DRAW:１８３ 闘いの跡　作：人喰い

(183)



〜決闘機兵ファクトリー・1F正面ゲート〜



メアリー「……はぁ……はぁ…っ…！
黒焔がーーーー消えた……？」


スーツの女性「…敵を倒したのか…それともーーーー」


ﾄｩﾙﾙﾙﾙﾙ…


メアリー「…！ 和泉ちゃんからだ…！
ーーーーハァイ、こちらメアリー。
…………了解。すぐに合流するわよ！」















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーDRAW:１８３ーー
《闘いの跡》















〜決闘機兵ファクトリー・正面ゲート〜


メアリー「…大体の状況はわかったワ。
それにしても、不死鳥くん。本当にケガは大丈夫なの？」

火群「…ええ、俺は…、なんともありません」

メアリー「…けど、精霊の力を何度も宿した事で、相当な精神力を消耗したハズ……今はゆっくり休むといいわ」

和泉「…病院に運ばれた雫ちゃんと鈴華ちゃん……大丈夫かな…」

メアリー「……っ…」

メアリーは悔しそうに唇を噛む。


火群「…すみません…！！ メアリーさん…！！ 俺が付いていながらーーーー」

メアリー「…いや、今回の闘いは、不死鳥くんのおかげで最悪の自体は免れたと言ってもいい…。
敵の実力を完全に甘く見ていた……ワタシの作戦ミスだよ…」

火群「…メアリーさん……」


和泉「……あの、メアリーさんの方を助けてくれた女性というのはーーーー」

メアリー「…あー、さっきまでそこにいたんだけど、急にいなくなっちゃって……」

和泉「…どこへ行っちゃったんだろ…」

メアリー「まだちゃんとお礼も言えてなかったのにネ…。あのスーツのオネーサンが来てくれなかったらワタシも今頃病院行きだったかもだし。
……けど今は悔やんでても仕方ないか…」

そう言いつつ、メアリーはキャップ帽を軽く叩いて被り直す。


メアリー「…終焉の焔は決闘機兵そのものが目的ではなかった。
いや、それが最優先ではなかったというべきね…。
みんなの頑張りのおかげで、決闘機兵は護れたけれどーーー」

和泉「……ここでの闘いは、あまりにも犠牲が多すぎたよ……」



メアリー「………」


火群「……それで、メアリーさん…。あいつらの目的って……？」

メアリー「ーーーーこの工場での研究データよ」

火群「……！」

メアリー「…決闘機兵に関する……ネ」

和泉「…それだけを奪って、一体どうするつもりなんだろうーーーーー」


千愛「ーーーーまさか、連中は自分たちで決闘機兵を創ろうとでもいうの……？」


和泉「…っ！」

ニクス『……！』

火群「…ッ…！」


メアリー「………おそらくその通りだろうね…。非常にマズいことになったワ」


火群「……これから一体どうすれば……ッ…！」

メアリー「……これまでのこと、これからのこと含めて、ワタシはシルバさんに連絡してみる。
二人は先に戻ってゆっくり休みな。大変だったでしょ？」


火群「……はい。わかりました」



こうして決闘機兵工場での闘いは幕を閉じ、火群と和泉は、爽香の待つネットカフェへと足を運んだーーーーー







〜積木町３丁目〜



【Side 火群】


火群「………」


和泉「………っ…」


気まずい。


火群・和泉「……あのさ…！」

火群「…！」

和泉「…っ」


さっきからずっとこんな感じである。


ニクス『……ったく…』

千愛『焦れったいわね…』


ニクス・千愛『『……とうっ！』』


両脇からの掛け声と共に、俺は横からニクスに軽く突き飛ばされる。

火群「！？」

和泉も同じように千愛に突き飛ばされたようで、俺たち二人の肩がコツンと重なる。

和泉「ちょ……っ 千愛ちゃん……っ！？」

火群「…っ…！ ニクス…！ お前……っっ」

柔らかく、僅かに骨ばった左肩の感触。加えて揺れた髪から香る、和泉の匂い。
ついさっきまでおぶっていたというのに、今は何故か、少し触れただけでも緊張と興奮で心臓が張り裂けそうだ。


和泉「……あのさ、火群くん…」

そこでようやく、ニクスと千愛の行動が気を遣っての事だと察してか、和泉から話が切り出される。


和泉「……助けに来てくれてありがとう。
まだ、お礼言ってなかったよね」


和泉の口から出たのは、意外にも感謝の言葉。

千愛「…私からもお礼を言わなきゃいけないわね。感謝するわ、市瀬火群、にくす」

続いて千愛からも。


火群「……えっ……いや、その」

未だに言われ慣れない感謝の言葉に戸惑っていると、その隙を突くように、一瞬。


白くて柔らかな和泉の左手が、俺の右手を優しく包んだ。


火群「ーーーーーっっ…！！」


和泉はその手をぎゅっと握ったかと思うと、すぐに手放す。
そして左手を胸の高さぐらいまであげてパタパタ振り、


和泉「……ごめん、これが限界…っ」


照れ臭そうにそう言った。



ほんの数秒、ほんの一瞬。
確かに感じた、“左手”の温もり。

それは少しでも力を加えたら壊れてしまいそうなくらい繊細で、柔らかくて、温かくてーーーーー



火群「………っ」



不覚にも泣きそうになった。







＊＊＊






〜決闘機兵ファクトリー前〜



メアリー「……そうですか…、やはり精霊界にも、大量の黒焔がーーーー」


通話中のメアリー。通話相手はシルバのようだ。


メアリー「…ハイ…。こちらの被害も相当デカいです…。計２２体の精霊を奪われ、決闘機兵の研究データの一部を強奪されました…。申し訳ありません……ワタシがついていながら…っ…！」


メアリー「………わかりました。じゃあ今日の昼は……ハイ、YAGAMI本社へ向かいます」


メアリー「……あ、それと、不死鳥k……市瀬 火群くんの事なんですけどーーーー」








POINT:決闘機兵ファクトリー


-人間界の決闘者-

『市瀬 火群』
精霊:『ガルドニクス』
残体力:40%

桜庭 和泉
精霊:『ダーク・フェアリー・チア・ガール』
残体力:60%

柏木 雫
精霊:なし
残体力:15%

西蓮寺 鈴華
精霊:『カオス・ゴッデス』
残体力:5%

メアリー=ベイクウェル
精霊:『精霊使い レラ』『精霊使い ウェン』
『精霊獣使い ウィンダ』
残体力:25%



死者:17名
重症:11名
軽傷:28名





-終焉の焔-

『柏木 瑞希』
精霊:『氷結界の龍 トリシューラ』『氷結界の龍 ブリューナク』『氷結界の龍 グングニール』+奪った８体の精霊
残体力:55%

『常盤 星奈』
精霊:『星輝士 デルタテロス』『星輝士 セイクリッド・ダイヤ』+奪った１４体の精霊
残体力:40%









＊＊＊




〜積木町総合病院・病室〜


スーツの女性は病室の扉を開き、ヒールの踵を鳴らしながらベッドに眠る少年へと近づいていくーーーーー


スーツの女性「………あの黒い焔…、雑兵の癖に一匹一匹がかなりの手応えだったな……ーーーーーさて」


少年の前で止まり、眼鏡を外して胸ポケットに引っ掛けると、ケタケタと笑う。


スーツの女性「…ふフハハ…っ…！
せっかく生かしてやったってのに……何てザマだーーーーー」


言いながら懐から１枚のカードを取り出し、それを少年の上で掲げた。


そしてベッドに眠る、白髪の少年の名を呼ぶ。




スーツの女性「ーーーーー戒…サマ」



斬波ーーーー戒サマ。


続けて名を呼び、暗がりの中で静かに笑った。







To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１８４ -YAGAMI-






＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙