DRAW:２９戒めの斬波⑧覇王バルバロス　作：人喰い

白河「ーーーっ…ん……？」

白河「…少し居眠りしちゃってたみたいね…」

白河「あれ？ 戒きゅんは……？」

白河「それにこれはーーー手紙？」


白河「………っ」










遊戯王 Ph.X DRAW:２９
《戒めの斬波》⑧覇王バルバロス










秘書「………」【LP 0】ピーッ！


戒「…俺の、勝ちだ。無双の元へ行かせてもらう」


秘書「…ウフフ、あはははっ」

秘書ーーー否、目の前の女性は笑った。
俺を倒す役目を全うできなかった時点で、彼女の秘書としての役目もきっと終わったのだ。
緊張の糸が解けたように、彼女は笑っていた。

秘書「…好きにしなよ。“無双”は社長室に居るからね」

戒「……っ」

秘書「私の契約はこれで破棄。……ここからはあんたのターンだ。戒サマ…♫」

彼女はそう言うと、俺の横を通り抜け、後ろ手で挨拶をしながら、屋敷を発った。

戒「………」

彼女は一体、どんな思いで今まで無双に付いていたんだろう。どんな想いで俺とカードを交わしたのだろう。
無双の専属秘書だった、誰よりも秘書的で、秘書であるべき存在。それが彼女だった。
秘書ではない彼女なら、俺の味方になってくれたのだろうか。それはわからない。
追いかければまだ間に合うのかもしれないが、俺はもう後ろを振り返ったりなんかしない。
今はとにかく前を向こう。


戒「前を向いて、歩き出すんだ」



レッドカーペットの敷かれた階段を1段ずつ踏みしめ、上っていく。
斬波に由来する計38段の階段を上り終え、無双の居る社長室の扉を勢いよく両手でこじ開ける。
目の前に広がってきたのはどこか懐かしい社長室の風景。
机に積まれた書類の数々に、人が飛び降りたと思わせる割れた窓ガラス。
そして社長席に座する男ーーー斬波無双に俺は視線を向け、この男と約1日ぶりの会話を交わす。



無双「………来たか。戒」



戒「………来たぞ。“斬波無双”」




＊




「「うぉおおおぉおおおぉおおおッッッ！！！」」


狭き室内に、２人の男の叫びがこだまする。
２人の男は駆け出し、衝突する。
互いのデュエルディスクがぶつかり合い、がきん、と音を立て火花を散らす。


戒「…なぜ！ なぜ上に居続けなくてはならない！ １度地に伏し、そこから立ち上がる事で得るものもあるはずだ！ なぜ貴様はそこで切り捨てる！」


無双「……っ…無駄なものは切り捨てる。それが斬波家の家訓だ。たとえ実の息子であったとしても、無駄なものである以上、切り捨てる他ない」

戒「……家訓が…それほどまでに大事なのか…！？ 実の息子よりも優先するほどのものなのか…！？」

無双のデュエルディスクを装着した左腕に力が込められ、勢いよく振り払われる。
俺は軽く仰け反り、床に片膝を付く。

無双「………」

この男は、物事を見下した瞳をしている。
酷く荒んだ、覇王の瞳ーーー。


無双「ーーー剣を抜け。戒。決闘者ーーー否、“血統者”同士の闘いに、これ以上の言葉など必要ない」


戒「……！」

デュエルで決着を着けようというわけか。
そうだな、それが1番手っ取り早い。


無双は低く腰を落とし、前屈姿勢で懐にデュエルディスクを構える。
俺もそれに合わせ、同じ姿勢でデュエルディスクを構えた。

居合抜きか……面白い…！





「「デュエルスタンバイ！！」」





その掛け声と同時に、２人の決闘者は床を蹴り前進し、その勢いのままデュエルディスクから５枚のカードを引き抜いた。

そして一閃。

交差する形で音もなく斬り抜け、互いの位置が入れ替わる。


無双「………」


戒「………ッ…！」


俺の左頬の皮が少し裂け、そこから一滴の血が頬を伝い流れ落ちた。


無双「…剣の腕ではまだ、文字通り太刀打ちもできないようだな…」

戒「…くっ…」


無双＆戒「「決闘！！」」


戒【LP 4000】[手札 5枚]

無双【LP 4000】[手札 5枚]




《特殊ルール》
・リミットレギュレーションは以下のものを使用。
『２０１３年９月〜』




◉TURN:０１◉


無双「私の先攻、ドロー」【手札 6枚】


無双「……私は手札から、『神獣王 バルバロス』を生贄なしで召喚。バルバロスは生贄なしで召喚した場合、攻撃力が１９００となる」

バルバロス『グォオオオォオオオ！！』[攻 1900]

《神獣王 バルバロス》
効果モンスター
星８/地属性/獣戦士族/攻3000/守1200
このカードはリリースなしで通常召喚できる。
この方法で通常召喚したこのカードの元々の攻撃力は１９００になる。
また、このカードはモンスター３体をリリースして召喚できる。
この方法で召喚に成功した時、相手フィールド上のカードを全て破壊する。



戒「……」


そうだ。無双のデッキは、バルバロスを主体とした『スキルドレインビート』…。
以前プロデュエリストとして活躍していた頃に、あのデッキで数々の勝利を重ねたという。
生贄なしで妥協召喚したバルバロスは、攻撃力が１９００になるが、場の攻撃力が１９００となったバルバロスの効果が無効となった場合、バルバロスの攻撃力は元の３０００に戻る。
禁じられた聖杯とスキルドレインには注意が必要だな…。


無双「カードを２枚伏せ、ターンエンドだ」


斬波無双【LP 4000】
場:『神獣王 バルバロス』[攻 1900]
伏せ:2枚/手札:3枚


◉TURN:０２◉


戒「俺のターン、 ドロー！」【手札 6枚】

聖騎士デッキは手札消費が激しい所為か、長期戦には向かない。
秘書の時みたいに早めに決着を着けなければ…！
だが、焦るな…。焦ってしまってはそれこそ相手の思う壺だ。

戒「『聖騎士モルドレッド』を召喚！」

モルドレッド[攻 1700]


《聖騎士モルドレッド》
効果モンスター
星４/光属性/戦士族/攻1700/守1000
このカードはフィールド上に表側表示で存在する限り、通常モンスターとして扱う。
このカードが「聖剣」と名のついた装備魔法カードを装備している限り、
このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードはレベルが１つ上がり闇属性になる。
また、１ターンに１度、自分フィールド上に
このカード以外のモンスターが存在しない場合に発動できる。
デッキから「聖騎士モルドレッド」以外の
「聖騎士」と名のついたモンスター１体を表側守備表示で特殊召喚し、
自分フィールド上の装備魔法カード１枚を選んで破壊する。


戒「そしてモルドレッドに『聖剣カリバーン』を装備！」


《聖剣カリバーン》
装備魔法
戦士族モンスターにのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は５００ポイントアップする。
また、１ターンに１度、自分は５００ライフポイント回復できる。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた場合、
自分フィールド上の「聖騎士」と名のついた
戦士族モンスター１体を選択してこのカードを装備できる。
「聖剣カリバーン」のこの効果は１ターンに１度しか使用できない。
また、「聖剣カリバーン」は自分フィールド上に１枚しか表側表示で存在できない。


戒「聖剣カリバーンの効果で５００ポイントライフを回復…！」

戒【LP 4000→4500】

戒「そしてモルドレッドの効果を発動！ デッキから聖騎士を守備表示で特殊召喚！」

無双「……無駄だ。リバースカードオープン！ 永続罠『スキルドレイン』！ ライフを１０００払い、このカードが場にある限り、場のモンスターの効果は無効となる」【LP 4000→3000】

無双「…バルバロスよ！ 王者の真の姿を解き放て！」

バルバロス『グォオオオォオオオ！！』[攻 1900→3000]


戒「……モルドレッドの効果が無効にされただけじゃなく、攻撃力3000のバルバロス…」

このままだとやられる…。
強引にでも、動くしかないか…？




ーーー-ーーー-ーーー-ーーー-ーーーTo Be Continued…




《次回予告》




「俺は俺の世界を斬り開く。俺自身の力で、俺自身の剣で」





次回、遊戯王 Ph.X
DRAW:３０ 戒めの斬波⑨-開闢-





「それが俺のーーー戒めだ」