DRAW:１９９ 〝破滅の焔〟　作：人喰い

(199)







火群【LP 6800】
(モンスター)
『炎王神獣 アニマ・フェニックス』[ATK 3900]
『九尾の狐』[ATK 2200]
『幼炎王獣 ガルドニクス』[DEF 200]
(魔法)
『炎王の孤島』(フィールド)
伏せ:0
手札:1
墓地:炎王神獣ガルドニクス


不死鳥【LP 7000】
伏せ:0
手札:5



久義「……火群…！ ヤツはお前を倒す事で、火群と炎花、二人の身体を完全に乗っ取ろうとしている…！！ この決闘、絶対に勝つんだ！！」


火群「……わかってる…っ！ その為に全力も尽くした…！ 負ける訳にはいかない…ッ…！！」


強気に前方の敵をを睨む火群。対する不死鳥の化身はゆらゆらと揺れる炎の指先でカードを引く。


◉TURN０２◉


不死鳥「ーーーー私のターン……ドローッ！！」[手札 6]

静かな怒りを秘めたドローは燃え盛る炎で弧を描き、

不死鳥「……ガルドニクス…ッ…お前はただ大人しく“破壊”だけしてればいいんだよ…ッ！！」

そして、毛を逆だて威嚇するかの如く全身の炎を大きく燃え上がらせ、１枚の魔法カードを発動させた。


不死鳥「魔法発動ーーーーー『炎王の急襲』！！！」


《炎王
えんおう
の急襲
きゅうしゅう
/Onslaught of the Fire Kings》 †
通常魔法
相手フィールド上にモンスターが存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。
デッキから炎属性の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター１体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、
エンドフェイズ時に破壊される。
「炎王の急襲」は１ターンに１枚しか発動できない。


火群「……ッ！！」

久義「何……っ…！？」

ニクス「…………火群と同じ…『炎王』のカードを……！？」


不死鳥「……何を驚いている…ッ…？
お前の中にいた私がお前の力を使う事が出来るのは当然の事……ッ！
私が『炎王の急襲』でデッキから呼び出すモンスターは当然……ッッこのカードだ…ッッ！！」


不死鳥の化身はデッキから１枚のモンスターを抜き出し、決闘盤に勢いよく着地させた。


不死鳥「現れよ…ッ！
ーーーー破壊へ誘う邪炎の翼ッ！！！
『炎王神獣 ガルドニクス』！！」


大地を割り現れた神獣は、敵意を炎と変え火群とニクスに向け放つ。


『キァァアアアアアァァアア！！！』[ATK 2700]


火群「……まさか…、お前と戦うことになるなんてな……」

火群の眼前に立ち塞がるは、灼熱の炎を身に纏う不死鳥ーーーーー
全身を撫でる熱風さえ心地良く、火群はグッと拳を握る。
いつも共に戦ってきたガルドニクスの脅威を知っているからこそのワクワク感が、内から込み上げてきていたのだ。


不死鳥「ーーーーバトルを仕掛ける……ッ！！
炎王神獣…！！ 攻撃しろッ！！
対象はーーーーーアニマ・フェニックスだッッ！！」


火群「…！！」

ニクス「…何……！？」

攻撃力の劣るモンスターでの攻撃。
その一見無謀にしか見えない行動に二人は驚きながらも身構える。


不死鳥「
ーﾊﾞ-ﾆﾝｸﾞ・ｲﾚｲｻﾞ-ー
《業火炎の抹焼熱線》！！」


幾度となく見てきた、螺旋状の炎。それが今度は火群の場に向けて放たれた。


火群「……く…ッ……！ 迎え撃て！ アニマ・フェニックス！！
ﾊﾞ-ﾆﾝｸﾞ・ﾗｲﾌﾊﾞ-ｽﾄ
〝生命の白焔翼〟！！」


『炎王神獣 ガルドニクス』
[ATK 2700]
ーーーVSーーー
[ATK 3900]
『炎王神獣 アニマ・フェニックス』


ガルドニクスの放った螺旋状の炎をアニマ・フェニックスの白き炎は受け止め、包み込み、押し返すーーーーー


不死鳥「ーーーーーグッ……ッ」【LP 7000→5800】

超過ダメージが炎となって不死鳥の化身を襲い爆風が立ち込める。
そして爆風をかき分けるように現れたのは、『炎王獣 ガネーシャ』。


『炎王獣 ガネーシャ』[ATK 1800]

不死鳥「……ガルドニクスの効果により、戦闘破壊された事でデッキから新たな『炎王』を呼び出すーーーーー」

火群「……っ…！」

そして呼び出したガネーシャで攻撃するでもなく、不死鳥の化身はメインフェイズ２へと移行し、

不死鳥「ーーーー更にフィールド魔法、『破戒空間(デストラクト・ゾーン)』を発動…！！」

火群も聞いたことのないフィールド魔法を発動させた。


《破戒空間(デストラクト・ゾーン)》＊Ph.X Original Cards
フィールド魔法
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できず、②③の効果は１ターンに１度、いずれか１つしか使用できない。
①このカードの発動時に、手札またはデッキからレベル４モンスター１体を選んで破壊できる。
②フィールドのモンスターがカードの効果で破壊された場合に発動できる。フィールドの魔法・罠カード１枚を選んで破壊する。
③フィールドの魔法・罠カードがカードの効果で破壊された場合に発動できる。フィールドのモンスター１体を選んで破壊する。


そのカードの発動と共に辺りの地形は大きく変形し、頭上を暗雲が覆う。


不死鳥「ーーーーこのカードの発動時、私はデッキから『炎王獣 ガネーシャ』を破壊する」

不死鳥の化身のデッキが小爆発を起こし、焼け落ちたガネーシャのカードが炎となって地上で燃え上がる。


不死鳥「破壊されたガネーシャの効果発動ーーーー」


《炎王獣
えんおうじゅう
ガネーシャ/Fire King Avatar Arvata》 †
効果モンスター
星４/炎属性/獣戦士族/攻1800/守 200
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードがフィールドに存在し、モンスターの効果が発動した時に発動できる。
その発動を無効にし、このカード以外の自分の手札・フィールドの炎属性モンスター１体を選んで破壊する。
(2)：このカードが破壊され墓地へ送られた場合、
「炎王獣 ガネーシャ」以外の自分の墓地の炎属性の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
その特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズ時に破壊される。


不死鳥「この効果で私は墓地より、炎王神獣を復活させる…ッ！！
再び現れよッッ！『炎王神獣 ガルドニクス』！！！」[ATK 2700]


火群「…ガルド…ニクス…！！」

ガネーシャで呼び出したガルドニクスはエンドフェイズに破壊されるため、次の火群のターンのスタンバイフェイズに再び蘇り場のモンスターを一掃する。

火群「……」

しかし火群の場には破壊される事で後続を展開できるモンスターのみであり、そこまで強い一手とは言えない。更には戦闘破壊では効果を発揮できない幼炎王獣をあえて残しておく相手の選択が、火群の脳内で引っかかる。

火群「…っ…」

このターンでのプレイングに若干の違和感を覚えつつ、火群は目の前の不死鳥をただ見つめていた。
そして隣に浮かぶもう一体の不死鳥に問いかける。

火群「……っ…なぁ、ニクスーーーー」

ニクス「ーーー火群も感じたか…。向こうの不死鳥から放たれる、“邪気”を……」


ーーーー“邪気”。

墓地から蘇った不死鳥は、先程までとはまるで違うーーー邪悪な炎をその身に宿していた。
邪炎はゆらゆらと怪しげに、火群達の視界で目障りに揺れる。
しかしその後ろで全身の焔を昂らせる不死鳥の化身の存在を、二人は見逃さない。

ニクス「ーーー火群っ！！」

火群「……ああ…っ…！ 来るみたいだな……ッッ…！！」

何かの予兆を感じ取り、身構える。



不死鳥「ーーーーーガルドニクス……お前の中の“破壊衝動”を…、今こそ解き放つッ！！」


不死鳥の化身は全身の炎を激しく燃焼させ、１枚のカードをEXデッキからドローする。


不死鳥「地獄の底より蘇りし不死鳥……ッッ！！ 今こそ“破滅の焔”を宿し、黒き力で全てを破壊せよッ！！」


解き放たれた膨大な邪気に息を飲む火群達など待たず、黒き破滅の焔がガルドニクスに“掛け合わされた”。




不死鳥「ーーーーーエクシーズ召喚！！！」




日々成長を続ける炎花の力を封じて置くための３つ目の“依り代”。
黒く縁取られたそのカードは『炎王神獣 ガルドニクス』の上に重ねられ、黒々と燃え上がるーーーーー


不死鳥「ーーーーー現れ出でよ……ッ！！
『炎王神獣 ガルド・デストロイヤー』！！！」


『炎王神獣 ガルド・デストロイヤー』[ATK 3200]


全てを破壊し、滅する存在。

火群の内から現れ、大切なものを焼き尽くした、戒めの不死鳥。

火群は改めてそれと対峙し、覚悟の炎を胸に宿す。
ーーーーー今度は“大切なものを守るための力”と共に。















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーDRAW:１９９ーー
《〝破滅の焔〟》












火群【LP 6800】
(モンスター)
『炎王神獣 アニマ・フェニックス』[ATK 3900]
『九尾の狐』[ATK 2200]
『幼炎王獣 ガルドニクス』[DEF 200]
(魔法)
『炎王の孤島』(フィールド)
伏せ:0
手札:1
墓地:炎王神獣ガルドニクスx1


不死鳥【LP 7000】
(モンスター)
『炎王神獣 ガルド・デストロイヤー』[ATK 3200]◉X素材:1
『炎王獣 ガネーシャ』[ATK 1800]
(魔法)
『破戒空間(デストラクト・ゾーン)』(フィールド)
伏せ:0
手札:3
墓地:ガネーシャx1


久義「……一体のモンスターでエクシーズ召喚だと……っ…！？」

ニクスは久義のその言葉を聞き、かつてガルドニクスとしての故郷であるエクシーズの栄えた次元の半分以上を支配していた獣戦士集団の姿を思い出すが、すぐに記憶の底に封じ込め、火群を見やる。


不死鳥「ーーーー『炎王神獣 ガルド・デストロイヤー』は、墓地から蘇った『炎王神獣 ガルドニクス』の上に重ねてエクシーズ召喚する事ができる……！！」


火群「…やっぱり似ている……ライズ召喚に」

特定の条件を達成した時に、指定されたモンスターの上に重ねてEXデッキから特殊召喚を行うライズ召喚。
それは炎花、ニクス、そして火群の成長の起点ともなった召喚法であり、ガルド・デストロイヤーのエクシーズ召喚と未知なる召喚法ライズ召喚が似てしまっているのは、ガルドニクスがエクシーズ次元出身の精霊だからなのだが、今の火群達にそこまで考えている余裕はなかった。

灼熱のプレッシャーに全身を炙られるような感覚に陥りながら、火群、そしてニクスは黒焔に身構える。


不死鳥「ガルド・デストロイヤーの効果発動……ッッ…！！
このカードが『炎王神獣 ガルドニクス』を素材としたエクシーズ召喚に成功した場合、エクシーズ素材を全て取り除くことでーーーーー相手フィールドのモンスターを全て破壊する！！」


火群「……ッ…！！」

放たれた漆黒の豪炎は一帯を炎の海に変えて行くーーーーー


火群「ーーーーッッ…！！
破壊されたアニマ・フェニックス、九尾の狐、幼炎王獣の効果ーーーーーッ」

火群が効果の発動を宣言しようとしたその時。


不死鳥「ーーーーーッ無駄だ……ガルド・デストロイヤーの焔は“破滅の焔”……ッ！！
その焔に焼かれたモンスターの効果は無効となる…！！」


破壊されたモンスター達が漆黒の焔と共に消えてしまう。

火群「…何……ッ…！？」

ニクス「…ッ…これではまるで………」

久義「……火群達を倒す為の力じゃないか……ッ…！」


しかしまだこれで終わりではない。火群のモンスターと共に消えた黒焔が再び燃え上がり、今度は火群へと襲いかかった。


火群「！！」


不死鳥「ーーーー更に…！ 破壊したモンスター１体につき、５００のダメージを受けてもらう…ッ！！」


久義「……破壊されたモンスターは3体…ッ…１５００のダメージか……ッ！」


火群は腕を交差させ黒焔をその身に受けながら足に踏ん張りを利かすが、強すぎる炎の勢いに押され腕を弾かれてしまう。

火群「……がぁぁぁっ！！！」【LP 6800→5300】

不死鳥「…そしてその後、墓地の『炎王の急襲』をガルド・デストロイヤーの下に重ねてエクシーズ素材とするーーーー」

ニクス「……エクシーズ素材の補充まで…ッ…！」


不死鳥「ーーーーーまだ終わりではない…！
フィールドのモンスターが効果で破壊された事で、『破壊空間』の効果発動！！ フィールドの魔法・罠カードーーーー『炎王の孤島』を破壊するッ！！」


火群「ーーーーッッ！！」


不死鳥の化身の背後から発生した衝撃波により孤島が破壊され、沈んでゆく。
炎王孤島は火群のデッキを回すキーとなるカードなだけに、この一撃はとても重いものだった。


不死鳥「……カードを２枚伏せ、ターンエンドだ」[手札 2]



◉TURN:０３◉


ガルド・デストロイヤーによる全体除去に加え、２枚の伏せカードと共に、１ターンに１度モンスター効果を無効にできるガネーシャを置き、返された火群のターン。


不死鳥「ーーーーーわかるか…？ 市瀬火群。お前に『市瀬 火群』は務まらない。
私こそが、貴様等のその“力”を使うに相応しい存在なんだ…ッッ！！」


炎の身体を激しく燃やし、不死鳥の化身は叫ぶ。

火群「……ッ…」

その台詞に文句しかない火群が口を開くよりも先に、


ニクス「ーーーーー貴様が火群を語るなど、馬鹿馬鹿しい」


ニクスは冷淡な口調で、突き刺すような視線を相手に向ける。


不死鳥「…貴様こそ、市瀬火群の全てを知っていると言えるのか？」


ニクス「……馬鹿にするな。
火群の事なら何だって知っている」

不死鳥「………」


ニクス「ーーーー火群は馬鹿で無鉄砲で向こう見ずで考えなしでいつも行き当たりばったりで」

火群「……」

ニクス「ーーーーエロでスケべで変態でドMで、どうしようもないなと思う時もある」

火群「…そこまで言うか！？」


ニクス「ーーーーだが…、失敗を重ねる度に反省して、後悔して……。
倒れる度に立ち上がって、喰らいつくーーーーー格好悪くて格好いい私の弟だ」


最後は僅かに口元を吊り上げ、そう言い切った。


不死鳥「……っーーーーー」


そんなニクスを火群はちらと見やるが、すぐに気恥ずかしくなって顔を伏せる。

そしてデッキの上に指先を乗せーーーーー


火群「……俺のターン！！ ドローッ！！」[手札 2]



勝利の為に引いたカードは、真紅の炎を纏い弧を描いた。





To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:２００〝破壊と創造〟






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙