DRAW:２１４ 烈風の覇者　作：人喰い

(214)



〜YAGAMI本社ビル〜


【Side:竜貴】


竜貴【LP 6800】

機兵【LP 2000】


竜貴「ーーーーいけぇ！！！『ドラグニティナイト・ヴァジュランダ』の攻撃！！
貫き滅せよ！！〝滅槍雷牙・ヴァジュ=ランダ〟！！」

『ドラグニティナイト・ヴァジュランダ』
[ATK 3800]

猛き叫びに呼応して竜騎士は激しい闘気を纏う。

機兵「……ッッ…！！」【LP 2000】

そしてガラ空きの機兵の場を迅雷が如く突き抜け、一閃ーーーー貫いた。

機兵「ーーーーグァァァアアァッ！！」【LP 2000→0】



◉Winner◉
-東雲 竜貴-


竜貴「ーーーーおいおい…、手ごたえねぇな……その程度じゃ俺の拳は止めらんねーぜ…！！」

呆気ない決着に竜貴は自信げに笑い、息を整える。次だ。まだ次がある。


竜貴「……！」

小次郎の活躍により地上に落ちた機兵を目先に捉え駆け出す竜貴。しかしそこで異変に気付く。

竜貴「…？ 様子がおかしいーーーー」


終焉の焔の所有する決闘機兵は非常に好戦的で、付近の決闘者にすぐさま狙いを定めて襲撃する様にプログラムされていると竜貴は聞いていた。
しかし機兵は、機兵達の飛行機能を破壊して回っている小次郎や、地上で駆け回る竜貴には目もくれず、フラついたホバー移動でビルとは真逆の方向へ進んでいくのだ。

竜貴「どうなってんだ…！？」

そこで、司令室のシルバからの通信。


シルバ『ーーーー東雲、応答しろ』

竜貴「…えっあっハイ！」

いきなりの通信に竜貴は慌ててつつも応じ、状況を説明する。

竜貴「……って感じで急に街の方に向かい始めたんスけど…」

シルバ『……なるほど、な。
想定の範囲内だ。
……東雲はそこに残り、時枝の援護だ。
街の方へ向かう決闘機兵は無視しろ』

竜貴「！？」

シルバ『ーーーー敵の狙いは、戦況の撹乱による戦力の分散だ。いつ敵が標的を変えるかわからない以上、お前がその場を離れれば時枝にかかる負担も大きくなる』

竜貴「………！」

離れていても決闘機兵に指示を出す事ができると言うのなら、当然、竜貴という戦力を街の方へ誘導させ、その隙に新たに呼び出した機兵を神星樹に送り込むという手を取ってきてもおかしくない。

竜貴「…ッけど…！ それじゃあ街がーーーー」

竜貴は声を荒げ反論しようとするが、シルバはそれを遮るように、一言。


シルバ『ーーーー心配無用だ。
防衛線は既に張ってある』


竜貴「……っ…！」


竜貴は立ち止まり、一瞬の沈黙を経て、

竜貴「……了解。あんたを信じるぜ」

そう言って了承した。
竜貴はシルバに対して反帝アリーナで救われた恩義があり、そしてその時微かに見た背中は、この状況で信じていいと値する漢の背中だったのだ。

竜貴「……」

通信が切れると、竜貴はふと空を仰ぐ。
目線の先には、ビルの上よりそびえ立つ神星樹。

竜貴「…火群…明日人…眼鏡ちゃん……お前らも頑張れよ……！」

激励の言葉を空に投げつつ、竜貴は小次郎の元へと向かい走り出した。















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:２１４ーーー
《烈風の覇者》














〜生命の樹 内部・『知恵の間』〜



栗須【LP 200】
(モンスター)
『招神鳥シムルグ』[ATK 1300]
(魔法)
『神鳥の霊峰エルブルズ』(フィールド)
・場の風属性鳥獣族の攻守を300アップ。
伏せ:0
手札:2

クラウソラスの機兵【LP 6000】
(モンスター)
『霞鳥クラウソラス』[ATK 2600]@『霞の霊剣ークラウソラス』(元々の守備力分、攻撃力アップ)
(魔法)
『霞の霊剣ークラウソラス』(装備)
伏せ:2
手札:0


◉TURN:０３◉


栗須「ーーーー見せてやるよ…ッ！ 俺たちのデュエルをなァ！！
『神鳥の霊峰エルブルズ』の効果発動！！」


《神鳥
シムルグ
の霊峰
れいほう
エルブルズ》 †
フィールド魔法
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：フィールドの鳥獣族・風属性モンスターの攻撃力・守備力は３００アップする。
(2)：手札のレベル５以上の鳥獣族・風属性モンスター１体を相手に見せて発動できる。
このターン、自分は鳥獣族モンスターを召喚する場合に必要なリリースを１体少なくできる。
(3)：自分フィールドに鳥獣族・風属性モンスターが存在する場合に発動できる。
鳥獣族モンスター１体を召喚する。


突き出した右腕は疾風を纏い、光輝く。

栗須「…手札の『烈風の覇者シムルグ』を公開する事で、このターン、鳥獣族モンスターのアドバンス召喚に必要なリリースは一つ少なくなる！！」

更に、と栗須は続ける。

栗須「…エルブルズの効果はそれだけじゃねぇ！！
自分の場に風属性鳥獣族モンスターが存在する場合、１ターンに１度、鳥獣族モンスターを召喚できる！！」

嵐はより一層勢いを増し、薄暗い部屋中を駆け巡る。やがて風は栗須の手元に戻り、また外へ。その繰り返し。

栗須「行くぜ行くぜ行くぜぇぇ！！
招神鳥シムルグをリリースしーーーーアドバンス召喚！！」


機兵「…ッ……凄まじい嵐ダ…ッ……！！ コノ少年……いつの間にこれほどマデーーーーッ」

栗須「ーーーー翡翠の翼、天高く！！ 遥かッ先へッッ…！！ 突き進めッッ！！
絶空を越え現れろ！！
『烈風の覇者シムルグ』！！」


かざされたカードから精霊が現れ、嵐を纏い舞い上がるーーーーー


シムルグ『キァァァァアァァッッ！！！』[ATK 2900→3200]


《烈風
れっぷう
の覇者
はしゃ
シムルグ》 †
効果モンスター
星８/風属性/鳥獣族/攻2900/守2000
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：アドバンス召喚したこのカードは相手の魔法・罠カードの効果の対象にならない。
(2)：魔法・罠カードの効果が発動した時、
自分フィールドの鳥獣族・風属性モンスター１体をリリースし、
相手フィールドのカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを持ち主のデッキに戻す。
(3)：このカードが墓地に存在し、自分の鳥獣族モンスターが戦闘で破壊された時に発動できる。
このカードを手札に加える。


直後、間も無くして、栗須の背後からーーーー黒翼。

栗須「ーーーー更にこの瞬間…ッ！！
烈風の覇者の来寇と共に、黒き神鳥がその姿を現す！！」

機兵「……何……ッ…！」

栗須の手札、残り１枚から発せられる邪気に、機兵は動揺を隠せず後ずさる。

機兵「……馬鹿ナ…ッ……！ あのチカラは…ッ……あのカードから漏れ出す“邪気”ハーーーッ」

終焉の焔・伍召焔が１人ーーーー『ジャラン・カルディーネ』の纏うものと、同一だった。


栗須「ーーーー俺はもう、闇に飲まれたりはしねぇ……これ以上…ダチに迷惑かける訳にはいかねーからなァ！！
現れろッッ！！
『ダークネス・シムルグ』ッッ！！」[ATK 2900→3200]


《ダークネス・シムルグ》 †
効果モンスター
星８/闇属性/鳥獣族/攻2900/守2000
このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードが手札・墓地に存在し、
自分が闇属性または風属性のモンスターのアドバンス召喚に成功した場合に発動できる。
このカードを特殊召喚する。
(2)：このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードの属性は「風」としても扱う。
(3)：魔法・罠カードの効果が発動した時、
自分フィールドの鳥獣族・風属性モンスター１体をリリースして発動できる。
その発動を無効にし破壊する。


『烈風の覇者シムルグ』[ATK 3200]

『ダークネス・シムルグ』[ATK 3200]

フィールドを支配する２対の翼。
これこそ、自らの闇を振り払い手に入れた、栗須の成長の証ーーーー

機兵「…ッ…！」

栗須「ーーーーバトルだ！！」

僅かに身を引く機兵に、栗須はすかさず攻撃を仕掛ける。

栗須「ダークネス・シムルグ…！！ クラウソラスを攻撃しろ！！」

『ダークネス・シムルグ』
[ATK 3200]
ーーーVSーーー
[ATK 2600]
『霞鳥クラウソラス』

黒翼を雄々しく羽ばたかせ猛進する黒き神鳥。しかし機兵の場には伏せカードが２枚ーーーーー

機兵「ーーーーヤハリ猪突猛進。根本ノ性格ハ変ワラヌカ…！！…ソレ故ニお前ハここで破レル！！伏せカードオープン！！
罠カード『墓地墓地の恨み』！！！」

《墓地墓地
ぼちぼち
の恨
うら
み/Ghost of a Grudge》 †
通常罠
相手の墓地のカードが８枚以上の場合に発動できる。
相手フィールド上の全てのモンスターの攻撃力を０にする。

栗須「…！！」

機兵「…相手の墓地のカードが８枚以上アル場合…ッ相手モンスター全てノ攻撃力ヲ『０』にスルッッ！！
心の闇に身を沈め消エルがイイ！！！」


墓地に眠るカード達の怨念が栗須の場の神鳥に襲いかかるが、直後。

機兵「……！！？」

黒き旋風が、怨念を吹き飛ばした。
同時に栗須はニタリと笑い、高らかに笑う。

栗須「はぁーっはっはァ！！ ダークネス・シムルグの効果発動ッ！！ 自身をリリースし、魔法・罠カードの効果を無効にし、破壊する！！」

吹き抜ける疾風を身体で感じながら、機兵は僅かにたじろいだ。

機兵「…小癪ナ……！！」

栗須「…言ったはずだぜ……！ 俺はもう心の闇になんか飲まれたりしねぇって…！！」

機兵「……強がるナ…！！ マダ勝敗ハ決シテイナイ…！！」

栗須も余裕を見せてはいるものの、罠カード１枚を防ぐ為にダークネス・シムルグを犠牲にしてしまった事実は手痛いものだった。

栗須「………わかってらァ！！
烈風の覇者で、クラウソラスを攻撃ッッ！！
〝ゴッドバード・フルレンジストーム〟ッッ！！！」

ダークネス・シムルグが場を離れた事でバトルは中断、続けて烈風の覇者による攻撃宣言。


『烈風の覇者シムルグ』
[ATK 3200]
ーーーVSーーー
[ATK 2600]
『霞鳥クラウソラス』


大翼を大きく広げ、青白い輝きが神鳥を包み込む。すると周囲を旋回していた竜巻が神鳥の元に集い、竜巻を纏った神鳥は霞鳥へと突撃した。

機兵「……ッ…！！」

機兵は伏せカードを発動させる事なく、神鳥の一撃は霞鳥を貫いた。

機兵「…ギギ…ガァァッ！！」【LP 6000→5400】

栗須「ぃよっしゃァッ！！ 俺はこれでターンエンドだ！！」

機兵「……ッ…調子二乗ルナァァッッ！！ このエンドフェイズ時、伏せカードオープン…！！『終焉の焔』！！」

《終焉
しゅうえん
の焔
ほのお
/Fires of Doomsday》 †
速攻魔法
このカードを発動するターン、自分はこのカードの効果以外では
モンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できない。
(1)：自分フィールドに「黒焔トークン」
（悪魔族・闇・星１・攻／守０）２体を守備表示で特殊召喚する。
このトークンは闇属性以外のモンスターのアドバンス召喚のためにはリリースできない。


ーーーー終焉の焔。

組織の名と同じそのカードの発動に、栗須は思わず目を細める。

機兵「この効果で…ッ…私ノ場二『黒焔トークン』2体ヲ特殊召喚！！」[DEF 0]

漆黒の焔の出現を経てターンは移り、機兵はデッキの上に指をかける。

機兵「アリエヌノダ…ッ…！！ 貴様如キ二、瑞希様の“霊衣”デアル私が敗北スルナド…ッ！！」

◉TURN:０４◉

機兵「ーーーッ…私のターンッ！！」[手札 1]

怒りに満ちた様子の機兵がカードを引くと、身体中を覆う黒い霧が激しく広がった。

栗須「……！」

緊張の一瞬。
栗須のライフは残り200。もう一度クラウソラスを出されるだけで、つまりは、レベル1のチューナーを召喚されるだけで敗北してしまう状況なのだ。

栗須（…何を引いた……っ…？ あいつは一体、何を引いたんだーーーー)

もう虚勢を張れるだけの精神ではない栗須の額からは大量の汗が溢れ落ちる。

栗須（頼む……ッ…！ この決闘…、俺に勝たせてくれーーーー！！)

機兵「……」

機兵はゆっくりと引いたカードに手をかけ、そのカードは魔法・罠ゾーンに差し込まれた。

機兵「カードを１枚伏セル…、
更に、１体の『黒焔トークン』を攻撃表示に変更…！！」

『黒焔トークン』[ATK 0]

栗須「…攻撃力0のトークンを攻撃表示に…？」

栗須（…けど…これなら…！！）

機兵「私はこれでターンエンド！！」[手札 0]

栗須「ーーーー！」

◉TURN:０５◉

舞い降りたチャンス。栗須の口元は思わず緩む。

栗須「…へへ…へ…っ…！！
ーーーー俺のターンッッ！！ ドローッッ！！」[手札 1]

疾風纏い引き抜かれたカードを手札に加え、栗須は高らかに叫ぶ。

栗須「…俺は墓地の『神鳥の来寇』を除外して効果発動ッ！！」


《神鳥
シムルグ
の来寇
らいこう
》 †
(2)：墓地のこのカードを除外して発動できる。
手札の鳥獣族モンスター１体を相手に見せる。
このターン、そのモンスター及び自分の手札の同名モンスターのレベルを１つ下げる。


栗須「ーーーー更にこの瞬間！！ 『烈風の覇者シムルグ』の効果を発動ッ！！」


《烈風
れっぷう
の覇者
はしゃ
シムルグ》 †
効果モンスター
星８/風属性/鳥獣族/攻2900/守2000
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：アドバンス召喚したこのカードは相手の魔法・罠カードの効果の対象にならない。
(2)：魔法・罠カードの効果が発動した時、
自分フィールドの鳥獣族・風属性モンスター１体をリリースし、
相手フィールドのカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを持ち主のデッキに戻す。
(3)：このカードが墓地に存在し、自分の鳥獣族モンスターが戦闘で破壊された時に発動できる。
このカードを手札に加える。


栗須「魔法・罠の効果が発動した時、フィールドの鳥獣族・風属性モンスターをリリースする事で、相手フィールドのカード１枚をデッキに戻す！！」

機兵「…ッ…何…ッッ！？」

シムルグ『……受けてみよ…ッ！！ 我が神風を！！！』

栗須「烈風の覇者をリリースしーーーーお前の場の伏せカードにはデッキに帰ってもらうぜッ！！
〝ゴッドバード・ソニック〟！！」

自らを犠牲に放たれた真空波が機兵の場の伏せカードーーーーー『バイバイダメージ』を捉え、撃ち抜いた。

機兵「…！！！」

宙へと舞い上がったカードは機兵のデッキへ吸い込まれるように入っていき、その様子を見ながら機兵は腕を震わす。

機兵「…私ノ……『バイバイダメージ』が…ッ………貴様ァァ…ッッ！！」

栗須「…『バイバイダメージ』……モンスターが攻撃される事で発生した戦闘ダメージを倍にして相手に返す罠カードか…。マトモに食らってたらひとたまりも無かっただろーなーーーーー」

栗須はどこか落ち着いた様子で言いながら、続けて『神鳥の来寇』の処理で手札を公開する。


手札
『始祖神鳥シムルグ』


栗須「…そして見せたモンスターのレベルをターン終了時まで１つ下げる」


『始祖神鳥シムルグ』[☆8→7]


機兵「…ッ…ダガ、唯一の手札のモンスターはレベルを一つ下げたところで最上級モンスター…ッ…！！ リリースに使えるモンスター無しではターンを終了スル他アルマイ…！！」


栗須「ーーーーそれはどうかな…？」

栗須はニッと笑い、それと同時に足元から流れる気流が渦を巻き始めるーーーーー

機兵「……！？」

栗須「相手の魔法・罠ゾーンにカードが存在しない時ーーーー若き神鳥たちは墓地から蘇る事が出来るのさ…！！！」

機兵「！！ 馬鹿な……ッ！？」

栗須「ーーーー蘇れッ！！『雛神鳥シムルグ』！！」[DEF 1600]

翠色の羽毛を散らしながら雛鳥は姿を現し、それと同時にその背後で巨大な影が翼を広げ待ち構える。

栗須「神鳥の霊峰エルブルズの効果発動ッッ！！ このターン、鳥獣族モンスターをアドバンス召喚するためのリリースは１体分少なくなる！！」

そして１枚の手札を高く掲げ、叫ぶ。

栗須「俺は雛神鳥シムルグ１体をリリースしーーーーアドバンス召喚！！
巻き起これ！！嵐！！！
神風纏いて現れろ！！『始祖神鳥シムルグ』！！！」[ATK 2900→3200]


《始祖
しそ
神鳥
しんちょう
シムルグ/Simorgh, Bird of Ancestry》 †
効果モンスター
星８/風属性/鳥獣族/攻2900/守2000
このカードが手札にある場合通常モンスターとして扱う。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
風属性モンスターの生け贄召喚に必要な生け贄は１体少なくなる。
風属性モンスターのみを生け贄にしてこのカードの生け贄召喚に成功した場合、
相手フィールド上のカードを２枚まで持ち主の手札に戻す。


機兵「ーーーーッッ」

栗須「…まだだ…！！ 忘れてねーよなァ…！！ 風、または闇属性のアドバンス召喚に呼応し、手札・墓地の『ダークネス・シムルグ』は特殊召喚する事ができる！！！
現れろ！！黒神鳥ォォォッッ！！！」


『ダークネス・シムルグ』[ATK 2900→3200]


機兵「…再び…ッ…神鳥と黒神鳥が…並ンダ…ダト……ッ…！？」【LP 5400】

栗須「…更に！！ 風属性モンスターのみをリリースしてアドバンス召喚した始祖神鳥の効果発動！！ 相手の場のカード２枚を持ち主の手札へ戻す！！
黒焔を吹き飛ばせっ！！
〝ゴッドバード・ハリケーン〟！！」

神鳥が黄金の翼を一振りすると、激しい突風が機兵の場で巻き起こり、黒焔を跡形もなく吹き飛ばした。

機兵「…ッッ…！！ オノレェェ…ェェェッッ！！」


栗須「ーーーー俺はもう、機械と闘うのはこりごりなんだよ…！！」


呆れ気味に言いつつ、栗須のバトルフェイズ。

２対の神鳥は竜巻を纏いながら機兵へと攻撃を仕掛けるーーーーー



『ダークネス・シムルグ』
[ATK 3200]


『始祖神鳥シムルグ』
[ATK 3200]



攻撃を守るものは無く、白と黒、二色の風は機兵の胴体を貫いた。





機兵「ーーーーーッッ…！！！」【LP 5400→0】



◉Winner◉
-古宮 栗須-





＊＊＊



栗須「ーーーーー勝っ……た…っ…！ 勝った…！！ 勝ったぞ……！！」

シムルグ『…お前にしては上出来だったぞ。クリス』

決闘が決着し、その場に立ち尽くしながら喜びに打ちひしがれる栗須。それを背後で褒め称えるは、精霊のシムルグ。

栗須「……まさかお前がカードの精霊だったなんてな…驚いたぜ…。
けど、なんでもっと早く出てこねーんだよ！」

シムルグ『…フン…、それはお前が未熟な弱々決闘者だったからだ』

「弱々」という言葉のチョイスにボキャブラリーの怪しさを感じながらも栗須は眉をヒクつかせ、

栗須「…気に触る言い方だけどよ…でも今は認めてくれたって事でいいんだよな？」

シムルグ『…ああ。今まで1.0程の関心だったのが、1.0.1くらいにはなったな』

栗須「…ソフトウェアのアップデートかよ！？」

一呼吸置いて、「ところで」と栗須は続ける。目線の先は、胴体をもがれ動かなくなった決闘機兵。

機兵「…………」

栗須「…あの決闘機兵、即興で作ったにしては凄い完成度だった」

決闘機兵の研究・開発を手掛ける鈴華の母・鈴音が言うには、精霊を操る決闘者と同等もしくはそれ以上の決闘者スキルを備えた機兵の開発には、少なくとも人間界の技術で1週間はかかるらしい。

栗須「なのに、奴らはたった数日であれだけの強さの決闘機兵を……」

シムルグ『…それに我々が倒した１体だけ、というわけではなさそうだな』

栗須「……うげ…、こんなのがうじゃうじゃいるとか考えたくねーぜ…？」


シムルグ『……』

栗須「…ん……？ どした？ シムルグ」

シムルグ『……先程から疑問に思っていたのだが…、この『知恵の間』のすぐ上層は、敵の親玉がいる『王冠の間』なのだろう？』

栗須「…おう、マップを見る限り、そのはずだぜ？」

シムルグ『ーーーー明らかに守りが手薄すぎるとは思わないか…？』

栗須「…！！」

シムルグ『我々を個別にワープさせるという大技を使ってまだ間も無いというのに、ボスを守る兵がこの程度というのは、あまりにも不可解だ』

栗須「…なるほど、確かにそうだな……」

シムルグ『勿論……相手からしたらお前など眼中に無いという可能性も考えられるがーーーー』

栗須「うぉいっ！
……まぁなんにせよ…、油断はできねぇよな」

シムルグ『…そうだな。敵が何をしてくるかわからない以上、お前の戦闘力を考えても、戦闘は極力避けつつ仲間との合流を優先したいところだ』

栗須「お前はいちいち一言余計なんだよっ！」

しかし意見には賛成。
栗須、そしてシムルグは周囲を警戒しながら、『知恵の間』の向かい側に位置する『理解の間』へと続く通路へと進んでいった。

シムルグ『……くれぐれも気を抜くなよ。クリス』

栗須「…わーってるって！」


内心ビクビクしながらも薄暗い通路を進んでいく栗須。

しかしこの時はまだ、この先に待ち受ける恐ろしい罠の存在など、知る由はなかったーーーー





To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:２１５ ハニー(？)トラップ





＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙