DRAW:１４８ 眠る霊魂達　作：人喰い

(148)


〜竜霊山・頂上〜



跡部「ーーー俺は『跡部 慎之介(あとべ しんのすけ)』。
この竜霊山の精霊を管理している者だ」

竜貴「……ッ…！」

跡部と名乗った着流しの男から、物凄い霊気を感じて俺は思わず固唾を呑む。


竜貴「……東雲、竜貴です」

小次郎「…先生、彼の実力は僕と六武衆達が確認済みです」

跡部「……そうか。東雲くん、ここまで登ってきて汗もかいただろう。まずは風呂に案内しよう」

竜貴「…えっ…？ あ、はい！」



言われて小屋の奥までついて行くと、そこには天然の温泉が湧き出ていた。


竜貴「……マジかよ」

さっきまでの緊張感は一瞬にして崩れ去った。

跡部「ーーーふんッ」

そして男らしい掛け声と共に、跡部先生は着物を脱ぎ去り、ふんどし一丁となる。

竜貴「！？」

細身の割にかなり鍛えており、筋肉の量がガチだ。そしてもはや“美”と形容せざるを得ないーー引き締まった尻。


跡部「ーーーさあ、東雲くんも脱ぎたまえ」


跡部先生はそう言って首だけ振り向いた。


竜貴「………」



この人、想像していたよりもヤべー人かもしれない。
















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:１４８ーーー
《眠る霊魂達》















竜貴「ーーーあーっっ、極楽極楽…っ」


跡部「…ここの湯は、山に住まう精霊の力によって、様々な効能がある。
…しかし精霊に適正のない者が入ると、身体に悪影響を及ぼす恐れがあるから、一般客は立ち入り禁止のまさに秘湯さ」

竜貴「…そうなんすね…。…って、俺がもし精霊に適正なかったらどうしてたんすか！！」

跡部「…ははは、君に精霊が憑いていることくらい一目でわかったさ。だからこそ案内したんだ」

竜貴「…確かに精霊が見えるなら、それもそうか」

何気にフレンドリーな人だなぁ。爺ちゃんみたいに頭の固い人間を想像してたから、拍子抜けしたぜ。

竜貴「…あ、そういえばコジローはどうしたんすか？」

跡部「…ん？ ああ、小次郎なら、多分今頃お客の対応をしているんじゃないかな。最近なにかと来客が多くてね」

竜貴「…こんなとこに客って……」

跡部「……それにしてもーーー東雲くん」

竜貴「…？」

跡部「…君はとても……いい身体をしているね」


竜貴「」


間違いない。この人、やべえ。







＊＊＊



【SIDE 小次郎】


小次郎「ーーーまた貴方達ですか、しつこいですね…」

周囲の霊気の揺らぎを感じてから数秒後、“それ”は姿を表した。


黒焔「………精霊ヲ寄コセ」


黒き焔のような生物。
数日前から頻繁にこの地に集団で現れては『精霊を寄こせ』とだけ言って襲いかかってくる。
こちらから何を言っても聞きやしない…。


黒焔「決闘、決闘、ダ。オマエモ地縛神ノ贄トシテヤル…」

小次郎「…懲りない連中ですね…」

僕は半分呆れながら、決闘盤を鞘から抜く。

小次郎「……この山の精霊にも、二人にも、指一本触れさせるものかーーー」


小次郎「ーーー時枝 小次郎、参る！！」






＊＊＊



【SIDE 竜貴】


跡部「…とまぁ、冗談はさておきーーー」

本当に冗談だったのか…？

跡部「…東雲くんはシンクロ召喚の心得があるみたいだね」

竜貴「…え…っ？ あ、はい、まぁ…。
けど、何故それを…？」

跡部「君の“霊気”を見ればわかる」

竜貴「…すげぇな…」

跡部「…しかし…、未知なる召喚法ーーーシンクロ召喚。
この召喚法に限ったことではないが、この時代に存在しないはずの召喚法……これらを使用する人間はこの世界にはかなりの数いるが、その存在は公にはなっていない……不思議だと思わないか」

竜貴「……確かに不思議に思ったことは、俺にもあります。
ショップ大会でシンクロ召喚を行なった後、周りの奴らには周囲が光っていて決闘の様子が見れてなかった…なんて事もあったしな…」

跡部「…誰が何のためにこの時代に招き入れ、なぜカードは我々に力を貸すのか……全くもって不思議だな」

竜貴「……」

跡部「…ちなみにこの山にも精霊のカードが大量に眠っている。いずれも、別の時代……いや、別の次元に作られたカード達だ」

竜貴「！！」

跡部「…だからそれを狙う不当な輩が絶えなくてね。私はこの山を小次郎と二人で守っているんだ」

竜貴「…二人で！？」

跡部「ああ、小次郎と戦った君ならあの子の強さをよくわかっているんじゃないか？」

竜貴「…はい。それはまぁ…」

跡部「…それに小次郎は君と同じシンクロ召喚の使い手でもある。並の相手では文字通り太刀打ちできんさ」

竜貴「……！」

やっぱそうか…！ 俺のシンクロ召喚を見てもそこまで不思議そうにはしてなかったしな…。

竜貴「…」

けど、終焉の焔…それからYAGAMIの奴らがこの場所を放っておくようにも見えないんだけどな…。いくら二人が強くとも、それすらも防ぎきれるわけじゃ無いだろう。

跡部「ーーーむ」

ｻﾞﾊﾞｧｧｯ!

そこで跡部先生は何かに気づいたように立ち上がる。

竜貴「…おわっ！？ どうしたんすか！？」

跡部「そろそろ上がるぞ。ちょうどいい時間だ」

竜貴「…えっ…！？」






＊＊＊



身体だけ拭き、服も着ないまま早足で歩いていく先生を俺は全裸で追いかける。

竜貴「先生ぇ！！ 服！！ 服は！！？？」


駆け足でついていくと、小屋の前で誰かが決闘をしている。
あれはコジローと……？



小次郎【LP 8000】
『真六武衆ーカゲキ』[ATK 1700]
『六武衆の影武者』[DEF 1800]
『真六武衆ーキザン』[ATK 2100]
『大将軍 紫炎』[ATK 2500]
(魔法)
『六武の門』◉2
伏せ:0
手札:1

黒焔【LP 8000】
伏せ:0
手札:5


竜貴「…！」

黒い炎みたいなやつとコジローが決闘を…！？
あれが精霊を狙ってるって奴なのか…！？

跡部「…決闘はまだ始まったばかりのようだな…。間に合ったか」

竜貴「…？」

跡部「よく見ておけ、東雲くん。小次郎の“戦”をーーー」




小次郎「ーーーレベル３『真六武衆ーカゲキ』に、レベル２『六武衆の影武者』をチューニング！！」

黒焔「……ッ…！」


小次郎「ーーー大いなる野望を胸に…、若き日の将軍よ、今こそ立ち上がれ…ッ！！ シンクロ召喚！ 出場せよ！
『真六武衆ーシエン』！！』[ATK 2500]


《真六武衆
しんろくぶしゅう
－シエン/Legendary Six Samurai - Shi En》 †
シンクロ・効果モンスター
星５/闇属性/戦士族/攻2500/守1400
戦士族チューナー＋チューナー以外の「六武衆」モンスター１体以上
(1)：１ターンに１度、相手が魔法・罠カードを発動した時に発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
(2)：フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊される場合、
代わりに自分フィールドの「六武衆」モンスター１体を破壊できる。


『六武の門』◉2→4


竜貴「…！ これがコジローのシンクロモンスター…！」



小次郎「ーーー更に！ 六武の門の効果でデッキから『六武衆の師範を手札に加え、特殊召喚！」[ATK 2100]

『六武の門』◉0→2

小次郎「カードを１枚伏せてターンエンド！」【手札 0】



◉TURN０２◉


黒焔「……ワタシノターン！ ドロー」【手札 6】

黒焔「…イイ気二ナルナヨ…！！ ワタシハ手札カラ、フィールド魔法『始皇帝の陵墓』ヲ発動！！」


小次郎「ーーー無駄です…！！ 『真六武衆ーシエン』の効果発動！！
１ターンに１度、相手が発動した魔法・罠カードを無効にし破壊する！！」

シエンの斬撃が真空波を生み出し、陵墓を真っ二つに切り裂く。

黒焔「……何…ッッ…！！ ダガ…！！
（…ワタシノ手札ニハ、モウ一枚ノ『始皇帝の陵墓』ガアル…！）」

小次郎「ーーー更に、『大将軍 紫炎が場にいる限り、貴方は魔法・罠を１ターンに１度までしか発動できません」

黒焔「ーーッッ！ 馬鹿ナ…！？」

小次郎「…我々の戦に小細工など無用…！！」

黒焔「……ターン…、エンド…ッッ…！！！」



跡部「……勝負、あったなーーー」


◉TURN ０３◉


小次郎「ーー僕のターン！！」【手札 1】


小次郎「…これで終わりに致します…っ！！六武衆！ プレイヤーへダイレクトアタックッ！！」


『六武衆の師範』[ATK 2100]

『真六武衆ーキザン』[ATK 2100]

『真六武衆ーシエン』[ATK 2500]

『大将軍 紫炎』[ATK 2500]



六武衆達の猛攻が、無情にも抵抗する術のない黒焔に襲いかかった。



黒焔「ガァァァアアァアアッッ！！」【LP 8000→0】



◉Winner◉
-時枝 小次郎-



黒焔「……ゥグ……グァ……ッ…！」


小次郎「ーーー何度来ようが僕が全て返り討ちにしてくれる。
主人にも伝えておいてください」


コジローは一言そう言って、決闘盤を鞘に収めた。





To Be Continued…







その陰で。



「………あの侍野郎はなかなかできそうじゃねぇか……。
ーーー燃やし甲斐、ありそうだ」


青年は静かに燃え、笑う。













《次回予告》




「次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１４９ 近づく狂気」






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙