DRAW:８０ -My Dream-　作：人喰い

(80)



僕らはいつだって“夢”を見てきた。

“夢”という“ゴール”を目指して走り。

“夢”という“スタート”に立つ為歩み。

その“夢”を掴むべく、闘ってきたんだーーー














遊戯王 Ph.X DRAW:８０
《-My Dream-》










〜山岳エリア・洞窟最奥部〜



若い女性「ーーー！！！」


星奈「ーーー！！？？」


若い女性「……あ、あの、星奈ちゃん…っ、私が下着姿のまま椅子に縛り付けられているのには深い訳が……っっ」

星奈「………れ、玲子(れいこ)さんがどんな趣味を持っていても、私は嫌いにはならないよ。…多分……きっと………
………いやでもそれはさすがにドン引きだよぉ…」

玲子「…いや、その、今更私の名前晒さなくていいから…。ってかあのね、違くて…っこれは侵入者が……」

星奈「…だっ大丈夫だよ！ マイン様や他のみんなには言わないから！」

玲子「…星奈ちゃん…？ お願いだから私の話を……」

星奈「…じゃ、じゃあ私は機材とか書類を回収したら本部に帰るから、邪魔しちゃってごめん…」


………。


玲子「いいから早く解いてよーーっ！！！」







〜森林エリア〜


巨乳の女子「ーーー！！」

メアリー「……それじゃあお次はワタシのターン！！」


巨乳の女子「……あー、ごめん、この勝負、預けるよ」

メアリー「！？」

巨乳の女子「……マイン様の意思が、帰還しろ、って」

メアリー「……？？？」

巨乳の女子「…って事で、またやろーね。アメリカンなオネーサン！」

メアリー「…えっ！？ はぁ！？」


ザッ！！


メアリー「……行っちゃった…。
ってかワタシ、こう見えてもイギリス人なんだけどな…」


メアリー「…ってか！ 帰還ってどゆこと！？ セントラルホール前で何があったわけ！？」






◉火群side◉

〜セントラルホール前〜





マイン率いる『終焉の焔』は撤退した。

だけど、終焉の焔とはまだ決着がついたわけじゃないし、反帝アリーナや決闘者達が受けた被害も相当なものだ。
反帝アリーナの焼けた自然なんかは、精霊王が責任をもってすぐに修復してくれるらしいけど、決闘者達の奪われた精霊、闇のゲームによって受けた傷、それらは取り返しのつかないものだった。



戒「ーーー32人」


火群「……？」

戒「…それが、今回奴らにやられた、精霊を持つ決闘者の数だ」

火群「……っ！」

戒「…すまない。偉そうなことを言っておきながら、多くの犠牲を出してしまった…」

火群「…戒……」





？？「ーーーいや、お前を含むデュエルポリスが雑魚を掃除してくれたおかげで、我々もスムーズに侵入できたんだ。何も謝ることはない」


突如、一人の男性が茂みの奥から現れる。
渋めの声に、無精髭を生やした目付きの鋭い男だ。

戒「！！ あなたは……ッ！！」


男「ーーー久しいな。少年」

戒「………どうしてここに…ッッ！？」

男「…そのことについては追って説明する。それに今は呼び名が必要か……。俺のことは『シルバ』と呼んでくれ」

シルバと名乗る男をよく見ると、人を二人背負っている…？

火群「…シルバさん、その背負っている人は…？」

シルバ「……精霊を持つ決闘者だ。精霊を奪われる直前で俺が発見してな。精霊は無事だが、二人とも火傷が酷い。まずは彼らを病院に運ぶのが先決だ」

火群「……って、クラース…！？ それに、東雲…竜貴…！！」

シルバ「…なんだ。知り合いか」

火群「…てか、クラースが…精霊のカードを…？？ もう何が何だかわかんねぇぞ…」

シルバ「……む、確かに、今日は色々な事がありすぎただろう。まずは帰って休むといい。
ーーー精霊王、彼らを帰してしまって構わないか？」

ルナ『ーーーええ、もちろんです。シルバ』

火群「……！」

この人………精霊王とも知り合いなのか…っ。

ルナ『…また後日、みなさんをお呼びして今後の事をお伝えしたいと思いますので、そのつもりでよろしくお願いします』

火群「………わかり、ました」


ルナ『ーーーでは、またお会いしましょう』


カッ！！！


精霊王の背後を漂う楕円形の鏡が、強い光を放ち、精霊王はその光の中に消えていった。


それと同時に、あらかじめ録音されていたのであろうアナウンスが流れる。




『ーーーただいまをもちまして、予選終了時刻となります。
ただいまをもちまして、予選終了時刻となりますーーー』



それは、長かった3時間の終わりを告げるアナウンスだった。



結維「………ひとまずは、終わった……のよね…？」


火群「ーーーああ、……帰ろう…！」




こうして、俺たちのWDCS(ワールドデュエルチャンピオンシップス)は、本戦中止という望まれない形で幕を閉じたんだ。











＊＊＊



【Side 結維】


結維「あの、さ。鈴華…」

鈴華「………」


結維「ーーーごめん。私、貴女を騙してた」

鈴華「……っっ…なんで、あなたは…ッ、ぅぅ……っ違くて…！」

結維「…鈴華……？」


鈴華「ーーー私の方こそごめんなさいっっ！！」

結維「ーーー！！」

鈴華「…急にあんなもの見せられて…、私…っ…怖くなって…ぇ…っ…！」

結維「鈴華……」

鈴華「…突然訳がわからなくなって……私…っ私…っ…！ あなたを置いて逃げてしまった…ッ…！！」

結維「……っ…」

鈴華「……私…、あなたと一緒に戦うって言ったのに……私こそあなたを…、騙す形になってしまったことが情けなくて……っ…！」

結維「…鈴華、でも…、最初に中途半端な情報を与え、貴女を巻き込んでしまったのは私。貴女が謝る事はない…」

鈴華「…それじゃあ私の気が済まないのっ！！」

結維「…ぅ…っ」

鈴華「…ずっと迷ってた、けど、もう答えは…出ましたわ…」

結維「……」


鈴華「…貴女が何者でも…、構いませんわ……っ…。
ーーー私と、“友達”になってくださる…？」


結維「……ぇ…？」

鈴華「……やっぱりダメ…かしら…？」

結維「ーーー何言ってるの？ 私達もう“友達”じゃない」

鈴華「…！」

結維「…私がここに来た時言ったでしょ、貴女っていう“友達を助ける為”だって」

鈴華「……結維さん…っ」


結維「…だから……まぁ…その……これからも、よろしく…お願い」

鈴華「…ええ、よろしくお願いしますわ…っ！」



結維「……なんか貴女を見てたらチョココロネが食べたくなったわ。帰りに奢ってよ」

鈴華「……っ！ 私の巻き髪はチョココロネじゃありませんわーっっ！！」








結維（……和泉の中の“強さ”である私には、“友達”なんてもの不要だと思ってた。
ーーけど、『友の為に振るう力』。
“そういう強さ”も、案外悪くないものなのかもしれない）


思えば、私は和泉の“そういう強さ”に負けたんだっけ。







＊＊＊


【Side 火群】


デュエルポリスの事情聴取を受け、とてつもない疲労感の中の帰り道。

クラースや栗須、東雲竜貴は、終焉の焔の精霊を持つ決闘者にやられ、病院へと運ばれたみたいだけど、命に別状はないみたいだ。

司会のおねーさんこと、明石さんは、俺たちと別れた後、戒と合流してデュエルポリスの誘導によって安全な場所に避難していたらしい。戒はなんだかんだ言ってもいい奴だ。
そんな戒はというと、シルバさんと改めて再開の挨拶をして早々に去って行った。

柏木さんは、現在住んでいるところが遠い事もあって、今日のところはひとまず和泉の家に泊めてもらう事になっている。
今は結維さんと、ゴスロリの女の子と一緒に着替えやらを買い物中。

そしてニクスとチアガールは二人で精霊界の事で調べ物に行ってしまった。


ーーーつまり何が言いたいのかというと、この帰り道は完全に和泉と二人きりなのだ。


火群「………」

和泉「………」


火群・和泉「…あっ、あのさ！」


火群・和泉「っ！」

和泉「……火群くんの方からどうぞ」

火群「…あ、えと、和泉…。
……危険な闘いに巻き込んじゃって本当にごめん！！」

和泉「…！」

火群「…和泉だけは絶対に巻き込まないようにって思ってたのに……っ！ ごめん…っ！」

和泉「…やっぱり火群くんはバカだ」

火群「！？」

和泉「…火群くんって基本的に周りに相談しないよね」

火群「！？」

和泉「思い込みが激しくて、勝手な行動ばかりで、私の知らないところでもたくさん周りの人を振り回してきたんじゃないの？」

火群「………っ！」

和泉「今回の事件に巻き込まれたのは君のせいじゃないよ」

火群「………」

和泉「…それに、私の腕の為にWDCSに優勝しようと頑張ってくれてるのはすごく嬉しい。けど、私そんなこと頼んでないし、それもまた思い込みだよね」

火群「…え……？」

和泉「……この腕は、私の意思で千愛ちゃんに断ってもらったーーいわば“代償”なんだよ。火群くんやにくすさんの事を一時でも嫌いになってしまった、その“代償”」

火群「………」

和泉「…だから火群くんが無理して私の為に頑張る必要なんてないよ。私は今のままでも充分楽しいし、幸せだよ」

火群「…和泉……」

和泉「もっと周りに相談して、仲間を頼りな？」

…ダメだ。これ以上和泉の言葉を聞いてしまうと、泣いてしまう。
和泉には、弱い姿なんて見せられない。見せたくない。
喉の奥が震え、泣きそうになる自分の感情を必死に抑え、俺は顔を伏せ、口をぎゅっと結ぶ。
だけどそんな俺に対しても、和泉はその場に立ち止まり、いつもと変わらず優しく語りかけるんだ。
俺も和泉の前を二歩進んだところで立ち止まり、ただその言葉に耳を傾ける。


和泉「ーーー君はそんなに強い人間じゃないんだから」



喉が詰まりそうな感覚を押し殺し、目元から溢れ出した涙を無視し、わずかに開いた口で、和泉に背を向けたまま答える。


火群「ーーー……あり…が…とう…っっ…！！」」


俺の口から溢れでたのは、とてもシンプルな感謝の言葉だった。
他にも言いたい事、言うべき事はたくさんあったのだろうけど、これが、今の俺が一番に伝えたかった気持ちだったんだ。


和泉「……火群くん。君は君自身の為に、闘えばいいんだよ」

和泉は二歩ほど歩いたかと思うと、左手で俺の背中を軽く小突き、続ける。


和泉「ーーー君の、夢は？」


火群「俺のーーー夢……？」


ニクスと出会って、和泉と再開して。
決闘を続ける中で分かった、俺の夢ーーー



火群「……俺は…、
みんなで楽しく、笑って、決闘がしたい。“楽しい決闘”が、俺の夢だーーーーー」


和泉「ーーーーそっか。じゃあ火群くんは、他の誰でもない、“自分自身の夢”の為に頑張りなっ！ 私も応援してるからっ」

火群「…うん。……けど、その為には、やっぱり和泉の腕はどうにか治してやりたいんだ。さっき和泉は代償って言ってたけど、結局その原因を作ったのは、一瞬でも和泉の事を悪く思ってしまった、俺の心の闇だったんだ」

和泉「……火群くん…」

火群「………だから、これはただの我儘…。俺の夢のために、和泉には最高の笑顔で居てもらいたいんだ……」

和泉「……全部掴めそう？ その夢」

いつしか震えも消えていた。
俺は振り返り、和泉の瞳をしっかりと見て、答えた。今度は俺も、笑顔で。



火群「ーーー絶対に掴むよ。この手で」













ーー遊戯王 Ph.Xーー
◉◉◉第１章◉◉◉

〜〜〜WDCS編〜〜〜
《Dreams come true》

ーーーTHE・ENDーーー




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ーー遊戯王 Ph.X ーー
◉◉◉第2章◉◉◉

〜VS 終焉の焔編〜
《破壊と創造》





《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:８１ 集結、選ばれし決闘者達





＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙