DRAW:９９ VS黒焔11)二人三腕　作：人喰い

(99)



【火群side】


柏木さんと西蓮寺さんが決闘が終え、闇のドームから解放されたのは、メアリーさんが上の階に行ってから約5分後の事だった。


結維「……ちゃんと勝ったみたいね。2人とも」

鈴華「…ま、まぁ？ これくらい、余裕でしたわっ」

結維「服もボロボロで髪型も乱れまくってる所為でセリフに説得力が無いわね」

鈴華「うっるさいわね！
…そういう結維さんこそぉ？ 胸が多少萎んだんじゃありません？」

結維「うっせぇ分けてやってんだよ」

雫「…はわわわ…っ！ 結維さん、口悪い上に意味がわかりませんよ…っ」

結維「…。
…そ、そういう雫も、髪乱れまくってるじゃない。特に前髪」

随分と強引に押し付けたな。

火群「…！」

ふと柏木さんの方に目をやると、いつものもっさりした前髪が少し乱れており、普段隠れている顔がよく見える。
目はくりくりと丸く、とても可愛らしい。

結維「……なに雫の顔ジロジロ見ているんですか、この変態」

火群「！？」

随分と自然に押し付けたな！

雫「…はわぁっ！？ 火群さん見ないでください…〜っ！」

柏木さんは頰を真っ赤にして、乱雑に手櫛で前髪を修正する。

鈴華「…あんたほんと面白いわね〜」


火群「……ところで、2人の決着が着いたって事は、後は……」

結維「…和泉だけ、ね」

鈴華「…！」

雫「……和泉さん…！ 頑張ってください……っ！」

結維「…それじゃあひとまず、あなた達にも現状を軽く説明しときましょうかーーー」
















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:９９ーーー
《VS黒焔(11)二人三腕》















【和泉side】

和泉・千愛【LP 8000】

黒焔【LP 8000】


千愛「ーーープレイヤーは和泉ちゃんよ。私はあまり直接的な助言をしてあげる事は出来ないわ。それでも平気？ 和泉ちゃん」

和泉「…もちろん平気だよっ！ 隣に居てくれるだけでとっても心強いから！」

千愛「…！」


◉TURN０１◉

和泉「私のターン！」

勢いで決闘始めちゃったけど…、すごい緊張感…！！
でも千愛ちゃんが私の右に居てくれるから…！ 戦える…っ！！


千愛「……いい？ 和泉ちゃん。私達が相手の事を知らないように、相手も私達の事を知らない。初手は不用意に手の内を晒さないように、慎重に行くわよ」

和泉「…うん…っ、やってみる…！ 私は、モンスターをセット！」

私の宣言と共に、テレパシーで指示したカードを千愛ちゃんが私の左腕の決闘盤にセットする。

和泉「私はこれで、ターン終了…！」【手札 4】

◉TURN０２◉

黒焔「…フム…。ワタシノターン、ドロー」【手札 6】

黒焔「（…今ハ情報収集ヲ優先スル…！）
ワタシハ、モンスターヲセットシ、カードヲ２枚伏セテターンエンド」【手札 3】

和泉「！」

千愛「…どうやら長期戦になりそうね…っ」

◉TURN０３◉

和泉「…私のターン！」

千愛「ドロー！」【手札 5】

千愛「…ここはまだ待つのがベストな気はするけど、一応は攻めるっていう選択肢もある。
判断は、和泉ちゃんに任せるわよ」

和泉「…！ わかった…っ。
ここは……攻めてみるよ…！」

火群くんなら、きっとそうすると思うから…！

和泉「…私は、セットモンスター『コーリング・ノヴァ』をリリースして、アドバンス召喚！ 来て！『光神テテュス』！」[ATK 2400]

《光神
こうしん
テテュス/Tethys, Goddess of Light》 †
効果モンスター
星５/光属性/天使族/攻2400/守1800
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分がカードをドローした時、そのカードが天使族モンスターだった場合、
そのカードを相手に見せる事で自分はカードをもう１枚ドローする事ができる。


黒焔「…！ 早クモ動イテキタカ…！ ダガ残念ダッタナ…！ 罠カード発動！『激流葬』！！」

《激流葬
げきりゅうそう
/Torrential Tribute》 †
通常罠
(1)：モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時に発動できる。
フィールドのモンスターを全て破壊する。


黒焔「…フィールドノモンスターヲ全テ破壊スル！！」

テテュスの召喚をトリガーに現れた水流によって、場のモンスター全てが流されてしまう。

和泉「…！！ そんな…っっ！？」

千愛「…慌てないで、和泉ちゃん。相手も自分のモンスターを巻き込んでる…！ ここで激流葬を使わせられただけでも充分よ…！」

黒焔「…ククク…！タダ巻キ込ンダダケダト思ウナヨ…！！ 破壊サレタワタシノモンスターハ『素早いマンタ』！！」

千愛「…！！」


《素早
すばや
いマンタ/Nimble Manta》 †
効果モンスター
星２/水属性/魚族/攻 800/守 100
フィールド上のこのカードが
カードの効果によって墓地へ送られた時、
デッキから「素早いマンタ」を任意の数だけ特殊召喚できる。


黒焔「…コノ効果ニヨッテデッキノ『素早いマンタ』２体ヲ特殊召喚！」[DEF 100]

和泉「…！ ターン終了……っ！」

◉TURN０４◉

黒焔「…ククク…！ ドウヤラマダ戦闘ニ慣レテイナイ小娘ノヨウダナ…ッ！ 様子見ナド不要ダ…！」

千愛「…！」

黒焔「…全力デ行カセテ貰ウゾ…！！ ワタシノターン！ ドロー！」【手札 4】

千愛「……奴の手札から……とてつもない闇の力を感じるわ…！」

和泉「……っっ！ 私にも…わかる……っ！ なんて禍々しさなの……っ…！？」


黒焔「…貴様ラモ恐怖スルガイイ…！ フィールド魔法『始皇帝の陵墓』ヲ発動！」

《死皇帝
しこうてい
の陵墓
りょうぼ
/Mausoleum of the Emperor》 †
フィールド魔法
(1)：お互いのプレイヤーは、自分メインフェイズに
以下の効果から１つを選択して発動できる。
●１０００ＬＰを払って発動できる。
１体のリリースを必要とする手札のモンスター１体の通常召喚を、
リリースなしで行う。
●２０００ＬＰを払って発動できる。
２体のリリースを必要とする手札のモンスター１体の通常召喚を、
リリースなしで行う。


黒焔「…ワタシハコノ効果デライフヲ２０００支払イ…！ “最強ノ地縛神”ヲ召喚スル！！」【LP 8000→6000】

和泉「…最強の……」

千愛「地縛神……！？」


黒焔「ーーー深キ眠リヨリ目覚メ、降臨セヨ！！！
『地縛神 Wiraqocha Rasca』！！！」[ATK 100]


《地縛神
じばくしん
Ｗｉｒａｑｏｃｈａ
ウィラコチャ
Ｒａｓｃａ
ラスカ
/Earthbound Immortal Wiraqocha Rasca》 †
効果モンスター
星１０/闇属性/鳥獣族/攻 100/守 100
「地縛神」と名のついたモンスターはフィールド上に１体しか表側表示で存在できない。
フィールド魔法カードが表側表示で存在しない場合このカードを破壊する。
相手はこのカードを攻撃対象に選択できない。
このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。
また、このカードが召喚に成功した時、
このカード以外の自分フィールド上のカードを３枚まで選択して持ち主のデッキに戻し、
戻したカードの数だけ相手の手札をランダムに捨て、
このカードの攻撃力を捨てたカードの数×１０００ポイントアップする。


私達の前に巨大な鳥のような姿をしたモンスターが姿を現す。
その風貌は、まるでナスカの地上絵の一つのようにも見え、とてつもない存在感を放っていた。


和泉「…これが……、地縛神…！！」

千愛「………こんなカード…、見た事も聞いた事も無いわ…！！」

黒焔「…ククク…！ ナラバ今ココデヨク見ルガイイ…！！ ソシテヨク聞ケ…！！ 地縛神ノ贄トナッタ者ノ……醜キ嘆キヲ！！」

和泉「…！！」

その時、私の決闘盤が淡い光を帯びたような気がしたが、そんな事を気に留めている暇などなく、黒焔によって地縛神の効果発動が宣言される。

黒焔「地縛神ノ効果発動！！ 召喚成功時、ワタシノ場ノ２体ノ『素早いマンタ』、ソシテ伏セカード、計３枚ノカードヲデッキニ戻シ、オ前ノ手札ヲ３枚！ ランダムニ選ビ捨テサセル！！」

和泉「！！」

千愛「…なんですって…！」

黒焔「…オ前ノ手札ハ３枚ノミ…！ ヨッテ全テノカードヲ捨テテ貰オウ…！！」

和泉「…そん…な…っ！」【手札 0】

-墓地-
『打ち出の小槌』
『手札断札』
『オネスト』


黒焔「…ククク…！ ソレダケデハナイ…！ コノ効果デ相手ガ捨テタカード１枚ニツキ、Wiraqocha Rascaノ攻撃力ハ１０００ポイントアップスル！！」[ATK 100→3100]

和泉「攻撃力3100…！！」

黒焔「バトルダ！！ Wiraqocha Rascaデ、プレイヤーヲ直接攻撃！！」


『地縛神 Wiraqocha Rasca』[ATK 3100]

更に禍々しさを増幅させた地縛神が、巨大なビームを私に向け放つ。
その瞬間に感じたのは、紛れも無い恐怖。

和泉「……っ…！！」

邪悪なる敵意を前にして感じた恐怖で、足が動かなくなり、身体の震えも止まらない。

和泉「………っっ」

一体どうしちゃったの……！？ 私の身体ーーー！！


そしてついに地縛神の攻撃が私に当たる瞬間。

和泉「………！」

私の身体が、ぐらついた。

和泉「…！？」

それは地縛神の攻撃によるものでもなく、私が勝手にバランスを崩したわけでもなかった。

千愛ちゃんが私を、つき飛ばしたのだ。

私は咄嗟に左手を地につけ転倒は回避したが、ふと斜め上に目線を上げると、私の代わりに地縛神の攻撃を受ける千愛ちゃんの姿があった。



千愛「……ぅぅぅうぅ…ッッぁぁあぁああっっっ！！！」【LP 8000→4900】


和泉「…千愛ちゃん！！！」

黒焔「………ッ…！」


和泉「なんで私の代わりに…！！ プレイヤーは私なんだよ…！？」

千愛「…はぁ…！ はぁ…っ！
知らないわよ…っ…。勝手に身体が動いてたの」

和泉「…ぅぅ…っ私のために…っっ千愛ちゃんが傷つく必要なんて無いのに…っ！！」

千愛「…ごめんね和泉ちゃん。
でも、今の私達は2人で１つのデッキを構えて戦ってるの。これくらいは私にも体張らせてよ」

和泉「…でも…っ！」

千愛「…いいから。立てる？ 和泉ちゃん」

和泉「…う、うん…」

千愛「…和泉ちゃんは目の前の敵を倒すことに集中して……ッ。手札を失ったからって…っ！ ライフが残ってる限り、可能性はゼロじゃないわ！！」

和泉「ーーー！」





再び“左”に、光が灯る。









To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１００ 天を穿つ光




＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙