DRAW:００ 夢の片隅　作：人喰い

少女は腕に火傷を負った。

少年のカードの力で。

少年は知りはしなかった。

カードから炎が出るなどと。

少年はその時、一体何が起きたのかわからなかった。

少女も同じく、何が起きたのかわからなかっただろう。

少年はただ、燃え盛る右手にもがき苦しむ少女の姿を黙って見ていることしかできなかったーーー




そして少年少女は、心に深い傷を負った。








死んだ人間が蘇ることなんてない。
一度壊れたものが元通り同じ姿になるなんてことはない。
破壊と再生を繰り返すたびに、“どこか違う何か”になっていく。

そうーーこれは、そんな理すら無視した存在のお話。

ーーー死しても蘇る不死鳥の運命に翻弄される、少年少女の破壊と再生の物語。
















遊戯王Ph.X 〜序章〜
《群れをなす桜火》

















俺は今どこで、何をしているんだろう。視界もぼやける。
目をこすりながら辺りを見回してみる。 どうやら俺は、砂漠のような場所にいるようだ。
え……っ…？ 砂漠…？？ 冗談じゃないぞ……！！
そこで意識がはっきりとし、気づいた時には、俺はもう走り出していた。
なぜだかはわからないけど、きっとなにかが俺をかきたてたのだ。
俺は前も見ずに、ただ、無我夢中に走った。

ドンッ！！

この瞬間、俺は誰かとぶつかった。 ぶつかった拍子に、開けっ放しの学生鞄の中に入っていたデュエルモンスターズのカードが砂地に散らばる。

俺「痛っ！ あ……すみません……」

驚いた。 まさかこんなところで人とぶつかるなんて。
旅の者だろうか。

？？？「おい、お前大丈夫か〜？
走る時は、前を見て走れよな」

顔を上げて見てみると、そこにいたのは、高校生位の青年だった。太陽の光が強く、顔がよく見えないが、 見たことないような真紅の制服に身を包んでいる。
(この人……高校生なのか……？ 何でこんなところに？ いや、俺自身も何でこんなところにいるのかわからないのだが)

？？？「お、お前デュエルやるのか？」

青年は、砂地に散らばった俺のカードを手に取り、砂を払いながらそう言った。
でも、中学に入ってからカードはずっと家の引き出しの中に入っていたはずなのにな……どうして……？

俺「え？ あ、はい」

つい条件反射で答えてしまった。
すると、青年は一瞬ニヤっと笑い、ポケットから取り出した一枚のカードを、俺に差し出した。

？？？「ラッキーカードだ。お前にこのカードをやるよ」

俺はカードを受け取り、よく見てみる。見たこともないカードだった。
そのカードを見ていると、だんだんと不思議な感覚に襲われ、俺は気がつくとーーー



自分の家のベットに仰向けになって寝ていた。




俺「夢オチ………？」








ーーーそして世界は、この時を起点に動き出すこととなる。

それを俺が知ることになるのは、まだまだ先の話だ。




To Be Continued…