DRAW:１０８ 忍び寄る魔手　作：人喰い

(108)




〜積木町・ビーチ〜


火群「…ぜぇ…はぁ…っ」


男女対抗のビーチバレーは、なんとも呆気なく、10対0で女子チームが制した。

明日人「…バケモンか……！！」

栗須「…く…くそぉ……っ！」

火群「…結維さんの、手を捻りながら打つ事によって超回転と超スピードを得て球を不可視にする〝バニシングアタック〟はエグかったな……」

栗須「……お前んとこの金髪ねーちゃんの、打った瞬間球が消えて、地面に着く直前に強力な縦回転の加わった球が姿を現す〝ステルスドライブ弾〟もヤベーだろ…」

明日人「…世代がバレんぞ、お前ら…」



メアリー「……見たか男共ーーっっ！ って事で今日の食事当番よろしくねーっ！！」

男子3人「！？」

そんな話、いつの間に決まったんだ…。

メアリー（…そろそろ時間かな…？）

メアリー「…じゃーワタシはちょっとトイレ行ってくるから、適当に水遊びでもしてなーっ！」

メアリーさんはそう言うと走って行ってしまう。よっぽど我慢していたのだろうか。


火群「…水遊びしてろったって……俺たち男子は全員休まずバレー続けてたんだからもうヘトヘトだっての…」

栗須「水着のおねぇさんでも探そーぜー……って…あれ？」

明日人「どうした？ 栗須」

栗須「…だんだんと、俺たち以外の人はもう帰ってってねーか…？」

火群「！」

確かに、栗須の言う通りだ。
まだ昼前だと言うのに、観光客や地元民と思われる人達がどんどん街の方へ、更衣室の方へと向かっていく。

明日人「……？？ なんだってんだ…？」


和泉「おーい！ みんなも早くきなよーっ！」

火群「！」

違和感を感じながらも、和泉の呼びかけに右手を軽く上げ答える。

火群「…おーう！ いまいkーーー」

ちょうどその時だった。

火群「！！！」

浅瀬で遊ぶ和泉達の背後の水面から、巨大な影が水音を立てて立ち上ったーーー！！















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:１０８ーーー
《忍び寄る魔手》
















火群「ーーー！！ 和泉っ！！」

俺は慌てて名前を呼ぶが、“それ”の存在に気づいているのはこの瞬間において俺だけだ…！
和泉達が振り返る間も無く、“それ”は和泉達全員を掴み上げる。

和泉「ーーー！？」

ーーー白く艶のあるボディに、赤く光る眼。
そして和泉達を拘束しているのは、一本10メートルは余裕で超えるであろうーーー触手だ。


ーーー触手、、、だ。


火群「…あの触手は……間違いなくイカだ」

和泉「見りゃわかるわアホぉっ！！」

雫「はわわわ…っっ！ なんかヌルヌルしてますよぉ！！？」

火群「……」ｺﾞｸﾘ

鈴華「いーからさっさと助けなさぁぁぁいっ！！」

明日人「…今度は何の騒ぎだ…？」

栗須「ーーー！！」

クラースと栗須が振り向くや否や、俺たちの方に黒き墨が発射される。


火群「…うおっ！？」

明日人「…ぶっっ！！」

栗須「ぎゃぁぁあぁすっっ！！」

あらかじめ身構えていた俺は辛うじてかわすことができたが、クラースと栗須は墨を顔面に思いっきり受けてしまう。

明日人「…何だよこれ！？」

栗須「前見えねーぞ！！」

火群「…2人とも！！
くっ…！ ここは俺がやるしかねーか…！」


……とはいったものの……。


和泉「…ん…っ！ んぁ……くっ…っん！」

結維「……何これ…っ！？ 全然力が入らない……っ！ んにゃ…っ！？ どこ触ってんのよ！！？」

ニクス「…く…っ！ この触手……っ！ 力を吸い取る効果があるのか…！！」

千愛「……ん…っ！ …普段ならどうって事無いけど……ちょっとビーチバレーではしゃぎすぎちゃったわね…っ」

雫「…はわわわぁ！？ そこはダメですってぇ！！」

鈴華「ぎゃあぁぁぁにゅるにゅるやめてぇーーっっっ！！」


火群「………」ﾋﾞﾝｯ

ハッ！

そこで俺はようやく我にかえる。

火群「…あんな巨大なイカ……どうやって倒せばいいんだよ…！！」

いや、考えるより、まず動け！

火群「…！」

俺は腰を落とし、砂を蹴り、若干の前屈みで駆け出した。

火群「…こういう大型モンスターは…大抵頭が弱点だ…っ！！ 狙うは顔面、ただ１つ！！」

皆を拘束するのに手足のほとんどを使ってるからか、見たところ自由に使える足は残り2本だけ…！ ガードは薄い！
あとはさっきのイカスミにさえ注意すれば……やれる…！！

イカ「！！」

火群「……！！」

イカの直前まできたところで、イカは2本の足を交差して防御する。

火群「く…っ！！ だが隙間が全然空いてるぜ！！」

俺はスライディングで隙間をくぐりーーー先手必勝。
イカが墨を吐くより前に、イカの顔面……額のあたりに、拳を全力で叩き込んだ。

火群「……！！ どうだ……！？」

だが、あまり手応えがない。まるで土嚢でも殴ったかのような、そんな何とも言えない鈍い感覚だけが拳に残る。

そしてイカは足で俺を軽々しく振り払う。

火群「…がっ！」

と、そのままイカは再び足を構える。
そこで俺はあることに気づいた。

火群「…！！ あのイカーーー決闘盤を付けてる！！」

明日人「！！」

栗須「！？」

明日人「…なんも見えねーが、イカが決闘盤をつけてるだって？」

栗須「吸盤の間違いじゃねーのか？」

ニクス「……火群…！ んく…っ！…それだ！ 決闘でこいつを倒せ…！！ ひゃ…っ…ぁぅんっ！」

火群「…お、おう！」

イカ「！！！」

火群「かかってこいイカ野郎！！ 俺が相手になってやる！！」


俺は荷物の中から決闘盤を取り出し左腕に装着すると、再び巨大イカに対峙する。


イカ「！！」


火群【LP 8000】[手札 5]

巨大イカ【LP 8000】[手札 5]




「決闘！！」



火群「ーーー俺の先攻！！
…俺は、『炎王の孤島』を発動！」


《炎王の孤島/Fire King Island》
フィールド魔法
「炎王の孤島」の(1)(2)の効果は１ターンに１度、いずれか１つしか使用できない。
(1)：自分メインフェイズにこの効果を発動できる。
自分の手札・フィールドのモンスター１体を選んで破壊し、
デッキから「炎王」モンスター１体を手札に加える。
(2)：自分フィールドにモンスターが存在しない場合にこの効果を発動できる。
手札の鳥獣族・炎属性モンスター１体を特殊召喚する。
(3)：フィールドゾーンの表側表示のこのカードが、
墓地へ送られた場合または除外された場合に発動する。
自分フィールドのモンスターを全て破壊する。


火群「炎王の孤島の効果発動！ 俺は手札の『炎王獣 バロンを破壊して、『炎王獣 ガネーシャ』を手札に加え、召喚！」[ATK 1800]


《炎王獣
えんおうじゅう
ガネーシャ》 †
効果モンスター
星４/炎属性/獣戦士族/攻1800/守 200
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードがフィールドに存在し、モンスターの効果が発動した時に発動できる。
その発動を無効にし、このカード以外の自分の手札・フィールドの炎属性モンスター１体を選んで破壊する。
(2)：このカードが破壊され墓地へ送られた場合、
「炎王獣 ガネーシャ」以外の自分の墓地の炎属性の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
その特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズ時に破壊される。


火群「ーーーカードを一枚伏せて、ターンエンド！」【手札 2】

まずはガネーシャでモンスター効果を抑制して出方を伺う…！


◉TURN:０２◉


イカ「…！！！」【手札 6】

巨大イカは器用に右の触手で決闘盤からカードを引き抜く。

火群「この瞬間、俺は効果で破壊されたバロンの効果でデッキから『炎王の急襲』を手札び加える！」

返しも万全だ…！ さあ、どうでる…！？

イカ「…ッッ！！」

すると巨大イカは、手札から一枚の魔法カードーーー『予想GUY』を場に出した。


《予想ＧＵＹ
よそうガイ
/Unexpected Dai》 †
通常魔法
(1)：自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。
デッキからレベル４以下の通常モンスター１体を特殊召喚する。


空間に開いた亀裂から、一体のモンスターが現れるーーー『デビル・クラーケン』だ。
[ATK 1200]

《デビル・クラーケン》 †
通常モンスター
星４/水属性/水族/攻1200/守1400
海に潜む巨大イカ。海中から突然あらわれ攻撃をする。


和泉「イカが増えたぁーーっ！！」

火群「…っっ！！」

でも、所詮は攻撃力1200の通常モンスター…！ ビビる必要はねぇ…！ 落ち着いていけ、俺…っ！！







To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１０９ 潜海の巨大烏賊




＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙