DRAW:１２３ 変わらないはずなのに　作：人喰い

(123)








雫「私は、火群さんのそういうところがーーー」






雫「ーーー好きです」







………



和泉「ーーーっっ……！」

和泉（何……これ…っ…？ 何で胸の奥が苦しいの……！？ わかんない…っっ…。
……訳が、わからないよ…っっ！！）






………


〜リビング〜


和泉「………」

千愛「あら、早かったわね、和泉ちゃん」

ニクス「…火群の様子はどうだ？」

和泉「もうすぐくるってっ。さっ、私たちも早くテーブルセット済まさなくっちゃだねっ！」

和泉（…落ち着いて……へーじょーしん…。へーじょーしんだよ……私…っ！）

千愛「………」





………



〜火群の部屋〜


火群「……柏木…さん…？」


雫「……っ…！ はわわわ……っ…！ 今のは、深い意味とか無くて…、ただ純粋に…、私の気持ちといいますか…」

火群「……いや、あり…がとう…。柏木さん」

雫「………いいんです。お礼なんて。
ただ…、私の気持ちにケリをつけたかっただけですから」

火群「……」

雫「…でも火群さんの視線の先には、ずっと別の人がいます…」

火群「…！」

雫「わかっていたこととはいえ、やっぱり悔しいですね…っ」

火群「…え……っ！？ いや、それは……」

雫「…ふふふ♪ 火群さんって本当にわかりやすいですね♪」

火群「〜〜…っ」

雫「……困らせるような事ばかり言ってごめんなさい。返事は結構ですので！」

火群「…っ……！ いや……っ…」

雫「……それでは、下に降りましょうか。皆さん待っていますよ♪」

火群「……っ…、…ああ、わかった」




火群（ーーー柏木さんは……それで…いいのかよ…。俺から直接返事を聞かずに……いいのかよ……っ…！）

火群（柏木さんが勇気を出して思いを伝えたってのに…、俺はだんまりでいいのかよ……っ！！）


火群（ーーー少しの勇気が、なんで出ないんだよ………っ…！！）















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:１２３ーーー
《変わらないはずなのに》















〜翌日〜

朝のウォームアップ終了後。





シルバ「ーーー皆、遅くなってすまない」


メアリー「あら、予定より早かったじゃないですか。シルバさん！」

シルバ「…早く仕事が片付いただけだ。
しかし、合流して早々だが、明後日にはまた１日席を外さなくてはならない」

メアリー「十分ですよ！ それじゃあ今日から、本格的な決闘の訓練を始めますか！！」



「「「おーーっっ！！！」」」




という事で、シルバの合流により、決闘の訓練が始まった。


シルバ「……訓練は、ミス西蓮寺から貸して頂いた試作型“決闘騎兵(デュエルロイド)”『アーミーくん零式(ぜろしき)』を使用して行う」

迷彩服を着用した兵隊型のデュエルロイドがズラッと現れる。

雫「ミス西蓮寺…？」

鈴華「…！ ママが開発していたやつですわっ！」

シルバ「…このアーミーくん零式は、決闘戦術レベルを自由に設定でき、高性能なAIにより初見のカードでもカードテキストを読み、それに応じたプレイを行うことができる」

栗須「……化学の力ってすげー…」

シルバ「…お前たちにはこれより、この高性能な決闘騎兵と決闘を行い、各々の能力を見させてもらう。準備はいいか？」



全員「「…はい！！」」



シルバ「…決闘戦術レベルは1から100までで設定できる。とりあえずはレベル50以上に1勝できるまで続けてもらう。
ーーーデュエルスタンバイ！！」


「「「決闘！！！」」」






ーーー1時間後。



鈴華「ーーーダークフレア・ドラゴンでダイレクトアタック！！ですわっ！！」


アーミーくん「ががががが！！！」【LP 1900→0】


◉Winner◉
-西蓮寺 鈴華-


鈴華「…はぁ…はぁ…！ やりましたわ…っ、レベル50撃破…っ！」

結維「やっと勝てたのね。おめでとう」

鈴華「…なんなのよその言い方はぁ！」


シルバ「………ここまでで6人が突破、か」

戒「………いつまでも騒がしい奴らだ」

シルバ（ーーー斬波 戒。テスト用デッキとはいえ、【聖騎士】デッキを完璧に操り、初回でレベル100を倒してみせた彼の実力は言うまでも無い。勝利に対する異常なまでの執念……それが彼の強さの源なのだろう。
だが、同時に決闘者として大切なものが１つ欠けている。今回の合宿ではそこの補強がメインとなるか…）

火群「…まあそう言うなって、戒」

シルバ（ーーー市瀬 火群。不死鳥のカードを持ち、使用するデッキは【炎王】。そして市瀬のみが扱う、未知なる召喚法……ライズ召喚。問題は、使用後には毎回疲労感により身体が思うように動きづらくなってしまう事、か。強力な力だが、多用は禁物という事を頭に入れておかねばなるまい。決闘に関しては、一手崩されると調子が狂い、プレイミスが増える事が多いようだな。
……それに今は、何か別の原因で心に落ち着きが無いようにも見える。しかしそれは自分で解決してもらう他ないだろう）

結維「…というか、やっぱりレベル50じゃ少し物足りなかったわね。私もレベル100にすればよかったかな…」

シルバ（ーーー桜庭 結維。【代行者】の使い手か。彼女の操る精霊、マスター・ヒュペリオンのパワーは勿論だが、“未来の召喚法”シンクロ・エクシーズを操る多彩な戦術に加え、確実に相手を倒しきる攻撃的なプレイスタイルが特徴的だ。
しかし耐えきられてしまった時に、脆い一面を見せてしまう。持久力の向上の為に、メインデッキ及びエクストラデッキに、防御札の採用も考える必要があるな）

明日人「…俺は50でも結構ギリだったぞ…、ただ同じデッキならレベルを上げても何回かやればいけそうだな…っ」

シルバ（ーーー倉川 明日人。昨日の熊の件はメアリーから聞いていたが、反帝アリーナの時からデッキを強化したようだな。
だが、【森羅】……そのデッキを使いこなすには骨が折れるだろう。いざという時に致命的なミスを犯さないよう、今はとにかく場数をこなしデッキに慣れるしかない）

雫「鈴華さんお疲れ様ですっ。ナイスファイトでしたよ！」

シルバ（ーーー柏木 雫。【リチュア】使いの少女だな。普段はオドオドしているが、決闘の際はその迷いも振り切っている。住んでいた村を終焉の焔に襲われたと聞いているが、決闘への迷いの無さはその過去を乗り越えた今があってのものだろう…。
しかしプレイもまだまだ未熟で、煮詰めていく必要がある。…ある意味彼女のようなタイプが、一番早く成長するかもしれないな）

鈴華「…とっ、当然ですわっ！ ちょーっと様子見で時間がかかってしまったみたいだけど……ねっ！」

シルバ（ーーー西蓮寺 鈴華。決闘騎兵の開発を務める彼女の母親から、よく話は聞いている。反帝アリーナでは【天魔神】を使用していたと聞いているが、今は【カオスドラゴン】に構築を寄せたようだな。
…デッキ自体のパワーはかなりのものだが、決闘の際は感情の起伏が激しく、相手にペースを奪われがちなところが、課題点か…）

シルバ「……そして残りの二人だがーーー」



栗須「…ぎゃぁぁああぁあっっっす！！」【LP 1000→0】


和泉「………っっ…！！」【LP 1900→0】


◉Winner◉
-アーミーくん零式-




和泉「……っ…」

千愛『…和泉ちゃん。最後の場面、相手のモンスター効果を手札の『朱光の宣告者』で無効にしていれば、勝機はあったはずよ」

和泉「…あ、ごめんっ…、千愛ちゃん…。ぼーっとしてたみたい。今度こそ集中しなくっちゃ」

千愛（……和泉ちゃん…、さっきからずっとこんな調子…。それに、昨日だって少しおかしかったわ）

結維「………」



栗須「…くそっっ！！ なんで勝てねーんだっ！！？」

戒「……簡単な話、お前が弱いからだ」

栗須「っんだとぉ！！？」

戒「……この程度クリアできんようでは、終焉の焔との闘いで足手まといだ。さっさと帰った方が身の為じゃないか？」

栗須「……ぐぎぎぎ…ッ…！！
もう一回だ！！ もう一回！！」

シルバ「……」

シルバ（ーーー古宮 栗須。シムルグをエースに据えた【風属性】デッキの使い手…。決闘に対して真っ直ぐな姿勢は見事だが、どうにもプレイが荒い。それに構築も一辺倒すぎてバランスが悪すぎる。
改善すべき点を１つずつ直していくことができれば良いのだが、意地っ張りな彼の性格上……簡単にはいかないだろうな）


和泉「……私も…、もう一回…っっ！！」

シルバ（ーーー桜庭 和泉。桜庭結維の双子の姉と言っていたか。容姿は瓜二つ…。しかし内面は真逆で、棘がなく温和な性格。それは決闘スタイルにも現れている。
相手の思考や心理を読む事に長けているようだが、機械相手ではそううまくはいかないようだな…。
…それにしても、先程のミスは一体ーーー）



和泉「……っ…！ へーじょーしん……へーじょーしん…っ」

和泉（落ち着いて、私…っ…！ 落ち着くことくらい…私になら……できるでしょ…！？）

和泉（……今まで辛いことがあっても、誰にも悟られないようにうまくやってきたじゃない…っ！！）



火群「ーーー和泉さんっ」


和泉「……っ？」


火群「ーーー大丈夫…？」


和泉「………」



和泉「うんっ！大丈夫！」





和泉（今までと変わりないようなやりとり。それなのにーーー）



和泉（ーーー私の胸の奥の“何か”が、空鳴り、絡まり、空回る）









To Be Continued…







《次回予告》



爽香「ーーーふんふふーん♪」

爽香「ふふふんふーん♪」

爽香「ふふんふふー………ぇ？ 何ここ？」

戒「……次回予告だ」

爽香「えええ！？ 嘘！？ 完っっ全に自宅の感じでくつろいでたわっ！！ 早く言ってよ斬波選手！！」

戒（…何度か声はかけたのだが…）

爽香「…台本はこれねっ！ 爽香ちゃんにまっかせなさい！！」

戒（……うるさい女だ…。俺は帰るとしよう）


爽香「ーーー胸の奥でざわめく思い、その正体をわかっていながらも否定し続ける和泉…。一方で栗須は、自分の実力不足を痛感し、強さを求め走り出したのだったーーー！！」


爽香「次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１２４ 《神鳥に迫る影》！！」


爽香「デュエルスタンバイ！！」





爽香「……ねぇねぇどうだった？ 私の次回予告！ ………って、斬波選手もういないしっ！！」





＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙