DRAW:１１ 決着・邂逅の鐘　作：人喰い

◉あらすじっぽいの◉

*ﾟ▽ﾟ)「明日人の植物がガン回りして火群ピーンチ！ 絶対絶命の状況で火群が引いたカードは、この窮地を脱するのにふさわしいカードだった！」


市瀬 火群【LP 4000】手札:５

倉川 明日人【LP 4000】手札:２


火群「俺の引いたカードは『炎王獣 ヴェスター』、ギガプラントの攻撃宣言時に手札から守備表示で特殊召喚する！」

明日人「……くっ、このターンでは決められないか」

火群「そして、さらにヴェスターの効果で手札のガルドニクスを破壊する！」

明日人「はぁ！？ それはヤバイって！！」

クラースが突然声を荒げる。どうやら動揺しているようだ。モンスターが３体も並んでいるこの状況で、『次のターンぶっぱしますよ』って言われたらまあ動揺するか。
でも、最初は演技かと思ったが、幼馴染であるクラースの事は大体わかる。今のは演技じゃねぇ。
という事はつまり、今のクラースには、俺のガルドニクスを止める術が無いと見てよさそうだな……！

ニクス（全く……浅はかなヤツだな…私の主人は。そう甘くはないだろうに）

明日人「……３体目のギガプラントでダイレクトアタックだ！」

火群「くぅ……！」【LP 4000→1600】

明日人「ターンエンドだ」

倉川 明日人【LP 4000】
場:『ギガプラント』[攻 2400]x３
伏せ:１枚/手札:２枚

市瀬 火群【LP 1600】
場:なし
伏せ:なし/手札:５枚

◉TURN:４◉

火群「俺のターン！ ドロー！」

火群【手札:６枚】

火群「このスタンバイフェイズ時、ガルドニクスが俺の墓地から蘇るぜ！ そして全てのモンスターを焼き払う！ 燃えろ植物共ぉ！」

『炎王神獣 ガルドニクス』[攻 2700]

明日人「どうせ破壊されるなら諸共だ！ 罠発動！ 奈落の落とし穴！」

火群「奈落か…！ 読みが甘かったか…！？」

だが、俺のデッキトップは……！

ニクス（………ほう）

火群「チェーン発動だ！『炎王炎環』！」

明日人「何！」

火群「俺のフィールドのガルドニクスと、墓地のクベーラを選択する！」

チェーン１【炎王神獣 ガルドニクス(効果)】
チェーン２【奈落の落とし穴】
チェーン３【炎王炎環】

火群「まずはチェーン３の処理からだ。選択した場のガルドニクスを破壊して、墓地のクベーラを特殊召喚する！」

『炎王獣 クベーラ』[攻 1400]

明日人「くっ……ガルドニクスが場から離れた事でチェーン２の奈落の落とし穴は不発か…！」

火群「そして最後にチェーン３の処理が行われる！ ガルドニクスの効果でフィールド上のモンスターを全て破壊する！」

ゴオォオオオォオッ！！

明日人「まずいっ場がガラ空きに！」

火群「クベーラの効果で１枚ドロー！」

火群【手札:６枚】

これだけ手札があれば……！

火群「よっしゃいくぜ、今からここは俺たちのパーティー会場！バーニングダンス！ 見せてやろうぜぇ！」

ニクス（言っとくが私はダンスが苦手だぞ。胸が邪魔な所為でな）

明日人（……“俺たちの”……か。俺と火群の事ではなさそうだが……他に誰かいるのか？ 俺に見えない、何かがーーー）

火群「永続魔法発動！『炎王炎舞-響宴』！！」

明日人「炎王炎舞…！？」

火群「このカードの発動時、このターンカードの効果によって破壊され墓地へ送られた自分の炎属性モンスター１体を特殊召喚する！ 蘇れ！ 炎王神獣 ガルドニクス！！」


ニクス「はぁああっ！」[攻 2700]


火群・明日人「「ゑ？」」

生徒「ざわ…ざわ…」

俺は一瞬何が起きたかわからなかったが、冷静に考えてみたところ、俺がガルドニクスを場に置いた瞬間、ガルドニクスが実体化してしまったようだ。
ガルドニクスは冷や汗をダラダラ垂らしながら俺の方を少し見て、いつものテレパシー(？)で言う。

ニクス（…すまない。少し力んで出てきてしまった…。てへぺろ(´ ≧ ω ≦ `)９☆）

火群（いいからカードに戻ってくれっ！）

ニクス（それがな、火群。この前わかったんだが……どうやら１度出てきてしまうと１５分くらい経つまで精霊体に戻れないみたいなんだ）

火群（じゃあせめてこの空気をどうにかしてくれ！ 話はそれからだ！）

ニクス「え……え〜と。ゴホンっ」

明日人「…なあ火群。これはどういう手品だ？」

生徒「ざわ…ざわ…」

炎群「まぁ…その」

火群（…ニクス）

俺は視線でニクスを促す。自己紹介をするようにだ。

ニクス「……わ、私の名前はニクスだ。デカメロン王国から来たデカメロン星人で、えと、火群の婚約者だ」

火群・明日人「「なんでだよ！！」」

普段、俺に対してズバズバとものを言うニクスがモジモジと自己紹介する姿を見て俺は思わず突っ込んでしまった。
しかもデタラメ言いやがって。

明日人（ハッ！ つい勢いでうっかり初対面の人に突っ込んじまった！）

火群（こいつ絶対友達いなかったな……なんか親近感が…）

生徒「婚約……者…？」

火群「いや誤解しないでくれよ！？ こいつは俺の姉の『市瀬 にくす』だ！」

ニクス（貴様こそ何を言っている！？ 姉弟だと！？ ……いやでも、姉と弟の決して許されぬ関係というものもなかなか……）

俺はとりあえずスルーする。

火群「今まで秘密にしてて悪かったな！ 姉のニクスは、手品師目指しててさ、その、えと、急に出てきたりするんだよ。ははは」

クラスメイト達からの視線が痛すぎる。

キーンコーンカーンコーン。

こんな時にチャイムが鳴りやがる。今先生がきたら洒落にならんぞ……？
とにかく移動しようそうしよう。

火群「じゃあちょっと姉さんを玄関まで送ってくるから！ クラース、デュエルはまた今度な！ 途中で終わっちまったけど、楽しいデュエルだったぜ！」

明日人「おっ…おい！！ もうすぐ先生来るぞ〜！」

俺はデッキを速攻で片付けて、ニクスの手を引きダッシュで教室の外へ。幸い先生はまだ廊下までも来ていないようだ。
慎重に行こう。
と、思いつつも早足で階段を降りていくと……。


ドンッ！！


踊り場で人にぶつかった。
最初は先生かと思い、恐る恐る目を開けると、そこに居たのは一人の女子生徒だった。
衝突の際に尻餅をついてしまったようで、声をかけようと俺は近寄る。
だが、未だに顔を伏せたまま動かない。
見慣れない制服、ちゃんと食事は取っているのだろうかと心配になるような、すらりとした細いラインの身体。
でも。
それらも十分気にするべき箇所なのだろうけど、今俺が一番に気にするべき箇所は、他にあった。

ニクス「………」

火群「………！！」


その少女には、右肩から下が存在しなかった。

少女の着ているブレザーの肩のところが不自然に盛り上がっており、明らかに腕の通っていない肩口から下の袖がだらしなく床についている。
ニクスも俺も、『大丈夫ですか？』と声をかけることすらできなかった。


少女「……貴方は…？」

少女は顔を伏せたまま俺に問う。
俺は、決死の思いで喉から声を絞り出し、少女の問いに答える。

火群「…２年１組…、市瀬……っ、火群…です」

俺が名乗ると、少女は急に立ち上がり、俺に言った。


少女「…は、始めまして！」

和泉「わ、私っ！ “元”、桜花学園中等部２年９組、『桜庭 和泉(さくらば いずみ)』って言います！ …明日から、転入生としてこの学校にくることになりました！ よろしくお願いします…っ！」

女子にしては高い背丈に、それにあまり釣り合わないぺったんこな胸。
前髪は目の上で揃えており、ギリギリ肩にかかるくらいの丸いラインのショートカット。
可愛らしい無邪気な笑顔で、薄紅色の縁の眼鏡のレンズ越しに、俺より少し高い目線から俺を見据えている。
立ち上がっても尚、和泉の制服の右袖はだらしなく宙を揺れているのだが、そんなことすらどうでも良くなるくらいに、大事なところが抜けているという事に、俺は気づかないはずが無かった。

何よりも笑顔が素敵な少女は、俺の事を覚えていなかったんだ。


火群「は、始めまして。よろしくお願いします、桜庭和泉さん」


俺は湧き上がる全ての感情を押し殺して、そう答えるしかなかった。


ー〜ー〜ー〜ー〜ー〜ー〜ーTo Be Continuedー〜ー〜ー〜ー


《次回予告》
ニクス「今日も元気に地獄の底から這い寄る不死鳥、みんなのアイドル『ガルドニクス』だよ〜(真顔)。
次回は、どうやら私がヘマをした所為でいろいろ大変らしいぞ。まあ、大変なのは火群だけだからどうでもいいがな。
ついでにようやくヒロイン回だそうだ。伏線放置は良くないぞ糞作者」

火群「次回、『遊戯王 Ph.X』
DRAW:１２ 二人を繋ぐ救命曲線
(３月３日(日)更新予定！)

俺の心が炎と燃えるぜッ！！」


〜おまけ〜

☆《今日の最強カード》☆

*ﾟ▽ﾟ)/☆《炎王炎舞-饗宴》☆ヽ(´o｀；

*ﾟ▽ﾟ)「『炎王』と『炎舞』、二つの名を冠した永続魔法で、発動時に、このターン効果破壊され墓地へ送られた自分のモンスター１体を特殊召喚できるんだ！」

(´o｀;「今回は発動されなかったが、このカードと手札のカード１枚を破壊することで、自分のデッキの炎属性モンスター１体を破壊する効果もあるんだ。因みに『炎王炎舞-饗宴』は１ターンに１枚しか発動できないぞ」