DRAW:１１３ 湯煙の果てに　作：人喰い

(113)



栗須「ーーー時は来た。今こそ戦の時なり！！」


明日人「はあ？？ 頭大丈夫かお前。あ、頭おかしいのはいつも通りか」

栗須「はっはっはぁーっ！ 今はお前に構ってる暇なんてないのさ。俺と火群は今から天空の聖域を目指して旅立つんだよ！！」

火群「一生ついて行くっす！ 兄貴！」

明日人「…まぁおめーらの考えることなんてわかるがよぉ…。どうなっても知らねーからな…」

栗須「心配無用！ 今の俺には“魂の兄弟《ソウルメイト》”がいるからな！！」

火群「恐縮っす！ 兄貴！！」


火群（…ああそうさ、俺たちが今から行うのは“覗き”ーーー失敗は許されない…。
だけど何も恐れる事はねぇ……今の俺には“魂の生贄《ソウルメイト》”がいるからな……！！）















◉遊戯王 Ph.X◉
ーーーDRAW:１１３ーーー
《湯煙の果てに》















〜大浴場〜



ｶﾎﾟ-ﾝ……



メアリー「くはぁーっっ！ 生き返るぅーっ♪」

鈴華「極楽ですわ〜」

結維「…♪」

雫「結維サンも珍しく上機嫌ですね〜」

結維「…ゔぇ、別に…っ、そんなんじゃ…」

メアリー「…そこは否定しなくてもいいだろうに…」

鈴華「…どうせキャラ作りですわよ」ﾎﾞｿｯ

結維「あ？」

ｹﾞｼｯ

鈴華「ひゃふぅんっ！ ちょっと！！ 変なとこ蹴らないでよ！！」

雫「はわわわ…っ！ お風呂でまで喧嘩しないでくださいよぉ〜…っ」

メアリー「…あははは！ 仲がいいねぇ！ というか若いねぇ！」

雫「……そういえばメアリーさんっておいくつなんですか？」

メアリー「ん？」

雫「…え、いやその、歳はおいくつなんですか？」

メアリー「…ん？？」

雫「…すみませんなんでもないです…」



………



ニクス「私たちも来たぞ」

千愛「…へぇ……なかなかいい感じじゃない♪」

メアリー「お、おっきいのとちっちゃいのが来たネ！」

千愛「器の大きい私と器の小さいにくすね。ええ納得だわ」

ニクス「十中八九、胸の大きさだと思うが」

結維「今のは苦しい願望だったわね…」

千愛「」


鈴華「………っ…」

雫「鈴華さん、俯いてどうしたんですか？」

鈴華「…えっ…？ いや…」

結維「…さっき蹴った股が痛む？ だとしたら悪かったわ」

鈴華「ちっっ違いますわよ！！」

結維（……みなさん下の毛がちゃんと生えてますわ…っ…。一個下の雫ですら生え揃って来ているというのになんで私のはまだ産毛程度なんです！？
こんなの絶対おかしいですわ！！）


雫「……えっと…、ところでチアガールさん」

千愛「千愛でいいわ。雫」

雫「…あっ、はい…っ。千愛、さん。
……和泉さんは一緒じゃなかったんですか？ 後で行くと言ってましたが…」

千愛「…ええ…。あの子、訳あって人とお風呂に入るの苦手なのよ」

雫「…そうだったんですか…。残念です」

鈴華「…ま、事情があるなら仕方ないですわね」

結維「……」

結維（…和泉……、やっぱりまだーーー）



………



ニクス「……」ﾎﾞﾝｯ

メアリー「〜♪」ﾎﾞﾝｯ

鈴華「…」並盛ィ!

雫「……♪」ﾍﾟﾀﾝ…

千愛「……」ﾍﾟﾀﾝ…

結維「……」ﾍﾟﾀﾝ…

千愛「大丈夫、和泉ちゃんも入れれば数では私たちの勝ちよ」

結維「…余計に虚しいわ」



………



雫「…それにしても、こんな大きなお風呂……本当にいいんですか…？ メアリーさん」

メアリー「なぁに今更遠慮してんのよっ！」

鈴華「ですが確かに、大勢で押しかけちゃってこれほどの接待というのも、なんだか申し訳ないですわね……」

メアリー「このくらい当然の事よ！……というか……ワタシの方こそね…、あなた達に謝らなきゃいけないんだよね」

鈴華「…？」

雫「……と言いますと…？」

メアリー「…あなた達が終焉の焔と闘うって言った時、本当はワタシ、止めるべき立場だった…」

結維「………」

メアリー「けど、この戦いは本当に危険なものってわかっていながら、あなた達の決闘の能力や闘うっていう意思だけしか見ていなかった…。本当にごめんね」

ニクス「……」

メアリー「…でもこれだけは言わせて。みんなが危なくなったら絶対に私達大人が守るから」

雫「メアリーさん…」

鈴華「……！」

結維「…言っときますけど、私はそんなに弱くないですよ。
…ですが…、一応は頼りにしてます。頼みますよ、三十jーーームグっ！？」

メアリー「まだ３０まで逝ってないからッ」





＊＊＊





〜別荘裏の岩場〜


火群「…兄貴、どうしましょう」

栗須「そうだな……まずは脱衣所から攻めたかったのだが…」

火群「脱衣所の門番『マスター・ヒュペリオン』を突破する事は不可能…」

栗須「…まさかあんなバケモノじみた威圧感を放つ門番を用意してるとは思わなかったぜ……予定が狂ったな…」

火群「けどヒュペリオンを脱衣所の前に配置したという事はもう向こうに切れるカードはないはず…！ いけますぜ兄貴！」

栗須「おう！」

ﾋｭｩｩﾝ‼︎

火群「…！！」

栗須「！？ なんだあれ…！？ 惑星……？ ………ぎゃあぁああーーっっす！！」

火群「……ア、兄貴ーーーっっ！！」

栗須「」ﾁ-ﾝ


火群「…くっ…！ どうやらこいつは、一筋縄ではいかねぇみてーだな…！！





〜脱衣所前〜


ヒュペリオン『ーーー浅はかなガキ共だな。この私の操る小惑星に死角はない』



ｶﾞﾁｬ


結維「…ご苦労様です。ヒュペリオン」

ヒュペリオン「…む。早かったのだな。ユイ」

結維「…なんか外で激しい音が聞こえたから。どうせあの馬鹿が覗こうとがんばってたんでしょうけど」

ニクス「…私がちゃんと言っておけば良かったな。すまない」

ヒュペリオン『気にするな不死鳥よ。あの世代の男子は、己の愚かさを自分で気づくべきだ』

鈴華「…か、かっこいい…っ」


ヒュペリオン『…では私も湯に浸かってくるとしよう。確か、男は小さい方の浴槽を使えばいいのだったな』

メアリー「ええそうよ！ それじゃごゆっくり〜！ 見張りご苦労様、助かったわっ」

ヒュペリオン『礼には及ばんさ。メアリー嬢』

結維「……む…」

ヒュペリオン『…どうした？ ユイ』

結維「なっ、なんでもありません」

ヒュペリオン『……？』

結維（……『ユイ嬢』……は、流石に語呂悪いか…）




〜別荘裏の岩場〜


火群「……！ 攻撃が止んだ…！？ よくわかんねーけど、今がチャンスだ…ッ！！」

ﾀﾞｯﾀﾞｯﾀﾞｯ‼︎

火群（…あった…！ あれだ…！ 昼食の前に空けておいた覗き穴…！ あの奥に聖域が……！！）

火群（…湯気でよく見えねーが……確かに人影が見える…！ しかも結構近いぞ…！！ 誰だ…！？ 誰なんだ…！？）

湯気もいい感じに晴れていき、火群の目に飛び込んできたのは………、

火群（ーーー筋……肉…？？）

割れた腹筋と、

火群「」

見事なバベル・タワーだった。




火群（……神様、確かにそこに天空の聖域はありました…）







＊＊＊




火群「……」


メアリー「不死鳥くん。あの覗き穴、今日中に直しといてね」


火群「！？」





To Be Continued…






《次回予告》




次回、『遊戯王Ph.X』
DRAW:１１４ 町長、現る




＊タイトルは予告なく変更になる場合があります。ご了承ください(廿V廿,,)乙