DRAW:１６２ 霊山に墜つる火柱　作：人喰い

(162)



〜前回までのあらすじ〜


ーーー終焉の焔による襲撃を防ぎ、精霊のカードを守るために人間界の決闘者達は、3箇所に分かれて終焉の焔を迎え撃つ事になっていた。

無数の精霊が眠ると言われる地ーーー『竜霊山(りゅうれいざん)』へ向かった「結維」。

決闘機兵を製造・管理しているーーー『決闘機兵製造工場“ﾃﾞｭｴﾙﾛｲﾄﾞﾌｧｸﾄﾘ-”』へ向かった「メアリー」「雫」「鈴華」。

火群たちの通う中学校ーーー『黒髭中学校』へ向かった「明日人」「栗須」。


黒髭中学校に向かった明日人と栗須は、黒髭中学の家庭科教師である「美 好(メイ ハオ)」と協力して、襲撃して来た黒髭中学の数学教師である「宮本 真和(みやもと まさかず)」を迎え撃つ。

明日人と栗須は、真和の手先である人体模型を決闘で倒すが、真和の仕掛けた罠によって理科室で生き埋めとなってしまう。
好は真和に辛くも勝利するが、明日人達の救出を優先したために、精霊のカードを奪われてしまったのだったーーー。



そして黒髭中学校への襲撃の約２時間前、場所は竜霊山へと移り変わるーーーー。








〜竜霊山・山頂〜

【Side 結維】


小次郎「ーーーー結維殿っ！ 先程の非礼……なんと詫びたら良いか……っ」

『時枝 小次郎』さんは男物の着物に着替えて出てくるや否や、私の前に跪き頭を下げる。

小次郎「…やはり腹を切って詫びるしか……っ！」

結維「…詫びなんて結構よ。別に気にしてないし」

先程私に向けた日本刀で切腹を試みる小次郎を制止しつつ、私は着物の帯をきゅっと締める。

結維（…それにしても、なんで私までこんな侍みたいな格好をしなきゃいけないのよ……っ）

温泉に派手に飛び込み、着てた服がずぶ濡れになってしまったため仕方がないのだが、他に動きやすそうな服は無かったのだろうか。

小次郎「……あっ…！ お似合いですね、結維殿っ！」

小次郎は顔を上げると私の格好を見て満面の笑みを浮かべる。

結維「……ど、どうも。
ところで、あなたはなぜ男装を？」

お礼を言いつつ、なんだか照れ臭かったので強引に話題をそらす。

小次郎「…な、なんのことでしょうか！？」

しかしどうやら聞いてはいけない事情があるみたい。余計な詮索は止そう。

小次郎「…コホン。
…そういえば結維殿は…、跡部先生に呼ばれて竜霊山まで来たと言っていましたがーーー」

結維「…ええ。その先生が“痕跡”を見つけて私達に連絡をくれた」

小次郎「…なるほど、先生が今朝山を降りていったのは、そちらと連絡を取るためだったのですね」

結維「その先生は今どこにいるの？」

小次郎「…先生は、もう一人…ここで修行中の者に稽古をつけている最中かと。
もうそろそろ帰ってくると思いますがーーー」




ｺﾝｺﾝｯ



小次郎「……！ 噂をすれば、というやつですね…っ！」

ノックを受け、小次郎と二人で玄関までパタパタと歩いてゆく。
そして小次郎は鍵を開けーーーー



ﾄﾞｻｯ‼︎!


結維「！！」

小次郎「…ッ…！？」


扉を引いたと同時に一人の男性が倒れ込んで来た。その男性を小次郎は両手で受け止め、声を上げる。


小次郎「…跡部先生ッ！！」

結維「……！」

どうやらこの長めの黒髪の着流しの男性が、『跡部』さんらしい。
全身傷だらけで、服も所々焦げてしまっている。

小次郎「……一体何があったんですか！？ 先生！」

結維「……」

まだ時刻は11時前…っ。敵も日付け通りに動いてくれるわけじゃないって事ね…。

結維「ーーーーこんなことができるのは、奴らしかいない」

山の上じゃ電波も届かない…！ ここは私達だけでなんとかするしかなさそうねーーー


小次郎「…！
終焉の………焔……ッッ…！！」















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:１６２ーーー
《霊山に墜つる火柱》















跡部「ーーーーッ…！」

15分後、布団にて跡部は目覚めた。

結維「……！」

小次郎「…先生！」


跡部「……ゥグ…ッ……俺とした事が…、派手にやられてしまったみたいだねーーー」

跡部は辺りを軽く見回して、最終的には私に目線を合わせる。

跡部「…君が桜庭結維ちゃんか。メアリーから話は聞いているよ。
僕が、『跡部 慎之介(あとべ しんのすけ)』だ。

結維「…どうも」

跡部「…すまないね、挨拶がこんな形になってしまって」

結維「…いえ。
それより、奴らはーーーー」

跡部「……奴らはまだ竜霊山に潜んでいる…っ…、精霊のカードを探しているんだ……ッ…！」

小次郎「…！」

跡部「…それに、東雲くんは僕を倒した男を追いかけて行ってしまった……。 早く後を追わないと…ッ…一人では危険すぎる……！」

小次郎「！ 竜貴殿が…！」

結維「……ここで修行中っていう子ね。
確かに、一人にしてはおけないわ」

小次郎「……先生はここで休んでいて下さい…！ 先生は、僕たちに襲撃を伝えに来てくれました。それだけで十分です…！」

跡部「…っ…確かに今の俺が行っても…、足手まといになるだけ、か」

小次郎「…結維殿、行けますか？ 」

小次郎は長く綺麗な髪をくくり、高めの位置で結ぶ。

結維「…いつでもいけるわ」



私達は小屋を出て、走り出した。








＊＊＊






ものすごい速さで山道をかけていく小次郎に、私はなんとかついていく。


小次郎「……この速度についてこれるなんてーーーー。
やはり只者ではありませんね、結維殿は…っ」

結維「…あなたの動きは飛んだり跳ねたりで“忍者”に近いから、後ろに付くだけで精一杯よ」

小次郎「…ははは、“忍者”だなんて。
それほどでもないよ」


………

結維「……っ！」

小次郎「…結維殿…！ 気づきましたか…！」

荒れた道並みを進んで行くと、明らかに周りの空気がおかしくなったのを肌で感じる。

結維「…ええ……数は３、４、５……もっと増え続けてる…っ！」

元々暗い場所に更に闇が深まり、辺りは完全なる漆黒に包まれる。

結維「…！」

小次郎「…くっ…！」

するとすぐに青白い焔が１つ、２つ、３つと灯っていき、最終的には数え切れないくらいの焔が視界いっぱいに広がった。

結維「…なんて数の焔…ッ」

それだけではない。その無数の焔は一つの焔に次々と吸収されていき、やがてその大きさは3メートルを超える巨大な焔となった。

結維「…随分なデカブツね」

小次郎「こいつが先生を……！？」

結維「……わからない。 けどどちらにせよ、ここで倒すしか無いみたい…っ…！」


黒焔の巨人は決闘盤を模した焔を左腕に生成すると、一ツ目を大きく見開き咆哮する。



黒焔「…グォォォォオオオォォオオオォォオォオオオオッッッ！！」



結維「…！」

小次郎「……ッ…！」



黒焔「ーーーー貴様ラカラ、精霊ノ波動ヲ感ジル……ッ…！
決闘……ッ決闘ダ……ッ…！！
二人纏メテカカッテ来イ…ッッ！！


黒焔の巨人が右手を振り払うと、辺りを無数の火柱で囲まれてしまう。


小次郎「……準備はよろしいですか、結維殿」


結維「…ええ。私達が守るのよーーーー」


滴る汗を左手で拭い、そのまま眼鏡の位置を直す。


結維「ーーー私達には、その力があるもの」






To Be Continued…






《次回予告》




「次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１６３ 竜霊山防衛戦






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙