DRAW:５５ 開戦！ WDCS予選　作：人喰い

？？「……ら！ ……ほ……むら！」



火群「………」



ニクス「………火群！！」




火群「…んぅ……？ …やっぱりこのカードは抜けねぇよなぁ……むにゃ…」


ニクス「バカ言ってないで起きろ！！ 今日はWDCS予選の日だぞ！！」



火群「…よせん……？ ーーーあっっっ！！！」




デッキ構築をしながら机に突っ伏していた火群はニクスの呼びかけで飛び起き、慌てて着替え始める。


ニクス「…ったく……そんなんで大丈夫なのか……？」




火群「ーーー行ってきまーす！」



父「…火群。少しいいか？」



火群「父さん…？」









＊






和泉「ーーー遅いっ！」



火群「ごめんなさい」


栗須「スンマセン」


明日人「申し訳ない」



和泉「…なんでこんな大事な日にみんなして遅刻してきてるのかな〜…？」


栗須「えっと…」


明日人「あー…」


火群「そのーーー」



3人「ーーーデッキの調整で夜遅くまで……」



和泉「…もうっ！ ……それで完成度はどうなの？」



頬を膨らませながらも落ち着いたトーンで問う和泉に、三人は無言のグッドサインで応えた。
















遊戯王Ph.X DRAW:５５
《開戦！ WDCS予選》















ーーー『World Duel ChampionShips』
全国の決闘者が集まるその大会の優勝者には精霊王と“対話”する事が許され、願いを一つだけ叶えてもらえるという、まさに決闘者たちの夢の祭典であるーーー






司会「えー、本日は！ 会場にお越しいただき、ありがとうございまーっす！」



今大会の予選が行われる会場『反亭(そりてい)アリーナ』では、今まさにステージの幕があがり、司会の女の子の挨拶と共にオープニングセレモニーが始まろうとしていた。


司会「みんなみんな！ 今日は白熱した決闘を期待してるからねー！」



ワァァアアァアアア！！！





爽香「ありゃりゃ、私とした事が…申し遅れました！ 私、今大会のMCを務めさせていただきます『明石 爽香(あかし さやか)』でーっす！ よろしくねっ！」


黒髪ショートカットの女性が元気よく挨拶済ませると、参加者の方にマイクを向ける。



ワァアアアァアアア！！！


再び歓声が巻き起こる。


爽香「…さあそれでは！ 前置きが長くなると皆様飽きてしまうと思うので、早速今大会ーーーWDCS予選のルール説明をしていくよーっ！！」



爽香「えー、はじめに、今大会は日本開催ということもあって、例年よりも多くの参加者にお越し頂いておりますため、本戦に参加するには、参加権利を得た皆様！ ……予選という名のふるい落としで勝ち上がる必要がありますっ！」


爽香「そしてその予選の内容は、皆さんのお手元にあります、本大会出場権利である携帯型端末『DUEL GEAR(デュエル ギア)』にも表示されています通り、この反亭アリーナ全体を使用したバトルロイヤルです！！」


爽香「頭の中で疑問符が乱舞してる方も多いかと思いますが！ ルールは至って簡単！ 予選の時間は3時間、皆さんは、予選開始時に反亭アリーナの敷地内のどこかにランダムで転送されます。そしてそれと共に反亭アリーナの館内と館外の一帯に散らばる“1〜16の数字が書かれた16種のパスカード”のいずれかを手にし、再びこの『セントラルホール』前の受付に戻ってきた方に本戦への出場資格が与えられ、セントラルホール内にて予選終了までお待ちいただく事になります！」


爽香「ですが、本戦への出場資格を得たからといって安心はできません！ 先ほど16種のパスカードと言いましたが、1枚ずつではなく複数会場内に散らばります！ そして同じ数字のパスカードを持つ決闘者2人がセントラルホールに入る事はできません！」


爽香「つまり、自分の拾ったカードと同数字のパスカードを持った決闘者がすでにゴールしていた場合、決闘によってどちらかがセントラルホールから出て行かなくてはなりません！」


爽香「決闘の申し込みは、DUEL GEARにより半径1メートル以内の一番近い距離にいる決闘者に申し込みコードを送ることができ、そのコードを送られた(=決闘を申し込まれた)決闘者はその申し込みを“断ることができません”。条件と勝敗による判定は以下の通り！」


・パスカードを持っていない決闘者同士
→勝者のDUEL GEARのマップに5分間、“全てのパスカードの位置が表示される”。
敗者は

・同数字パスカード持ち決闘者同士(ゴールしていてもしていなくても)
→敗者の持っていたカードは運営によって“会場のどこかに飛ばされる”。

・異なる数字のパスカードを持つ決闘者同士
→勝者は5分間、“他の決闘者からの決闘申し込みを受けない”。敗者のカードは“会場のどこかに飛ばされる”。

補足

＊パスカードを2枚以上拾うことはできない。


爽香「こんな感じかな！ あ、あとっ、当然ですが禁止されている事項もあります！」
・参加者及び観客・スタッフへの暴力・暴言
・参加者から直接パスカードを奪い取る行為
・パスカードの譲渡



爽香「以上を犯してしまうと、最悪失格にもなるのでくれぐれも注意してくださいね！」


爽香「そして持ち込める物にも制限がありまして、以下の物しか持ち込めません！」


・40〜60枚のメインデッキ
・0〜15枚のエクストラデッキ
・支給されたDUEL GEAR
・支給された決闘盤


爽香「念のため予選前に持ち物検査は行いますが、万が一予選中に不審物を見かけた場合は即刻失格になるのでくれぐれも参加者ロッカーへの預け忘れのないよう、気をつけてくださいねーっ！」



爽香「…それでは長くなりましたが、これから１時間の休憩を挟み、13:30から持ち物検査を行いまして、14:00に予選開始でーっす！！ 一旦解散！」








＊



和泉「みんな！ お弁当持ってきたんだけど……っ、食べる…？」



火群「…えっ！？ 桜庭さんが俺のためにお弁当を…！？」


明日人「残念だが火群、俺たちの分もあるみたいだぜ」


和泉「うん、みんなの分も早起きして作ったんだよっ」


和泉が重箱を開けると、色とりどりのおかずと、大量のおにぎりが火群・明日人・栗須の3人の視界に飛び込んできた。


火群「…おぉお…っ！


栗須「よっしゃぁありがてえ！ いただきまーっす！」


火群「！！ っちょ待てコラ栗須テメェ！」


明日人「待てお前ら！ そこはやっぱり間を取って俺から…」


3人「ぎゃーぎゃーわーわー」



和泉「喧嘩、しないで…」





火群「……よし！ タコさんウインナー貰ったァ！」


栗須「…くっ！」


明日人「先を越されたか！」


火群「…もぐ…っ！ んぐんぐ……」



和泉「…どう？ 市瀬くん」






火群「………」



和泉「…？」




火群「！！！？？？」





火群の顔が急に青ざめる。



和泉「…市瀬くん！？ もしかして……美味しくなかった…？」



火群（すげぇマズイ。ってゆうかどうやったら普通のウインナーをここまで不味くできんだ……）


火群（…けど、けどよ……そんな目で俺をみるんじゃねえぇよぉぉ和泉ぃいぃぃ…ッ）



火群「いや、とっても美味しいヨ。アリガトウサクラバサン」


和泉「…ホント！？」


満面の笑みの和泉。


明日人「そっかそっかそしたらそんな火群のために俺たちは身を引くよ」


栗須「全部食べるなんてすげぇなあ火群」


火群「！！？ てめぇら！ちょっ待ぁっ」



和泉「…市瀬くんいつも小食だから、デュエルの前くらいはたくさん食べて力つけてね」


明日人「だってよ火群」


栗須「…ったく、なんで火群なんだよ……ったく」


明日人「…じゃあお前もあれ食ってくるか？ 栗須くん」



火群「………もぐもぐ」


栗須「…いや、あんな顔面蒼白になりながら目の前のものを処理するだけの機械になんてなりたくねぇや…」


明日人「…それにしてもあの料理、とても人間の作ったものには見えないな…」



和泉（火群くん美味しいって言ってくれて良かった！ 千愛ちゃん、結維ちゃん、手伝ってくれてありがとう♪）


千愛（というかほとんど私たちが作ったんだけどね）


千愛『でも言ったでしょ、和泉ちゃん。市瀬火群は絶対「美味しい」って言ってくれるって』



ニクス（…あいつの仕業か）




火群「トッテモオイシイヨサクラバサン」








＊






ーーーそして時刻は午後１時半。参加者控え室。
火群は靴紐を固く結び立ち上がると、支給された決闘盤を左腕に装着する。




火群「ーーーよしっ！」



火群（なんでだろう。昼飯食べてからの記憶がない）


ニクス『いよいよ予選だ。気を抜くなよ、火群！』



和泉「…火群くん。あんまり無理はしないでね」



火群「…わかってる。無理なんかしねぇよ」


だけど悪いな、和泉。無茶はするかもしれねぇ…。




明日人「…ほら、イチャついてねーでサッサと行くぞ、お二人さん」



火群「ゔぇ、別にそんなんじゃねぇって」


和泉「………っ」


栗須「…はぁぁあ！？ ッテメ！ 俺が予選前の最後の精神統一してる時に何やっt」


明日人「あーーうるせうるせ！ ややこしくなるからお前は黙ってろ！」









火群「………」


火群はデュエルディスクのエクストラデッキゾーンから４枚のカードを取り出すと、それらを何となく眺める。

そのカードの表面は、吸い込まれるような空白に包まれていた。





火群「………父さん」





〜〜〜




父「…行くのか？」



火群「…うん、大事な大会の予選があるんだ」



父「…そうか……そういうことなら、本当はまだ開発中のカードなんだが、これを持って行きなさい」



火群「…カード…！？ しかも４枚も！」


父「父さんがデザインしたんだ」


火群「父さんが…！？ ……って、真っ白じゃん！」


父「…ははは！ 驚いただろ。今はまだ、そのカードは眠っている状態なんだ。そいつを起こしてやれるのは、カードの持ち主ーーーつまり火群だけだ」


火群「……っ！」



父「…火群が本気で力を望めば、その“卵”は絶対に羽化するだろう」


火群「…俺が………、力をーーー？？」





〜〜〜



火群（父さんがどんな意図でこのカードをデザインし、俺に託したのかはわかんないけど、このカードからは不思議とーーーニクスに似たあったかい力が流れ込んで来るんだ）





火群「ーーー行こう！ 闘いの舞台へ！！」





そうして俺たちはようやく、最初の一歩を踏み出した。











＊




爽香「ーーーそれでは、WDCS予選、バトルロイヤル！ デュエルスタンバイ！！」








「「「決闘！！！」」」









To Be Continued…






〜おまけ〜



. . 人人人.人人人.人人人.人人人.
＜教えて！ スッキーせんせー！＞
. . Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y



◉このコーナーは、読者のみんな(少数)から寄せられた質問(多分無い)に、『美 好先生(以下スッキー先生)』が一刀両断！ 快刀乱麻の回答をしていくコーナーだ！
質問が無い場合は、キャラ紹介や自問自答をしていく痛々しいコーナーになるから気をつけな！(ドン☆)
＊質問をいただいた時点で、本SSに載せる事を承諾したものと見做します。あらかじめご了承ください。
匿名希望の場合は言ってくださいね！



質問待ってるぜ！！(切実)









《次回予告》


闘えーーー力を証明する為に。



次回、『遊戯王 Ph.X』
DRAW:５６ 闘いの伝導