DRAW:１４３ “毎日”を守るために　作：人喰い

(143)



戒「ーーー終焉の焔が明日襲撃してくるであろう場所は全部で3箇所だ。
一つは、多くの精霊が眠ると言われている場所、『竜霊山(りゅうれいざん)』」

戒「…二つ目は、『決闘騎兵製造工場』」

鈴華「…！！ それって、この町にある工場じゃないの…っ！！」


戒「そして三つ目はーーー『黒髭中学校』だ」


火群「…！！」

和泉「…っっ！」

明日人「……おいおい…」

栗須「マジかよ…っ」


爽香「…？ どしたの？」

火群「…その黒髭中学校って、俺たちの通ってる学校なんすよ」

爽香「ありゃりゃ！ まじ！？」

栗須「…大マジっす。司会のお姉さん」

明日人「……けど、来るってわかってんなら、待ち構えて迎え撃つだけ……違うか？」

結維「…倉川くんの言う通りね。絶好のチャンス、逃すわけにはいかないわ」

雫「…でっ、ですが！ それぞれあまりにも場所が離れすぎていませんか…！？
これじゃあ同時に襲われたら守りきれませんよ…！」

メアリー「なーに言ってんの！
私達はチームなのよ。
一人でできないことは分担すればいい……でしょ？」

戒「……っ…！」

雫「…手分けしての防衛作戦って事ですね…！」

鈴華「なんだか燃えてきましたわ…！」


結維「……問題は、人員をどう配置するかだけど…」

メアリー「…この中で一番手厚く守りたいのは、『決闘騎兵製造工場』ね。わざわざそこを狙うって事は、決闘騎兵を奪って戦力にしようって考えなんだと思うし、そうじゃなくっても破壊されたり暴走させられでもしたらかなりの被害が出るわ」

戒「……それを踏まえた上で、個々の意向、能力も考慮し、3チームに分けるぞ」




〜１５分後〜




【竜霊山チーム】
・桜庭 結維(さくらば ゆい)

【騎兵工場チーム】
・西蓮寺 鈴華(さいれんじ すずか)
・柏木 雫(かしわぎ しずく)
・メアリー=ベイクウェル

【黒髭中学チーム】
・倉川 明日人(くらかわ あすと)
・古宮 栗須(こみや くりす)

【バックアップ】
・桜庭 和泉(さくらば いずみ)
・明石 爽香(あかし さやか)

【休め】
・市瀬 火群(いちせ ほむら)
・斬波 戒(ざんば かい)





戒「ーーーひとまずはこのメンバーで確定だ」

メアリー「…各国の実力者達にも協力を仰いでみるよ。
流石にまだ戦力が足りないと思うし」

火群「…シルバさんは…？」

メアリー「シルバさんは、精霊王の元へ向かってるみたいで、今回の防衛には参加できないって、さっき連絡があったわ」

火群「確かに…、精霊王の事も気がかりだよな…」

和泉「…あ、あの！ バックアップっていうのは具体的に何をすれば…？」

メアリー「えっとね、基本的にはこの病室で不死鳥くんと斬波くんの監視」

火群「！？」

戒「！？」

メアリー「それプラス、みんなからの連絡の総合受付になってもらうわ」

爽香「…ほほう。状況報告をここで受けて、必要に応じて救援を呼んだりすればいいわけですね！？ お姉様！」

メアリー「…そゆこと！」

和泉「…大変そうだけど…、頑張らないと…！」


メアリー「…それじゃあ、ホントに急に決まっちゃった事だけど、合宿は今日をもって一旦終了！ それぞれ、防衛地点に向かいましょうっ！！」


「「おーっっ！！」」



雫「…なんだか、寂しいような悲しいような、不思議な感じです」

鈴華「……私も。
短い間でしたが、なんだかんだ言っても…、大勢ではしゃいだりするのは楽しかったし…」

結維「……確かに、悪くはなかったわね」

和泉「…もぉ、みんなしてそんな事言うの反則だよぉ…、考えないようにしてたのにぃ…」

栗須「……へっ、またみんな集まりゃいいじゃねーか！」

明日人「…そうだな、守り抜けばまたいつも通りだ」

戒「……俺はもう馴れ合いは御免だがな」

爽香「…おやおや、わかりやすいツンデレですなぁ」

戒「うるさい黙れ」

爽香「やんひどいっ！」


火群「………」

ニクス『火群、どうした？』

火群「……こういう毎日が、ずっと続いて欲しい」

ニクス『………フッ……そうだな…。私も同じ気持ちだ』

火群「……ずっと憧れてたんだ。
こんな風にみんなで笑って、泣いて、“楽しい”も“苦しい”も共有できる“毎日”に」

ニクス『……せっかく手に入れたんだ。簡単に手放すわけにはいかないな…っ、火群…！』

火群「……ああ、俺も早く回復して、今度こそ奴らと決着をつけなきゃなんねぇ」


火群「ーーー“倒すため”じゃなく、“守るため”に闘うんだ」
















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:１４３ーーー
《“毎日”を守るために》















和泉「ーーーみんな行っちゃったね」

爽香「…だねぇ〜」

火群「………」

戒「………」

爽香「和泉ちゃん、一緒に飲み物買いに行かない？」

和泉「…え…？ あ、はい！ 行きましょう！」


ｶﾞﾗｶﾞﾗｶﾞﾗ…






戒「ーーー市瀬」


火群「……ん？」


戒「………俺はまだ、強くなれるだろうか」


火群「………何言ってんだよ」


戒「………」


火群「ーーー倒れてもその度に立ち上がって、前に進み続ける限りーーーどこまでも強くなれるはずだぜ」


戒「………フッ…。
まさに、不死鳥のセリフだな」








＊＊＊





時は２日ほど遡りーーーとある道場。






師範「ーーーようやく戻ってきたか。
我が孫ーーー竜貴よ」


竜貴「ーーーハイ、師範代。
“青龍抜闘術・奥義”を体得しに、戻ってまいりました」


………




【SIDE 竜貴】


師範「待っていたぞ。竜貴。貴様の覚悟が如何なるものか、確かめさせてもらう。ついてこい」

竜貴「…ハイ」


…まさかまたこの道場に戻ってくる事になるなんてな…。
武道から離れ、しばらく決闘一本でここまでやって来たが……。

俺の信じて来た力の全てをぶつけても、永井 放浪(ながい ほうろう)ーーー奴に勝てなかった。
全力で放った拳も、奴には届かなかったんだ。
それで更なる強さを手に入れるためには、ここしかねぇって思ったわけだ。


師範「…お前にはこれから３日間、遥か北にある『竜霊山』にて修行を積んでもらう」

竜貴「…竜霊山……確か、精霊がわんさかいるところだったか」

師範「…そうだ。その地にて霊気を全身に浴びながら修行を行う事で、奥義の型は自然と身体の中心にねじ込まれるのだ」

竜貴「……なるほど、ねぇ」

師範「…しかし、決して簡単な事ではないぞ。心の弱き者が生半可な気持ちで修行に挑めば、その魂は精霊界に連れ去られてしまう」

竜貴「…！！」

そんなオカルト的なヤベー奴なのかよ…！

師範「…それでもお前は挑むのか？」

竜貴「…当たり前！ じゃなきゃわざわざここに来た意味がねぇ」

どの道強くなるにはやるしかない。
霊でもなんでも来やがれってんだ…！！




………



黒髭町から電車を乗り継ぎ、4時間ーーー


〜竜霊山〜


電車の中からすでに見えていたものの、いざ目の当たりにすると、とてつもない迫力と、不意に感じた異質な空気に思わず息を飲む。
恐らくこの異質な空気というのが、“霊気”ってやつなんだろう。

竜貴「…修行って言ったって、俺はこの山で何をすりゃいいんだ？ じーちゃん」

師範「師範代と呼べィ！ 気がたるんでおるぞ、竜貴」

竜貴「…ハイ、師範代」

師範「…それで、お前はこの山の頂上に行き、そこにいる男から直々に稽古をつけてもらうのだ」

竜貴「…へー、そんだけか」

師範「口を慎まんかッ。
……わかったらさっさと行けい！
３日後の正午に、再びこの場に生きて帰ってこい」

竜貴「…うす。
じゃあ、行ってくる」


ｻﾞｯｻﾞｯｻﾞｯｻﾞｯ





………


師範「……フッ……、敗北を知り、なかなか良い面構えになったじゃないか……」












To Be Continued…






《次回予告》


火群「………」

戒「………」

火群「……なあ、戒」

戒「…なんだ」

火群「…明石さんとはどういう関係ーーー」

戒「黙れ」

火群「ひでぇ！」



戒「次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１４４ 竜霊の潜む山」



戒「…いいか？ あの女は俺に烏龍茶を強引に押し付け恩を売ることで、好き放題やってくれているただ面倒なだけのーーー」


ｶﾞﾗﾗﾗｯ!

爽香「たっだいまーっ！ 戒くん、烏龍茶買って来たよーっ」

戒「…こ、今度は受け取らんぞっ！！」

和泉「火群くんにもーーー」

戒「…市瀬ッ、不用意に受け取ってはダメだ…！ 女というのは、腹の奥にどんな漆黒を抱えているかわかったものでは……っっ」

和泉「ーーーはい、カ◯ピスっ」

火群「…ありがとう和泉。このカル◯ス、大事に飲むよ」

戒「…市瀬ぇぇーーーっっ！！」





＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙