DRAW:１１６ 混沌なる叫び　作：人喰い

(116)




〜〜〜


「ーーー鈴華」

「ーーーなに？ ママ」

「ーーー立派な決闘者になりなさい」

「ーーーうん。私、WDCSにも勝ち抜いて、ずっとずっと上を目指すわ」

「ーーーいえ、強くなくてもいいの」

「ーーー…え…っ…？」

「ーーー弱くたっていい。負けちゃってもいい。ただーーー」



ーーー友達のために本気で戦える、そんな決闘者になってくれると……ママは嬉しいなーーー















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:１１６ーーー
《混沌なる叫び》















鈴華【LP 4500】
(モンスター)
『エクリプス・ワイバーン』[ATK 1600]
伏せ:0
手札:3


進【LP 3300】
(モンスター)
『巨大戦艦 ビッグ・コアMkーⅡ』[ATK 2900]
『巨大戦艦 クリスタル・コア』[ATK 2600]
(魔法)
『巨大要塞 ゼロス』(フィールド)
伏せ:0
手札:3



鈴華「ーーー私は……っ…！」

進「……俺が連鎖除外で除外したファントム・オブ・カオスはお前の切り札のはずだ…。それを失った今、お前に勝機はあるのか？」

鈴華「………」

進「…無いはずだ。だから帰ってこい。鈴華。
父として、お前を危険な場所に送り出したくないんだ…ッ」

鈴華「…っ…」


和泉「ーーー鈴華ちゃん！！」

鈴華「！」

和泉「……自分が信じるもの、闘う理由、思い出してみて…っ！」

鈴華「…和泉……さん…っ」

鈴華（……私が何を信じ、何のために闘うのか……っ…）


鈴華「………パパの言いたい事、もちろんわかるよ」

進「……なら…！」

鈴華「ーーーけど！！」

進「…！」

鈴華「一度受けた勝負を簡単に諦めるなんて…っ！ 私は…っパパにそんな風に育てられた覚えはありませんわっっ！！」

進「…鈴華……っ…！」

鈴華「……それに私も、私のデッキも…、今までと同じじゃない…っっ！」

進「…ッ…！！」

鈴華「墓地のキラートマトとワイバースターを除外…！！ 来て！『ダークフレア・ドラゴン』！！」[ATK 2400]


《ダークフレア・ドラゴン/Darkflare Dragon》 †
効果モンスター
星５/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守1200
このカードは自分の墓地の光属性と闇属性のモンスターを
１体ずつゲームから除外し、手札から特殊召喚できる。
１ターンに１度、手札とデッキからドラゴン族モンスターを１体ずつ墓地へ送る事で、
自分または相手の墓地のカード１枚を選択してゲームから除外する。


進「……ダークフレア・ドラゴン……！ 以前の鈴華のデッキには無かったカードだ…ッ」

鈴華「…更に、ダークフレアの効果発動！ 手札とデッキからドラゴンを墓地へ送り、パパの墓地にある『巨大戦艦 テトラン』を除外しますわ！」

手札→墓地
『エクリプス・ワイバーン』

デッキ→墓地
『ダークフレア・ドラゴン』


鈴華「そして、墓地へ送られたエクリプスワイバーンの効果発動！！」


《エクリプス・ワイバーン/Eclipse Wyvern》 †
効果モンスター
星４/光属性/ドラゴン族/攻1600/守1000
(1)：このカードが墓地へ送られた場合に発動する。
デッキから光属性または闇属性のドラゴン族・レベル７以上のモンスター１体を除外する。
(2)：墓地のこのカードが除外された場合に発動できる。
このカードの(1)の効果で除外されているモンスターを手札に加える。


鈴華「私が除外するのは……『ダーク・アームド・ドラゴン』！！」


《ダーク・アームド・ドラゴン/Dark Armed Dragon》 †
特殊召喚・効果モンスター（制限カード）
星７/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守1000
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の闇属性モンスターが３体の場合のみ特殊召喚できる。
(1)：自分の墓地の闇属性モンスター１体を除外し、
フィールドのカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。

進「…ダーク・アームド・ドラゴンだと…！？」

鈴華「…墓地のエクリプスワイバーンを除外して、手札から『暗黒竜 コラプサーペント』を特殊召喚！」[ATK 1800]


《暗黒竜
あんこくりゅう
コラプサーペント/Black Dragon Collapserpent》 †
特殊召喚・効果モンスター
星４/闇属性/ドラゴン族/攻1800/守1700
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地から光属性モンスター１体を除外した場合のみ特殊召喚できる。
この方法による「暗黒竜 コラプサーペント」の特殊召喚は
１ターンに１度しかできない。
(1)：このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから「輝白竜 ワイバースター」１体を手札に加える。


鈴華「エクリプスワイバーンが除外された事で、私は除外したダーク・アームド・ドラゴンを手札に加えますわ…！！」【手札 1】

和泉「…！ 鈴華ちゃんの墓地には…、終末の騎士、天魔神ノーレラス、そしてさっき墓地へ送ったダークフレア・ドラゴン…！
闇属性モンスターが３体…っ！」

鈴華「…その通りですわ…！！ このカードは墓地の闇属性モンスターが３体のみの場合、手札から特殊召喚できる…！！ 来て！『ダーク・アームド・ドラゴン』！！」[ATK 2800]


《ダーク・アームド・ドラゴン/Dark Armed Dragon》 †
特殊召喚・効果モンスター（制限カード）
星７/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守1000
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の闇属性モンスターが３体の場合のみ特殊召喚できる。
(1)：自分の墓地の闇属性モンスター１体を除外し、
フィールドのカード１枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。


進「……！」

鈴華「…ダーク・アームド・ドラゴンの効果発動！ 墓地の闇を糧とし…、立ち塞がるものに漆黒の裁きを！！
……私は墓地のすべての闇属性モンスターを除外し…、まずは巨大要塞ゼロスを破壊しますわ！」

黒竜が全身から黒き闘気を解き放つ。
そして闇のエネルギーを纏った右腕を一振りし、要塞を一閃。

進「…馬鹿な……ッ、巨大要塞が…崩れていく…！！」

鈴華「…これで巨大戦艦を守る盾は無くなった…っ！ 残る2発でビッグ・コアMkーⅡとクリスタル・コアを破壊！！」

黒竜は要塞を破壊した右腕で、今度は二機の巨大戦艦を薙ぎ払う。

進「…！！！」

和泉「や、やった…っ！」


進「………鈴華…。どうしてもお前は…、闘いに行くというんだな…」

鈴華「……。ええ。…本当にごめん、パパ」

進「……」

鈴華「………今の私には、仲間がいる。
その人達の為に、そして自分自身もっと強い人間になる為に」


鈴華「ーーー私は闘うっ！！」


進「………ッ…！」

進（……こういう強情なところ…、ママにそっくりだな…っ…）

鈴華「……バトル！！ ここでぶつける…！！ 私のありったけ……私の全力を…っ！！」

進「…来い……ッ…！ 鈴華……ッ！！」

鈴華「……ダーク・アームド・ドラゴンでダイレクトアタック！！」

『ダーク・アームド・ドラゴン』[ATK 2800]

進を守る壁は無く、ただその一撃を受け止める。

進「…ぐぉぉおぉ…ッッ！」【LP 3300→500】

鈴華「……続いてダークフレア・ドラゴンで、ダイレクトアタック…っ！ ですわっ！！」

『ダークフレア・ドラゴン』[ATK 2400]

黒焔竜は咆哮し、灼熱の火炎弾によってこの決闘を決着させた。


進「………ぐぁぁぁあっ…っっ！！！」【LP 500→0】




◉Winner◉
-西蓮寺 鈴華-






＊＊＊






進「…負けたぜ、鈴華。
俺が思ってたより、お前はずっと強くなっていたんだな」

鈴華「……パパ……。
ーーーごめんなさいっ！！」

進「……！」

鈴華「…つまらない事で意地張って、逃げ出すように家を出て…、大した成果も無しに今更なんて言って会えばいいかわかんなくて……っ…！」

進「………」

和泉「…鈴華ちゃん…」

進「……あーっもうわかったよ。お前の好きにしな」

鈴華「…パパ…っ…！」

進「……合宿の場所が積木町ってわかっていながらも覚悟決めて来たって事は、よっぽど大切な友達なんだよな。この眼鏡のお嬢ちゃん達は」

鈴華「…うん……っ。とっても大切な……友達ですわ…っ…！」

和泉「…♪」

進「…こっちじゃ友達なんて一人もできなかったお前が、外の世界を知った途端、大勢の仲間ができた…。こればっかりは、認めざるを得ない事実だからな…！
今回の件は水に流してやる。……ただし、次は絶対許さねぇからな！」

鈴華「…パパ…ぁ…っ！ ぅぅ…っ…、ぇぅ…っ…！ ありが…とう…っ…！」

進「…っおいおい…っ！ 泣くなって鈴華ぁ！」

和泉「…あははは…。とりあえず一件落着、なのかなぁ…？」

和泉（……それにしても…、鈴華ちゃんのお母さんの病気の件、気になるな…）


和泉がちょうどそんな事を考えていると、少し離れたところから女性の声。



？？「ーーーここにいたのね」


3人は声のした方を振り返る。

和泉（…誰…？ でも、すごく綺麗な女の人…）

女性は3人のいる方へゆっくりと歩を進めていく。
白ワンピースに、つば広の帽子。
帽子の脇からはくるくると巻かれた茶髪のロングヘアが顔を出し、海風にゆらゆらと揺れている。

和泉（……ん…？ くるくる…？
…！！ この人……まさか……っ）



鈴華「ーーーママ……！！？」

進「鈴音……っ…！！」

和泉（…やっぱりこの人が、鈴華ちゃんのお母さんなんだ……っ）


鈴音「……鈴華、久しぶr」

ｶﾞﾊﾞｯ‼︎

鈴音が言い切るより前に鈴華は駆け出し、母の胸へと飛び込んだ。

鈴華「…ママ…っ…！ ごめん…っ…ごめんなさい……っ…！」

顔を埋め泣きじゃくる鈴華を、鈴音は優しく抱き抱える。


進「……ちょっと待ってママ…！ 退院したなんて聞いてないぞ！？」

鈴音「それはそうよ。言ってないんですもの」

進「…お前なぁ…」

鈴音「…完全に退院した訳じゃなくて、外出許可が出たってだけだし、言わなくてもいいんじゃないかしら、って思って」

進「…そうか…。身体は…、どうなんだ？」

鈴音「…そうそう、今日の診断で原因がわかったわ」

進「…本当か！？」

鈴音「…ええ、倒れる直前に行っていた『デュエルロイド』の研究の際に、気づかない程微弱な電磁波を全身に受けていたみたいで」

進「…電磁波…？」

鈴音「…そう、それも試作のデュエルロイドから発せられていて、それを長時間浴び続けたままでいると倦怠感や疲労感に襲われるって事もわかったのよ」

和泉（…よかった…。決闘が原因ってわけじゃなかったんだ…っ）

進「……！ でも、なんでそれが1ヵ月以上もの間わからなかったんだ…？」

鈴音「今までに無い周波数の特殊な電波だったから調べるのにとても時間がかかったらしいわ。
…けど、あと数週間の療養で、良くなるそうよ」

進「…！！」

鈴華「！！」

鈴音「というか、一応そのことは家に連絡行っているはずだったのだけど？」

進「！ す、すまん…！ ここ数日は仕事で忙しくてな…」

鈴音「…そ。じゃあ鈴華の件、説明してもらえるかしら？」

進「……わ、わかった…」

鈴華「……パパ、大丈夫。私から言うから…っ…」




………



鈴華は現在に至るまでにあった事を話した。


鈴音「…なるほど、ね。
けどこんな可愛いお友達を作ってきたんですもの。たまには冒険もさせるものよ」

進「……そうかもしれんな…！」

鈴華「……ママ、パパ、本当にありがとう」

和泉「…可愛いお友達だなんて…っ」

そこで鈴音は和泉を見て何かに気づいたようで声をかける。

鈴音「………あら、あなたの右腕ーーーそれ、ウチの製品よね？」

和泉「……え…？ は、はい…？」

鈴音「私の職場ね、デュエル専門のアンドロイドーーー『デュエルロイド』を始めとした最新テクノロジーを駆使したマシンの開発・発明を主に行なってて、オーダーメイド制の義手の取り扱いもしてるのよ」

和泉「…ぇぇ…っ…！？ そうなんですか…！ 知らずに使わせていただいてました…！」

和泉（…結維ちゃん……。もちろん正当な方法で入手してくれたよね…！？ 心配だよぉ……）



ｻﾞｯｻﾞｯｻﾞｯ‼︎


進太郎「あーーっ！ ママだーっ！！ それに鈴華ねぇにパパもいるよーっ！！」

進助「ホントだー！ ママーっっ！」

美鈴「ママーっ！ なにしてるのー！？」

進太郎を先頭に、ぞろぞろと兄妹たちが集まってくる。

鈴音「…あらあら、みんなも元気ね、良かったわ」


火群「…こんな奥まで来てたのかー……探したぜ…」

栗須「あの美人はもしかしてママさん！？」

明日人「…おめーはちょっと黙ってろ」

結維「…ったく…。でもその様子だと、一応は解決したみたいね。鈴華」

雫「…探しましたよ〜…っ、二人とも…っ」

メアリー「…眼鏡ちゃんご苦労様〜、なんとか一件落着？」

火群たちも後に続いて集まって来た。


鈴華「…みんな…！ ……本当にごめんなさい！！ 私…、私……っ…！」


結維「…へい、ちょっぷっ」

ﾍﾟｼｯ

鈴華「いたっ！ ちょっと結維さん！？」

結維「……そうしてる方があんたらしくて良いわよ。鈴華」

鈴華「……！」

結維「………私だって人に言えない事はあった。だけど鈴華も、みんなも、それを受け入れてくれた。
…今更あんたがそれくらいのことでウジウジしててどうすんの。
もっと胸張って、前を向け！」

鈴音「……！（本当に、素敵な仲間を持ったのね……鈴華…）」


鈴華「…そ、そそそうですわね！！ あなたより張れるだけの胸が私にはありますものっ！！」

結維「…はぁ？ その目障りな膨らみは腫れてるからじゃないの？？」

鈴華「…キィーっっ！ それはいくらなんでも酷いですわ！ 勝負よ勝負！」

結維「…そうこなくっちゃ…！ 望むところ…！」


鈴音「…（す、素敵な……仲間を…？ 持ったのね…？ 鈴華……）」

和泉「ちょ、ちょっと二人とも〜！？ 良い雰囲気だったのにいきなり喧嘩しないでよぉーっ！」







和泉（……家族………か……）










＊＊＊



鈴華「ーーーねぇママ」

鈴音「なぁに？ 鈴華」

鈴華「…この場所、覚えてる？」


鈴音「ええーーー大切な人と、水平線が、一番綺麗に見えるところよ」








To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１１７ 森林に潜む影




＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙