DRAW:２２６ Two Hundred　作：人喰い

(226)




【Side 結維】


《神星樹内部》
〜『王冠の間』←→『美の間』〜





【決闘ルール】
タッグデュエル:フィールド・ライフ共に共有

【TURN PLAYER】
銃機兵→結維→刃機兵→鈴華



戒と栗須に加え、人間界のシルバ達の協力もあり、王冠の間と美の間を繋ぐ通路にて結維と合流することができた鈴華。
しかし再開も束の間、銃と刃をそれぞれ身に纏った二体の決闘機兵に行く手を阻まれ、二人はタッグデュエルを挑む。
体力も限界に近い結維は先手必勝、速攻で勝負を決めにかかるが、不意に手札から襲い来る鋼鉄の機械龍『デスペラード・リボルバー・ドラゴン』によって盤面をひっくり返されてしまった。
そして放たれた弾丸。闇のゲームにより実体を伴ったそれは結維を庇った鈴華の身体に撃ち込まれる───




結維「ーーーー鈴華ァァっっ！！！！」


叫び、手を伸ばす。

宙で弾丸を受けた鈴華の身体は、結維を突き飛ばしたそのままの勢いで地を転げ回り、結維の右前方で仰向けに倒れた。
結維は伸ばした手で鈴華を抱え、

結維「…鈴華！！ 鈴華…ッ！！」

数回呼びかけると、鈴華は静かに目を開けゆっくりと口を開く。

結維「…鈴華…！！ごめん……っ…私……っ！！」

鈴華「……結維…さん…。
私は平気……っ…、ちょっとかすった程度…っ……ですわ……」

嘘だ。そんなはずはない。
しっかりと見た。鈴華の肩を弾丸が貫くのを。
立体映像といえど、これは闇のゲーム。その痛みは結維もよく知っている。

刃機兵「…破壊破壊ハカイハカイハカイハカイハカイァァ！！！
庇った側も、庇われた側も情けない……。
無意味な負傷！！
結局は瀕死の人間が増えただけではないカ！！
ヤハリ人類など弱者の馴れ合い……下らない下等生物に過ぎぬと言う事…！」

結維「…っ…！！」

反論しようにも、言葉に詰まる。
鈴華を、友達を悪く言われ、真っ先に反論すべき場面で、しかし言葉が出てこない。

銃機兵「ソノ様子ではデュエル続行は不可能……マイン様の“意思”の元、貴様ら二人には生贄となっテ貰ウ」

鈴華「…勝手な事……言わないで……ッ…」

鈴華はふらつきながらもなんとか立ち上がり、掠れた声で叫ぶ。

鈴華「……助け合って何が悪いの…！？ 足りないところを補い合って何がいけないの…！？」

結維「…っ……」

鈴華「あなたたちだって……ッ…終焉の焔だって同じじゃない！！」

銃機兵「───」

鈴華「…少なくとも貴方たち決闘機兵を造った人は、それをちゃんとわかってた…。一人の寂しさ、辛さ、弱さをちゃんと理解してた…！！」

玲子の最期を思い出しながら、鈴華は叫ぶ。

鈴華「…それも知らずに……っ…勝手なこと言わないでよ！！」

そこで、

刃機兵「……我々の」

銃機兵「創造者…」


刃機兵「“外殻”ノ……創造者か───」

鈴華「……っ…？」

“外殻”という単語に、鈴華の中で何かが引っかかる。

銃機兵「───そんなモノ、我々の意思とは無関係だ」

片方は刃を鳴らし、もう片方は銃口を光らせ、呟く。

鈴華「…外殻…？
ねぇ今、外殻……って……？
……待って…！！ あなた達の“中”には一体何が───！」

鈴華は背後で蠢く悍ましい何かを感じ訴えかけるが、それを遮る様に、

銃機兵「───おしゃべりハそこまでダ。
大人しく倒れていれば更なる苦痛を味合わずに済んだものの……決闘続行…！！」

銃口は再び、結維と鈴華二人に向けられた。

鈴華「……っ…！
臨む……っところですわ…！！」


鈴華はお気に入りと言っていたゴスロリ衣装の裾を躊躇なく破き、それで左肩を縛り止血をすると、結維の方へ視線を移し、

鈴華「……結維さん。
ひとつ、お願いを聞いてもらっても良くて？」


結維「…？ 何…？」


鈴華「───絶対に、私まで回して」


結維「───」


つくづく、己のバカさが嫌になる。
これまでの決闘から、何を学んだのか。

戦うために生まれてきた自分が、頭ばかり使おうとするな。
だから迷う。
だから反応が遅れる。

本気で“勝つ”つもりなら。

本気で“生きる”つもりなら。

本気で“護る”つもりなら。

頭より先に、身体を動かせ。

動かないのなら、無理矢理にでも。




結維「───合点。
勝つわよ───ふたりで」














◉遊戯王 Ph.X◉
───DRAW:２２６───
《Two Handred》















◉TURN:０２◉




結維＆鈴華【LP 7500】
(モンスター)
『神聖なる球体』[DEF 500]
『神聖なる球体』[DEF 500]
(魔法)
『天空の聖域』(フィールド)
伏せ:0
墓地:アルメギド、球、ウラヌス、ジュラゲド、ヒュペリオン、トリアス、ヴィーナス
手札:(結維)4/(鈴華)5

銃機兵＆刃機兵【LP 8000】
(モンスター)
『デスペラード・リボルバー・ドラゴン』[ATK 2800]
(魔法)
『鋼鉄の襲撃者』(フィールド)
伏せ:1
墓地:トリケライナー
手札:(銃機兵)1/(刃機兵)5



決闘続行。結維のターンのバトルフェイズ。


銃機兵「……形勢が逆転した訳でも無いのに、めでたい小娘達だ。
『デスペラード・リボルバー・ドラゴン』の効果はモンスターを破壊するだけじゃない。ワタシは更に1枚のカードをドロー」[手札 1]

結維「…そっちこそ。あれで逆転したなんて思わないで。
まだ私の場にも2体の『神聖なる球体』が残ってる」

強気に言ってみせる結維に、しかし機兵は動じず、

銃機兵「…これで終わりでハ無い…！フィールド魔法『鋼鉄の襲撃者』の効果発動！！」

(2)：１ターンに１度、自分フィールドの元々の種族・属性が機械族・闇属性のモンスターが、
戦闘または自身の効果でフィールドのカードを破壊した場合に発動できる。
手札から機械族・闇属性モンスター１体を特殊召喚する。

銃機兵「デスペラードが相手モンスターを破壊した事により、ワタシはこの効果で手札の機械族・闇属性モンスターを特殊召喚する！！
───現れよ！！『モーターバイオレンス』！！」[ATK 2100]

《モーターバイオレンス/Motor Frenzy》 †
効果モンスター
星６/闇属性/機械族/攻2100/守1200
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、
または自分フィールドにこのカード以外の機械族モンスターが召喚・特殊召喚された場合に発動できる。
その召喚・特殊召喚されたモンスターは相手ターン終了時まで、
攻撃力がその元々の守備力の半分アップし、表示形式を変更できない。
(2)：アドバンス召喚したこのカードが墓地へ送られた場合に発動できる。
自分フィールドに「モータートークン」（機械族・地・星１・攻／守２００）２体を攻撃表示で特殊召喚する。


結維「…！
……カードを2枚伏せて、ターン終了よ」

更なる展開を見せる重機の軍勢を前に、特にそれ以上の動きは無く、結維はターンを終了。
下手にエクシーズ召喚をしてデスペラードの銃弾の的を絞るより、盤面を広げたまま壁モンスターとして残しておく選択を取る形となった。

刃機兵「…カカ、結局はただの強がり───終局は近い」

結維「…どうかしらね。
───このエンドフェイズ、墓地へ送られたアル・メギドの効果で墓地のマスターヒュペリオンを手札に！
…日はまた登る───私達が諦めない限り、何度でも！！」[手札 3]

刃機兵「……否！その日は二度と登らぬ！
次のターンで貴様らは宇宙の藻屑と消エルのだからなァァ！！！」


◉TURN:０３◉


刃機兵「ワタシのターン！！ ドロー！！」[手札 6]

モーター音を激しく鳴らし、殺意を剥き出しにする機兵。腕のブレードをギラリと光らせ、二人を威嚇する。

鈴華「……っ…！」

結維「……ッ、このスタンバイフェイズ！！永続罠『失われた聖域』を発動！！」

《失
うしな
われた聖域
せいいき
》 †
永続罠
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できず、
このカード名の(3)の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードの発動時の効果処理として、
デッキから「天空の聖域」またはそのカード名が記された魔法・罠カード１枚を選んで自分フィールドにセットする。
(2)：このカードのカード名は、フィールド・墓地に存在する限り「天空の聖域」として扱う。
(3)：自分の墓地から天使族モンスター１体を除外し、
相手フィールドの効果モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。



銃機兵「───何ヲしようと無駄だ！伏せカードを使え！」

刃機兵「分かっている…！ワタシは場のデスペラード・リボルバー・ドラゴンをリリースし、罠発動！『E.M.R』！！」

《Ｅ.Ｍ.Ｒ.
エレクトロ・マグネティック・レールガン
/E.M.R.》 †
通常罠
(1)：自分フィールドの機械族モンスター１体をリリースし、
リリースしたモンスターの元々の攻撃力１０００につき１枚まで、
フィールドのカードを対象として発動できる。
そのカードを破壊する。


刃機兵「リリースしたデスペラードの攻撃力は2800───よってこの効果により、今発動した『失われた聖域』と、残った伏せカードの計2枚を破壊させてもらうッ！！」

機兵の背後から姿を現した電磁砲。デスペラードを弾丸としバチバチと音を立てたその銃口は結維たちの盤面へと向けられた。しかし、

結維「…させる…ッ…もんですか…ッ！！罠発動！！『神罰』！！」


《神罰
しんばつ
/Divine Punishment》 †
カウンター罠
(1)：フィールドに「天空の聖域」が存在し、
モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時に発動できる。
その発動を無効にし破壊する。


開かれる罠。
それは天空の聖域が場にある時に発動できる万能カウンター。

結維「この効果で、『E.M.R』を無効にし破壊する！！」

電磁砲の充填を目前に天空より赤き雷が降り注ぎ、爆散。失われた聖域の破壊は何とか免れた。

刃機兵「…カウンター罠か…！だがこれで、お前達の伏せカードは全て開かれた」

機兵の言う通り、結維としてもここで神罰という強力なカウンター罠を使わされた状況は手痛く、

結維「失われた聖域の効果で私は、デッキから『裁きの光』をセットする！」

苦し紛れでも、悪あがきでも、それでも今は、“次”に繋げるため尽力する。

結維[伏せ:1→2]

刃機兵「次のターンに託そうとまだ足掻くか……」


結維「当たり前でしょ。絶対に繋ぐ。
この“手”は、その為の力だから」


神罰を使わされたとはいえ、機兵の場からデスペラードが消えた事を考えればプラマイゼロという考え方もできるが、何の考えも無しに墓地へ送ったとも考えにくい。
思考を巡らせていると、機兵の墓地から光が漏れるのが見えた。

刃機兵「…墓地へ送られたデスペラードの効果発動！」

(3)：このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。
コイントスを行う効果を持つレベル７以下のモンスター１体をデッキから手札に加える。

刃機兵「この効果でワタシは、デッキから『アルカナフォースＸＩＶ－ＴＥＭＰＥＲＡＮＣＥ』を手札に加える」[手札:7]


結維「……相方の使うデスペラードの効果で手札に加える為に入れているってところかしら…。タッグデュエル用に組まれたデッキってことね」

仮にこのターンで決めきれなかった時の事もちゃんと考えている。と結維は感心しそうになる。

結維「けど…尚更わからないわね。
そうやって互いに足りない部分を補い合う構築でタッグデュエルに挑みながら、なぜあんた達《終焉の焔》は人類の絆を妬むのか───」

銃機兵「……我々に、不完全な感情は存在しない。
我々の構築も、プレイスタイルも、タッグデュエルという戦地においてソレが最も効率的であるという事実に基づいた手段でしかない…」

鈴華「…！」

結維「手段……ね」

刃機兵「一時の感情に揺さぶられ、無意味な損害を負い散ってゆくお前達とは根本的に違うのだ」

機兵は告げる。
結維は言い返そうと出かけた声を喉元で止め、ぐっと堪え鈴華と視線を交わした。

結維「───」

鈴華「───」

自分たちの答えは決闘で示せばいい。
その想いを、二人は目線だけで分かち合う。


刃機兵「…その希望、すぐに打ち砕いてくれる…！！」

先程と打って変わって憤りのような感情を一瞬見せる機兵に結維達が疑問を覚える暇もなく、

刃機兵「魔法カード───『強欲で貪欲な壺』を…ッ発動ッッ！！」

間髪入れず放たれたのは、邪念渦巻く禁忌のカード。
10年の寿命と引き換えに強大な効果を行使できる凶悪なカード、恐らくはそのレプリカだろう、しかしそれは邪悪な瘴気を纏い辺りを混沌の渦が包み込む───

鈴華「…かはッ…！ッけほっっ…！！　なんですの…！？　この息苦しさ───」

結維「……禁忌のカード…まさかそんなカードまで…！」

刃機兵「───デッキの上から10枚の未来を生贄に……ッ2枚ドロー！！！」[手札:8]

視認できるほど濃い邪気が軌跡を描き、

刃機兵「…クク…カカカ…！！」

思わず笑みをこぼす機兵。二人はそれを不気味に感じながらも、ここからの展開に備え呼吸を整える。

刃機兵「続けて魔法カード『死者蘇生』を発動し、墓地のデスペラードを復活させる！！」

銃機兵「…カカ…ッ！墓地より蘇れッ！！『デスペラード・リボルバー・ドラゴン』！！」[ATK 2800]

結維「…ッ！」

意図も容易く蘇る銃機竜。まだ手札は7枚、展開の手が休まるはずもなく、

刃機兵「手札の『機巧蛇ー叢雲遠呂智』の効果を発動！！」

《機巧蛇
きこうじゃ
－叢雲遠呂智
ムラクモノオロチ
/Gizmek Orochi, the Serpentron Sky Slasher》 †
効果モンスター
星８/闇属性/機械族/攻2450/守2450
このカード名の(1)(2)の効果は１ターンに１度、いずれか１つしか使用できない。
(1)：このカードが手札・墓地に存在する場合、
自分のデッキの上からカード８枚を裏側表示で除外して発動できる。
このカードを特殊召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2)：ＥＸデッキからカード３枚を裏側表示で除外し、
フィールドの表側表示モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊する。

刃機兵「デッキの上から8枚のカードを裏側除外し、このカードを特殊召喚！！」

『機巧蛇ー叢雲遠呂智』[ATK 2450]

鈴華「…またデッキの上からカードをコストに…！」

刃機兵「更にワタシは速攻魔法、『帝王の烈旋』を発動ッ！！」

《帝王
ていおう
の烈旋
れっせん
/The Monarchs Stormforth》 †
速攻魔法
このカード名のカードは１ターンに１枚しか発動できず、
このカードを発動するターン、
自分はＥＸデッキからモンスターを特殊召喚できない。
(1)：このターン、自分がモンスターをアドバンス召喚する場合に１度だけ、
自分フィールドのモンスター１体の代わりに相手フィールドのモンスター１体をリリースできる。


結維「…！！」

『帝王の烈旋』、そのカードを目の当たりにし、結維は目線を一瞬自分の墓地へと向ける。
結維の墓地にて息を潜めるモンスター───『トリアス・ヒエラルキア』。
1〜3体の天使をリリースし手札・墓地から特殊召喚でき、2体リリースした際には更にフィールドのカード1枚を破壊でき、3体リリースした際には更に2枚ドロー、と、リリースした天使が増える事によって得られる恩恵も大きくなるこのカード。

結維「…さて…と」

本来は神聖なる球体2体をリリースし、フィールドのカードを1枚破壊する効果で相手の妨害をしたいところだったが、ここでヒエラルキアの効果を使用してしまっては、復活したヒエラルキアをリリースされ結維の場はガラ空きとなってしまう。
このタイミングでの発動は見送り、結維は動向を伺う。

刃機兵「そして、『機巧蛇ー叢雲遠呂智』と、お前の場の『神聖なる球体』をリリースし───アドバンス召喚！！」

ガラ空きにする代償としてフィールドのカードを破壊する事ができたのだが、ヒエラルキアの2900という高い守備力を活かした方が良いと判断し、この場は墓地に隠しておく方を選択。

刃機兵「このカードが、貴様達愚かな人間を地獄へ誘う終焉の刃だ…ッ！！」

機兵は高らかに叫ぶ。
鳴り響くモーター音。耳障りな騒音に表情を歪ませる結維と鈴華、2人の前に現れたるは、エンジンを吹かし両腕の刃をガチガチとかき鳴らす紅き鉄機兵───

刃機兵「現れよ───ッ
『デモニック・モーター・Ω』！！！」[ATK 2800]


《デモニック・モーター・Ω
オメガ
/Fiendish Engine Ω》 †
効果モンスター
星８/闇属性/機械族/攻2800/守2000
(1)：１ターンに１度、自分メインフェイズに発動できる。
このカードの攻撃力はターン終了時まで１０００アップする。
(2)：このカードの(1)の効果を発動した場合、エンドフェイズに発動する。
このカードを破壊する。
(3)：自分エンドフェイズに発動する。
自分フィールドに「モータートークン」
（機械族・地・星１・攻／守２００）１体を攻撃表示で特殊召喚する。


結維「…ッ…！
どうやらそれがそっちのエースみたいね…ッ」

真紅の鎧纏いし鉄機兵を前に、流石の結維の額からも汗が流れ落ちる。

刃機兵「この程度では無い！！
モーターバイオレンスの効果により、デモニックモーターΩの攻撃力は、相手ターン終了時まで、その守備力の半分アップする！」

『デモニックモーターΩ』[ATK 2800→3800

鈴華「……なんて禍々しさ…っ！」

目の前の鋭利な巨体に気圧されそうになるも、二人の目線はしっかりと対象を捉えて逃さない。

刃機兵「まだだ…！！更に『デモニック・モーター・Ω』の効果！！
エンドフェイズ時まで自身の攻撃力を1000ポイントアップさせる！！」


『デモニック・モーター・Ω』[ATK 3800→4800]


より一層激しくなるモーター音。
振動でビリビリと肌が揺れる。

結維「大丈夫…！　まだ……まだよ…っ…！」

刃機兵「……これでダメ押しだ！！ワタシは装備魔法『ガーディアンの力』『７カード』を、それぞれデモニックモーターΩに装備！！」


《７
セブン
カード/7 Completed》 †
装備魔法
機械族モンスターのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力または守備力は７００ポイントアップする。


《ガーディアンの力
ちから
/Power of the Guardians》 †
装備魔法
(1)：装備モンスターが戦闘を行う攻撃宣言時に発動する。
このカードに魔力カウンターを１つ置く。
(2)：装備モンスターの攻撃力・守備力は、このカードの魔力カウンターの数×５００アップする。
(3)：装備モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、
代わりに自分フィールドの魔力カウンターを１つ取り除く事ができる。



『デモニック・モーターΩ』[ATK 4800→5500]

鈴華「…エースを一気に強化してきた…！」

怒涛の攻勢を受け、鈴華は横目で結維に視線を移すが、対して結維の視線は、ただ一点だけをジッと見据えていた───


───機兵の手札、その一点を。


機兵「そしてワタシは、バトルフェイズへ移行し───」

そこで、

一瞬、見えた光。

勝利までの、道筋。


結維「…！待ち…なさいよ！！このメインフェイズ終了時、墓地の『トリアス・ヒエラルキア』の効果を発動！！」


《トリアス・ヒエラルキア/Trias Hierarchia》 †
効果モンスター
星９/光属性/天使族/攻1900/守2900
このカード名の効果は１ターンに１度しか使用できない。
(1)：このカードが手札・墓地に存在する場合、
自分・相手のメインフェイズに、自分フィールドの天使族モンスターを３体までリリースして発動できる。
このカードを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。
さらに、この効果を発動するためにリリースしたモンスターの数によって以下の効果をそれぞれ適用できる。
●２体以上：相手フィールドのカード１枚を選んで破壊する。
●３体：自分はデッキから２枚ドローする。


結維「神聖なる球体をリリースし、このカードを守備表示で特殊召喚！！」[DEF 2900]


バトルフェイズへと移行しかけたこの時点で、刃機兵の手札は2枚。

刃機兵「…無駄な足掻きを…ッ」

1枚は、デスペラードの効果で手札に加えた『アルカナフォースＸＩＶ－ＴＥＭＰＥＲＡＮＣＥ』。ステータスしか確認できていないが、属性は光、鋼鉄の襲撃者では手札から出せない。
そして見えていない手札が一枚。
それがもし、想像している通りのカードなら───


刃機兵「───構わん！！バトルだ！！」



◉◉◉バトルフェイズ◉◉◉



『デモニック・モーターΩ』[ATK 5500]
@『ガーディアンの力』『７カード』
『モーターバイオレンス』[ATK 2100]
『デスペラード・リボルバー・ドラゴン』[ATK 2800]


銃機兵「我らのエースモンスターの力を！！」

刃機兵「思い知れェ！！」

銃機兵「───『デスペラード・リボルバー・ドラゴン』の効果発動！！
奴らを再び打ち貫け！！」

(2)：１ターンに１度、自分・相手のバトルフェイズに発動できる。
コイントスを３回行う。
表が出た数までフィールドの表側表示モンスターを選んで破壊する。
３回とも表だった場合、さらに自分はデッキから１枚ドローする。
この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。

3口の銃口が結維、鈴華、そしてトリアス・ヒエラルキアへと向けられるが、しかし、

結維「二度も食らわせるもんですか！！
永続罠、『失われた聖域』の更なる効果を発動！！」


(3)：自分の墓地から天使族モンスター１体を除外し、
相手フィールドの効果モンスター１体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。


結維「墓地の神聖なる球体を除外して、デスペラードの効果を無効にする！！」

聖域の放つ光を受けた事で砲撃は不発に終わり、

結維「これでデスペラードは誓約により攻撃もできない。
その弾丸も、刃も、私たちには届かない！！」

刃機兵「我々を…舐めるナァァ！！！
モーターバイオレンスで、トリアス・ヒエラルキアを攻撃！！！」


『モーターバイオレンス』
[ATK 2100]
───VS───
[DEF 2900]
『トリアス・ヒエラルキア』


鈴華「！？　守備力はこっちの方が上───」

言いかけたところで、鈴華の脳裏に1枚のカードが浮かぶ。

結維「……」

結維は黙って機兵の手元を注視する。そして───


刃機兵「───ダメージステップ」


鈴華「……ッ！！まさか───」


その宣言を聞き、


結維「───ビンゴ」


静かに笑った。


刃機兵「速攻魔法発動───『リミッター解除』！！！」


《リミッター解除
かいじょ
/Limiter Removal》 †
速攻魔法
(1)：自分フィールドの全ての機械族モンスターの攻撃力は、ターン終了時まで倍になる。
この効果が適用されているモンスターはこのターンのエンドフェイズに破壊される。



刃機兵「この効果でモーター・バイオレンスの攻撃力は4200、デモニック・モーターΩの攻撃力は11000となり、貴様らを跡形もなく粉砕する───！！！」


迫り来る機兵達。トリアスにゼロ距離で撃ち込まれたモーター・バイオレンスによる弾丸は───


刃機兵「───？」


反射し、機兵の肩を掠めた。


刃機兵「…カッ……ッ…？」【LP 8000→7200】


弾の威力自体は大したことない。
しかし理解し難い状況に、機兵は処理が追いつかない。

結維「何を驚いているの？
攻撃モンスターの攻撃力を守備モンスターの守備力が上回った場合、
攻撃側はその差の数値分ダメージを受ける───常識でしょ？」

刃機兵「……ッ！？待テ…ッ！
ワタシは確かにリミッター解除のカードを───」

煽る結維には目もくれず、機兵は盤面を見渡す。
結維達の場にこのターン発動できる伏せカードは無かった。墓地にて発動する効果を持ったカードも。すると考えられるのは1つ。

刃機兵「……まさか貴様…ッ…！」


結維「その剥き出しの闘争心に感謝するわ」

結維はその「勝利への確信」を知っている。
他でもない、結維自身も感じたことのある、その感覚を。


結維「───だから、ここまで温存できた」


そう言ってこれ見よがしにチラつかせた結維の手札は、3枚から1枚に減っていた。
その事実に気付き機兵はカタカタと音を立て、

銃機兵「…ッ…！」

刃機兵「……！しかし、ありえん…！なぜ……ッ…なぜッ、このタイミングまで───」

慌てて結維の墓地に目線を向ける。
そしてタイミングを見計らったかのように、その墓地に送られたばかりのカードが、遅れて光を放った。


結維「そう。私が手札から発動したのは───『緑光の宣告者』」


《緑光の宣告者
グリーン・デクレアラー
/Herald of Green Light》 †
効果モンスター
星２/光属性/天使族/攻 300/守 500
(1)：相手が魔法カードを発動した時、
手札からこのカードと天使族モンスター１体を墓地へ送って発動できる。
その発動を無効にし破壊する。


結維「言ったでしょ。日はまた登る…って。
前のターンに手札に戻ったヒュペリオンが、今度は手札コストとして最高の活躍をしてくれた」

刃機兵「…ッだが…！！ナゼ………ナゼここまで温存できたと言うのだ…！！
『死者蘇生』も、『帝王の烈旋』さえも！！貴様にとって決して見逃せぬキラーカードだったはずだ！！」

結維「…あんたが強欲で貪欲な壺でカードを引いた時、溢れ出た殺意───それを感じた時、『リミッター解除』……そのカードが頭をよぎっただけよ」

自分も恐らく、誰かさんとのデュエルで2枚目のオネストを引いた時、同じ様な衝動を抱いたハズだから。と、小声で付け加え、

結維「死者蘇生を止めても帝王の烈旋を止めても、リミッター解除の1枚で私達のライフは刈り取られる恐れがあった。
だから正確には、この最終局面まで待たされた形になったわけだけど…」

刃機兵「…カッ…カカ…カッ…！」

勝ち誇った様子の結維。それに対し、

刃機兵「まだ決着が着いた訳ではない…！！
『デモニック・モーターΩ』！！トリアス・ヒエラルキアを粉砕しろ！！」

叫ぶ刃の機兵。呼応するように紅き鉄機兵は腕刃を振りかざす。

刃機兵「そしてこの攻撃宣言時、装備された『ガーディアンの力』に魔力カウンターが1つ乗り、攻撃力が500上昇する！！」


『デモニック・モーターΩ』
[ATK 5500→6000]
───VS───
[DEF 2900]
『トリアス・ヒエラルキア』


一閃。刃は振るわれ、結維の場はガラ空きとなる。
しかし同時に、機兵の場にももう攻撃できるモンスターは残っていなかった。


銃機兵＆刃機兵【LP 7200】

結維＆鈴華【LP 7500】


結維「…ハァ…っ、ハァ……ッ…！」

銃機兵「……あの刃を…無傷で凌いだだと…ッ…？」

刃機兵「……どうやら……、認めなければならないようだな…。お前達ニンゲンの力というものを」

結維「……」

鈴華「……っ…」

刃機兵「…ターンエンドだ。
このエンドフェイズ時、自身の効果を使用したデモニック・モーターΩは破壊されるが、ガーディアンの力の効果で魔力カウンターを消費する事で破壊は免れる。
ただし上昇した攻撃力は元に戻るがな…」

『デモニック・モーターΩ』[ATK 6000→4500]

刃機兵「同時に、ワタシの場にモータートークンが攻撃表示で特殊召喚される」[ATK 200]

結維「…攻撃力200……随分親切なのね」

刃機兵「…諸刃の剣とでも言ってもらおうか」

結維「…やっぱりアンタたち、おかしいわよ」

刃機兵「…何……？」

先程から結維が感じていた違和感。
その正体は、だんだんと言語化できるものとなってきていた。

鈴華「…結維さん…」

鈴華も薄々勘付いているのだろう。機兵達を見る目が哀れみに淀む。

結維「……だって、ここまで倒してきた機兵と…アンタたちのデュエルからは、マインや黒焔から感じた邪悪さを感じないし」

そして何より、刃と銃の機兵が時折見せた、あまりにも人間的すぎる感情の数々。

刃機兵「……何を、言ってイル」

彼らは恐らくロボットでは無く、改造人間の類だ。

結維「……今、救ってあげるから」

一体どれだけの人が犠牲になったのだろう。
自分たちはどれだけの人を見殺しにしてしまったのだろう。

結維「───」

やめろ。考えるな。振り返れば狂う。後ろに散らばる機兵の残骸を見たらきっと正気を保てなくなる。今は、前だけを───



結維「───頼んだわよ、鈴華」



絞り出した一言は、わずかに震えていた。







To Be Continued…