DRAW:１０７ 海だぁあぁぁあっっ！！　作：人喰い

(107)




〜電車内〜


初対面の者達も自己紹介を終え、なんとなく打ち解けてきた頃ーーー


火群「ーーーそういえば、積木町ってどんなところなんだろ」

和泉「海沿いにある町だから、潮風が気持ちいいよね♪きっと」

栗須「あとあと！ 魚料理は絶対美味いぜ！」

明日人「おめーは食べ物ばっかだな、栗須」

栗須「食い物だけじゃねぇ！ 一番の楽しみは水着のお姉さん達だろ！ やっぱ！」

火群「！！！」

明日人「『！！！』じゃねーよ！！ 何も喋ってなくても下心丸見えだわ！」

和泉「……ったく…」

結維「…というかもうすぐ着くんだし、少しは大人しくしてたら？」

火群「…ぅぐ…っ」

雫「ほらほらみなさん！ 見えてきましたよ！ 海！」

火群「……！！」


電車がトンネルを抜けると、窓からは広大な海がキラキラと光を反射させ、その輝いた景色が真っ先に目に飛び込んできた。

火群「…おおおぉおおお……！！」

栗須「すげーっっ！！ 海だぜ！？ 海！！」

明日人「…テンション上がりすぎだって……まあでもこれは仕方ねぇか…！」

和泉「…綺麗…♪」

雫「ですねぇ〜…っ」

鈴華「………っ…」

結維「……あんた達…、本来の目的絶対忘れてるわよね……」




『………まもなく、積木町、積木町ーーー』







〜積木町〜


ーーーその楽園は、駅から出てすぐに存在していた。
白い砂浜、赤く燃える太陽。
そして、限りなく続く水平線……ッ！！
昂ぶる心をーーー抑えきれない！！















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:１０７ーーー
《海だぁあぁぁあっっ！！》


















皆は荷物を俺に押し付け派手にジャンプしながら服を脱ぎ、あらかじめ服の下に着ていた水着姿になって砂浜を駆けていく。


火群「ッッぅおい！！ お前らざけんな！」

和泉、柏木さん、チアガール、クラース、栗須の5人は俺の声に止まることなく、たったったっと走って行ってしまう。

火群「……」

結維「…わ、私は行かないわよ？ 下に……水着、着てきてないし」

鈴華「……」

火群「……西蓮寺さんはさっきから結維さんの後ろに隠れてどうしたんだ？」

鈴華「！ べっ、別になんでもないですわよ…っ！ 結維さんがわたくしの代わりに日に焼けまくってガングロくなりたいそうなので」

結維「……よーっし、そんなに日焼けしたくないなら、私が全身に日焼け止め塗ってあげるから、ちょっと更衣室まで来て？ね？？」

鈴華「…あ、ごめんなさっ嘘ですすいませ…っ、ぁ…っ引っ張んないで…っ、結維さんんんっっ！！」



火群「…皆行っちまった…。荷物多すぎだろ…」

ニクス「…火群」

火群「！ ニクス、お前は行かなかったのか。
…で、どうした？」

ニクス「…私も行ってきていいか？」

火群「あーっもう勝手にしろぉ！！」



＊



火群「………」


メアリー「ーーーあーっ！ いたーっっ！！」

火群「！！？」

ちょうど空いていた広めのスペースにパラソルを立て荷物番をしていると、メアリーさんの大声が俺の耳に響いた。


メアリー「…ぜぇーっ、はぁーっ…！ 遅くなってごめんねー…、不死鳥くん！
……って、あれ？ 他のみんなは？」

火群「…おはようございます、メアリーさん。
……みんなならあそこです」

俺はみんなのいる方向を指差す。

火群「…和泉達女子3人は砂でお城作ってます。この間話した倉川と古宮はなんか海で波と戦ってますね…」

メアリー「…あっははは…。ライト眼鏡ちゃんと、ゴスロリちゃんは？」

火群「…2人はまだ更衣室だと思います」

メアリー「……で、キミが荷物番、か」

火群「…はい……。戒とシルバさんは一緒じゃないんですか？」

メアリー「…あー、シルバさんはちょっと用事で遅れるってさ。斬波くんは先に着いてるみたい」

火群「そうなんですね。戒は一体どこでなにしてんだ…。
……あ、結維さん達、出てきたみたい」

結維さん達はこっちに気づき、ザッザッと歩いてくる。2人とも水着に着替えており、思わず見入ってしまう。


結維「ーーーなにジロジロみてんのよ。変態」

火群「…みっっ！？ みみみてないけど！？」

メアリー「あっはははっ！ バレバレだよ不死鳥くん！
……ライト眼鏡ちゃんにゴスロリちゃん、とっても似合ってるワ！」

結維「あ、ありがとうございます…」

鈴華「…っ……」

火群「…えっと…」

さっきから気になってはいたが、西蓮寺さんの全身があきらかにテッカテカだ…！

鈴華「…ぅぅ…っ、まさか本当に全身に塗りたくるなんて…！ お嫁に行けませんわ……」

メアリー「…あははは…。テッカテカだね、ゴスロリちゃん」

結維「神々しくていいじゃない。鈴華」

鈴華（…こんの眼鏡…っっ！）


和泉「ーーーメアリーさん、おはようございます♪」

雫「おはようございます…っ」

どうやら和泉達もこちらに気づき戻ってきたようだ。

栗須「…うぉおおおっっ！！ あなたがメアリーさんっスか！！ 俺、古宮 栗須って言います！ 是非俺とビーチでデートを…！！」

明日人「…おめーは少し黙ってろ！ あ、俺、倉川 明日人です。よろしくお願いします」

メアリー「ハァイ♪ ヨロシクね、ワタシはメアリー=ベイクウェル。ワタシに勝ったら……デートしてあげてもいいわ…♪ どう？ 勝負する？」

栗須「する！！！」

即答だった。
でもなんだか面白いことになりそうだ。




〜〜〜




とかなんとか思っていたが……。


火群「…なんで俺たちまでこの勝負に参加しなきゃなんないんスかね…」

明日人「……しかも…、なんで勝負の内容がビーチバレーなんだよ！！ そこは決闘じゃないのかよ！！」


メアリー「まあまあいいじゃない♪ 文句言わない！」

火群「けど…、女子対男子でやるにしても、人数差がありすぎますよ…？ どうするんですか」

メアリー「そうだねー。 じゃあ女子チームのワタシ以外のメンバーはワタシが指名するわ！」

火群「！」

メアリー「…じゃあライト眼鏡ちゃんと不死鳥さn」

火群「その2人はダメぇえぇええ！！」

メアリー「…あははは！ 冗談冗談♪
せっかくだし、女子チームは一点取るごとに順番で交代してこっか」

女子「おぉーっ！」



＊


そして突如始まった男女対抗ビーチバレー10本先取。


-男子コート-

栗須「…ぜってぇええ勝つ！」

明日人「…ビーチバレーなんか初めてだな……、ま、なんとかなるだろ」

火群「……最初のメンバーはメアリーさん、西蓮寺さん、和泉さんの3人…。
大、中、小と揃えてきたか…！」


-女子コート-

和泉「…まずあの腹立つチビ狙いましょ？」ｺﾞｺﾞｺﾞ…

鈴華「和泉さん…、これはそういうゲームではありませんわ…」

メアリー「…じゃあ、まずはこっちからいっくよーっ！！ レフト眼鏡ちゃんサーブお願い！」

和泉「…ぇぇ！？ あっ、はいぃっ！」


最初のサーブは女子チームの和泉から。

和泉「……えいっ！」

和泉のアンダーハンドサーブは少し高めに打ち上げられ、俺の方へ緩やかに弧を描き落ちてくる。

火群「…せいっ！」

俺はそれをすかさずレシーブし、打ち上げる。

栗須「おぉりゃ！！」

そして栗須が高めのトスで相手のコートに返す！

メアリー「ーーー！」

だがこれは向こうからしたら明らかにチャンスボールだ！

栗須「……来い…ッ！」

しかし栗須は笑っている……何かを狙っているのか…！？

メアリー「……ダイレクト……アターーッック！！」

メアリーさんは大きく飛び上がり、右手を思いっきりボールへと叩きつけたーーー！


ﾊﾞｼｭｩｩｯｯ‼︎


火群「ーーー！！」

その天よりの一撃はあまりにも速く、誰も反応することができなかった。


火群「…おい栗須…！！」

俺が声をかけるも、男はただ一点を見つめていた。

栗須「………」

火群「！！」

メアリーさんが地面へ着地する。
着地の衝撃で、２つの『ブラックボンバー』が揺れる。揺れる。波を打つように。

ｶﾝ☆ｺ-ﾝ!

栗須「ーーーそれを待っていた！！」

明日人「…勝ちたいのか負けたいのかハッキリしろよ…」



気をとりなおして、次も和泉のサーブ。

和泉（…さっきのメアリーさん…かっこよかったな…っ。
…よし…っ、私だって…！）

和泉はボールを上に投げると、軽くジャンプして……

和泉「…えぇいっっ！！」

慣れない右の義手でサーブを放ったーーー！

火群「！！！」

和泉は着地するがーーー胸は微動だにしない。
それはもう絶望的な程に。
例えるなら、『仁王立ちナチュル・クリフ』とでも言ったところだろうか。

火群「ーーーブフォォッッ！！」

仁王立ちナチュルクリフの盤面に見とれていると、ジャンプサーブにより威力の増したボールが俺の顔面を貫いた。

和泉「火群くぅーーん！！？？」




そんなこんなで、俺たちはすっかり本来の目的を忘れて海で楽しく遊んでしまっていたわけなのだがーーー俺たちの合宿はこうして幕を開けた。










シルバ「ーーーだが、お前達の修行はもうすでに始まっている…。生半可な覚悟では、この一週間は生き残れないぞ」




To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１０８ 忍び寄る魔手




＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙