁぁぁぁあぁあぁぁっっ！！！」


火群「！！？？」






………


〜積木町・海岸〜




和泉「…みなさんお待たせしました…」

訓練開始時刻の１分前に、和泉は海岸に到着する。

そしてその30メートルくらい後ろから、顔面を無数の平手打ちの痕で染めた火群がよろよろと歩いてきた。

メアリー「…ぷっ…くく……っ…！ 不死鳥くん、この五分間で随分日焼けしたね……っ」

鈴華「…凄い顔ですわね……」

栗須「ぎゃははっはははァ！！ なんだおめーその顔っ！！」

明日人「笑ってやるなよ栗須。俺まで笑っちまうだろ…っ」

火群「こいつら……っ…」

結維「とてもよく似合ってるわよ」

火群「嘲笑さえ混ざってなければお礼を言ってしまうところだったよ。結維さん」

雫「…火群さん、大丈夫ですか…？ 紅葉畑で転んだりしたんでしょうか…」

火群「柏木さん…あなたが天使か…。
けど紅葉畑って何だ」


火群「……うぅ……俺は悪くねぇ…っ。悪くねぇのに……！」

ニクス・千愛『『いや、全部お前が悪い』』



………


メアリー「…それじゃあ時間になったし基礎体力訓練始めるけど、左の眼鏡ちゃん！」

和泉「…は、はいっ！」

メアリー「あなたには今日はみんなの記録係をやってもらうわ、流石に私１人じゃ大変で…ネ！」

和泉「わっわかりましたっ！」

メアリーは無言で和泉にウインクをしてみせる。

和泉（メアリーさん……ありがとうございます…っ！）




そして訓練終了後ーーー


鈴華・雫「」


メアリー「…やっぱりこの2人は体力に難ありねー」

シルバ「５分の休憩後、今度は模擬戦だ。
各自デッキの調整をしておけ」

「「「はいっ！」」」


鈴華・雫「」

結維「…へんじがない。ただのしかばねのようだ」

メアリー「おいそこ、勝手に殺すなー」



………



そして今日の訓練も終わり…。


明日人「……今日は一段とハードだったな……」

結維「…対私たち用に組まれたメタデッキの相手はキツかったわね」

火群「…ああ、もう『マクロコスモス』は見たくねぇ…」

栗須「…俺なんか『猛毒の風』とか容赦なく使われたぜ…」

鈴華「ですがいい経験になりましたわね…！」

雫「自分のデッキの弱点がよく見えた気がしますっ！」

栗須「今日は帰ったらみんなでデッキの調整するかー！」

明日人「…悪くねーな…！」

鈴華「いいですわね♪ 私も私も！」

メアリー「おねーさんも混ぜてー♪」

栗須「お、おおおマジっすかメアリーさん！！ 是非是非どうぞぉっ！！」


賑やかな帰り道。だがどこか落ち着かない雰囲気の３名。


和泉（火群くんのバカ火群くんのバカ火群くんのバカ……っ）


火群（……やっぱりちゃんと…、謝らないといけないよな…）


結維（……ったく……、この２人は…っ）


そしてその様子を静かに見守る、2人の精霊。

ニクス『………』

千愛『……っ…』



巡る想いを他所に、あっという間に日は暮れた。








＊＊＊


〜積木町・海岸〜


雫「ーーー何してるんですか？火群さん」

考え事をしながら浜辺を歩いていた火群を、雫は呼び止める。

火群「…！ 柏木さん…っ。
……ここに来てから色々なありすぎて……ちょっと考え事してた」

雫「…そうでしたか…。
ごめんなさい…。きっと私が、あんなこと言ったからですよね…」

火群「！！ 違うっ！ そんなことない！
……柏木さんに言ってもらったこと、凄く嬉しかった」

雫「…！」

火群「……俺、勉強もダメで運動も全然で、自分には決闘しかないんだって思っててさ…」

雫「…火群さん…」

火群「…決闘がなかったら、ここまでたくさんの仲間を作ることなんてできなかった」

火群「……だから決闘のことなんて関係なしに、俺自身の事を好きって言ってくれたことが嬉しかったんだ…。感謝してもしきれないくらいに」

雫「…っ」

火群「……けど俺はやっぱり和泉が好きで…その思いも裏切れなくて……っ。どうしたらいいかわからなくて…っ…！」

雫「………」

火群「…だから、ごめんっ！！
……今は、こんな答えしか出せない俺を許して欲しい…っ…！」

雫「…返事はいらないって言ったのに…っ。
優しいんですね、火群さんは」

火群「…優しくなんかない…っ、俺は今とってもひどいことをしてる…っ！ 柏木さんの気持ちを無下にして……！」

雫「…心配しなくても大丈夫ですよ？ こう見えても私は、失恋なんかじゃ倒れませんっ」

火群「……っ…」

雫「だからせめてーーー」


雫「ーーー“初めて告白された相手”という立ち位置に、キープさせてください♪」

火群「………っ！！」


その時火群の目に映った雫の瞳は微かに潤んでおり、すぐに前髪に隠れて見えなくなった。






………



そしてその少し離れた場所で佇む、１人の少女。


和泉「ーーーっっ」

和泉（なんでまた２人が……一緒に……？）


ﾀﾞｯ!


少女は逃げるように走り出す。
訳の分からない、不安感を抱いて。











結維「……和泉………」






To Be Continued…






《次回予告》



栗須「どーも！ 古宮栗須です！！」

明日人「倉川明日人です」

栗須「突然だけどよ、お姉ちゃんと妹だったら、どっちが欲しいよ？」

明日人「…いや、俺は一人っ子で当たり前のように育ったから、別にどっちもいらねーけど」

栗須「うっわ！ つっまんねぇ答えだなァ！」

ﾊﾞｷｯ!

明日人「殴んぞ」

栗須「…殴ってから宣言すんなよ！」



明日人「次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１２９《姉と妹》！」



明日人「…で、お前はどうなんだよ」

栗須「俺かぁ！？
…どうしても知りたいか？」

明日人「…勿体ぶんなって」

栗須「しょーがねぇなー！ そこまで言うんだったら答えてやってもいいかなぁー！？」


千愛「…あ、もう尺がないわ。それでは次回もお楽しみに」

栗須「あっちょっ…！ 待っt




＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙